技術士第一次試験 平成15年度 専門科目《建設部門》 解答案

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専門科目(建設部門)解答案一覧
4-1 4-11 4-21
4-2 4-12 4-22
4-3 4-13 4-23
4-4 4-14 4-24
4-5 4-15 4-25
4-6 4-16 4-26
4-7 4-17 4-27
4-8 4-18 4-28
4-9 4-19 4-29
4-10 4-20 4-30

4−1 土の基本的性質を表す諸量に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 間隙比とは、土粒子実質部の体積に対する間隙の体積割合である。

(2) 含水比とは、土粒子実質部の質量に対する間隙水の質量割合である。

(3) 塑性指数とは、液性限界と塑性限界の差である。

(4) 液性指数とは、塑性指数に対する、現在の含水比と塑性限界との差の割合である。

(5) 相対密度とは、最大間隙比と最小間隙比の差に対する、現在の間隙比と最小間隙比との差の割合である。


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解答案:5
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土の基本的性質に関する問題です。(1)〜(3)はこちらをご覧ください。
(1)・・・・○ そのとおり。
(2)・・・・○ そのとおり。
(3)・・・・○ そのとおり。
(4)・・・・○ そのとおり。液性指数IL=(Wn−Wp)/Ipです(Wn:含水比、Wp:塑性限界、Ip:塑性指数)。
(5)・・・・× 記述だと(e-emin)/(emax-emin)だが、本当は(emax-e)/(emax-emin)です。


4−2 飽和粘土の圧密に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 圧密とは、間隙水の排水に起因する時間遅れを伴う圧縮のことである。

(2) 圧密による体積圧縮は、有効応力が減少することにより起こる。

(3) 正規圧密粘土とは、現在の有効応力状態よりも大きな有効応力履歴を過去に経験していない粘土である。

(4) 定ひずみ速度載荷による圧密試験は、圧密降伏応力付近の圧密特性を連続的に得ることなどの利点を有する。

(5) 圧密を促進するための地盤改良工法として、バーチカルドレーン工法がよく用いられる。


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解答案:2
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圧密に関しては、こちらにざっとまとめてあります。この程度のことをよく理解していれば楽に解ける問題です。
(1)・・・・○ そのとおり。特に粘性土は透水性が低いので排水に時間がかかるので「時間遅れ」を伴います。
(2)・・・・× 有効応力の増加により起こります。
(3)・・・・○ そのとおり。
(4)・・・・○ そのとおり。
(5)・・・・○ そのとおり。
(4)は試験方法に関することですので少しむずかしいかもしれませんが、(2)が明らかに間違いなので問題はないと思います。


4−3 非排水せん断強度Cu、単位堆積重量γの飽和粘土で構成される均質一様な地盤に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 地盤中から採取した粘土の一軸圧縮強さは2Cuである。

(2) 地盤中から採取した粘土をUU条件で三軸圧縮試験を行ったとき、破壊時のモールの応力円の半径はCuとなる。

(3) 地表から素掘りで掘削して鉛直な粘土壁面を作るとき、壁面の限界自立高さはおよそ4Cu/γとなる。

(4) 地表面から掘削して築造した鉛直な擁壁において、擁壁背面の地盤が主働状態にあるとき、ランキンの土圧理論によると、この擁壁の深さzの位置で作用する水平応力はγz―2Cuである。

(5) 水平な地表面に設置した底面が滑らかな直接基礎の極限支持力はおよそ3Cuである。


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解答案:5
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(1)・・・・○ そのとおり。モール円の直径がqu、半径がcuになります。
(2)・・・・○ そのとおり。
(3)・・・・○ そのとおり。掘削概略計画などでよく使います。
(4)・・・・○ そのとおり。
(5)・・・・× およそ5cuです。
Teruzaghiの静力公式qd=αcNc+1/2βγ
1BNr+γ2DfNqにおいて、たとえば粘土地盤ならφu=0よりNr=0、根入れ0よりDf=0となって、qd=αcNc、形状係数αは1程度、φ=0におけるNcは5ですから、qd≒5cuとなります。


4−4 溶接に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 母材(接合されるべき材)と変わらない継ぎ手強度を得ることが出来る。

(2) 溶接部の熱影響は複雑であり、溶接以外の接合方法に比べて応力の流れが複雑でかつ明確でない。

(3) 設計、施工の自由度が大きく、適用しうる板厚の範囲が広い。

(4) 外形的あるいは熱影響による不良な溶接により、応力集中箇所が出来やすい

(5) 一体化した構造を作りうるので、減衰性の低下を招きやすい


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解答案:2
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(1)・・・・○ そのとおり。
(2)・・・・× 応力分布は複雑だが、応力の流れは概して円滑である。
(3)・・・・○ そのとおり。
(4)・・・・○ そのとおり。
(5)・・・・○ そのとおり。
【選択肢1について】
完全溶け込み溶接と開先溶接・すみ肉溶接では設計上の扱いが異なります。しかしボルトなどの摩擦継ぎ手と溶接継ぎ手の継ぎ手部分で、せん断強度はどうかというような、ごく基本的・一般論的なレベルでは、記述は正しいと思われます。

【選択肢2について】
溶接は、熱影響は確かに複雑で、このため溶接ひずみや残留応力もゼロにはできません。そのため、設計計算と実際が合いません(設計計算で考慮しようがありません)。よって、応力分布は複雑になりますが、Alpha-Omegaさんご提供のように、「大学の授業で使うような教科書に書いてあるようなこと」と考えると、応力の流れは円滑になるようです。
【選択肢5について】
減衰性が低下するということは、振動がなかなか収まらないということです。つまり、ボルトのような摩擦継ぎ手と溶接では、どちらが接合部の振動が吸収されないかということで、溶接のほうが吸収されにくいのなら、記述は正しいということになります。単純にはエネルギー発散が起こりにくくなること、ボルトに比べて一般に重量が軽くなることなどから減衰しにくくなります。すなわち、減衰性は低下します。よって、記述は正しいと思われます。ただ、その理由が一体化した構造を作りうるためだけとは言い切れません。よってこれも一般論としては正しいと思いますが、少々あやしいです。
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この問題については、正解が(2)か(5)か、掲示板でずいぶんと議論されました。通信教育業者さんの解答案も2と5に分かれています。
(2)については、溶接の熱影響を考え、残留応力など設計計算で汲み取りきれない複雑さがあるので、この記述は正しいという意見がありました。それに対して、外力に関しては応力の流れは複雑ではないといった反論もありました。
また(5)については、「一体化した構造を作りうる」という記述が間違いでは、とか、溶接のほうが減衰性が高くなる(振動が収まりやすくなる)はずだという意見がありました。それに対して、ボルト継ぎ手は摩擦・すべりによるエネルギー減衰が・・・・とか、全体重量が重くなるので振動しにくくなるのではといった反論がありました。
この問題の検討に当たっては、「技術の杜 ハヤブサネット」メンバーの鋼構造・コンクリート技術士の皆さんに議論いただきました。そこでは(2)が誤り(正解解答)であろうという結論でした。また、何人かの鋼構造技術士の方にもアドバイスいただきました。誠にありがとうございました。 「技術の杜 ハヤブサネット」における当問題の議論ログはこちら
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そのような中、掲示板でAlpa-Omegaさんが次のような情報をくださいました。

**********皆様からの情報・ご指摘*****Alpha-Omegaさんに情報をいただきました。ありがとうございます。
大学時代(10年も前ですが)に使っていた教科書で以下のように記述されてます。
伊藤学著『大学講義シリーズ11 鋼構造学』(コロナ社) 「溶接の特徴」の項より
……機械的接合方法であるリベットあるいは高力ボルト接合と比較して次のような利点がある。
・連続的接合であるので、応力の流れが概して円滑である。
……構造上の特徴から次のような点に注意しなければならない。
・むだのない、一体化した断面に作りうるということは、構造物あるいはその構成部材における剛性の不足や振動減衰性の低下を招きやすい。
**********

これに対して、「いや、教科書ではそう書いてあるかもしれないが、実際は違うぞ」という反論はあるでしょうが、おそらくこれが正解で間違いないと思います。
一次試験の問題は、技術士会から依頼された作成者が作ると思われますが、この問題を技術士会に提出するときには、正解がどれかということと、その根拠としての問題出典を添えるはずです。
このことと、14年度の一次試験の後、「大学で習っていない内容の問題が出ている。作成者は大学で何を教えているかを知らないのではないか。大学関係者に出題させるべきだ」という意見が技術士試験制度審議会(確かそういう名前)で出されていたことを考え合わせると、15年度の試験問題は、全てあるいは大部分が「大学の教科書」からの出題であったと思われます。
大学では基礎知識を教えますから、例外的な部分はあまり入れずに一般論を広く浅く教えます。つまり、極論すれば、実現場での様々な例外やそれに対する技術、あるいは各技術者の経験則とは無関係に、「大学の教科書には何と書いてあるか」を問う試験だと言うことができるでしょう。


4−5 補強方法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 外ケーブル工法は、既設構造物の外部にPC鋼材や連続繊維補強材などの棒状の補強材を緊張・定着させ、プレストレスを与えることにより曲げ耐力やセン断耐力等の耐荷性状やひび割れ・たわみ性状の回復・向上を図る工法である。

(2) 接着工法とは、既設構造物の表面や周囲に鋼板、連続繊維板、連続繊維シート等を接着あるいは巻きたてて補強する工法である。

(3) コンクリート増厚工法は、既設構造物の上下面あるいは周囲にコンクリート等を打ち足し、断面を増加させて性能の向上を図る工法である。コンクリート巻き立て工法もこの範疇である。

(4) 耐震壁増設工法とは、フーチング外周に鋼矢板を打設して耐震壁状にフーチングと一体化し、支持力の向上及び水平方向の抵抗力の向上を図る工法である。

(5) 地中壁増設工法とは、各基礎を地中連続壁で接続することにより応力を分散させ全体系として安定を図る工法である。


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解答案:4
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(1)・・・・○ そのとおり。
(2)・・・・○ そのとおり。
(3)・・・・○ そのとおり。
(4)・・・・× 耐震壁増設工法とは、ラーメン橋脚等の間をコンクリートで埋めて曲げ耐力やせん断耐力を上げる工法です。
(5)・・・・○ そのとおり。


4−6 機能鋼材に関する次の記述のうち誤っているものはどれか。

(1) TMCP鋼とは、スラブ加熱から圧延、冷却に至る工程を一貫して治金的に制御することにより製造された鋼材で、高強度、高靭性化、溶接性能改善が図られている。

(2) 大入熱溶接用鋼とは、溶接時に発生する板表面に平行な割れを防ぐ目的で開発され、硫黄量の低減、SiO2、Al2O3の酸化物の介在の影響も大きいので脱ガス処理を行うことで製造される。

(3) クラックフリー鋼は、低炭素、ボロン添加物、及びニオブ、チタンなどの微量元素の活用により、溶接部に発生する有害な溶接欠陥となる低温割れの低減を図る鋼材である。

(4) 制振鋼板は、振動エネルギーを熱エネルギーに変え放散する仕組みを持った鋼板で、樹脂複合制振鋼板や合金型制振鋼板が開発されている。

(5) 非磁性鋼とは強磁性でない鋼をいい、一般に磁場内で磁化しやすさの尺度である透磁率がある値以下のものを指す。


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解答案:2
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(1)・・・・○ そのとおり。
(2)・・・・× 記述は耐ラメアテア鋼のことであり、これは硫黄量の低減、SiO2、Al2O3の酸化物介在の影響も大きいので、脱硫、脱ガス処理され、さらに製造工程での酸化物系の混入がないよう工夫されているとのことです。
(3)・・・・○ そのとおり。
(4)・・・・○ そのとおり。
(5)・・・・○ そのとおり。


4−7 日本の都市計画制度における用途地域の規制に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 第一種低層住居専用地域では、都市計画により敷地面積の最低限度を定めることが出来る。

(2) 第二種低層住居専用地域では、床面積の合計が150平方メートル以内の一定の店舗や飲食店等の建築は許可される。

(3) 第一種住居地域では、スケート場を建築することは条件によって認められる。

(4) キャバレーやナイトクラブは、商業地域及び近隣商業地域では建設が許可される。

(5) 小中学校は、準工業地域では建設が許可されるが工業地域では、許可されない。


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解答案:4
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用途区域については、本サイトで示した(こちら)より1段踏み込んだレベルでの出題でした。
用途制限については、こちらに出ています。うーん、ここまで勉強しないといけないか・・・・
(1)・・・・○ そのとおり。
(2)・・・・○ そのとおり。
(3)・・・・○ そのとおり。
(4)・・・・× 近隣商業地域では禁止。
(5)・・・・○ そのとおり。


4−8 我が国での過去5回の全国総合開発計画に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 1962年に決定された全国総合開発計画は、当時の内閣の所得倍増計画を受けたもので工業指向拠点の形成を狙いとした。

(2) 1969年に決定された新全国総合開発計画では、高速交通体系による全国の一体化が大きく取り上げられた。

(3) 1977年に決定された第三次全国総合開発計画では、定住構想を中心に据え、全国に多数の定住圏の設定を目指した。

(4) 1987年に決定された第四次全国総合開発計画では、国際的な競争力の観点から東京の強化を推し進め、都心への活動のさらなる集中を目指した。

(5) 1998年に決定された最新の全国総合開発計画では、参加と連携、すなわち多様な主体の参加と地域連携による国土づくりをキーワードに全体戦略を掲げている。


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解答案:4
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全総については、下記のようにまとめられます。
(1) 全国総合開発計画(S37)
 高度成長経済・過大都市・所得倍増計画→地域間の均衡ある発展/拠点開発構想(新産業都市etc)
(2) 新全国総合開発計画(S44)
 高度成長・人口産業大都市集中→大規模開発プロジェクト(交通通信ネットワーク・大規模工業基地)
(3) 第三次全国総合開発計画(S52)
 石油ショックと安定成長エネルギー有限性顕在化→人間居住の総合的環境整備(定住構想)
(4) 第四次全国総合開発計画(S62.6)
 東京の世界都市化・地方の雇用深刻化・国際化→多極分散型国土の構築・交流ネットワーク構想
(5) 第五次全国総合開発計画(H10.3)
 地球環境問題・大競争・高齢化・高度情報化→多軸型国土構造形成の基礎づくり
  * 多軸型国土構造:北東国土軸・日本海国土軸・太平洋新国土軸・西日本国土軸
これより、(1)〜(3)および(5)は正しく、(4)が誤りである(都心への活動の集中を目指したことなど一度もない)ことがわかります。


4−9 都市交通計画に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1) 都心部など一定の区域への自動車の流入に対して、ナンバープレートの番号の奇数偶数によって規制する施策は、典型的なロードプライシング手法として知られ、シンガポールなどで適用されている。

(2) 発生集中交通量の予測では、人口経済指標を変数としたフレーター法が広く用いられている。そのパラメータは最小二乗法を用いて推定する。

(3) 分布交通量の推計で用いられる一般的な重力モデルは、2ゾーン間の時間距離が短くなると、他の説明変数の値が一定の場合は、推計される交通量が多くなる。

(4) 交通需要マネジメントは、自家用車利用から公共交通への手段転換を推し進める施策群をいうもので、公害問題の台頭とともに1960年代から我が国で用いられている用語である。

(5) パーソントリップ調査のデータが蓄積されるにつれ、そのデータを用いて近年各地で、交通需要配分に用いる精度の高いBPR関数が推定され、実用されるようになってきた。


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解答案:3
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臨時掲示板での議論で正解は(3)か(5)に絞られました。やっぱり頑張りすぎさんにご検討いただいた内容を転載します。
(1)・・・・× ロードプライシングは、料金徴収により、交通渋滞や大気環境の改善を図る制度のことです。
(2)・・・・× フレーター法は「分布交通量」の予測で用いる「現在パターン法」の一つで、「発生集中交通量の予測」ではありません。
(3)・・・・○ そのとおり。
(4)・・・・× 1960年代にはそのようなマネジメントの発想はありません。1990年代からです。
(5)・・・・× パーソントリップ調査ではなく一般交通量調査のデータ蓄積による。
**********皆様からの情報・ご指摘*****やっぱり頑張りすぎさんに情報をいただきました。ありがとうございます。
【選択肢3について】
●基本的な重力モデルにおける、ゾーンi及びゾーンjの分布交通量(Xij)の式
  Xij=k・Gi^α・Aj^β・F(Tij) (ここで「F(Tij)」の基本形は「F(Tij)=Tij^−γ」)
  つまり、Xij=k・Gi^α・Aj^β/Tij^γ
   ここに、k、α、β、γはパラメータ
   Gi:ゾーンiの将来発生量 、Aj:ゾーンjの将来集中量 、Tij:ゾーンi及j間の距離もしくは所要時間
●ここで、この式の「成り立ち」を考える。
 将来の人や物のゾーン間の動きを予測する場合に、これらが「何によって影響されるか」についての「仮定」を考えると
・ 吸引力(集中)が同じ2つゾーンで「ゾーン間交通量」を比べた場合、その量は発生源からの「距離」が影響し異なるであろう。
・ また同じ距離である場合,それぞれの「ゾーン間交通量」は、交通手段の整備状況つまり「所要時間」が影響し異なるであろう。
ということは想像に難くない。そして、将来分布交通量予測にこの「仮定」を反映させ設定したのものが「重力式モデル」である。
 つまり上記式は「時間距離が短くなると他の説明変数が一定の場合に、推計される交通量が多くなる」という結果が得られるように『時間距離を「意図的」に組み込んで構築した「モデル」』であり、かつ地域性等,諸条件により各説明変数の寄与度が異なるであろうから,それをパラメータにより変化させる構造となっている。
 つまり(3)の文は、「重力モデル」が設定している「仮定」を説明しているに過ぎないし、その内容(仮定)は正しい。
【選択肢5について】
●(5)文中の「BPR関数」とは・・
・ 各経路(リンク)が有する抵抗を表す関数(リンクパフォーマンス関数という)の一つ。
・ 一般の道路交通での経路選択は「所要時間」を主な要因として行われるので、これを目的関数(Ta)とし、また、道路でのリンク抵抗は「交通量(Xa)」に依存するため,道路交通のリンクパフォーマンス関数は、Ta=Ta(Xa)となる。
・ BPR関数とは、このリンクパフォーマンス関数において「米国交通局(US Bureau of Public Road)」が開発したモデル(つまり“米国交通局式”関数)で、その関数形は次式である。
   ■Ta(Xa)=Ta0・{1+α(Xa/Ca)^β}
   ここに、Ta0:ゼロフロー時の所要時間、 Ca:可能交通容量、 α,β:パラメータ(α=0.15、β=4)
・ 日本では、道路規格が比較的類似していると言われるオランダで開発された「修正BPR関数」を用いることが多い。
(関数形は上記式と同じ。パラメータ値が、α=2.62、β=5)
●(5)中「パーソントリップの蓄積・・」如何?
あるリンクで上記式を用いるためには,Ta0,Ca,α,βを設定する必要があるが,これらはパーソントリップ調査のような「アンケート方式」による調査を必要としないし.逆に必要なデータは「観測」によってしか把握出来ない。(PT調査では利用経路とその所要時間を聴き取るが,その時の交通量が把握できない。また可能交通量は沿道状況,信号数等の物理的要件で設定すべきである。物理要件が同じ道路であれば可能量は同じはずである)つまりα,βを回帰的に求めるデータが揃わず,また聞き取りであるため,実観測ほどの信頼性が無い。また,この場合,実験的に車両を走行させ交通量と所要時間を観測する方法も考えられるが,データ数の制限(調査の実行性)及び,式の汎用性の観点から,現時点で最も有効なデータ源は「一般交通量調査(道路交通センサス)」である。
●道路交通センサスは以前から。では精度が高いモデルなのに「なぜ近年」か?
■BPR関数の歴史は古いが,この式は「現実に生じる交通流現象との乖離」という問題を有している。その意味を次に示す。
■この式は「道路に流れる交通量は無限であり,その量の増大に応じて所要時間は増大する」つまり「単調増加」を示しているが
現実の交通流はこうならない。ある区間の単位時間当たりに着目して交通現象を見ると,流入交通量が増大するにつれて交通速度が減少し、ついには流入量が極端に減少する.いわゆる「極めて混雑している」の状態であるが,この状態では流出入量(⇒交通量が)少ないにも関わらず所要時間は大きい。このように道路の交通処理能力には限界があり,ある量(ある速度)を境に流出入交通量が下がり(下げられ),かつ所要時間は増加するため,交通量と所要時間の関係は単調増加ではない。グラフを描くと,ある交通量までは右肩上がりであるが,それ以降はグラフが反転する。つまり交通量と所要時間の関係式は2つの解を持っており,最終解(配分交通量)に一意性の確認できない「所要時間−交通量」関数、あるいは混雑状態(反転問題)に対応できないBPR関数は,実証性、実用性に問題があるとされてきた。
■その代わり日本で用いられた道路におけるリンクパフォーマンス関数が「Q−V式」である。この式は不連続な関数であるが
従来多く用いられてきた「分割配分法」にとって部分的に線形であるため操作性が高い,その他の関数の検討や実証例が少ない、解が1つ(反転問題が無い)などの理由で多く用いられてきた。(が,その設定は経験に依る事が大きい,検証がなされていない等の問題を含んでいた。)
■その後,特に近年問題となっている整備効果判断時における「予測」と整備後の「現実」の乖離、ひいては便益計測の数値化・精密化への要求から、交通量配分の手法において「利用者均衡法」の研究が進む(精度が高い)。と同時に,この手法ではリンクパフォーマンス関数が単調増加である必要性もあり,不連続関数であるQ−V式から「BPR関数」形式のリンクパフォーマンス関数が研究され、その結果はパラメータを適切に設定することで、より精度の高い予測値(現況再現性)が得られることが検証された。(つまり、現実の渋滞状況での説明には適さないが、配分計算では「グラフ反転部分まで影響が及ばない」ということだと思う。その他に、渋滞発生下でも「所要時間−交通量」関数を「単調増加関数」として差し支えない、という研究結果もあった)
●まとめ
 よって、問題文(5)のうち「パーソントリップ調査のデータ蓄積」は「近年、精度の高いBPR関数が推定され、実用されるようになった」こととは無関係であり、記述は誤りである。
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4−10 河川・砂防・海岸に関する解析技術に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 貯留関数法は、貯留を考慮した非線形の運動の式を時系列の連続の式に当てはめたもので、我が国の大河川をはじめ中小河川の計画高水流量の策定に多く用いられる。

(2) 河道内樹木群を考慮した一次元不等流解析においては、樹木の高さや密度を考慮して、死水域の範囲や流水の透過の割合を決定する。

(3) 氾濫解析は、氾濫被害の予測、治水事業の効果計測などに用いられる手法で、水害発生時の避難計画策定にも応用が可能である。

(4) 一次元河床変動解析は、縦断的な河床高の変動を求める場合や横断的な河床の変化が小さい場合に用いられる。

(5) 有義波周期T1/3は、観測で得られた波の周期の長いほうから3分の1の平均値として定義される。


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解答案:5
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(1)・・・・○ そのとおり。
(2)・・・・○ そのとおり。
(3)・・・・○ そのとおり。
(4)・・・・○ そのとおり。
(5)・・・・× 


4−11 河川・海岸に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 河口付近の場は河川水と海水の混合形態から、緩混合型、弱混合型、強混合型と分類される。塩水くさびは弱混合型で、潮位差が小さい場合に多く発生する。

(2) 汀線に平行に設置される離岸堤背後では波が回折し、離岸堤の中心を通る汀線に垂直な軸を対称軸として2個の循環流が生じる。

(3) 貯水位の変化が少ないダム貯水池の入り口には大量の土砂が堆積し、デルタを形成する。このデルタ肩付近にはウォッシュ・ロード堆積物が多い。

(4) 貯水池の容量に匹敵するような洪水が流入した後においては、選択取水施設は濁水長期化対策としての効果を有効に発揮できない。

(5) 栄養塩濃度や植物プランクトン濃度が高い富栄養化した深い湖では、透明度が低く深層まで光が到達しないため、深層の溶存酸素濃度は低下する。


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解答案:3
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正解は4としていましたが、DEGAさんより情報をいただき、3に修正しました。
(1)・・・・○ そのとおり。平成11年度専門科目にも出題されました。弱混合型は潮位差が小さい日本海側に多く見られます。
(2)・・・・○ そのとおり。この循環流のため、舌状砂州やトンボロが離岸堤に向かってできることもあります。
(3)・・・・× DEGAさんから下記情報をいただき、そのとおりと納得したので、3を誤りとしました。
(4)・・・・○ 「選択取水施設は、濁水長期化対策を目的とした施設なので間違い」としていましたが、DEGAさんからの下記情報により修正します。
(5)・・・・○ そのとおり。
富栄養化し、水深が大きい湖では、深層の溶存酸素濃度はどうなるかというと、還元環境になるため当然ながら低下します。光が届いて光合成により酸素供給がされると別ですが、そうでないと大気からの酸素供給を受けられない深層水は還元環境になるのです。残るは「透明度が低く深層まで光が到達しないため」ですが、前記よりそのとおりです。よって記述は正しいといえます。
**********皆様からの情報・ご指摘*****DEGAさんに情報をいただきました。ありがとうございます。
(選択肢3について)
堆砂のデルタは粒径の粗い掃流砂(ベッドロード)によって形成されます。粒径の細かいウオッシュロードは、デルタ肩より下流に堆積します。したがって、3の記述は誤りで、これが正解になります。
なお、参考までに「芦田和男,高橋保,道上正規.1983.防災シリーズ5,河川の土砂災害と対策.森北出版株式会社.p.157」から引用した堆砂形状の図を添付します。この文献によると「ダム貯水池の典型的な堆砂形状は、下図のとおりである。この図の(@)と(A)の領域の堆積物は、比較的粗い成分であり、(B)と(C)の領域の堆積物は、ほとんど粒径0.1o以下のウオッシュ・ロード成分である。」となっています。
(選択肢4について)
貯水池容量に匹敵するような洪水が流入すると貯水池全層が混合されるため温度躍層が破壊され、全層が濁ってしまいます。このような状況では選択取水の効果は発揮できません。したがって、4の記述は正しいと思います。実際にあるダムでは、秋口の大出水のため全層が濁ってしまい、温度躍層が再度形成される翌春まで濁水長期化現象が続いたという事例もあります。
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4−12 河川に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 現行河川法において、堤防沿いの樹林帯は「河川管理施設」と既定されている。

(2) 堰の固定部(又は固定堰)には、原則として、土砂吐き・舟通し・魚道等の施設を現状又は計画の流下断面内に設けてはならない。

(3) 堤防の余裕高は、洪水時の風浪、うねり、跳水等による一時的な水位上昇を考慮して、計画高水位加算すべき高さとして既定されているもので、計画上の余裕は含まれない。

(4) 一級河川指定区間と二級河川は都道府県知事が管理する。

(5) 治水対策のうち、氾濫域対策と呼ばれるものとして、道路かさ上げ、樹林帯、地下浸透施設、防災調節池の設置を挙げることが出来る。


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解答案:5
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(1)・・・・○ そのとおり。河川法第3条第2項
この法律において「河川管理施設」とは、ダム、堰、水門、堤防、護岸、床止め、樹林帯(堤防又はダム貯水池に沿つて設置された国土交通省令で定める帯状の樹林で堤防又はダム貯水池の治水上又は利水上の機能を維持し、又は増進する効用を有するものをいう。)その他河川の流水によつて生ずる公利を増進し、又は公害を除却し、若しくは軽減する効用を有する施設をいう。ただし、河川管理者以外の者が設置した施設については、当該施設を河川管理施設とすることについて河川管理者が権原に基づき当該施設を管理する者の同意を得たものに限る。
(2)・・・・○ そのとおり。河川管理施設等構造令p.190に記述があります。
(3)・・・・○ そのとおり。河川管理施設等構造令p.116に記述があります。
(4)・・・・○ そのとおり。一級河川は直轄区間が国土交通大臣、指定区間が知事の管理になっています。
(5)・・・・× 地下浸透施設・防災調整池は氾濫域対策ではなく、流域対策です。


4−13 傾斜堤と直立堤を比較した次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1) 直立堤の方が軟弱地盤に向いており、液状化の被害も少ない。

(2) 直立堤の方が反射率が小さいため、周辺の海面を乱さない。

(3) 直立堤の方が維持補修の頻度が少なく、維持補修費も小さい。

(4) 直立堤の方が透過波が大きいため湾内の水質維持に有利である。

(5) 直立堤の方が施工が単純なため、施工時に荒天の影響を受けにくい。


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解答案:3
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(1)・・・・× 傾斜堤のほうが底面積が広く軟弱地盤に向いており、ある程度フレキシブルで修理も容易なので液状化被害も少なくなります。
(2)・・・・× 直立堤は反射波が大きくなります。
(3)・・・・○ そのとおり。
(4)・・・・× 直立堤は傾斜堤に比較して透過波は小さくなります。
(5)・・・・× 直立堤は施工時の静穏が必要です。


4−14 港湾に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 港湾の配置計画では、背後地の土地利用やアクセスを考慮して計画する。

(2) 湾内の静穏度を保つために、自然海浜を残したり、消波工を設置したりする。

(3) 泊地は、広さ、静穏度の確保だけでなく、海底の地質についても考慮する。

(4) 防波堤の堤頭部に設置する消波ブロックは、水面に近く波力が小さいため、他の部分より軽量にする。

(5) 係船岸の安定計算では、高潮位だけでなく、低潮位についても考慮する。


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解答案:4
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(1)・・・・○ そのとおり。
(2)・・・・○ そのとおり。
(3)・・・・○ そのとおり。
(4)・・・・× 港湾基準に「堤頭部の被覆石及び被覆ブロックは、堤幹部の被覆材の重量より大きくすることを標準とする」 とあります。
(5)・・・・○ そのとおり。


4−15 空港に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1) 滑走路に設けられている溝であるグルービングは、滑走路のわだち掘れやひび割れを防ぐために設けられている。

(2) 計画で用いる航空機の離陸距離は、停止状態から機首を上げるまでに要した距離である。

(3) 滑走路の長さは、航空機の機種によって決まり、標高や気温には影響されない。

(4) 滑走路の舗装は、道路舗装に比べて設計荷重、荷重頻度ともに小さい。

(5) 空港周辺による制約が無い場合には、滑走路の方向は出来る限り恒風方向に配置する。


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解答案:5
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(1)・・・・× グルービングは、滑走路の降雨時における排水性を高めるために設けられます。
(2)・・・・× 離陸距離は、静止位置から離陸のための滑走を開始し高度50Ft(35Ftの場合もある)に達する距離です。
(3)・・・・× 当然こんなことはありません。揚力が異なるはずです。
(4)・・・・× 滑走路の舗装厚さは、CBR=3%の場合、ジャンボ飛行機対応で230cm程度にもなります。
(5)・・・・○ そのとおり。向かい風離陸は基本です。


4−16 発電・エネルギーに関連する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 風力による発電電力は風速の3乗及び風車の面積に比例する。

(2) 揚水発電所では、水の蒸発や機械的損失があるため、発電電力量は揚水に要した電力量の70%程度である。

(3) バイオマスエネルギーは、再生可能なエネルギー源として、樹木などの植物や様々な廃棄物を利用する方法で得られる化学エネルギーである。

(4) 原子力発電は、汽力発電に比べ熱効率が低く、建設費が割高である。しかし、同一の発電出力を得るために必要とされる燃料の絶対量は非常に少なく、燃料費は割安である。

(5) 火力発電所の形式のうち、ガスタービン発電は起動時間が短く負荷変動へ対応が容易であり、汽力発電に比べ構造が簡単で効率も良く、建設費・燃料費が安価である。


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解答案:5
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(1)・・・・○ そのとおり。
(2)・・・・○ そのとおり。結果として電気を食う施設ですが、昼間のピーク需要対応を目的としています。
(3)・・・・○ そのとおり。参考はたとえばこちら
バイオマスの代表例である木質バイオマスは、植物として生育する段階で二酸化炭素を消費しているため、これを燃料として二酸化炭素を排出しても、生育時の消費と相殺されるので、結果的に二酸化炭素を増やしたことにならないという考えが「再生可能エネルギー」です。また化学反応により液体燃料やガス燃料を得ることができます。
(4)・・・・○ そのとおり。原子力発電の熱効率は33%、汽力発電は38%。
(5)・・・・× 「効率も良く」が誤り。
ガスタービン発電は、起動時間・負荷変動への対応、構造が簡単であることはそのとおりですが、高温ガスを捨てるので、熱効率は汽力発電に比べ低くなっています(汽力発電の熱効率が40%弱なのに比べ、ガスタービンは20〜30%台で小型ガスタービンでは15〜25%:参考はたとえばこちら)。なお、この欠点を補うべく高温ガスを利用して蒸気を作り発電する汽力発電を組み合わせたものがコンバインドサイクル発電で、熱効率40%以上と高くなっています。


4−17 電力士.木設備に関連する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 富栄養化した深い貯水池において、夏季にばっ気循環を行い上下層を混合させると、pHの低い深層水が表層のpHを低くする役目を果たす。

(2) 火力・原子力発電所において、河口等の淡水が流入する海域において深層取水を行い、温排水を表層に放出する場合には、温排水の平面的な拡散範囲は、淡水が流入しない海域における場合よりも広くなる。

(3) 重力式ダムは水圧をダムの重量で支え底面の岩盤に伝える形式で、アーチダムは水圧をアーチで合力して両側岩盤に伝える形式である。

(4) ダムに溜まった堆砂対策として排砂設備による方法をとる場合、貯水位が高い状態で設備を操作しても、貯水池容量確保の効果はほとんどない。

(5) 発電所からの温排水は取水したときの水温より通常7℃程度高くなる。


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解答案:2
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(1)・・・・○ そのとおり。
(2)・・・・× 淡水が流入する海域では温排水の拡散範囲は狭くなるか、あるいは「広くなるとは限らない」と判断されます。
(3)・・・・○ そのとおり。
(4)・・・・○ そのとおり。参考はたとえばこちら
(5)・・・・○ 一般論としては記述のとおり(たとえばこちら)。

【選択肢(1)について】
富栄養化した深い貯水池では、深層は溶存酸素量が欠乏しますが、逆に表層では大量発生した藻類の光合成によって溶存酸素が過飽和になり炭酸ガスが消費されるためにpHが高くなります。特に夏が顕著です。上下層の曝気循環により、相対的にpHの低い水との混合により即時的にpHが低くなるとともに、炭酸ガスの供給によりpHの上昇を抑える効果があるようです。
**********皆様からの情報・ご指摘*****滑走路さんに情報をいただきました。ありがとうございます。
書名「大学土木 河川工学」 玉井 信行編 オーム社 H14.4.30 第4章3.貯水池の水質水理 P120 により抜粋
二酸化炭素とシアノバクテリア(藍藻)との関係
 溶存酸素だけでなく溶存二酸化炭素の分布も湖沼の環境に大きな役割を果たしている.成層の強度が強くなる夏季においては二酸化炭素濃度は一般に有機物が分解される深層で高くなる.一方,表層では活発に光合成が行われ,その際に利用されるために二酸化炭素濃度は減少する.
ところが,水中では二酸化炭素は炭酸水素イオン(HCO3-)や炭酸イオン(CO32−)としても存在しており,それぞれその場の条件に即した割合で平衡を保っている.
 CO2+H20 ←→ HCO3 ̄+H+ ←→ CO32 ̄+2H+
 ここで二酸化炭素が消費されると,それを補うために反応は左向きに進み,水素イオンが減少,pHが上昇する.そのため,夏季の表層ではpHの値は8〜9の弱アルカリ側に移行する.
 ところが,pHが8付近になると,二酸化炭素の大部分はCO2ではなくHCO3 ̄の形態で存在するようになる.また,貯水池の管理上最も問題となる植物プランクトンであるシアノバクテリア(藍藻類)は,競合するほかの種類の多くが光合成に際しCO2のみを利用するのに対し,HCO3 ̄も利用することができる.これが,夏季においては藍藻類が優占する原因の一つと考えられている.

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【選択肢(2)について】
いろいろな方に相談した結果をもとに、淡水混入が温排水拡散範囲の大小に与える影響として考えられる事項をまとめてみると、次のようになります。
これらのことから、淡水流入により温排水拡散範囲は狭くなるか、あるいは広がる・狭まるいろいろなケースが考えられるため。「温排水拡散範囲が広くなる」と断定した選択肢記述は誤りであると判断されます。
×温度差
川の水が流入することで、付近の海域は海水温度が低くなります。よって温排水と海水の温度差が大きくなるので、熱交換による冷却効果が高くなって、温排水の拡散範囲は狭くなると思われます。簡単に言えば、「淡水が混入する海域は水温が低いので温排水が冷却されやすく、あまり広がらない」ということになります。
×密度差
塩分濃度の違いによる密度差は、温度差よりはるかに大きく影響します(河川水流入による塩分変動は、温度差10〜20℃にも相当するらしいです)。淡水塊と海水の境界ではそう簡単に混合がおこらず、明瞭な境界(潮目)が形成されるので、ここでシャットアウトされて拡散が止まると思われるので、一般的にみて拡散範囲は狭くなることが考えられます。
○密度層
淡水が流入する海域では、淡水が表層に広がり密度成層場が形成されることが考えられます。ここに温排水を表層放流すると、温排水が中層(淡水と海水の間)に潜り込むなど、一様な密度の海域とは大きく異なり、3次元的な拡散挙動を示すことが明らかになっています。温排水が淡水の下にもぐりこむことによって大気との熱交換による冷却が妨げられ、この点は逆に拡散範囲を広げる働きをすると思われます。ただしこれは特殊な例のようです。
○河川水の運動エネルギー
河川水の流入量にもよるが、温排水が河川水の拡散に乗って遠く運ばれ、拡散範囲が広くなることが考えられます。これについては、河口の位置や流量などが選択肢に記述してないため、判断できません。逆に言えば、出題者の意図はこのようなところにはないのではないかとも考えられます。
【選択肢(5)について】
温排水がもとの取水温度より7℃程度高くなるのは事実です。
温度差が7℃より大きくなると、パイプの伸びその他構造上の問題が出てくるそうです。逆に7℃より下げようとすると冷却水量が増大し、コスト高になるので、「ちょうどいいところ」として7℃上昇で設計するそうです。
その一方で、現場では協定で温度上昇を7℃以下とし、それを超えることはないよう管理しています。しかし、これは現場での管理の話であって、この試験はあくまで一般論(大学専門課程で教えているような内容)を問うものであることから、この記述は正しいものとして扱われている可能性が大であると判断されます。


4−18 道路の種類に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 高規格幹線道路は、全国で約14,000kmのネットワークであり、高速自動車国道として整備される。

(2) 地域高規格道路は、高規格幹線道路と一体となって、地域発展の核となる都市圈の育成、地域相互の交流促進等に資する路線である。

(3) 一般国道は、高速自動車国道と併せて全国的な幹線道路網を構成する道路であり、政令でその路線が指定される。

(4) 都道府県道は、地方的な幹線道路網を構成する道路であり、都道府県知事がその路線を認定したものである。

(5) 市町村道は、市町村の区域内に存する道路で、市町村長がその路線を認定したものである。


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解答案:1
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(1)・・・・× 高規格幹線道路(約14,000km)は、高速自動車国道(約11,520km)と国土交通大臣指定に基づく高規格幹線道路(一般国道の自動車専用道路:約2,480km)からなります(参考はたとえばこちら)。
(2)・・・・○ そのとおり。
(3)・・・・○ そのとおり。
(4)・・・・○ そのとおり。
(5)・・・・○ そのとおり。


4−19 道路を整備する際の構造の技術的基準に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 道路の幅員構成や設計速度は、種級区分に応じて定めなければならない。

(2) 車道の車線数は、道路の計画交通量と設計基準交通量から定めなければならない。

(3) 都市部における4車線以上の幹線道路には、副道を設けなければならない。

(4) 専ら路面電車の通行の用に供するために、道路に軌道敷を設けることができる。

(5) 住区内の道路には、自動車の速度を抑制させるハンプを設けることができる。


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解答案:3
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(1)・・・・○ そのとおり。
(2)・・・・○ そのとおり。
(3)・・・・× 副道は車線数が4以上ある第3種(地方部)・第4種(都市部)道路で、必要に応じて設けるものです。
(4)・・・・○ そのとおり。
(5)・・・・○ そのとおり。


4−20 道路の維持・管理に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 阪神・淡路大震災において高架橋が倒壊する被害が発生したことを教訓に、緊急度の高い橋梁について橋脚補強等の対策が実施されている。

(2) 積雪の多い地域において冬期交通の確保を図るため、スノーシェッド、防雪柵、消宵パイプ等の防雪施設の整備が進められている。

(3) 我が国の道路ストックの大部分が戦前に形成されたが、その更新をほぽ終えているため、維持・修繕コストは低く抑えられている。

(4) 特異な自然現象によって災害が発生するおそれがある箇所については、異常気象時において通行規制が行われている。

(5) 安全で快適な通行空間の確保、都市災害の防止、都心景観の向h等に資するため、電線類の地中化か進められている。


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解答案:3
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(1)・・・・○ そのとおり。
(2)・・・・○ そのとおり。
(3)・・・・× わが国の道路は、その維持・修繕がこれからの大きな課題です。また、道路ストックは戦後の高度成長経済期以降に整備されています。
(4)・・・・○ そのとおり。
(5)・・・・○ そのとおり。


4−21 鉄道施設の構造に係る技術上の基準に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 円曲線には、緩和曲線の延長、車両の固定軸距等を考慮し、軌道への過大な横圧を防止することができるスラックを付けなければならない。

(2) 勾配は、車両か起動し、所定の速度で連続して運転することができ、かつ、所定の距離で停止することができるものでなければならない。

(3) 直線における建築限界は、車両の走行に伴って生ずる動揺等を考慮して定めなければならない。

(4) 交通の頻繁な道路等に架設し、下を通行するものに危害を及ぼすおそれのある橋梁には、物件落下を防止する防護設備を設けなければならない。

(5) 踏切迫は通行人等の安全かつ円滑な通行に配慮し、かつ、踏切保安施設を設けたものでなければならない。


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解答案:1
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(1)・・・・× スラック量は曲線半径(円曲線の半径)・固定軸距で決まります。
(2)・・・・○ そのとおり。
(3)・・・・○ そのとおり。
(4)・・・・○ そのとおり。
(5)・・・・○ そのとおり。


4−22 大都市圏での鉄道旅客駅を計画する際の留意点に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 橋上駅は地平駅に比べ建設費が一般に割高になるので、計画段階で総合的な判断か必要である。

(2) 跨線橋の昇降口は、乗降客の利便性に配慮して改集札口に近接させることが原則である。

(3) プラットホームの幅員は、旅客の安全かつ円滑な流動に支障を及ぼすおそれのないものでなければならない。

(4) 途中駅での構内配線は運転保安上から構内全般にわたり見通しをよくし、直線を基本とする。

(5) 道路その他の交通機関と連絡がよく、旅客の利用に便利な位置であることに留意して位置選定する。


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解答案:2
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(1)・・・・○ そのとおり。
(2)・・・・× 昇降口と改集札口を近接させると、通勤ラッシュの時などは混雑を助長し、階段での転倒など危険が考えられます。
(3)・・・・○ そのとおり。
(4)・・・・○ そのとおり。
(5)・・・・○ そのとおり。


4−23 近年の都市交通機関に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 我が国では中量輸送の新交通システムが1980年以降急速に普及したが、導入都市数は、現在でも30都市に満たない。

(2) 我が国ではモノレールが1960年代から導入が始まり、現在では5都市以上に導入されている。

(3) 我が国では、路面電車は昭和中期以降各地で廃止が相次ぎ、現在運行している都市は20に満たない。

(4) 路面電車を新たに導入する動きは1980年代以降、欧米で盛んであるが、実際に新規に導入した都市は多くはなく、北米では5都市に満たない。

(5) 名古屋と同様にバス車両に補助支持輪を付加したガイドウェイバス技術を導入している都市は世界中で10に満たない。


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解答案:4
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(1)・・・・○ そのとおり。
(2)・・・・○ そのとおり。
(3)・・・・○ そのとおり。
(4)・・・・× アメリカでは路面電車数(Tramway)とライトレール(Light Rail)で30以上です。
(5)・・・・○ そのとおり。


4−24 シールドトンネルの計画に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) トンネルの土被りは、地表や地下構造物の状況、地山の条件、掘削断面の大きさ、施工方法等を考慮して決定しなければならない。

(2) 水路トンネルの勾配は、できるだけ緩い勾配で、かつ、自然流下による排水を妨げない勾配を設定しなければならない。

(3) シールド工法の選定に当たっては施工区間の地山の条件、地表の状況、断面寸法、施工延長、トンネルの線形、工期等の諸条件を考慮しなければならない。

(4) 覆工は、周辺地山の土圧、水圧等の荷重に耐え、所定のトンネル内空を確保する堅固な構造物でなければならない。

(5) シールドエ事の工程は、工事の規模、順序、工期及び施工条件等を考慮して安全かつ効率的に計画しなければならない。


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解答案:2
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「トンネル標準示方書(シールド工法編)・同解説」に記述があります。
(1)・・・・○ そのとおり。p.18 第11条
(2)・・・・× 消去法でこれが誤り。
(3)・・・・○ そのとおり。p.25 第14条
(4)・・・・○ そのとおり。p.19 第13条
(5)・・・・○ そのとおり。p.29 第19条


4−25 トンネルの山岳工法における機械掘削に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 機械掘削は、発破掘削に比べて地山を緩めることが少なく、地質に適合すれば大きな掘進速度が得られる。

(2) 機械掘削は、騒音、振動が多く発生するため、環境対策上、都市域のトンネルでの採用は少ない。

(3) TBMは、主に全断面掘削に用いられるほか、先進導坑掘削にも用いられている。

(4) ブーム掘削機は、主に軟岩並びに未固結地山の自由断面掘削に用いられており、適切に加背割することにより、大断面トンネルにも適用可能である。

(5) TBMは機械が大型、高価で、途中で発破掘削に変更せざるを得なくなった場合には、工期の大幅な遅延、工事費の増大を生ずることになるので、採用に当たっては慎重な検討が必要である。


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解答案:2
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(1)・・・・○ そのとおり。
(2)・・・・× 山岳トンネル掘削は機械掘削か発破掘削となるが、機械掘削のほうが低騒音・低振動。
(3)・・・・○ そのとおり。
(4)・・・・○ そのとおり。
(5)・・・・○ そのとおり。


4−26 公共事業のコスト縮減のあり方に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 事業遅延を防ぐため、事業の構想段階からの合意形成手続を導入する。

(2) 最新の技術革新の動向を踏まえ、構造設計を見直す。

(3) 地域住民やボランティアの参加による施設の維持・管理を実施する。

(4) ライフサイクルコストを考慮し、限界に達した時点での補修を行う。

(5) 既存ストックを有効活用し、新設・更新費を低減させる。


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解答案:4
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(1)・・・・○ そのとおり。
(2)・・・・○ そのとおり。
(3)・・・・○ そのとおり。
(4)・・・・× 限界に達した時点での補修はコストアップにつながる。
(5)・・・・○ そのとおり。


4−27 施工計画に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 安全の確保は、現場内についてだけでなく、周囲への影響も考慮する。

(2) 工事着手前に法的規制や漁業権・水利権等の権利関係などを調べることは重要である。

(3) 工程計画では、労働力や資材などの配置だけでなく、経済性についても考慮する。

(4) 仮設構造物は一時的なものであるため、施工中の条件は考慮せず本工事と同じ荷重条件で計画する。

(5) 地盤条件の変化など不確定要素が多い場合、安全性や施工性に余裕のある計画を立てる。


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解答案:4
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(1)・・・・○ そのとおり。
(2)・・・・○ そのとおり。
(3)・・・・○ そのとおり。
(4)・・・・× 仮設工の指針もあり、施工中の条件考慮、仮設における荷重条件の設定とも必要です。
(5)・・・・○ そのとおり。


4−28 環境影響評価法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1) 環境影響評価の結果の適否を決定する者は、環境大臣である。

(2) 環境の保全についての十分な配慮がなされているか否かは、環境基準等の環境保全目標値の達成状況で判断される。

(3) 環境の保全の見地からの意見を有する者が初めて意見を述べることができるのは、準備書についてである。

(4) 第二種事業の規模に係る数値の第一種事業の規模に係る数値に対する比について、政令で定められている数値は,0.75である。

(5) 一般国道の改築事業は、環境影響評価法の第一種事業とはならない。


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解答案:4
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(1)・・・・× 許認可者(たとえば道路なら国交大臣)です。環境大臣は許認可者に意見を述べることができます(参考はこちら)。
(2)・・・・× 環境保全目標は、「値」でなくてもよく、環境基準を満たせばよいというものではありません。たとえば、生態系への配慮は定量的に目標がたてにくいものです。また、現況において環境基準がすでに満たされていない場合は、「現状非悪化」にせざるをえない場合もあります。
(3)・・・・× 方法書において意見が述べられます(参考はこちら)。
(4)・・・・○ そのとおり。環境影響評価法施行令第5条。
(5)・・・・× 4車線10km以上の新築・改築は対象となります(参考はこちら)。


4−29 ヒートアイランド現象とその対策に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 都心部の気温が郊外に比べて島状に高くなる現象である。

(2) 20世紀中に、日本の平均気温は約3℃上昇しており、特に大都市の気温は約5℃上昇している。

(3) 国として、ヒートアイランド対策に係る大綱を策定することとなっている。

(4) 公園や緑地の整備、屋上・壁面緑化が、対策として考えられている。

(5) 行政、事業者、国民といった全ての主体がそれぞれの役割に応じて協力しながら取り組むことが必要である。


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解答案:2
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(1)・・・・○ そのとおり。
(2)・・・・× 日本の大都市部で2〜3℃の上昇です(参考はこちら)。
(3)・・・・○ そのとおり。
(4)・・・・○ そのとおり。
(5)・・・・○ そのとおり。


4−30 騒音に係る環境基準に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 環境基準の類型を当てはめる地域は、都道府県知事が指定する。

(2) 環境基準における時間の区分は、昼間を午前6時から午後10時までの間とし、夜間を午後10時から翌日の午前6時までの間とする。

(3) 環境基準は、幹線交通を担う道路に近接する空間については、特例として、昼間70デシベル以下、夜間65デシベル以下である。

(4) 騒音の評価手法は、時間の区分ごとの全時間を通じた等価騒音レベルによって評価することを原則とする。

(5) 道路に面する地域については、原則として一定の地域ごとにその地域の騒音を代表すると思われる地点を選定して評価する。


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解答案:5
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(1)・・・・○ そのとおり。
(2)・・・・○ そのとおり。
(3)・・・・○ そのとおり。
(4)・・・・○ そのとおり。
(5)・・・・× 「道路に面する地域については、原則として一定の地域ごとに当該地域内の全ての住居等のうち1の環境基準の基準値を超過する戸数及び超過する割合を把握することにより評価するものとする」とされています。