技術士第一次試験専門問題対策資料 =建設環境=
最終更新:2007.02.12
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これまでの一次試験専門科目での出題実績ももとに、建設環境について、押さえておきたい事項についてまとめた資料です。

CONTENTS
環境影響評価
地球環境問題
自然環境・生態系
その他

環境影響評価

  1. 環境影響評価法の手続き
    環境影響評価法は、右図のような手順で実施します。
    対象事業は、第一種事業と第二種事業があります。その基準は下表の通りです。
    区   分 第一種事業 第二種事業
    高速自動車国道首都高速道路等 すべて
    一般国道 4車線10km以上 7.5km以上10km未満
    大規模林道 2車線20km以上 15km以上20km未満
    ダム・堰湖沼水位調節施設・放水路 湛水面積 100ha以上 75ha以上100ha未満
    新幹線鉄道(規格新線含む) すべて
    普通鉄道・軌道(普通鉄道相当) 10km以上 7.5km以上10km未満
    飛行場 滑走路長 2500m以上 1875m以上2500m未満
    水力発電所 出力 3万KW以上 2.25万以上3万KW未満
    火力発電所(地熱以外) 出力 15万KW以上 11.25万以上15万KW未満
    火力発電所(地熱) 出力 1万KW以上 7500以上1万KW未満
    原子力発電所 すべて  
    廃棄物処理施設 30ha以上 25ha以上30ha未満
    公有水面の埋立て及び干拓 50ha超 40ha以上50ha未満
    土地区画整理事業 100ha以上 75ha以上100ha未満
    新住宅市街地開発事業
    工業団地造成事業
    新都市基盤整備事業
    流通業務団地造成事業
    宅地造成(環境事業団・住宅・都市整備公団・地域振興整備公団)
    第一種事業は問答無用でアセス法対象になります。
    第二種事業はアセス対象とするかどうかの判定が行われます。これをスクリーニング手続といいます。
    ●アセスの最初に、アセス実施計画を策定して方法書にまとめます。これに対して国民・地方公共団体は意見を述べます。
     これら意見をもとに事業者はアセス方法を決定します。これをスコーピング手続といいます。
    ●事業者は決定した方法で調査・予測・評価を行います。そしてその結果を準備書にまとめます。
    ●これに対して国民・地方公共団体は意見を述べます。これら意見をもとに事業者は評価書を作成します。
    ●これに対して環境大臣・許認可者は意見を述べます。これら意見をもとに事業者は評価書を補正します。
    ●以上でアセスは終わり、許認可審査のあと事業を実施します。
    ●事業者は、事業着手後も調査等のフォローアップを行います。

  2. 予測評価手法
    主な予測評価手法を示します。
    区分 予測評価手法 解説
    大気汚染 プルームモデル 拡散予測式。主に有風時の拡散予測に使用する。
    パフモデル 拡散予測式。主に無風時の拡散予測に使用する。プルーム式と合わせて使われることが多い。
    水質汚濁 単純混合モデル 負荷物質量÷希釈水量=濃度というように単純に混合して濃度を予測する。
    ジョセフゼンドナー式 汚濁物質の拡散式。本来は懸濁物質には適用しない。
    新田式 排水量から汚濁範囲を単純に計算する。簡易予測ではこの式で汚濁範囲を決めゼンドナー式で細かく計算することがある。
    騒音振動 距離減衰式 騒音・振動発生源からの距離で騒音振動の減衰を推定する方法。単純な発生源・伝播経路で適用。
    全般 差分法・FEM解析 いずれもシミュレーションに使用。モデルの妥当性確認に手間がかかる。
    環境影響評価法の重要点の1つとして、アセス対象項目や調査・予測評価手法は、知事と住民意見を聞いて、事業者または都市計画決定権者が選定するオーダーメイド方式であることがあげられます。すなわち、マニュアルのようなもので一律に、また機械的に決められるのではなく、地域ごと・事業ごとの特性と、行政・住民の意見に十分配慮して、個別にメニューを組み立てることとされています。

  3. 予測評価指標
    主な予測評価の指標を示します。
    環境基本法で定められている環境基準(守られるべき値。罰則規定なし)と、大気・水質・悪臭各防止法および騒音・振動各規制法に定める規制基準(守らなければならない規制値。罰則付き)があります。
    また、騒音・振動・悪臭にかかわる規制は、都市計画用途区域に適用が限られることも頭に入れておきたいところです。
    ※ダイオキシンについては、このページの「ダイオキシン」の項で別に記します。
    区分 予測評価指標 規定法令 規制種別 解説
    大気汚染 窒素酸化物 環境基本法 環境基準 1時間値の1日平均値で判定。
    硫黄酸化物
    浮遊粒子状物質
    一酸化炭素
    1時間値の1日平均値と1時間値の最大値で判定。
    光化学オキシダント 1時間値の最大値で判定。
    有機塩素化合物類 ベンゼン、トリクロロエチレンなど。
    各種汚染物質 大気汚染防止法 規制基準 排出基準で、窒素酸化物・硫黄酸化物、一酸化炭素、ばい煙、ダイオキシンなど。
    水質汚濁 健康項目 環境基本法 環境基準 六価クロム、PCB、鉛、亜鉛、砒素、水銀、銅などの有害重金属類と、有機塩素化合物。環境基準は23項目について定められている。
    生活環境項目 BOD(生物化学的酸素要求量:河川に適用)、COD(化学的酸素要求量:海域湖沼に適用)、pH、SS(浮遊物質量)、DO(溶存酸素量)、大腸菌群数、ノルマルヘキサン抽出物質窒素およびリン(海域湖沼に適用)
    特にBOD・CODや窒素・リンなどは「富栄養化物質」と呼ばれる。
    各種汚染物質 水質汚濁防止法 規制基準 排水基準で、特定排水施設にかけられる。主に環境基準の10倍値。水域を類型指定し、さらに上乗せ排水基準を定めることが多い。
    騒音 時間率騒音レベル 環境基本法 環境基準 等間隔に測定した騒音レベルを度数分布処理した中央値で、従来の環境基準。指定地域のみに適用。
    等価騒音レベル 時間積分した騒音レベルで、騒音規制法改正により環境基準となった。指定地域のみに適用。
    時間率騒音レベル 騒音規制法 規制基準 特定建設騒音・特定工場騒音に関する規制基準。指定地域のみに適用。公害防止条例等でさらにきびしくしている所も多い。
    振動 振動レベル 振動規制法 規制基準 特定建設振動・特定工場振動に関する規制基準。振動には環境基準はなく、規制基準のみである。指定地域のみに適用。
    悪臭 悪臭物質 悪臭防止法 規制基準 アンモニア、硫化水素など22項目。指定地域のみに適用。
    土壌汚染 各種汚染物質 環境基本法 環境基準 有害重金属類、有機塩素化合物など27項目。

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地球環境問題

  1. 地球温暖化
    環境省の「地球温暖化解説」をもとにまとめます。
    キーワード:温暖化ガス、二酸化炭素、メタン、フロン、海面上昇、異常気象、生態系破壊、京都議定書
    項目 解説
    原因

    人間の排出する二酸化炭素等の温室効果ガスが大気中に蓄積・長期間滞留が原因
    (1)化石燃料消費等による二酸化炭素排出量の増加、(2)森林破壊などによる二酸化炭素吸収源の減少によって温室効果ガスのダブル蓄積が進行

    メカニズム 温室効果ガス(二酸化炭素・メタン・フロン・亜酸化窒素・対流圏オゾン・水蒸気など)→太陽照射で暖められた地表から出る赤外線を吸収→大気圏内に熱エネルギーとして蓄積→この温室効果ガスが増加気温が上昇
    何が問題か (1)問題は3点
    海面上昇、異常気象、生態系破壊。 気温上昇自体ではなく、その結果として起こる問題点の引き金になるということが重要
    (2)ゆっくり進行
    今すぐ深刻な影響が出るのでなく「子孫の時代」での悪影響が懸念
    (3)社会問題でもある
    標高の低い国・農業国や食料難の国・砂漠の多い国→影響が大きく困窮する国も出てくるはず→地球温暖化問題は社会問題でもある
    具体的な問題 (1)海面上昇
    気温上昇→氷河の一部が融けて海に流入海水自体の熱膨張による体積増加→海水面が上昇→沿岸部の水没臨海部水域生態系への影響
    (2)異常気象
    地球レベル気候変動のスピードが速くなると、気候変動の振幅が大きくなる→極端な暑さ寒さのサイクルが発生局地的豪雨・暴風雨・熱波・寒波などの極端な気象現象(異常気象)の発生頻度が増大→生態系や人間活動に大きな被害
    (3)生態系破壊
    平均気温の上昇→陸域の気候区分に変化をもたらす→新たな気候に生態系の適応が追いつけない(特に植物の遷移が問題)→生態系が破壊・大変動→人類にとっては砂漠化・農林業への影響・居住環境の悪化など
    植物遷移の問題 (1)気候変動の速度に追いつけない
    平均気温が変化すると、植物生息域は移動する(2℃上昇で南北に約300km・高さで約300mといわれる)→しかし植生の移動速度は年間約1km程度→地球温暖化による気候変化速度に追いつけず絶滅するおそれがある
    (2)植生移動経路が確保できない
    植物は繁殖によって移動→しかし日本などでは市街地・農地・道路・人工林などが植生を分断植生移動の経路確保が困難となり絶滅する種が多くなる
    同様に動物の生息域も分断されているので、絶滅種が多くなる
    CO2増加防止対策 (1)排出の抑制・削減
    省エネ・熱効率向上による化石燃料消費削減、太陽などの代替エネルギー源への転換の促進
    (2)回収・固定
    森林の拡大、将来的には化学的プロセスの応用による海洋への溶解や、固形炭酸塩への固定も可能性あり
    (3)アルベド・コントロール
    人工的に成層圏に二酸化硫黄の霧を撒く・地球と月と太陽の引力がバランスする宇宙空間に太陽光を遮るものを浮かべることなどで、太陽からの入射エネルギーを削減する方策→他の地球生態系への悪影響というリスクが大き過ぎ実用化は考えられない
    国際的な取組
    ※重要なものには
     
    がついています
    (1)ストックホルムで国連人間環境会議開催
    1972年、ストックホルムで国連人間環境会議が開催され人間環境宣言を採択。国連が環境問題に取り組んだ最初の会議
    (2)ローマクラブ「成長の限界」
    1972年、ローマクラブ報告「成長の限界」で地球温暖化が一般に向けて大きな問題として取り上げ
    (3)モントリオール議定書採択
    1987年、オゾン層破壊物質排出規制に関するモントリオール議定書が採択、10年間でフロン消費量の50%削減に各国が合意
    (4)トロント会議でCO2削減提案
    1988年、トロント会議で2005年までに先進国で二酸化炭素排出量を1988年の実績値より20%削減することを提案
    (5)「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」設立
    1988年11月、公式の政府間の検討の場「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」設立
    (6)ハーグ環境首脳会議
    1989年3月、ハーグ環境首脳会議(オランダ)が開催、温暖化対策の実施のための機構整備について検討
    (7)「ノールトヴェイク宣言」採択
    1989年11月、オランダ・ノールトヴェイクで開催された大気汚染と気候変動に関する閣僚会議で「ノールトヴェイク宣言」採択
    (8)フロン全廃を決議
    1990年6月、モントリオール議定書第2回締約国会議がロンドンで開催、2000年までにフロンの全廃を決議
    (9)第2回世界気候会議
    1990年11月、第2回世界気候会議開催、その後の国際的取り組み方向づけ
    (10)気候変動枠組条約・生物多様性条約採択
    1992年4月、日本において地球環境賢人会議開催、5月には国連本部において気候変動枠組条約が、UNEP本部において生物多様性条約が採択
    (11)地球サミットでリオ宣言・アジェンダ21採択
    1992年6月、ブラジルで地球サミット開催、持続可能な開発実現の諸原則を規定したリオ宣言・地球環境保全のためのアジェンダ21採択
    (12)「アジェンダ21行動計画」
    1993年12月、日本でアジェンダ21の実施のための具体的な行動計画「アジェンダ21行動計画」決定
    (13)京都議定書採択
    1997年12月、京都で「気候変動に関する国際連合枠組条約第3回締約国会議」開催、京都議定書採択
    (14)地球温暖化対策推進大綱
    1998年、日本は京都議定書を達成するため地球温暖化対策推進大綱決定
    京都議定書の内容 先進国全体の温室効果ガスの排出量を、2008年〜2012年の間に、1990年の水準より5%削減を目的として、先進各国の削減目標を設定し、日本は6%削減を世界に約束

  2. オゾン層破壊
    オゾンとは?
     酸素に紫外線が当たるとオゾン(O3)という物資に変化します。オゾンは殺菌・漂白作用があり生物には有害な物質ですが、生物に有害な紫外線を吸収して酸素に戻ることにより、紫外線さえぎる性質があります。
     成層圏の高度20〜30km付近には、酸素分子が紫外線を吸収して生成されたオゾンが層になっています。これがオソン層です。このオゾンの一部は紫外線を吸収して酸素に戻る反応も起こっています。酸素は地上で光合成などで作られて成層圏に供給されます。
     このように、紫外線が介在した酸素とオゾンの相互反応によって、オゾンの量は長い間一定の量を保っていました。
    紫外線について
     紫外線は波長の短い光で、波長の短い光ほど気体の分子に吸収されやすい性質があります。紫外線の中で一番波長が短く強烈なのはUV−Cと呼ばれるものですが、成層圏上層(高度30〜40km)で吸収されてしまい、地上には届きません。2番目に波長の短い紫外線、UV−Bはオゾン層(20〜30km)によって吸収されます。最後にUV−Aと呼ばれる紫外線は地上に届いています。日焼けや天日干しはUV-Aにより起こる現象です。このようにオゾン層はUV−Bを遮る働きをしていますが、UV−Bは強力な紫外線で私たちが日頃浴びている紫外線の100倍から1000倍の悪影響を及ぼします。
    オゾン層破壊
     スプレーや冷蔵庫・クーラーのガスとして使われているフロンは、それ自体は人間に無害であり、また安定した物質です。
     これが大気中に放出されると、一年ほどで対流圏の中に広がります。オゾンは化学的に安定なため、対流圏ではほとんど分解されずに、やがて成層圏まで上がって来ます。

     ここで紫外線によって破壊され、塩素分子を放出します。この塩素分子がオゾンを破壊します。1個の塩素原始が一万個のオゾン分子を破壊するともいわれており、このためオゾン層は確実に薄くなっており、皮膚がんの増加なども報告されています。
    オゾンホール
     南極上空にオゾン層がほとんど消滅した「オゾン層の穴」があることが確認されています。南極の初春には極夜渦とよばれる強い上昇気流が発生し、地上付近のフロンをオゾン層周辺へ吹き上げるためオゾンホールができると考えられています。また、フロンから放出された塩素分子のオゾン破壊を止められるのが窒素酸化物ですが、気温が低いと凍ってしまい反応しなくなります。南極にオゾンホールができるもう1つの理由です。
    オゾン層破壊への対応
     オゾン層を守るには、フロン消費を削減する必要があります。1987年モントリオール議定書では10年間で50%削減を、さらに1990年には2000年までにフロンを全廃することを決議しました。1996年以来フロンは生産されていません。
     しかし、地上で排出されたフロンがオゾン層に到達するのに10年以上かかるとともに、かなりの量のフロンがまだオゾン層に達せず大気中に存在しているといわれています。
     フロンは地上から全廃されましたが、オゾン層破壊はまだ終っていません。いったん小さくなったとされた南極のオゾンホールもまた拡大したりしているようです。


  3. 酸性雨
    酸性雨とは
     酸性雨は、自動車や工場などから排出される窒素酸化物硫黄酸化物が大気中で光化学反応・酸化され硫酸・硝酸といった酸性ガスとなり、pH5.6以下の強酸性の雨となって地上に降り注ぐものです。
     北米では銅精錬所、発電所、工場からの排煙が原因で湖沼で魚類が住めなくなり、カエデなどの樹木の立ち枯れが発生しています。同様にヨーロッパでも排煙により湖沼・地下水などで被害がでています。
     酸性雨は大気汚染問題として深刻な国内的環境問題であるとともに、原因物質が排出源から数千kmも離れた地域に運ばれる越境汚染などから、重大な地球環境問題の一つとなっています。 日本でも中国の工業地帯で排出される硫黄酸化物を原料とした亜硫酸ガスによる酸性雨が問題になっています。

    酸性雨の影響
    ●樹木の衰退
     酸性雨の最も大きな被害は森林の立ち枯れです。特に針葉樹の被害が多いのが特徴です。

     酸性雨によって蝕まれた森林が、寒波や高温、雨不足などをきっかけに突然立ち枯れて大規模に破壊されたりします。
    ●土壌の酸性化
     酸性雨が続くと土壌が酸性化し、土中のアルミニウムが溶出、土壌中の微生物を死滅させ、また樹木の栄養分であるカルシウムを奪い、生育不良・枯死に至ります。
    ●湖沼の酸性化
     酸性雨は湖沼を酸性化し、水棲生物に影響を与えます。pH6ではエビ・カニ・貝が死滅してしまいます。
    ●人体への影響
     気管支炎や肺炎などのほかに、アルツハイマー病は酸性雨によって溶けたアルミニウムが脳に蓄積されるためと言われています。
     1952年に5日間で4000人もの死者を出したロンドン殺人スモッグの時の酸性雨のpHは1.5だったと報告されています。
    ●建造物・文化財の腐食
     大理石や石膏でできている建造物は酸性雨により溶けだし「酸性雨つらら」ができます。建造物や文化財の腐食が問題になっています。


  4. 廃棄物(バーゼル条約)
     1980年代に国際間の有害廃棄物不正輸出取引が相次いだため、国連環境計画(UNEP)を中心にルール作りを検討、有害廃棄物の輸出について許可制事前審査制を導入、不適正な輸出入が行われた場合は政府に引き取りの義務づけなどを設けたバーゼル条約が1989年3月22日にスイスで採択され、92年5月5日に発効しました。いわゆる「有害廃棄物の国境を越えての移動とその処分の管理に関するバーゼル条約」です。
     しかしこの条約は、むしろ有害廃棄物の合法的取引に資するものであると非難されました。
     1994年に、発展途上国、東ヨーロパ及び西ヨーロッパ諸国及びグリーンピースからなる連合が働きかけによる合意が採択され、1998年1月1日にバーゼル禁止令として発効しました。これは、OECD加盟29先進国に対し、全ての非OECD諸国へのあらゆる有害廃棄物の輸出を禁止するものです。
     しかし、バーゼル禁止令にはアメリカ、オーストラリア、カナダなどの諸国及びアメリカ商工会議所や国際商工会議所などの産業界が強く反対しており、バーゼル禁止令を盛り込んだ条約改正には至っていません。なお、日本はバーゼル禁止令には合意したものの、条約改正は批准していません。

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自然環境・生態系

  1. 生物多様性
     かつての自然環境保全は、天然記念物・絶滅危惧種といった、特定の貴重な種の保全に力を傾注し、生態系の保全には重きを置きませんでしたが、様々な多様な生物が生態系を形成している状態を保ってこそ人類も生存していけるという理念のもとに、特定の貴重な生物種のみを保全しようとするのではなく、生物の多様性・生態系をこそ保全しようという考えが国際的に主体になっています。
     我が国も生物多様性国家戦略(参照:こちら)を定めています。ここでは、様々な人間活動・人為的影響により、生物多様性保全上の危機・問題が引き起こされ、それらは原因・結果から3つの危機に大別できるとしており、それぞれに対応策について言及しています。
    分類 危機の内容 対応策
    第1の危機 人間活動・開発が直接的にもたらす種の減少絶滅、生態系破壊・分断・劣化を通じた生息域の縮小・消失
    対象の特性・重要性に応じ、影響を適切に回避・低減するという対応が必要
    すでに消失・劣化した生態系は、その再生・修復を積極的に進めることが必要
    第2の危機 生活様式の変化や人口減少など社会経済変化に伴い、自然に対する人為的働きかけが縮小撤退することによる里地里山等における環境の質の変化、種の減少ないし生息状況の変化 地域の自然的・社会的特性に応じて人為的な管理・利用を行っていくための新たな仕組みの構築、人と自然の関係の再構築という観点に立った対応が必要
    第3の危機 移入種等による生態系の攪乱(近年問題が顕在化) 移入種の影響に関する科学的知見収集を基礎とし、侵入予防・侵入初期段階での発見と対応・定着移入種の駆除管理の各段階に応じた対策を進めることが必要
    特に第2の危機は抽象的でわかりにくいかと思いますが、里山は人間の自然への干渉があって成立している半自然環境であり、田んぼを中心とした水環境には、メダカや水生昆虫、それらを捕食するカエルやヘビなどといった生態系がありました。それが、たとえば圃場整備に伴い水路と田んぼが分断されてメダカが減少するとか、田んぼが放棄され様々な湿地性の生態系が生息したり、やがてそれが乾地化して水生生物や湿地性生物が消滅するといったような変化です。

  2. ビオトープ
     ビオトープは、広義・狭義も含め、その定義がまだ固定化されていません。というより、変遷しているように思います。広くは自然の森からガーデニングの植栽、ベランダのプランターまでをビオトープということもあるようです。ここでは、(財)日本生態系協会HPのビオトープ解説のページでは次のように書かれています。
     ビオトープ」とは、近年ドイツで造られた言葉で、「BIO(ビオ)」が「生きもの」、「TOP(トープ)」が「場所」という意味です。つまり、簡単に言ってしまうならば、「地域の野生の生きものがくらす場所」ということになります。野生の生きものが生活する場所「ビオトープ」には、実にさまざまなタイプがあります。身近な森林や草地、河川や河原、池や湖沼、海や干潟など、その地域にもともといる野生の生きものたちがくらしたり利用したりする、ある程度まとまった場所だと考えれば良いでしょう。
     一方、建設分野で「ビオトープ」という場合は、インフラ整備の一環公園施設や教育施設の一部として整備したもの(ただし、何もなかったところに新たに作る場合、もとからある自然に遊歩道などの手を入れて人間が触れられるようにする場合などいろいろなレベルがある)、自然のあるがままの状態ではなく、人間が利用できるように多少とも人の手が入ったものを言う場合が多く、次のような傾向があるようです。
     ●水辺空間を重視する
     ●特定の種ではなく生態系を保全育成する
     ●遊歩道などを整備して「自然の中の散策」を主目的とする
     ●自然の中で心休まるリラクゼーションを求める
    これらをまとめると、水辺と豊かな生態系を伴った半自然環境を創設・維持し、散策・リラクゼーションを目的に整備するといった一般像が見えてきます。このことから、建設分野におけるビオトープ技術は、生態工学(「自然と人間の相互利益のために生態系をデザインする工学」と定義づけられる)の一分野といえます。
     一方、環境教育の高まり・総合的な学習の導入などに伴い、学校ビオトープが増えています。これは「メダカ池」「トンボ池」など比較的単純な生態系であること、小規模であることが特徴です。

  3. ミティゲーション
     ミティゲーションは、開発の自然環境に対する影響を緩和する措置で、環境影響評価法では「環境保全措置」という言葉で表されています。また、ミティゲーション技術は生態工学の一分野です。すなわち、自然の人間社会の共存を目的に、生態系をデザインする技術です。
     ここでは、環境アセスメントにおけるミティゲーション技術について簡単にふれます。
    調査
     調査におけるキーワードは、エコトープです。エコトープとは、地形、土壌・地質、水環境、これらの上に成立する植生、さらに植生や水環境に依存して生活する動物群集などを要素として構成される、周囲とは明瞭に異なる生態系(類型化された単位空間としての生態系)のことです。エコトープ図は、たとえば植生と地形の組み合わせによるエコトープ単位について描くと、植生分布図と地形分類図をあわせたようなものになります。
    予測評価
     建設事業が生態系に及ぼす影響は、次の4つに整理できます。
      (1)生息地の消失・・・・植生・地形の改変による直接的な生態系破壊
      (2)生息地の分断化・・・・生息地が細切れになり、生存可能最小個体数を割り込んで存続不可能となる。
      (3)生息地の撹乱・・・・光・風・騒音・振動などが周囲から入りやすくなって、生息環境が質的に低下する。
      (4)ロードキル・・・・動物が道路ではねられて死亡する。
    ミティゲーション計画
     ミティゲーションでとられる措置は回避・低減・代償の3つに大別され、これらの組み合わせにより、以下のようなミティゲーション手法がある。
      (1)回避+低減型・・・・回避を主とし、回避で残った生息地の撹乱・分断化などを低減する。
      (2)代償+低減型・・・・代償を主とし、残存させる生態系への影響を低減する。
      (3)回避+代償+低減型・・・・大多数のミティゲーションはこのタイプ。
    このように、ミティゲーションは自然環境保全を体系的工学に基づいて実施する技術であり、一般的な環境アセスメント(事業アセス)に留まらず、戦略的環境アセスメント(事業家される前の計画アセスであり、政策意思決定プロセスの公開と市民参加のもと、自然環境への影響だけでなく政策評価も意味する環境アセスメント)において、環境負荷低減コストを算出し、費用便益評価を行う上で必要な技術となっています。
    また、里山整備・自然公園整備・湿地保全等においてもミティゲーション技術は大いに活用されていくと思われます。

  4. 自然再生推進法
     過去に損なわれた生態系その他の自然環境を取り戻すことを目的として、地域の多様な主体の発意により、国や地方公共団体も参画して、河川、湿原、干潟、里山などの自然環境を保全・再生・創出・維持管理することを求める法律です。

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その他

  1. 土壌汚染対策法
    平成14年に制定・公布され、平成15年2月15日から施行された法律です。
    調査
     (1)有害物質使用特定施設(有害物質の製造、使用又は処理をする水質汚濁防止法の特定施設)であった工場跡地・事業場跡地
     (2)土壌汚染により健康被害の恐れがあると都道府県知事が認め、調査報告命令を出した土地
     について、土壌汚染状況調査を行うこととされています。
    指定区域の指定など
     知事は、土壌汚染が確認された土地については、その区域を指定区域として指定・公示するとともに、指定区域の台帳を調製し、閲覧します。
    健康被害の防止措置
     (1)知事は、汚染土地所有者汚染除去等の措置命令を出せる。土地所有者は汚染原因者除去等の費用を請求できる。
     (2)汚染原因者が明らかな時は、土地所有者の了承のもと、知事は汚染原因者に汚染除去等の措置命令を出せる。
     (3)指定区域内での土地の形質変更は知事に届出を要する。知事は施行方法が基準に適合しないときは変更を命じることができる。
    ====以下は、おそらく試験には出ません。興味のある方だけお読みください====
    以上が法律のあらましですが、特定工場・事業所の閉鎖も、知事の調査命令も、そう頻繁にあるものではありません。
    実は、より重大なのは同法施行に伴う宅地建物取引業法施行令改正のほうです。
    この法律では、宅地建物取引において消費者が不測の損害を被ることを防ぐため、一定の重要な事項について消費者に事前説明を行うことを宅地建物取引業者に義務づけています。この説明事項に、土壌汚染指定区域内に入っているかどうかを加えなければなりません。
    このことは、工場跡地あるいは近接地であれば取引価格が下落することにつながります。このため、土地所有者が積極的に「土壌汚染がないことを証明するための調査」を行うようになってきています。

  2. ダイオキシン
    ダイオキシンは、自然界にはごく微量しか存在しない有機塩素化合物の1つです。特徴を簡単にまとめます。
     ●ダイオキシンの毒性は非常に強いが、即効性ではない。じわじわと毒性を及ぼす。
     ●ベトナム戦争で使われた枯葉剤に混合剤として含まれていた。「ベトちゃんドクちゃん」のような奇形等の原因になったと言われている。
     ●ガン・奇形の原因物質の1つであるとともに、環境ホルモン物質でもある。
     ●塩素を含む有機物を低温800℃以下)で燃やすとダイオキシンが発生する。森林火災などでも発生するとされている。
     ●体内に入るとなかなか排出できないため、体内に蓄積される。
     ●野焼きなどの低温焼却によるダイオキシン発生→川から海へ流出魚に蓄積→人間が食べるという経路が主体。
     ●脂肪に蓄積されやすい→青物の近海魚に多いとともに、母乳を通して赤ちゃんが摂取奇形・アトピーの原因
    対策は、野焼きのような低温焼却をしないこと、塩素を含む有機物(ラップなど)は燃えないゴミとして分別することです。
    なお、「ダイオキシン類対策特別措置法」の規定に基づき、ダイオキシン類による大気の汚染、水質の汚濁(水底の底質の汚染を含む。)及び土壌の汚染に係る環境基準が下表のとおり定められています。
    媒体 基準値
    大気 0.6pg-TEQ/m3以下
    水質 1pg-TEQ/l 以下
    水底の底質 150pg-TEQ/g以下
    土壌 1,000pg-TEQ/g以下

  3. 環境ホルモン
     環境ホルモン(内分泌攪乱化学物質)とは、生物の内分泌機能に影響を及ぼす化学物質です。これを簡単にいえば、体内に入り我々がもつホルモンと同じような働きをしたり、ホルモンの働きをじゃましたりする化学物質です。
     環境ホルモンは、非常に微量で作用し、体内に蓄積するものがあったり(生物濃縮)、母親から子供に移行して次世代に影響すること、他の有害物質のように急性毒性がある訳ではなく子供が大人になってから発現するなど、影響が分かりにくく、因果関係の解明が難しくなっています。
     現在、内分泌撹乱作用が疑われている化学物質は約70物質あります。しかし、我々の身の回りには多くの化学物質が存在しており、影響が不明なものがまだ多いので、さらなる増加は確実です。
     環境ホルモンは、多種類あり、影響を及ぼす機構・作用や体内蓄積の程度・分解されやすさ等は様々で、雄と雌で感受性に違いがあるものもあります。また、細胞レベルで観測した現象と実際の人間への影響の関係、および野生動物におこっている現象が同様に人間にもおこるかどうかについても不明確な部分があります。

  4. ライフサイクルアセスメント
     建造物等社会資本の、計画・調査・設計から施工、維持管理そして廃棄にいたるプロセスをライフサイクルといいますが、ライフサイクルアセスメント(LCA)は、このライフサイクル全般にわたっての環境影響を予測評価し、影響を最小限にとどめようとする技術です。
     たとえば道路を建設するとき、施工や供用が環境に与える影響にとどまらず、それを廃棄する時の環境負荷が少ない工法を選定するとか、あるいは土取場の環境影響、使用する材料の製品製造過程から流通販売過程、さらには資源採取過程からリサイクル過程までを対象にアセスメントを実施します。
     また、この中では、地球環境への配慮(温室効果ガスの排出を抑えるなど)も組み込まれることが一般的です。

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