技術士第二次試験 平成25年度 総合技術監理

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※択一正解は、技術士会の公表正解に関して、臨時掲示板での議論を参考に解説を加えたものです。
 異論や情報などありましたら、掲示板あるいはメールにてお願いします。


択一問題

2-1 次の40問題を解答せよ。(解答欄に1つだけマークすること。)
なお、法令及び制度については、特に記載のあるものを除き、平成25年4月1日時点のものとする。


経済性管理に関する問題

 

I-1-1 フィージビリティ・スタディと総合生産計画に関する記述(ア)~(キ)について,それらを分類したとき,その組合せとして最も適切なものはどれか。

 

(ア)基本的な目的は,需要予測量と生産能力を合理的に均衡させることである。

(イ)統計資料を活用した調査や市場調査を行い,事業化した場合の需要を予測する。

(ウ)資金調達方法の検討を行い,予算規模を算定する。

(エ)計画を立案するとき需要変動に対応するため調整しうる項目には,大きく分けて生産能力調整と需要平滑化がある。

(オ)需要予測量を満足するために必要な労働力,在庫,残業,外注の各量を求める。

(カ)プロジェクト実施の際に必要となるコストと需要予測とを比較し,事業の収支を検討する。

(キ)期中のコスト最小化を目的とする場合が多いが,雇用水準の安定化や在庫水準の適正化も重要な要素である。

 

① フィージビリティ・スタディ:ア,イ,オ,キ、総合生産計画:ウ,エ,カ

② フィージビリティ・スタディ:ア,イ,カ、総合生産計画:ウ,エ,オ,キ

③ フィージビリティ・スタディ:イ,ウ, エ,キ、総合生産計画:ア,オ,カ

④ フィージビリティ・スタディ:イ,ウ,カ、総合生産計画:ア, エ ,オ,キ

⑤ フィージビリティ・スタディ:ウ, オ, キ、総合生産計画:ア,イ,エ,カ

正解は④

F/Sについては青本P25、総合生産計画については同P26。

 

I-1-2 品質管理の手法であるQC7つ道具及び新QC7つ道具に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

 

① QC7つ道具は主として数値データ分析の手法であり, 新QC7つ道具は主として言語データ分析の手法である。

② QC7つ道具は主に計画(Plan)段階で用いられるのに対し,新QC7つ道具は主に確認(Check)段階で用いられる。

③ QC7つ道具には, 「層別」,「パレート図」, 「特性要因図」,「ヒストグラム」,「散布図」,「グラフ・管理図」,「チェツクシート」がある。

④ 新QC7つ道具には,「連関図」,「系統図」,「マトリクス図」,「過程決定計画図(PDPC)」, 「アロー・ダイアグラム」,「親和図」,「マトリクスデータ解析Jがある。

⑤ QC7つ道具や新QC7つ道具は,問題解決においてすべて利用する必要はなく,状況に応じて適切な手法を使用する。

正解は②

QC7つ道具と新QC7つ道具の説明が逆。

 

 

I-1-3 生産活動を行うための作業順序は手順と呼ばれ,その計画は手順計画と呼ばれる。モノづくりにおける手順計画に関する次の記述のうち,最も適切なものはどれか。

 

① 手順計画の目的の1っとして,最適な生産量の決定がある。

② 手順の実現手段の主要素として,いわゆる5Sがある。

③ 標準時間の決定と標準作業の決定では,一般に前者の方を先に決める。

④ 標準時間には,余裕時間は含まれていない。

⑤ 作業標準とは,作業条件,作業方法,管理方法,使用材料,使用設備,その他の注意事項などに関する基準のことである。

正解は⑤

青本p.40。

①…×:最適な生産量の決定は総合生産計画で決める。

②…×:5Sは品質管理に関係するもの。手順計画も品質管理に関わるが5Sは手順の実現手段の主要素とはいえない。

③…×:標準時間とは標準的な作業能力を持った作業者が標準の作業ペースと余裕を持って作業を完成するのに必要な時間。(③は逆)

④…×:余裕時間が含まれるので不適切。

 

I-1-4 原価計算に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

 

① 原価計算とは,企業などにおける組織活動で消費される経営資源の消費額を計算することである。

② 原価計算は,大別して費目別計算,部門別計算,製品別1計算の3つのステップに分類できる。

③ 実際原価計算は,事業計画のような将来の目標に対して積極的に原価計算を行う方法である。

④ 予定原価は,予定消費量及び予定単価を基に設定される。

⑤ 標準原価の利用法の1つとして,具体的な目標を設定して組織活動の結果を管理することが挙げられる。

正解は③

青本p.47。説明は予定原価計算のもの。

 

I-1-5 容量3kWの太陽光発電システムの導入に150万円の資金を要するが,このシステムにより年間10万円の電気料金が節約できる。システムの導入は年初に行われ,節約分は1年分を毎年末にまとめて受け取る。導入費用以外の費用(修理費,保守点検費など)は発生しないものとして, 年利率が2%であるとき,この年利率を考慮した資金回収期間(投資資金回収に必要な年数) η を求める式として正しいものはどれか。ただし,nが不等式で与えられている場合は,その不等式を満たす最小の整数をそのη の値とする。

注: α を正の定数, η を正の整数としたとき,初項が1で公比が1/αの等比級数のはじめのη 項の和が正数X を超える,すなわち

1+1/α+1/α^2+…+1/α^n-1≧X

となるための条件はn≧{-log(1-(1-1/α)X)}/logαである。

① n≧{-log0.82}/log1.02

② n≧{-log0.8}/log1.02

③ n≧{-log(0.82/1.02)}/log1.02

④ n≧{-log(0.72/1.02)}/log1.02

⑤ n≧{-log0.7}/log1.02

正解は⑤

150 <= 10/1.02+10/1.02^2+ … + 10/1.02^n

両辺×1.02/10

150×1.02/10 = 15.3 <= 1+1/1.02+ … + 1/1.02^(n-1)

15.3 を 条件式に代入

 

I-1-6 設備保全は,設備を通じた生産性向上のための管理活動であり,様々な方法がある。次の用語のうち,同種の故障が再発しないように,設備上の弱点を補強する保全の方法はどれか。

 

① 非計画事後保全

② 緊急保全

③ 予知保全

④ 改良保全

⑤ 保全予防

正解は④

 青本p.57

 

I-1-7 下図のように, 4つの集落A,B, C,Dからなる地区に老朽化した5本の橋がある。しかし, 自治体の財政事情から今後5本の橋すべてを補修・維持していくことは難しく, 5本のうち1本は補修をあきらめ,通行止めにせざるを得ない。そこで次式で定義する総トリップ長を指標に,どの橋を通行止めにするか決めることとした。 

 総トリップ長=Σij(集落等聞の交通量)ij×(集落等聞の最短道路距離)ij

ここで,ijは集落等(集落A,B,C,I)及び市街地E)のペアである。

集落等聞の交通量( 1日当たり車のトリップ数)は下表のようであり,これ以外の交通量は考慮しなくてよい。通行止めによる交通量の変化は無視できる。集落等は下図のように道路で、結ばれ、そこに架かる橋及び隣接する集落等聞の道路延長は図に記載のとおりである。(注:例えば,集落Bから集落Cへは,集落Aを経由しでも集落Dを経由しでも最短で6kmで、ある。集落Aから集落Bへは橋1を使えば3kmで、あるが,橋1を通行止めにすると集落D経由で7kmかかる。)

以上の条件の下で,通行止めにしたときの「総トリップ長」が最も小さくなる橋はどれか。

 

①     橋1   ② 橋2   ③ 橋3   ④ 橋4   ⑤ 橋5

 

正解は③

橋3のトリップ長は80。これがなくなると集落A→集落C→集落Dを通る必要があるのでこれによるトリップ長は120と40増える。他の橋も同様に考えると③が最も増加量が少なくなる

 

I-1-8 国際規格のマネジメントシステムに関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

 

① ISO 9001 は,品質マネジメントシステムに関する規格である。

② ISO 14001 は,環境マネジメントシステムに関する規格である。

③ OHSAS 18001 は,プロジェクトマネジメントシステムに関する規格である。

④ ISO/IEC 27001 は,情報セキュリテイマネジメントシステムに関する規格である。

⑤ ISO 50001 は,エネノレギーマネジメントシステムに関する規格である。

正解は③

OHSAS 18001は労働衛生システム。

 

人的資源管理に関する問題

 

I-1-9 組織やプロジェクトの管理を進める上で,組織として与えるインセンティブに関する(ア)~(オ)の記述のうち,不適切なものの数はどれか。

 

(ア)物質的インセンティブ:給与や賞与などの報酬や褒貰で報いることにより,人間の物質的欲求を満たすようなインセンティブを与える方法である。

(イ) 評価的インセンティブ:組織内での行動を,賞賛などの形で評価することによってインセンティブを与える方法である。

(ウ) 人的インセンティプ:上司などの人間的魅力,居心地の良さ,組織への所属意識の向上によってインセンティブを与える方法である。

(エ)理念的インセンティブ:組織利益や効率性の追求を達成意欲の源泉とするようなインセンティブを与える方法である。

(オ)自己実現インセンティブ:組織が常に自分をよりよい方向に育成してくれている,また達成感をもって仕事を行っていると思えるような自己実現のためのインセンティプを与える方法である。

 

① 0   ② 1   ③ 2   ④ 3   ⑤ 4

正解は②

(エ)の理念的インセンティブのみが不適切。青本p.70。

 

I-1-10 労働時間管理に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

 

① 法定労働時間は,週40時間, 1日8時間であり,使用者が従業員にそれを超えて労働させる場合には,労使が協定を締結し,労働基準監督署に届けることが義務づけられている。

② 1か月について60時間を超えて時間外労働をさせた場合,法律で当分の間猶予される中小企業を除き,その超えた時間の労働についての法定割増賃金率は50%以上の率となっている。

③ 専門業務型裁量労働制は,みなし労働時間制の一形態であり3 建築士の業務や中小企業診断士の業務などの特定の業務であって,業務遂行の手段ぞ時間配分などに関して使用者が具体的な指示をしない業務が対象となっている。

④ 企画業務型裁量労働制は,みなし労働時間制のー形態であり,事業運営の企画,立案,調査及び分析の業務であって,業務遂行の手段や時間配分などに関して使用者が具体的な指示をしない業務が対象となっている。

⑤ フレックスタイム制において,清算期間を1か月として,労働者がその清算期間における総労働時間を超えて労働した場合には,通常,その超えた時間分を次の清算期間中の総労働時間の一部に充当する。

正解は⑤

超過分は次月に充当できない(その月に清算)。不足の場合は次月に不足分を充てることが可能。

 

I-1-11 労働関係法の体系及び労使関係管理に関する次の記述のうち, 最も不適切なものはどれか。

 

① 我が国の成文労働関係法は,大きく憲法の労働権に基づ、くものと団結権に基づくものに分けられるが,労働者派遣法は前者の例,労働関係調整法は後者の例に該当する。

② 我が国では,労働者に対し,E喧権,国生玄控権,周集在塾権の労働三権が原則として保障されている。

③ 我が国の労働組合組織は,一般的には企業別組合を単位組織としている。

④ 団体交渉においては,賃金や労働時間,休暇など,労働組合法で具体的に限定されている交渉事項を対象に交渉を行う。

⑤ 労働委員会は,労働争議が発生した場合に,原則として当事者の申請により「あっせん」・「調停」・「仲裁」の争議調整を行う。

正解は④

交渉内容は限定されていない。

 

I-1-12 人事考課に関する次の記述のうち,最も適切なものはどれか。

 

① 人事考課のルールや評価基準は,従業員ごとに考えが異なり混乱を招くことから公開することは適当ではないが,評価結果そのものは,本人の納得性を高めるよう各従業員に伝えることが重要である。

② 従業員の聞に失敗を恐れず革新的なことに挑戦する意欲を生じさせるという観点から,一般に,人事考課においては加点主義を重視すべきとされている。

③ 人事考課の一般的な評価基準では,能力,業績3 姿勢の3つの領域が対象であるが,主として賞与には能力評価と業績評価を反映させ,昇給や昇進にはそれとともに姿勢評価も反映させることが一般的である。

④ 評価基準が整備されても,評価者によってその評価が異なってしまうことから,評価を実施するに当たって, 1人の従業員に対し複数の評価者を置くべきではないとされている。

⑤ 能力開発を重視する観点からは,人事考課の評価要素をOJT等と連動させることは避け,人材能力開発と人事考課を明確に分離させることが重要である。

正解は②

①…×:考課ルールや評価基準は公開するのが適切

③…×:能力評価は昇給や昇進に反映

④…×:評価者は複数置くべき

⑤…×:評価とOJTは連動させるべき

 

I-1-13 リーダーシップに関する次の記述のうち, PM理論におけるM行動として最も適切なものはどれか。

 

① 部下に仕事に関して指示命令を与える。

② 部下が優れた仕事をしたときそれを認める。

③ 毎月の仕事の計画を綿密に立てる。

④ 部下に仕事量のことをきびしく言う。

⑤ 部下に問題の新しい解決の仕方を示す。

正解は②

PMのMは組織の維持に関する行動で、②以外は目的達成のP行動。

 

I-1-14 人的資源計画に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

 

① 職務設計とは,組織の各構成員に高い意識付けを行い,個々の能力を最大限に発揮できるように職務を設計することである。

② 雇用管理の重要なポイントは,採用条件と選考方法を明確にすること,従業員の適正配置を行うこと,公正で適切な処遇を行うことの3つである。

③ 職務明細書は,知識・技能・経験3 専門能力,適性,心身の特性なと職務に必要な人的特徴を記述したものである。

④ 職務分析の結果は,従業員の募集や選考などの雇用管理,教育訓練管理,人事考課管理など様々な管理活動に利用される。

⑤ 職務設計における中核的職務特性とは,職務に関する義務,権限,責任,必要とされる知識,経験の5つをいう。

正解は⑤

青本p.80。

 

I-1-15 組織における教育訓練に関する次の記述のうち,最も適切なものはどれか。

 

① 組織の一員として働く従業員に求められる主な能力として,一般に,課題設定能力,職務遂行能力,対人能力,問題解決能力の4つがある。

② OFF-JTは,通信教育を受けることや留学など,企業以外の場での自己啓発活動を意味し,個人の自発的キャリアアップに有効な手段である。

③ ロールプレイングとは,グループ内での自由な話し合いを通して,他人の感情や欲求,自分の言動が他人に及ぼす影響を感じ取ったり,他人の目を通して自己を洞察したりすることを,体験を通して学習させる技法である。

④ ブレイン・ストーミングでは,判断や結論を出さない,アイデアは量より質を重視する,ということが推奨される。

⑤ 技能教育では,技術に関する専門的な情報を知識として理解させることを目的として,講義や見学により実施されることが多い。

正解は①

②…×:「自己啓発活動」と限定しているので誤り

③…×:ロールプレイングは自由な話し合いではない

④…×:ブレストは質より量

⑤…×:技能教育は実習が適している

 

I-1-16 プロジェクトを効果的にマネジメントする上で,プロジェクト・マネジャーが活用すべきスキルに関する次の記述のうち,最も適切なものはどれか。

 

① プロジェクト・マ不、ジャーはプロジェクト・チームをマネジメントし, リードするために影響力を行使することがあるが,その場合,相手に応じて人間関係のスタイルを調整したり権威を行使したりすることは望ましいことではないとされる。

② プロジェクト・マネジャーが一般に用いる意思決定のスタイルには,命令,相談,合意,成り行きがあるとされ,また,意思決定のやり方に影響を与える要因には,時間的制約,信頼,品質,受容があるとされる。

③ リーダーシップは,ビジョンを再確認しプロジェクト参加者に高いパフォーマンスを達成するように動機付けし,鼓舞することに力を注ぐ必要のあるプロジェクト終期のフェーズにおいて特に不可欠である。

④ プロジェクト環境における動機付けとは,プロジェクト参加者が最も重視する価値に対する他者の評価を最大化させるとともに,プロジェクト目標を達成するための環境を整えることである。

⑤ 傾聴の技術を効果的に使うことは,問題の所在の確認や意思決定等に役立つとされるが,消極的な手法のためコミュニケーションの重要な部分とはされていない。

正解は②

①…×:相手に応じて人間関係のスタイルを調整、権威の一部を活用する

③…×:プロジェクト終期→初期

④…×:他者の評価→自己満足

⑤…×:コミュニケーションの重要な部分


情報管理に関する問題

 

I-1-17 知的財産権に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

 

① 知的財産基本法における知的財産権とは,特許権,実用新案権,意匠権,著作権,商標権等の権利をいう。

② 需要者の聞に広く認識されている商標であっても,商標登録されていなければ法律で保護されない。

③ 実用新案の登録出願では,新規性や進歩性等の実体審査は行われない。

④ 著作権の保護期間は,個人の場合は創作時から死後50年であり,映画は公表後70年である。

⑤ 産業財産権の保護期間は,特許権が出願から20年,実用新案権が出願から10年,意匠権が登録から20年である。

正解は②

未登録の商標は不正競争防止法で保護される。また先使用権が認められる場合がある。

 

I-1-18 次の(ア)~(エ)は情報分野の用語API, HTML, ISP, P2Pについての説明である。用語と説明の組合せとして最も適切なものはどれか。

 

(ア)インターネット接続事業者である。

(イ)ウェブページを記述するためのマークアップ言語である。

(ウ)他のハードウェアやソフトウェアが提供している機能を利用するための,プログラム上の手続きを定めた規約の集合のことである。

(エ)不特定多数のコンピュータが相互に接続され,直接ファイル等の情報を送受信するインターネットの利用形態のことである。

 

① API:ア、HTML:イ、ISP:ウ、P2P:エ

② API:ウ、HTML:イ、ISP:ア、P2P:エ

③ API:エ、HTML:イ、ISP:ア、P2P:ウ

④ API:ア、HTML:エ、ISP:ウ、P2P:イ

⑤ API:ウ、HTML:エ、ISP:ア、P2P:イ

正解は②

これは知っているかどうか。HTMLとP2Pが比較的よく知られている。

 


I-1-19 著作権に関する次の記述のうち,最も適切なものはどれか。

 

① 公園に設置されているブロンズ像(オリジナル)は著作権法上の著作物であるが,そのブロンズ像を写真に撮り,ウェブサイトに掲載しても著作権法違反とはならない。

② オープンソース・ソフトウェアは著作権が放棄されているため,改良や再配布などを自由に行うことができる。

③ 違法にインター不ット配信されていると知りながら,音楽や映像などの著作物をダワンロード(録音又は録画)することは,私的な使用が目的であっても著作権法に違反する行為となるが,同法による刑事罰の対象とはなっていない。

④ 委託開発契約書に著作権の所在についての記載がない場合,委託開発した社内システムの著作権は,開発を依頼した企業が所有する。

⑤ 自社への取材番組を録画し,その番組の放送後に自社ウェプサイトへ許可なく掲載しても著作権の侵害とはならない。

正解は①

②…×:オープンソースソフトウェアであることは著作権の放棄を意味するものではない。明示的に著作権を放棄しているものはパブリックドメインソフトウェアと呼ばれる。

③…×:ダウンロード罰則化が実施されている。

④…×:黙示的には開発した側に著作権がある。

⑤…×:番組は著作物であるため無断で掲載することはできない。

 

I-1-20 東日本大震災の地震発生時に東京,神奈川,千葉,埼玉にいた2,000人を対象とした震災時の情報行動に関する調査結果の一部を下表に示す(出典:平成24年版情報通信白書)。これは,地震発生当日に利用しようとした通信手段についての質問において,それぞれの通信手段を使おうとした人だけを取り出し,その中で「全くつながらなかった」と答えた人の割合(%)を示している。なお,カッコ内の数字はその通信手段を使おうとした人の数である。適切な組合せは表中①~⑤のうちどれか。

正解は④

固定電話55.1% 公衆電話36.0% 携帯(音声)65.4% 携帯メール37.0% 携帯ウェブ32.0%

 

I-1-21 情報の量に関する次の(ア)~(オ)の記述について,適切なものと不適切なものの組合せとして正しいものはどれか。

 

(ア)情報の単位である1ピットは2個の値を持つことができる。

(イ) 8ビットを一般的に1バイトと呼び256個の値を持つことができる。

(ウ)アノレファベットは文字の種類が26個と少ないので,大文字,小文字を1バイトで表すことができる。

(エ) JIS第一水準の文字の種類は3489個と多いので,これらの文字を表すには1文字当たり最低4バイトは必要である。

(オ) 1行40字で30行のJIS第一水準の文字で書かれた文章を表すには少なくとも4800パイトが必要である。

 

① ア:適切、イ:適切、ウ:適切、エ:適切オ:適切

② ア:適切、イ:適切、ウ:適切、エ:適切オ:不適切

③ ア:適切、イ:適切、ウ:適切、エ:不適切オ:不適切

④ ア:適切、イ:不適切、ウ:不適切、エ:不適切オ:不適切

⑤ ア:不適切、イ:不適切、ウ:不適切、エ:不適切オ:不適切

正解は③

(エ)12ビット=3バイトで4096を表せるので誤り。

(オ)40字×30行=1200文字、上述のとおり1文字3バイトで表せるので3600バイトで足りることになり、誤り。

 

I-1-22 組織における情報公開に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

 

① 組織が開示する主な情報には,説明責任を果たすための組織活動の報告と広告・宣伝のための情報がある。

② 財務諸表は組織活動に関する説明責任を果たすために開示すべき情報である。

③ 企業の環境報告書は環境に関する社会的説明責任を果たす情報である。

④ 市場競争力に関わる技術情報は製品・サービスの理解に結び、つくので開示すべき情報である。

⑤ 事実を隠す意図がなくとも情報非開示が社会的信頼を損なうこともあるので,不祥事のような緊急時を想定して開示基準を検討しておくことが必要である。

正解は④

技術情報(ノウハウ)は非開示。

 

I-1-23 情報漏洩に関する次の(ア)~(オ)の記述のうち,適切なものの数はどれか。

 

(ア)机の上をいつも整理しておくことは,重要な情報が放置された状態にならないように注意することになるので情報漏洩対策の1つである。

(イ) 組織の情報漏洩対応では憶測や類推による判断や発言は混乱を招くので,情報を1か所に集め外部に対する情報提供や報告の窓口を1本化した。

(ウ) メールアドレスを間違えて社内情報を誤送信してしまったので,誤送信先にお詫びと送付情報の削除をお願いした。

(エ)匿名掲示板に自社のいわれなき悪評が書き込まれたので,掲示板の管理者に悪評の削除を申し入れた。

(オ) 個人情報が漏洩したので,本人にその事実を知らせてお詫びするとともに,詐欺や迷惑行為などの被害にあわないよう注意喚起をした。

 

① 1   ② 2   ③ 3   ④ 4   ⑤ 5

正解は⑤

全て適切。

 

I-1-24 次の情報セキュリティにおけるサイバー攻撃に関する用語の説明のうち,最も不適切なものはどれか。

 

① メール爆弾:ウイルスに感染した電子ファイルを電子メールに添付して,メール受信者のデータを破壊するサイバー攻撃

② ゼロデイ攻撃:ソフトウェアの脆弱性問題の存在が広く公表され対応がとられる前に,その脆弱性を突いて行うサイバー攻撃

③ 分散DoS:分散した多数のコンビュータから特定のコンビュータに一斉にパケットを送出し,機能を停止させるサイバー攻撃

④ 標的型攻撃特定の組織,利用者をターゲットにしたサイバー攻撃

⑤ ポットネット:サイバー攻撃に用いるために遠隔操作されてしまっているコンビュータ群

正解は①

メール爆弾とは、あるメールアドレスに大量(あるいは大容量)の無意味な電子メールを送り付ける嫌がらせ。

 

安全管理に関する問題

 

I-1-25 組織における危機管理について,特にリスク管理と対比した場合の説明として最も不適切なものはどれか。

 

① 危機管理の目的は,不測事態に対して適切な対応をとることである。

② 危機管理では,事故や危機的な状況が発生した後のリーダーシップが重要である。

③ 危機発生時の対応業務については,定常的なタスクフォースで実施する必要がある。

④ 危機管理の考え方や手法が最近になって生み出された訳ではなく,史実にも多数存在している。

⑤ 危機管理マニュアルは,危機時に要求される緊急時対応を円滑に実施するために策定される。

正解は③

定常的ではなく一時的。

 

I-1-26 リスクコミュニケーションに関する次の(ア)~(エ)の記述のうち,適切なものの数はどれか。

 

(ア)感情的納得や信頼性獲得が必要であったため,直接対話は最後まで避けることとし,即時性や広域性を有する電子メディアを利用することとした。

(イ) 自社が自ら説明することでは信頼性が低かったので,専門家やNGO等の中立的な第三者を仲介する方法を採った。

(ウ) 自社製品にp ある条件になると破損する可能性がある欠陥が発見されたため,マスコミを利用した注意喚起活動を展開することとした。

(エ)建設計画に反対される可能性を心配したが,対象構造物には負の効用があることも正確に伝えるようにした。

 

① 0   ② 1   ③ 2   ④ 3   ⑤ 4

正解は④

(ア)が間違い。青本p.140。

 

I-1-27 以下に記述する電源システムが1年の聞に停電する確率をフォールトツリー分析により計算したとき,最も近い値はどれか。

 

この電源システムには,交流、1系統のみが接続されており1年の聞にこの系統電源を喪失する確率は0.03であると電力会社からは説明されている。また, 自社内での事故により誤ってこの系統を遮断してしまう可能性が指摘されており1年の聞にこの系統を遮断してしまう確率は0.10と見積もられている。ただし,この電源システムには,予備の自家用発電機が3台接続されており,そのうちl台でも稼働できれば停電を免れることができる。これら自家用発電機の起動要求時の故障確率(デマンド故障確率)は,何れも0.05であるとする。

なお,この計算では, 事故や故障等のそれぞれの事象発生は互いに独立であるものとする。

 

① 1.6×10-2

② 1.6×10-3

③ 1.6×10-4

④ 1.6×10-5

⑤ 1.6×10-5

正解は④

(0.03+0.1)×0.053=1.6×10-5

 

I-1-28 気象庁は,平成23年の東北地方太平洋沖地震を受け,津波警報・注意報の発表方法や表現を変更した。この変更内容に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

 

① 津波の高さ予想、の区分を,従来の5段階から8段階とした。

② 地震規模について過小評価の可能性を検知し,津波警報の第1報を発表する場合は,予想される津波の高さを,数値ではなく「巨大」など定性的表現を用いることとした。

③ 地震の規模推定の不確定性が大きい場合の地震規模(マグニチュード)は,「M8を超える巨大地震」と表現することとした。

④ 津波警報は,津波警報(大津波),津波警報(津波) と分類していたが,「大津波警報」,「津波警報」を用いることとした。

③ 最大波について,観測された津波の高さの値が,予想される津波の高さ区分よりも十分に小さい場合は,「観測中」と定性的表現を用いることとした。

正解は①

5段階が正しい。

 

I-1-29 労働安全衛生管理システムに関する次の記述のうち,最も適切なものはどれか。

 

① このシステムは,事業場において安全衛生水準を向上していくための仕組みであり,実施し運用することが,法律により義務付けられている。

② このシステムを実施し運用する場合の具体的な手続きとしては,まず安全衛生計画の策定から始めることが必要である。

③ このシステムを適切に実施し運用する責任は労働者にあるが,安全確保には事業場トップの理解と協力が不可欠である。

④ このシステムの手続きの1つに,危険又は有害要因を特定し,それを除去又は低減するための実施事項を特定することがある。

⑤ このシステムでは,安全衛生計画の実施状況の日常的な点検は不要で、あるが,システム監査の実施と改善は必要である。

正解は④

①…×:法律では定められていない

②…×:まず安全衛生目標を設定する

③…×:労働者と事業場トップが逆

⑤…×:安全衛生計画の実施状況の日常的な点検・改善は必要

 

I-1-30 職場における精神の健康(メンタルへノレス)を維持するための段階は,一次予防,二次予防,三次予防に分けられるが,これに関する次め記述のうち,最も適切なものはどれか。

 

① 早期相談を行える状況をつくることは,一次予防である。

② 従業員の兆候を読み取り早期に治療することは, 一次予防である。

③ ストレス耐性を強めることは,二次予防である。

④ 職場復帰する従業員に対する職場環境を整備することは,三次予防である。

⑤ 気分転換などの個々人の対策は,一次予防から三次予防までとは別の対策である。

正解は④

①…×:二次予防

②…×:二次予防

③…×:一次予防

⑤…×:記述は一次予防

青本p.148。

 

I-1-31 定期点検活動に関する(ア)~(オ)の記述のうち,不適切なものの数はどれか。

 

(ア)定期点検活動は,定常業務の一部として行うものである。

(イ) 定期点検活動の内容には,業務が想定通りに行われていることを確認することがある。

(ウ) 定期点検活動では,個人の技量等で実施レベルにムラが出ないように,チェックを行うためのグループ編成を検討することなどが行われる。

(エ) 定期点検活動の内容には, トラブツレに発展する可能性のある非定常の行為や事象の発見と改善がある。

(オ)定期点検活動用チェックリストのチェック項目については,変更を加えないことが大切である。

 

① 0   ② 1   ③ 2   ④ 3   ⑤ 4

正解は②

(オ)のみ不適切。チェックリストは適宜変更していくことが必要。

 

I-1-32 フェールセーフとフォールトトレランスに関する次の(ア)~(オ)の記述のうち, フェールセーフに関するものの数はどれか。

 

(ア)ガスコンロで調理中に吹きこぼれで火が消えた場合,ガスの供給を停止する。

(イ)プレス機械は,故障時にはスライドの下降が停止する。

(ウ)航空機は, lつのエンジンが故障しても飛び続けられる。

(エ)圧力センサの故障時には圧力が上昇しないよう,設備は安全側に移行する。

(オ)病院では手術中に停電が起こったら自動的に補助電源に切り替わる。

 

① 1   ② 2   ③ 3   ④ 4   ⑤ 5

正解は③

ア、イ、エがフェールセーフ(安全停止)に該当。

ウとオはフォールトトレランス。

 

社会環境管理に関する問題

 

I-1-33 第四次環境基本計画に示されている,各主体の適切な意思決定を促す環境政策手法に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

 

① 直接規制的手法は,法令によって社会全体として達成すべき一定の‘目標と遵守事項を示し,統制的手段を用いて達成しようとする手法である。

② 経済的手法は,市場メカニズムを前提とし,経済的インセンティブの付与を介して各主体の経済合理性に沿った行動を誘導することによって政策目的を達成しようとする手法である。

③ 情報的手法は,環境保全活動に積極的な事業者や環境負荷の少ない製品などを,投資や購入等に際して選択できるように,事業活動や製品・サービスに関して,環境負荷などに関する情報の開示と提供を進める手法である。

④ 手続的手法は,目標を提示してその達成を義務づけ,又は一定の手順や手続を踏むことを義務づけることなどによって規制の目的を達成しようとする手法である。

⑤ 自主的取組手法は,事業者などが自らの行動に一定の努力目標を設けて対策を実施するという取組によって政策目的を達成しようとする手法である。

正解は④

手続き的手法とは、意思決定の過程に環境配慮の判断基準にした手続きを組み込む手法。

 

I-1-34 「平成24年版環境・循環型社会・生物多様性白書」に示されている,我が国の物質フローと廃棄物についての近年10年程度の傾向(ただし,東日本大震災により生じた災害廃棄物による影響を除く。)に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

 

① 物質フローの循環利用率は,向上している。

② 物質フローの資源生産性は,向上している。

③ 物質フローの最終処分量は,減少している。

④ 一般廃棄物(ごみ)の排出量は,減少している。

⑤ 産業廃棄物の排出量は,増加している。

正解は⑤

産業廃棄物の排出量はほぼ横ばい。

 

I-1-35 我が国の提唱による国際的な取組に「SATOYAMAイニシアティブ」がある。この取組と最も関連の深い国際条約(通称名)はどれか。

 

① 生物多様性条約

② ラムサール条約

③ ワシントン条約

④ パーゼル条約

⑤ ストックホルム条約

正解は①

名古屋で開催されたCOP10で提唱した取り組み。

 

I-1-36 社会経済のグリーン化の推進に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

 

① いわゆるグリーン購入法は,国等の公的部門における環境負荷の低減に資する物品等の調達の推進と,あわせて,製品メーカ一等に対し,自らが製造する物品等について適切な環境情報の提供に努めるべきことを規定している。

② いわゆる環境配慮契約法は,国等の公的部門における価格だけでなく環境負荷をも考慮した契約の推進と,あわせて,民間事業者に対し,環境に配慮した契約に努めるべきことを規定している。

③ エコアクション21 (環境活動評価プログラム)は,中小企業等でも容易に環境配慮、の取組が可能となるよう環境省が策定したガイドラインである。

④ いわゆる環境配慮促進法は,環境報告書の普及促進と信頼性向上のための制度的枠組みの整備や一定の公的法人に対する環境報告書の作成・公表の義務付けについて規定している。

⑤ 地球温暖化対策のための税として,全化石燃料を課税ベースとする石油石炭税に二酸化炭素排出量に応じた税率が上乗せされて課税されている。

正解は②

民間事業者に対して特に規定はない。

 

I-1-37 次の(ア)~(カ)の項目のうち,環境基本法に基づき環境基準が設定されているものの数はどれか。

 

(ア)大気の汚染

(イ)水質の汚濁

(ウ)騒音

(エ)振動

(オ)土壌の汚染

(カ)悪臭

 

① 2   ② 3   ③ 4   ④ 5   ⑤ 6

正解は③

振動と悪臭は環境基本法で基準が設定されていない。

 

I-1-38 平成23年4月に成立した「環境影響評価法の一部を改正する法律」により新たに追加・新設された事項に関する次の記述のうち, 最も不適切なものはどれか。

 

① 第一種事業及び第二種事業を実施しようとする者は,環境の保全のために配慮すべき事項について検討を行い,計画段階環境配慮書を作成し,公表しなければならない。

② 事業者は3 環境影響評価方法書の記載事項を周知させるための説明会を開催しなければならない。

③ 事業者は,インターネットの利用等により環境影響評価書を公表しなければならない。

④ 環境大臣は,計画段階環境配慮書について環境の保全の見地からの意見を書面により述べることができる。

⑤ 環境影響評価書の公告を行った事業者は,環境の保全のための措置等に係る報告書を作成し,これを公表しなければならない。

正解は①

義務付けられているのは第1種のみで、2種は努めるとされている。

 

I-1-39 次の(ア)~(カ)の再生可能エネルギー源の種類のうち,平成24年7月にスタートした再生可能エネルギーの固定価格買取制度において,買取対象が含まれるものの数はどれか。

 

(ア)太陽光

(イ) 風力

(ウ) 水力

(エ)波力

(オ)地熱

(カ)バイオマス

 

① 2   ② 3   ③ 4   ④ 5   ⑤ 6

正解は④

波力以外。

 

I-1-40 PRTR法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

 

① 第一種指定化学物質等取扱事業者は,その事業活動に伴う第一種指定化学物質の環境中への排出量と廃棄物に含まれての事業所外への移動量を把握し,毎年度,前年度分を国に届けなければならない。

② 国は,届出データを集計するとともに,届出の対象にならない事業所や家庭,自動車などから環境中に排出されている第一種指定化学物質の量を推計して,これらの届出データと推計データを併せて公表する。

③ 国は,届出データの集計結果は公表するが,個別事業所ごとの排出量,移動量に関する情報については,企業の経営情報を含むものであるため開示しない。

④ 指定化学物質等取扱事業者は,指定化学物質やそれを含む製品を他の事業者に出荷する際に,その相手方に対し,その化学物質等の性状及び取扱いに関する情報を提供しなければならない。

⑤ 国は, PRTRの集計結果などを踏まえて,環境モニタリング調査や,人の健康や生態系への影響についての調査を行う。

正解は③

個別事業所ごとのデータも公表されている。

 


記述問題

1-2 次の問題について解答せよ。

 現在、我が国では、笹子トンネルの事故や、首都高速の保守の問題、森林保全、さらにはプラントの老朽化問題、業務内容の変化や新たな技術の出現に伴うメンテナンス方法の変化、情報システムのように技術革新の速い領域におけるメンテナンスの問題等、メンテナンスに関する多様な問題が顕在化している。この問題の解決のためには、メンテナンスの不備は他の業務との兼ね合いで発生する問題もあるとの認識に立ち、メンテナンスの問題を業務全体の最適化の視点で考える必要がある。
 したがって、このメンテナンスの問題を総合的に検討し、最適な対応案を検討することは、総合技術監理部門の技術士に要求される重要な業務の1つで、ある。また、事業においては、その課題をライフサイクルとして捉えることは必須であり、製品開発や特定のコンサルティングのようにその業務自体は限られたステージであっても、業務遂行においてその対象のライフサイクルを鑑みた視点が重要なことは言うまでもない。
 あなたが対象とする事業又はプロジェクト(以下「事業等」と記す。)におけるメンテナンスの課題及びその対応について、総合技術監理の視点から(1)、(2) の問いに答えよ。
 なお、ここでいう総合技術監理の視点とは、「経済性管理」、「安全管理」、「人的資源管理」、「情報管理」、「社会環境管理」の5つの視点をいう。(問いごとに答案用紙を替えて、それぞれ指示された枚数以内にまとめること。)

  1. 本解答におけるあなたの立場とあなたが取り上げる事業等の内容を簡潔に記述して、以下に定めた要領に従ってメンテナンスの課題を整理せよ。
     メンテナンスに関する課題としては、 メンテナンス技術の他にも、製品・施設のライフサイクルにおけるメンテナンスの考え方、設計・製作技術、運用制度、人材、コスト等、多くの課題が存在するので、幅広い視点で検討すること。
     なお、事業等の設定やメンテナンスの課題に関して、(2)の問いに解答することを前提として、以下に示す要領で答案用紙2枚以内にまとめよ。
     1) あなたの立場は、他者に判断や責任を転嫁できないものとする。
     2) 対象とする事業等の記述に際しては、課題や対策の妥当性を判断できる内容を含むこと。
     3) メンテナンスの課題は、事業等の
        a.「計画・設計時」、b.「施工・製作時」、c.「運転・保守・維持管理時」
       の3つのステージに分けて以下の要領に従ってそれぞれ2つ記述すること。
     この課題の記述に際しては、課題とその課題に対応することが難しい原因をステージごとに以下に示すとおり、 1つ目の課題は課題1の視点で、 2つ目の課題は課題2の視点で記述すること。なお、定められた視点で記した課題の原因が他の総合技術監理の視点をも含む場合は、その内容も記述すること。
      a.「計画・設計時」 課題1:情報管理、 課題2:人的資源管理
      b.「施工・製作時」 課題1:経済性管理、課題2:安全管理
      c.「運転・保守・維持管理時」 課題1:経済性管理、課題2:社会環境管理

     答案の記述のうち、課題に関する記述形式は、以下の例のとおりとする。
      a.「計画・設計時」の課題
        ① 課題1:○○○○○○(課題名)
          ・・・・・・・・・
        ② 課題2:口口口口口口(課題名)
          ・・・・・・・・・
  2. 対象事業において、 (1) で記述した各ステージにおいて検討すべき課題への具体的な対策について、 うまくいかない原因を考慮に入れて、ステージごとに答案用紙を替えて、 それぞれ1枚にまとめよ。
     具体的な対策は、課題ごとに記述すること。1つの課題に対して、複数の対策を記述してもよい。ここでいう具体的な対策とは、その対策効果の程度が明確に判概できるものをいう。
     また、そのメンテナンスへの課題の対策が、直接の対象としている課題に関する管理事項以外の管理事項に及ぼす正・負の影響があれば、記述すること。
     さらに、その対策が、以下に示す影響・効果があれば、記述すること。
      ・対策が、同一事業等の他のステージに与える効果・影響
       なお、複数のステージに影響が関係する内容に関してはどちらかのステージで記述をすること。
      ・対策が、本解答の対象とする事業等を越えて、組織の活動や事業等の改善につながる効果・影響

     答案の記述は、以下の例のとおりとする。
      (2)-a 「計画・設計時」
       ① ○○○○○○((1)のa.「計画・設計時」の課題1の課題名)への対策
        ・・・・・・・・・
       ② 口口口口口口への対策
        ・・・・・・・・・
      (2)-b. 「施工・製作時」(答案用紙を替えて記述)

記述問題の解説
 この問題は、メンテナンスまで考えて設計施工をしないといけないよねということが基本になっています。たとえば機械であればユニット式にして劣化部分はガチャッと組み替えられるようにしておくとか、土木インフラの形状・構造を点検補修がしやすいようにしておくなどです。
 ですからメンテナンスまで考えた設計であるがゆえの課題、メンテナンスまで考えた施工であるがゆえの課題といったものをあげることになります。たとえば「メンテナンスまで考えた設計の経験が乏しいのでスキルが不足している」(設計計画ステージでの人的資源管理上の課題)とか「メンテナンスまで考えた施工となると、従来とは異なる施工手順になったり部材が異なったりして、慣れていないので施工ミスが出る」(施工ステージでの経済性管理上の課題)などになります。
 セミナーテキストでは3H(初めて・久しぶり・変更)というくくりをしています。つまり不慣れだとミスや事故がおきやすいということですね。この3Hをキーワードに考えると課題は出てきやすいでしょう。
 そして課題への対応は、設計や施工は比較的短い期間での業務ですから、短期的対応になります。短期では生産性向上ができません(つまり新技術を導入したり新しい機械を入れたり教育をしてスキルアップをしたりといったことが時間的にできにくくなります)から、現有リソースの量・質の中で対応することになります。対応はほとんど前述した各管理項目ごとの対策でできるはずです。
 いっぽう維持管理段階はかなり先になりますし、かなり長期に(そのインフラのライフサイクル並みに長く考えていい)なります。ですから生産性向上が十分できます。たとえば「慣れていないのでミスをする」という品質管理上のリスクに対しては、短期的対応では標準化や検査がせいぜいで、教育も限られた期間の中で効果が出るものに限られますが、中長期的対応では、OFF-JTとOJTを組み合わせて体系的な教育を行ってスキルアップするとか、ミスしにくくなるようなツール(たとえば高度なソフトウェアとか)を導入・開発するとか、ナレッジマネジメントの中で先達のノウハウ・スキルを蓄積してスキルアップに活かすとか、まあいろいろと長い目で対応できるわけですね。
 以上、付与条件にまずは専門技術的に応えて、そのあとで「それをどう管理するか」という視点で整理すればいいでしょう。