技術士第二次試験 平成26年度 総合技術監理

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※択一正解は、技術士会の公表正解に関して、臨時掲示板での議論を参考に解説を加えたものです。
 異論や情報などありましたら、掲示板あるいはメールにてお願いします。


択一問題

2-1 次の40問題を解答せよ。(解答欄に1つだけマークすること。)
なお、法令及び制度については、特に記載のあるものを除き、平成26年4月1日時点のものとする。


【経済性管理】

 

I-1-1 問題状況とそこで用いられる問題解決手法に関する次の記述のうち,最も適切なものはどれか。

 

① いくつかの案について,複数の評価基準に対し一対比較行列を作成し,その重要度を数値化して最も望ましい代替案を決めるために,階層化意思決定法を用いる。

② 問題解決のための手順を有向グラフの形式に示し,将来起こり得る局面とその結果を想定し,的確な判断ができるようにするために,親和図を用いる。

③ ある事象に対し,その結果に影響を及ぼすと思われる根元的な原因を列挙し,定性的な因果関係を整理・分類するために,過程決定計画図を用いる。

④ 少人数のグループで問題解決のアイデアを自由奔放に引き出すために,デルファイ法を用いる。

⑤ 同一内容のアイデアに関するアンケ-トを繰り返し行い,回答者の意見を収れんさせていくために,集団情報構造化法を用いる。

 

【正解は①】

②と③、④と⑤が逆。青本p65。

 

 

1-1-2 製品製造における原価企画に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

 

① 製品企画段階では,製品のコンセプトと目標利益を明確にする。

② 製品の定められた目標利益から,それを実現するための目標原価を設定する。

③ 目標原価の設定は,製品の機能を構成する単位としての構造毎,部品毎に行う。

④ 設計段階では,原価低減のための検討を行い,設計変更・修正を繰り返す。

⑤ 製造へ移行した時点で原価企画の活動は終了し,それ以降は原価維持の活動を行う

 

【正解は⑤】

青本p.50。目標原価に見合った設計が終了した後、製造に移行する。しかし、市場の状況や顧客の動向により仕様変更が行われる場合もある。

 


 

I-1-3 ある会社では,ある機械を買取りとするか,レンタルとするかについて検討している。以下に示す条件の場合,買取りによる現在価値に最も近くなる毎年のレンタル費用はどれか。

・考慮する期間:3年

・年利率:10%

・買取りの場合:1年目の初めに1,000万円支払い,3年目の末に200万円で引き取ってもらえる。

・レンタルの場合:3年間,毎年の初めに均等に支払う。

 

① 242万円  ② 267万円  ③ 293万円  ④ 311万円  ⑤ 342万円

 

【正解は④】

買取の現在価値は、1000-(200/1.13)=849.7。レンタルでは、x+(x/1.1)+(x/1.12)。これらが等しいので、x=311付近

 

 

I-1-4 あるプロジェクトの各作業の所要時間と先行作業(その作業を開始する前に完了しているべき作業)が下表のように与えられている。 PERTにより,全体の作業が最短期間で完了するよう作業日程を組むとき,二のプロジェクトに関する次の記述のうち,最も適切なものはどれか。

 

作業名

所要時間

先行作業

A

なし

B

なし

C

A,B

D

A,B

E

D

F

B

 

① 作業Aはクリティカル・パス上にある。

② 作業Bの最遅終終了時刻は6である。

③ 作業Dの最早終了時刻は9である。

④ 作業Eの最早開始時刻は11である。

⑤ 作業Fのトータル・フロートは2である。

 

【正解は③】

①クリティカルパスはB→Cの12日間。②は5。③はB+D=9。④はB+D+E=10。⑤はB→Fが5+6=11なので、B→Cその差がトータルフロートで1。図を書くとよい。

 


 

I-1-5 需要変動に対する生産計画の調整には,生産能力調整と需要平滑化がある。次の(ア)~(オ)のうち,生産能力調整に該当するものの数はどれか。

 

(ア)生産率の調整

(イ)補完製品開発による調整

(ウ)在庫水準の調整

(エ)外注対応による調整

(オ)労働力水準の調整

 

 ① 1  ② 2  ③ 3  ④ 4  ⑤ 5

 

【正解は④】

青本p.26。ア・ウ・エ・オが該当する。

 

 

I-1-6 製品安全については「開発・設計段階」,「生産段階」,「販売・サービス段階」それぞれで検討するべきものがある。次の(ア)~(力)のトラブルと,その予防措置を行う段階の組合せとして最も適切なものはどれか。

 

(ア)製品が使われる環境の検討が十分でなかったため一部ユーザの機器に故障が発生した。

(イ)使用部品が設計規格から外れたため機器が作動不良となった。

(ウ)倉庫に保管してある部品を使用したところ新しい物と古くて性能劣化した物が混在していた。そのため不良部品を組み込んだ製品が市場に出荷されてしまった。

(エ)部品の交換方法が取扱説明書に示されていなかったため,誤って取り付けたことによる機器故障が発生した。

(オ)機器の使用中に部品の劣化が進行し,人命に関わる事故が発生した。

(力)機器点検中,作業者が怪我をした。調べたところ,触れると危険な部位に注意表示がなく,マニュアルにも記載されていなかった。

 

   開発・設計段階    生産段階     販売・サービス段階

 ①  (ア),(イ)    (エ),(オ)      (ウ),(力)

 ②  (ア),(オ)    (イ),(ウ)      (エ),(力)

 ③  (イ),(力)    (ア),(ウ)      (エ),(オ)

 ④  (イ),(オ)    (ア),(力)      (ウ),(エ)

 ⑤  (ア),(ウ)    (イ),(オ)      (エ),(力)

 

【正解は②】

エ、カはサービス段階、オは設計段階。

I-1-7 進行管理に関する次の(ア)~(エ)の記述のうち,適切なものの数はどれか

  

(ア)「作業手配」は,作業準備と作業割当てを行い,作業指示を与えることである。

(イ)「進度管理」は・日程計画に基づいた作業の進捗を調査して判定し,遅れが生じている場合は対策を講じるものである。

(ウ)「余力管理」の目的は,作業者や設備の能力と負荷を調整して待ち時間を減らし,過負荷を防止することにある。

(エ)「現品管理」の目的は,現状の完成品数量を把握し生産日程を維持することにある。

 

① 0  ② 1  ③ 2 ④ 3 ⑤ 4

 

【正解は④】

青本p.43。エは完成品ではなく仕掛品。

 

 

I-1-8 次の(ア)~(エ)に示す設備保全の管理方式と,(A)~(D)に示す生産上の事例の組合せとして最も適切なものはどれか。

  

設備保全の管理方式 (ア)日常保全

(イ)定期保全

(ウ)予知保全

(エ)保全予防

生産上の事例    (A)毎始業時,設備の作動を点検し,給油を行った後に本作業に入る。

(B)設備の劣化傾向を診断技術によって管理し,保全時期や修理方法を決める。

(C)設備の故障データに基づいて一定運転時間ごとに部品の交換を行う。

(D)使用中の設備に故障が多発したため,設備を新しく計画する段階で故障対策やメンテナンス性の改善策を適用した設備の導入を図る。

 

  ア イ ウ エ

① A C B D

② A C D B

③ A D C B

④ C A B D

⑤ C B D A

 

【正解は①】

青本p.57参照。

 


 

【人的資源管理】

 

I-1-9 労使関係に関する次の(ア)~(オ)の記述のうち,労働組合法上,使用者が行ってはいけない不当労働行為に該当するものの数はどれか。

 

(ア)労働者が労働組合を結成しようとしたことを理由に解雇すること。

(イ)労働者が労働組合に加入しないことを雇用条件とすること。

(ウ)雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由なく拒むこと。

(エ)労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。

(オ)労働者が労働委員会に対し不当労働行為の申立てをしたことを理由に解雇すること。

 

 ① 1  ② 2  ③ 3 ④ 4  ⑤ 5

 

【正解は⑤】

エがわかりにくいが、組織運営のため使用者から経費援助を受ける労働組合は、労組法上の労働組合としては認められないこととなっている。

 

 

I-1-10 職務設計における「5つの中核的職務特性」に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

 

① 従業員はその仕事を遂行するために活用できる技能率知識が多様であればあるほど,その仕事を有意義と感じる。

② 従業員はその仕事を遂行した結果として得られる給与や賞与などの物質的達成感が高ければ高いほど,その仕事を有意義と感じる。

③ 従業員は自分の仕事が外部の人々にどれだけ影響を及ぼすか,すなわち,他の人々の物理的あるいは心理的幸福にどれだけ役立っているかを知覚すればするほど,その仕事を有意義と感じる。

④ 従業員が仕事のスケジュールや実施手順を決定する際にどれだけ自由な裁量が与えられているか,この自由裁量が大きければ大きいほどその仕事の成否への責任感が高まる。

⑤ 従業員は自分の仕事の成果について明確で直接的な情報を受け取ることができるフィードバックメカニズムが業務内に装備されていることで,実際の仕事の結果を知覚し,動機づけが高まる。

 

【正解は②】

青本p.80。5つの中核的職務特性のうち、①多様性、③有意味性、④自律性、⑤フィードバックが書かれている。なお②仕事の一貫性がなく、かわりに選択肢②が記されている。

 


 

I-1-11 次の(ア)~(ウ)に示す教育訓練の目的と,(A)~(C)に示す教育訓練技法の組合せとして,最も適切なものはどれか。

 

 教育訓練の目的 (ア)職場の同僚と協力する姿勢や対人能力の向上

(イ)問題解決能力の養成

(ウ)創造性の開発 

 教育訓練技法  (A)ロールプレイング

(B)ケース・スタディ

(C)ブレイン・ストーミング

 

  ア イ ウ

① A B C

② A C B

③ B A C

④ B C A

⑤ C A B

 

【正解は①】

A~Cそれぞれがどのようなものか知っていれば感覚的に答えられる。

 

 

I-1-12 QCサークルに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

 

① QCサークル活動の基本理念を実現するためには,サークルを固定的な編成で長期にわたって運営することが望ましい。

② QCサークル活動は自主的な活動であり,経営者による支援や評価は避ける。

③ QCサークル活動を行う上での基本理念は,人間の能力を発揮し無限の可能性を引き出す,人間性を尊重して働きがいのある明るい職場をつくる,組織の体質改善・発展に寄与する,である。

④ QCサークル活動は従業員の動機づけや自己表現に貢献する現場中心の活動であり,外部の専門家による支援を受けることは避けるべきである。

⑤ QCサークル活動は,品質管理の考え方や手法の改善を主目的に業務の一環として行うTQM,

ZD運動などの小集団活動とは,目的や性格が大きく異なる。

 

【正解は③】

青本p.90参照。①は形骸化等、様々な問題が起こってくる。②は積極的に支援をすべき。④は外部の専門家による支援を積極的に受けるべき。⑤はZD運動もQCサークルと同じ小集団活動であり、TQMなどの全社的活動とともに行われるべき。

 

I-1-13 会社の代表的な組織形態である,職能別組織,事業部制組織,マトリックス組織について,それぞれの長所を以下に示す。このうち,事業部制組織の長所として最も適切なものはどれか。

 

① 企業内のさまざまな活動が統一的に管理されているので,重複が排除できる。

② 人的資源の共有化を図り,柔軟に問題に対処できる。

③ 情報伝達チャンネルが多元化するため,情報共有が促進され,情報処理の迅速化が図れる。

④ 業務的決定の権限が分権化されているので,意思決定が迅速にできる。

⑤ 専門的な知識の蓄積やスペシャリストの育成ができる。

 

【正解は④】

分権化は事業部制度組織の大きな特徴。

 

 

I-1-14 リーダーの基本行動スタイルは,指示的(課題指向的)行動と協労的(関係指向的)行動の組合せにより,高指示低協労,高指示高協労,高協労低指示,低協労低指示の4つに分類されることがある。このうち,高協労低指示スタイルのリーダーが部下によってどのように認知されるかを示す記述として最も適切なものはどれか。

 

① 目標達成の方法を明確に熟知していると受け取られ,頼りがいがあると部下に思われる。

② 目標の設定,仕事の組織化というグループのニーズを満たし,高度な社会連帯的支持をも与えてくれていると部下に思われる。

③ 部下に暗黙の信頼を寄せるとともに,彼らの目標達成を促進することに意を用いていると部下に思われる。

④ 求められているのに,必要な仕事の組織化や社会連帯的支持の堤供を怠けていると部下に思われる。

⑤ 必要以上に仕事の指図に熱心で,ときに対人関係が誠意のない上辺だけのものと部下に思われる。

 

【正解は③】

高協労低指示とは、あれこれ指示しないが支援はしてくれる(考えを合わせて決められるよう仕向ける)。①と⑤は高指示低協労、②は高指示高協労、④は低協労低指示。

 


 

I-1-15 職場の労働条件に関する次の記述のうち,労働基準法の規定上,最も適切なものはどれか。

 

① 従業員の採用時に,労働契約の期間や賃金,労働時間について口頭で明示した。

② 会社の都合で従業員を休業させざるを得なかったので,その間,当該従業員の平均賃金の60%の手当を支払った。

③ 休憩時間を兼ねた昼休みの電話当番を月1回設定している。

④ 休日に出勤させたが,その代償として事後に代休を与えたので,休日労働分の割増手当は支払わなかった。

⑤ 1日の労働時間が7時間なので,休憩時間を30分設けている。

 

【正解は②】

①は文書でないといけない。③電話番は休憩を兼ねられない。④割増賃金分は相殺できない。⑤6時間を超え8時間までの労働時間なら休憩時間45分(8時間を超える場合は60分)。

 

 

I-1-16 男女雇用機会均等法(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)において,職場における男女の均等取扱い等に関して,禁止される行為と必ずしも禁止されない行為がある。次のうち,必ずしも禁止されない行為はどれか。

 

① 労働者の採用に当たって,営業職は男性,事務職は女性に限定して募集すること。

② 労働者の採用に当たって,特別な事由なく労働者の身長,体重又は体力を要件とすること。

③ 労働者の昇進に当たって,特別な事由なく転勤の経験があることを要件とすること。

④ 配置のために必要な資格試験の受験を,女性労働者のみに奨励すること。

⑤ 厚生年金の支給開始年齢に合わせて,男女で異なる定年を定めること。

 

【正解は④】

厚労省HPでは、例として、労動者の雇用に関する状況を分析した結果、勤続年数が長い女性労働者が多数勤務しているにもかかわらず、管理職になっている女性が男性と比べて極めて少数であるというような場合に記述のようなことをすることが考えられるとある。

 


 

【情報管理】

 

I-1-17 個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律)が定める「個人情報」に関する次の記述のうち,最も適切なものはどれか。ただし,いずれの項目についても他の情報と容易に照合できないことを前提とする。

 

① 新製品の発表会場において,来場者を特定できるように顔を正面からビデオカメラで撮影した映像情報は個人情報に該当しない。

② 購入商品に関する顧客からのクレームを,その顧客の氏名と連絡先を含めて録音した音声情報は個人情報に該当しない。

③ 顧客IDを付け替えることで特定の個人と結びつかないようにした顧客ID付きPOSデータの情報を集計した統計データで,取引先企業から提供されたものは個人情報に該当しない。

④ メールアドレス情報は,その内容から氏名と所属が識別できるものであっても個人情報に該当しない。

⑤ インターネット上で公開されている企業代表者の氏名は個人情報に該当しない。

 

【正解は③】

個人と結びつかないようにしているので個人情報にならない。

 

 

I-1-18 特許制度に関する次の記述のうち,最も適切なものはどれか。

 

① 日本では先に発明した人に権利が生じる先発明主義を取っている。

② ビジネス上のアイデアをコンピュータや既存のネットサークを利用して実現する情報処理装置は,特許制度の保護対象となり得る。

③ ソフトウェアは著作権で保護されることになっており,特許制度の保護対象とはなっていない。

④ 出願された特許は出願公開後,定められた期間が経過すると自動的に実体審査が開始される。

⑤ 実体審査・特許査定を経て特許が設定登録され,特許公報に掲載された後の特許権に対しては無効審判を請求できない。

 

【正解は②】

①は最初に特許出願を行った者に特許権を与える先願主義。③は保護対象となっている。④実体審査は出願後3年以内に出願審査請求を行うことによって行われる。⑤無効審判請求はできる。

 


 

I-1-19 ナレッジ・マネジメントに関する次の記述のうち,最も適切なものはどれか。

 

① ひらめき,経験,人脈など個人に帰属している知識や知恵を個人知といい,製品や業務プロセスなどの中に含まれるナレッジで,明確に言語化又は形式化されたものを埋設知という。

② ナレッジは他者に理解されて初めて有効に活用されるものであることから,形式知へ変換できない暗黙知はすべて管理の対象から外される。

③ ナレッジ・マネジメントでは,情報システム内に電子的に蓄積された情報としてのナレッジのみを管理対象とする。

④ ナレッジ・マネジメントは組織が一体となって取り組むべきものであり,各組織の長が中心となって構築していくことが重要である。よって,専門の担当者や推進チームは置くべきではない。

⑤ ナレッジ・マネジメントを有効に機能させるためには,組織構成員の積極的参加を促す仕組みを工夫することが重要であり,一例として人事考課管理との連動などが挙げられる。

 

【正解は⑤】

①は形式知、②は管理対象から外してはいけない。③はそのような限定は行うべきではない。④は専門チームを積極的に置くべきである。

 

 

I-1-20 電子証明書及び電子署名に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

 

① 電子証明書は電子入札や商業・法人登記,特許のインターネット出願などに利用されている。

② 電子証明書の発行や有効性に関する情報提供などを行う機関を認証局という。

③ 電子証明書の発行を受けた者は,自らその電子証明書を有効期間が満了する前に失効させることはできない。

④ 電子データの受信者は,送られてきた電子データの作成者が誰であるかを,電子証明書と電子署名を用いて確認できる。

⑤ 電子データの受信者は,送られてきた電子データが改ざんされていないことを,電子署名を用いて確認できる。

 

【正解は③】

できなくはない。

 


 

I-1-21 標的型攻撃メールに関する次の記述のうち,最も適切なものはどれか。なお,ドメイン名とはメールアドレスの@より右の文字列を指す。

 

① 標的型攻撃メールとは特定のプログラムを狙ったサイバー攻撃のメールである。

② 標的型攻撃メールにはファイルが必ず添付されている。

③ 標的型攻撃メールの添付ファイルに仕掛けられたウィルスが既知であれば,ウィルス対策ソフトのウィルス定義ファイルを最新にしておくことで検知可能である。

④ 送信者のメールアドレスが自分と同じ組織のドメイン名であれば,イントラネット内の送受信であるので安全なメールである。

⑤ 以前,安全にメールの送受信を行った実績のあるメールアドレスからのメールは安全なメールである。

 

【正解は③】

①は対象の組織から重要な情報を盗むことなどを目的として、組織の担当者が業務に関係するメールだと信じて開封してしまうように巧妙に作り込まれたウィルス付きのメールのことで、②の添付ファイルがなくても、リンクをクリックしただけで感染するものもある。④や⑤はなりすましがあるので安全とは限らない。

 

 

I-1-22 次の記述の,( )に入る語句の組み合わせとして最も適切なものはどれか。

JIS Q 27001:2006において情報セキュリティは「情報の(ア),(イ)及び(ウ)を維持すること」と定義されている。

 

   ア   イ   ウ

① 機密性 信憑性 完全性

② 機密性 完全性 可用性

③ 機密性 便益性 可用性

④ 信憑性 完全性 便益性

⑤ 信憑性 便益性 可用性

 

【正解は②】

たとえばhttp://kikakurui.com/q/Q27001-2014-01.html

 


 

I-1-23 緊急時における情報収集に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

 

① 緊急事態は早期発見が困難な場合もあると考えるべきである。

② 緊急事態が発生した場合には通常業務と異なる状況において活動することになるので,情報管理を行う前提も通常業務と異なると考えるべきである。

③ 緊急事態は頻繁に起こるものではないため通常ではあり得ない行動をとってしまうことから,情報収集手段は通常の情報収集方法以外に頼ってはならない。

④ 緊急事態に備え必要となる情報の種類や内容について,具体的に事前検討しておくことは有効である。

⑤ 緊急事態の対象として自然災害のみを考えてはならない。

 

【正解は③】

緊急事態は通常の情報収集方法が使えないことがあるので柔軟に考えなければならない。

 

 

I-1-24 ファイルの種類を示す次の(ア)~(オ)の拡張子のうち,電子メールの添付ファイルとしてウィルスやその他の悪意のあるソフトウェアによって使用される可能性のある拡張子の数はいくつか。

 

(ア)doc ‥‥‥‥‥「ワープロソフトのファイル」を表す。

(イ)exe ‥‥‥‥‥「実行プログラムのファイル」を表す。

(ウ)pdf ‥‥‥‥‥「PDF形式のファイル」を表す。

(エ)xls ‥‥‥‥‥「表計算ソフトのファイル」を表す。

(オ)zip ‥‥‥‥‥「圧縮されたファイル」を表す。

 

① 1 ② 2 ③ 3 ④ 4 ⑤ 5

 

【正解は⑤】

どの形式も添付ファイルである限り可能性はある。

 


 

【安全管理】

 

I-1-25 労働安全衛生法令の規定に関する次の記述のうち,最も適切なものはどれか。

 

① 事業者は,定められた規模の事業場ごとに,都道府県労働局長の免許を受けた者のうちから,総括安全衛生管理者を選任しなければならない。

② 事業者は,労働者を雇い入れたときは,事業場のすべての業務に関する安全又は衛生のための教育を行わなければならない。

③ 事業者は,定められた業種及び規模の事業場ごとに事業場の労働災害防止対策を実行する組織として,安全衛生委員会を設けなければならない。

④ 事業者は,労働災害発生の急迫した危険があるときは,直ちにその旨を労働基準監督署に通報しなければならない。

⑤ 事業者は,定められた業種及び規模の事業場ごとに安全管理者を選任し,その者に法令で定められた事項のうち,安全に係る技術的事項を管理させなければならない。

 

【正解は⑤】

①は「都道府県労働局長の免許を受けた者のうちから」、②は「すべての業務」、③は「実行」、④は発生前の通報である点が、いずれも間違い。

 

 

I-1-26 人と機械が協調して作業を行うようなシステムにおける安全確認システム(インターロック)に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

 

① 人や機械が動けばぶつかる可能性が生じるため,隔離するか,機械を停止するのが最も納得性の高い安全である。

② 安全を確認して機械の運転を行うためには,センサなどの工学的手段に危険側障害が生じていないことを証明しなければならない。

③ 安全確認型インターロックでは,危険状態のみならず,センサの故障で安全が確認できないときも機械が停止する。

④ 危険検出型インターロックでは,危険の情報をエネルギーとして抽出し,積極的なブレーキ動作に結びつける。

⑤ 安全確認型の安全装置の故障が原因となる事故は繰り返されており,危険検出型に交換していくことが重要である。

 

【正解は⑤】

青本P.155。危険検出型と安全検出型が逆である。

 


 

I-1-27 年間の平均在籍従業員1,400人,1人当たりの年間平均就業時間1,800時間のA事業所で,2013年の事故の発生件数は2件であった。この2件の事故合計で,従業員3名がそれぞれ200日,50日,25日休業(ともに一時労働不能)した。A事業所の2013年の強度率に最も近い値はどれか。ただし,一時労働不能の損失日数は休業日数に300/365を乗じた日数とする。

 

① 0.09  ② 0.11 ③ 1.19 ④ 2.14 ⑤ 89.69

 

【正解は①】

((200+50+25)×(300/360)/(1400×1800))×1000=0.0909

 

 

I-1-28 次の(ア)~(エ)の記述は,(A)~(C)に示すいずれかのシステムの高信頼化に関する手法・概念の説明である。その組合せとして最も適切なものはどれか。

 

(ア)異常が放置され一部が故障に至るような場合でも,システムヘの要求機能発揮を可能にする。

(イ)信頼性の高い部品の使用などにより,構成要素の故障が発生しないようにする。

(ウ)故障が発生しても,機能の一部を保持して何とか稼働を続ける。

(エ)冗長性を組み込むことによって故障の影響を自動的に防ぎ,システムとしての正常な機能を維持する。

 

 システムの高信頼化に関する手法・概念

  (A)フォールトトレランス

  (B)フェールソフト

  (C)フォールトアボイダンス

 

  ア イ ウ エ

① A B B C

② B A C B

③ C B A A

④ A C B A

⑤ B C A C

 

【正解は④】

青p.154。アボイダンスは「壊れない」、トレランスは「ちゃんと動く」、ソフトは「なんとか動く」。

 


 

I-1-29 社会的受容とリスク認知に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

 

① 社会的受容は、対象となる事象や科学技術の持つ正負両面の効用を勘案して下される合理的な選択という面を持ち、時代が変わっても変わることはない。

② リスクコミュニケーションを行う中で技術者が行うべきことは,リスクに関する正確な情報を伝え,社会が判断できる材料を提供することである。

③ 社会的受容を向上するために,マスコミを利用した広報が行われることがある。

④ リスク認知には様々なバイアスの影響があり,例えば,経験した二とのないリスクに対して,リスクを過大に,若しくは過小に評価して,正確なリスク認知が得られない可能性がある。

⑤ リスク情報は,様々なメディアを通じて個人や社会に到達した段階で無視や排除によるフィルタリングの過程を経ることになる。

 

【正解は①】

青本p.141。「社会的受容は正負両面の効用を勘案して下される合理的な選択という面ばかりでなく、時代や価値観の流れの中で変動する社会心理学的な現象であり、一定不変なものではない」

 

 

I-1-30 危機管理マニュアルの作成に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

 

① マニュアルに実効性を持たせるために,活動項目を明確に記載する。

② マニュアルの内容は,他部署の活動との関連が把握しやすいようにする。

③ マニュアルの前提となっている想定リスクを明確にする。

④ 緊急時に柔軟に対応するために,各社員の役割分担は事前に決めないようにする。

⑤ マニュアルは,訓練時に得られた経験を取り込んで更新する。

 

【正解は④】

青本p.156。危機管理マニュアルの重要点は、(1)危機毎の時系列を作成する、(2)役割分担を明確に決める、(3)復旧対策をマニュアル化するという3点。

 


 

I-1-31 システム安全工学手法に関する次の記述が表している手法として,最も適切なものはどれか。

 

 「機能性の立場から複雑なシステムを解析するのに適しており,複合故障も検討できる。また,システム故障の原因となる人間のエラーと環境条件の関係も有効に表現できるという長所があるが,多くの人手と時間か必要で,時間経過に関係する事象の展開が困難である。」

 

① フォールトツリー分析

② THERP

③ HAZOP

④ FMEA

⑤ チェックリスト方式

 

【正解は①】

青本p.161の表5-5からほぼそのまま引用。

 

 


 

I-1-32 可燃性液体の漏洩事故の最終事象の形態について,大規模火災の発生確率を下図のイベントツリー分析により計算した確率をP1とし,漏洩検知器の不具合により早期漏洩検知の失敗の確率が10倍となったときの大規模火災の発生確率をP2としたとき,P2/P1の比に最も近い値はどれか。

 

 

① 1  ② 2 ③ 5 ④ 10 ⑤ 20

 

【正解は②】

0.9999→9999、0.0001→1として、同じ確率を掛ける部分をのぞいて考えると、P1は9999×0.001=9.999プラス1で10.999、P2は999×0.001=9.99プラス10で19.99だからP2/P1=2

 


 

【社会環境管理】

 

Ⅰ-1-33 循環型社会形成のための施策に関する次の(ア)~(オ)の記述のうち、適切なものの数はどれか。

 

(ア)循環型社会形成推進基本法では、 i) 発生抑制、 ⅱ) 再使用、 ⅲ) 再生利用、 ⅳ) 熱回収、 v) 適正処分といった5段階の優先順位に基づき廃棄物処理やリサイクルを行うよう明記している。

(イ)循環型社会形成推進基本法では、循環型社会の形成に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、循環型社会の形成に関する基本的な計画の作成を政府に義務付けている。

(ウ)循環型社会形成推進基本法では、循環型社会の形成に向け、国、地方公共団体、事業者のそれぞれの責務を明確化しているが、国民の責務については規定していない。

(エ)廃棄物の処理及び清掃に関する法律では、廃棄物を大きく一般廃棄物と産業廃棄物の2つに区別している。

(オ)廃棄物の処理及び清掃に関する法律では、オフィスや飲食店から発生する事業系ごみはすべて産業廃棄物に分類される。

 

① 0  ② 1  ③ 2  ④ 3  ⑤ 4

 

【正解は④】

ウは国の責務を規定しているので間違い。またオは法律で定める産廃の種類以外の廃棄物(たとえばオフィスの紙くずやレストランの生ごみ)は事業系一般廃棄物となる。

 

 

Ⅰ-1-34 LCA (ライフサイクルアセスメント)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

 

① LCAの手法の1つとして、企業全体で環境に与える負荷を物量値で測定・把握する手法がある。

② ISO及びJISの規格では、LCAは大きく分けると目的と調査範囲の設定インベントリ分析、影響評価、結果の解釈の4つの要素から構成されている。

③ LCAの手法としては、産業連関法と積み上げ法の2つの方法が広く用いられているが、 ISO及びJISの規格は、基本的に産業連関法によっている。

④ LCAはモノである製品を対象として評価する手法であり、サービスには適用できない。

⑤ LCAで対象とする環境負荷としては熱排出量が用いられることが最も多い。

 

【正解は②】

青本p.200~201。①はエコバランス。③は積み上げ法。④はサービスにも適用できる。⑤はCO2。

 


 

Ⅰ-1-35 環境に関する用語とその説明に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

 

① EPR:生産者がその生産した製品が使用され、廃棄された後においても、当該製品の適正なリサイクルや処分について一定の責任を負うという考え方である。

② ESCO事業:ビルや工場の二酸化炭素排出量の削減に必要な、技術・設備・人材・資金などを包括的に提供するサービスである。

③ PPP:廃棄物を排出する事業者は、事業活動によって生じた産業廃棄物を自らの責任において処理しなければならないという考え方の基となった原則である。

④ PRTR:有害性のある化学物質の環境への排出量及び廃棄物に含まれている移動量を登録して公表する仕組みである。

⑤ SRI:従来からの株式投資の尺度である企業の収益力、成長性等の判断に加え、各企業の人的資源への配慮、環境への配慮、利害関係者への配慮などの取組を評価し、投資選定を行う投資行動である。

 

【正解は②】

ESCO事業は省エネに関する包括的なサービス提供事業である。

 

 

Ⅰ-1-36 東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染に対処するため、いわゆる放射性物質汚染対処特措法(以下「法」という。)に基づいて実施されている除染に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

 

① 除染とは、生活する空間において受ける放射線の量を減らすために、放射性物質を取り除いたり、土で覆ったりすることである。

② 生活空間の放射線量は時間とともに減少するが、少しでも早く放射線量を減らすためには除染が必要である。

③ 除染特別地域とは、国が除染の計画を策定し、除染事業を進める地域として、法に基づき指定されている地域である。

④ 汚染状況重点調査地域とは、年間追加被ばく線量が一定値以上の地域を対象に、法に基づき指定されている地域である。

⑤ 健康の保護を第一に考慮し除染は家の中を優先して行われている。

 

【正解は⑤】

汚染濃度が高く、身に触れる確率が高い場所の除染が優先。

 


 

Ⅰ-1-37 環境基準に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

 

① 環境基本法における環境基準は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について定められている。

② 環境基本法における環境基準は、人の健康の保護及び生態系の保全を目標としている。

③ 環境基本法における環境基準は、維持されることが望ましい基準であり、行政上の政策目標である。

④ 環境基本法における環境基準は、常に新しい科学的知見の収集により、適切な科学的判断を加え、必要な改定をすることが求められる。

⑤ 環境基本法に基づく以外の環境基準として、ダイオキシン類の環境基準がある。

 

【正解は②】

人の健康の保護と生活環境の保全。

 

 

Ⅰ-1-38 環境影響評価法に基づいて行われる手続きについて、第二種事業における実施手順を時系列的に並べたときに、順序の最も適切なものはどれか。

 

① スコーピング→環境影響評価準備書の作成→スクリーニング→調査・予測等の実施→環境影響評価書の作成→事後調査

② スコーピング→スクリーニング→環境影響評価準備書の作成→調査・予測等の実施→環境影響評価書の作成→事後調査

③ スコーピング→スクリーニング→調査・予測等の実施→環境影響評価準備書の作成→環境影響評価書の作成→事後調査

④ スクリーニング→スコーピング→調査・予測等の実施→環境影響評価準備書の作成→環境影響評価書の作成→事後調査

⑤ スクリーニング→スコーピング→環境影響評価準備書の作成→調査・予測等の実施→環境影響評価書の作成→事後調査

 

【正解は④】

スクリーニングで実施するかどうかを決め、スコーピングで計画書。調査予測結果を準備書→評価書の順に報告して最後に事後調査。

 


 

Ⅰ-1-39 環境の経済的価値の評価手法の内容と特徴を整理した下表のA~E欄に入るべき用語・説明として、最も適切なものはどれか。

 

 

① A:仮想評価法

② B:ヘドニック法

③ C:複数の代替案を回答者に示して、その好ましさを尋ねることで評価

④ D:環境財を市場財で置換するときの費用をもとに評価の

⑤ E:適用範囲が主としてレクリエーション閣係するものに限られる

 

【正解は⑤】

A:ヘドニック法

B:仮想評価法

C:環境財を市場財で置換

D:複数の代替案を示し好ましさを尋ねる

 


 

Ⅰ-1-40 我が国の温室効果ガス排出量のうち、エネルギー起源二酸化度実排出量の近年の推移を、エネルギー転換部門、産業部門、業務その他部門、家庭部門、運輸部門の5つの部門に区分して示した(ア)、 (イ)、 (ウ)に該当する部門の組み合わせとして正しいものはどれか。

 

① (ア)産業部門      (イ)家庭部門      (ウ)業務その他部門

② (ア)産業部門      (イ)運輸部門      (ウ)家庭部門

③ (ア)運輸部門      (イ)エネルギー転換部門 (ウ)家庭部門

④ (ア)運輸部門      (イ)業務その他部門   (ウ)エネルギー転換部門

⑤ (ア)エネルギー転換部門 (イ)産業部門      (ウ)業務その他部門

 

【正解は②】

産業が最大、運輸はゆるやかに減、家庭が増えていることを覚えていればよい。

 


記述問題

1-2 次の問題について解答せよ。

 21世紀を展望するとき、人口減少が我が国の将来に大きな影響を及ぼす問題であることは論を待たない。我が国の人口減少問題は入口構造の変化を伴い、それらが直接、間接的に社会・経済に大きな影響をもたらす。
 既設の施設や建造物、設備の「更新」を考える際、更新後の寿命が長期(例えば30年とか、50年とか)にわたるならば、このような人口減少問題がもたらす社会・経済へのさまざまな影響を総合的に検討し、最適な対応策を提案することは、総合技術監理部門の技術士に要求される重要な業務の1つとなろう。
 そこで「人口減少問題がもたらす社会・経済への影響」に対する考察を踏まえ、あなたが対象とする施設、建造物又は設備の更新プロジェクトあるいは更新事業を選び、その更新プロジェクトの策定段階(又はその更新にかかわる設計段階)において配慮すべき社会・経済への影響及びそれに対する「対応策」について、総合技術監理の視点から以下の(1)~(3)の問いに答えよ。なお、ここでいう総合技術監理の視点とは「経済性管理」、「安全管理」、「人的資源管理」、「情報管理」、「社会環境管理」の5つの管理分野からの視点をいう。
(問いごとに答案用紙を替えて、それぞれ指示された枚数以内にまとめること。なお、書かれた論文(あなたの解答)を評価する際、記述の論理的なつながり、工夫をこらした対応策の提案、そして論文全体としてのまとまる、を特に重視する。)
注)人口構造の変化とは、日本全体あるいは特定地坊における人口の厳守お、少子高齢化、人口ピラミッドの変化、若年齢層・生産年齢層・高年齢層の人口の変化などを指す。図1(日本の総人口及び年齢3区分別人口の推移)を参照されたい。

(1) あなたが取り上げる更新プロジェク卜又は更新事業の計画(以下、「更新計画」という。) の内容を次の①、②に沿って設定し、答案用紙1枚以内に説明せよ。(2)以降の問いの解答に必要な設定や背景があれば、それも記すこと。なお、あなたの立場は、「更新計画」の総括責任者あるいはそれと一体となって「更新計画」を推進する総合技術監理部門の技術士であり、「更新計画」のリスクを他に転嫁できないものとする。
① 更新に際し人口減少が及ぼす影響が大きいと考えられる「更新計画」の対象を、表1に示したものを参考に1つ選べ。なお、表1は例示であり、この中から選んでもよいし、それ以外のものを選定しでもよい。
② 選定した対象の「更新計画」について、その具体的な内容を設定せよ。設定に当たっては、 対象の機能、規模、特徴のほか、その「更新計画」がおかれている背景状況についても記述すること。

表1 更新が必要となる施設、建造物の例
水道網、電力送電網、通信網、鉄道路線、自動車専用道路網、空港、港湾、橋梁、河川堰、ニュータウン、駅舎(駅ピル)、市町村役場、図書館、
公民館、学校、病院、体育館、博物館、美術館、映画館、ホテル、複合商業施設、集合住宅、発電所、製鉄所、化学プラント、工場
注)ただし、これらの施設、建造物の中の各種設備も対象とできる。


(2) 我が国の人口減少又は人口構造の変化が、直接、間接に社会・経済へ及ぼす可能性がある影響の例を表2に示す。(1)であなたが設定した「更新計画」の策定段階(又はその更新にかかわる設計段階)において配慮すべきこのような「人口減少が及ぼす社会・経済への影響」(以下、これを単に「社会影響」という。)について、次の①、②に沿って答案用紙1枚以内に説明せよ。
① 表2を参考にして、 以下で議論する「社会影響」を2つ選べ。なお、表2は例示であり、この中から選んでもよいし、それ以外の社会・経済への影響を選んでもよい。
② 各々の「社会影響」に対し、人口減少や人口構造の変化がどのように影響を与えるのか、その理由及び想定される影響の程度を、簡潔に説明せよ。また、その「社会影響」が(1)で設定した「更新計画」とどのように関わるのか、簡単に説明せよ。

表2 人口減少又は人口構造の変化が社会・経済へ及ぼす可能性がある影響の例
分野 影響
1.地域や都市に与える影響 ・人口移動の減少傾向 ・大都市圏での都心回帰
・地方の若年層の地元定者化傾向
・人口減少地域の拡大
・地域の高齢化
2.暮らしや社会に与える影響 ・高齢者世帯の増加と世帯規模の縮小化
・住宅床面積の増加とセカンドハウスの増加
・通勤・通学者数の減少と自家用車による通勤の増加
・余暇時間の場加とライフスタイルの変化
・若年層における転職割合の増加と終身雇用慣行の減少
・非正規社員の増加
3.経済や財政に与える影響 ・女性や高齢者の就業率の増加 ・労働力人口の減少
・労働の質の変化(高付加価値型、知識集約型労働への転換等)
・貯蓄率の低下
・設備投資への制約
・経済成長への制約


(3) (2)で選んだ2つの「社会影響」に対して、(1)で設定した「更新計画」の策定段階(又はその更新に関わる設計段階)において提案すべき「対応策」とその効果について、各々の「社会影響」ごとに、次の①、②に沿って説明せよ。なお、説明は「社会影響」ごとに行い2つの「社会影響」合わせて答案用紙3枚以内にまとめること。
① 「社会影響」に対する「対応策」を提案せよ。ただし、当該「社会影響」ばかりでなく他の懸念材料に対する配慮や新しい機能の付加などを含めた、より広い視点から工夫した対応策であることが望ましい。
② 提案した「対応策」の提案理由及びその予想される効果(負の効果を含む。)を説明せよ。この際、総合技術監理の5つの管理分野のうち2つ以上の管理分野の視点からの考察を含めること。また、生じる可能性のあるトレードオフ及びその他の留意点についても言及すること。


図1 総人口及び年齢3区分別人口の推移
(出典)総務省統計局「人口推計」,国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(平成24年1月)より作成
記述問題の解説
  この問題は、インフラを更新するときに、将来は人口減少で様々な社会変化が起るから、それを見越して更新しないといけないよねということが基本になっています。たとえば建物を更新するのであれば、そのままのスペックで更新するのではなく、高齢化が進むのを見越してバリアフリー化しておくとか、メンテナンス人員が確保できないかもしれないからできるだけメンテフリーなスペックにしておくなどです。
 そうすると、そういう将来を見越したスペックの変更に伴う管理上の心配事が出てきます。代表的なものが3H(はじめて・久しぶり・変更)、つまり不慣れであることによるミスや事故などですね。つまり「高齢化を見越してメンテフリー構造にするが、不慣れなので設計ミスや施工時事故が懸念される」みたいな話です。そして管理上の対策はミス防止(標準化や検査など)、事故防止(安全対策マニュアルや安全教育、未然防止活動など)になります。
 一方、問題文は対応(上記であればバリアフリー化やメンテフリー化といった専門技術的対策)までは特に5つの管理の視点を求めてはおらず、設問3の②ではじめて管理の視点を求めている一方、「管理上の心配事と対策」のようなものではなく、提案理由や正負の効果になっています。専門技術的対策の理由を管理で述べるというのはなかなかむずかしいですね。
 そこで考えられる答案の書き方は2つあります。1つは設問3の①で専門技術的提案+それを可能にする管理上の対策というセットにしてしまう方法、もう1つは設問3の①は専門技術的提案で、②に専門技術的提案理由および管理上の効果と懸念とそれに対する対策(つまり正の効果と負の効果)を書くという方法です。
 前者はたとえば以下のようにするといいのではないかと思います。
①メンテ段階での労働力人口減少を見越してメンテフリーにする(専門技術的対応)
②その設計においては参考事例集を作成、施工においては施工手順書をしっかり作り、それらとともに設計・施工とも検査を高度化・多重化する。またメンテ段階で必要なスキルを身につけるために長期計画で教育訓練する(ここまでが設問3の①)
③提案1により、メンテの省力化ができ、労働力人口減少の中で維持管理していける。
④提案2により設計段階から維持管理段階まで、メンテフリーの経験が少ないことがカバーでき適切に管理できる。(ここまでが設問3の②)
 後者はたとえば以下のようにするといいでしょう。(こちらのほうがお勧めです)
①メンテフリーにする(専門技術的対応:これが設問3の①)
②提案理由は、メンテフリーにすることで、メンテ段階での労働力人口減少に対応できるから。
③正の効果は、労働力人口減少に伴う就労者の非正規化や高齢化の中でもメンテに伴うミス・事故のリスクが抑制できるとともにコストも抑制できる (経済性管理・安全管理)
④負の効果は、不慣れな構造になるので、設計施工時のミス・事故が懸念されるので、設計時の短期集中教育(人的資源管理)や設計施工時の標準化・検査、工事中の安全マニュアルや安全教育・未然防止活動等で対応(経済性管理・安全管理)で対応
 もう一つ大きなポイントは、人口減少・少子高齢化に伴う様々な社会影響が顕在化するのは将来の話だということです。問題文にも「30年50年と使うのなら将来の人口減少などを見込まねばならない」という主旨のことが書かれています。ということは、労働力減少にせよ何にせよ、それは直近の更新事業そのものの時期ではなく、その更新したインフラを使っていく時点のものだということです。ですから更新事業そのものが非常に長期にわたる場合を除き、更新設計施工時点で社会影響が顕在化するような設定はおかしいことになります。