平成24年度試験について 最終更新:2012.09.24 Top Page

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1.試験の内容・配点・合格基準
2.一次試験対策について
 2-1 一次試験は基礎知識の確認試験
 2-2 大学の「教科書」から出題される
 2-3 基礎科目は応用問題、専門科目は大学での分野ウェイトで出題
 2-4 共通科目について
 2-5 基礎科目について
 2-6 専門科目について
 2-7 適性科目について

1.試験の内容・配点・合格基準

  1. 内容
    平成24年度一次試験は、2012年10月8日(月・祝日)に下記時間割で実施されます。
    科目 試験時間
    共通 9:00〜11:00 1時間
    適性 11:30〜12:30 1時間
    専門 13:30〜15:30 2時間
    基礎 16:00〜17:00 1時間

  2. 配点と合格基準
    一次試験の配点と合格基準は以下のとおりです。
    注意すべき点は、基礎科目と専門科目は、各々40%以上、合計50%以上が合否ラインであることです。
    科目 出題される
    問題数
    解答すべき
    問題数
    1問あたり
    点数
    配点 合否ライン
    共通 5科目各20 2科目各20 1 各20 平均点
    基礎 30 15 1 15 6点(6問) 合計
    33点
    専門 35 25 2 50 20点(10問)
    適性 15 15 1 15 8点(8問)

    わかりやすいように共通科目をのぞいて考えると、
     ●基礎正解6問(6点)未満
     ●専門正解10問(20点)未満
     ●基礎と専門の合計得点が33点未満
     ●適性正解8問(8点)未満

    のどれかに該当するとアウトです。
    基礎と専門のところがわかりにくいかと思いますので、図表にしてみました。なお、図はNagaseさんに作成していただきました。ありがとうございます。
    基礎科目正解数 専門科目正解数 判定 不合格根拠
    5以下 (何問でも関係なし) × 基礎正解40%未満
    6 13以下 × 基礎+専門で50%未満
    6 14以上
    7 12以下 × 基礎+専門で50%未満
    7 13以上
    8 12以下 × 基礎+専門で50%未満
    8 13以上
    9 11以下 × 基礎+専門で50%未満
    9 12以上
    10 11以下 × 基礎+専門で50%未満
    10 12以上
    11 10以下 × 基礎+専門で50%未満
    11 11以上
    12 10以下 × 基礎+専門で50%未満
    12 11以上
    13 10以上
    (何問でも関係なし) 9以下 × 専門正解40%未満
 仮に基礎科目が最低ラインギリギリの6点(6問正解)だったとしましょう。合格するためには、専門科目で33点−6点=27点取らねばなりません。専門科目は1問2点ですから、27÷2≒14問正解する必要があります。つまり、解答25問中、14÷25=56%の正解率です。言い換えると、専門科目ではこれ以上正解しても合否には関わらないことがわかります。
 一方、専門科目が最低ラインの20点(10問正解)だったとしましょう。合格するためには、基礎科目で33点−20点=13点取らねばなりません。基礎科目は1問1点ですから、13÷1=13問正解する必要があります。つまり、解答15問中、13÷15=87%の正解率です。これは非常に困難です。
 このことからわかるように、専門科目で得点することが重要です。基礎が少々悪くても専門で挽回できますが、逆はなかなか困難です。

 なお、「基礎科目で0点の分野があると不合格」というウワサが流れたことがありますが、それはガセネタです。現実に確実に0点分野がある(完全に捨てて解答せず)人も合格してますし、技術士会に直製電話で問い合わせ、「技術士会としてはそのような基準は設けていない」との答えをいただいてもいます。これは某受験参考書にその旨の記載があったのがウワサの元のようですが、無責任極まりない話だと思います。
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2.一次試験対策について

 前年度までの試験内容を踏まえて、今年度の一次試験はどうなるか?そして対策は?ということについて、私なりの考えをまとめてみたいと思います。

  1. 一次試験は基礎知識の確認試験
    「技術士第一次試験実施大綱」に、「一次試験試験の程度は、共通科目については4年制大学の自然科学系学部の教養教育程度、基礎科目及び専門科目については、同学部の専門教育程度とする。」と明記されています。
    すなわち、一次試験はエンジニアリング系大学の専門課程、具体的にはJABEE認定課程を修了したと同等程度の基礎知識を有しているか否かを確認する試験です。
    なぜいまさらこんなことを言うかというと、「どんな問題が出るか」、「正解は何か」がこの点に集約されているからです。

  2. 大学の「教科書」から出題される
    一次試験問題は「大学で教えていることを出題する」ことがルール化されています。
    大学では基礎知識を教えますから、例外的な部分はあまり入れずに一般論を広く浅く教えます。つまり、極論すれば、実現場での様々な例外やそれに対する技術、あるいは各技術者の経験則とは無関係に、「大学の教科書には何と書いてあるか」を問う試験だと言うことができるでしょう。したがって、このような現実をまずは賛否を別にして認識し、それに対処するべきです。

  3. 基礎科目は応用問題、専門科目は大学での分野ウェイトで出題
    15〜16年度試験に対する、出題内容が単純すぎる等の問題指摘を受けて、17年度以降の試験では、
     ・基礎科目は一捻り加えた応用問題が多く出題される。
     ・専門科目は大学で中心的に教えられている土質・構造・河川水文にウェイトが置かれる。
    という傾向が明確になりました。つまり、
     ・基礎知識を応用して解くような問題を出す
     ・実務ではなく大学で教えている内容・分野ウェイトで出題される

    ということです。
    ともかく、平成15年度の「大学の教科書から出す」、平成17年度の「基礎知識+応用力を問う」、「大学の教科書の内容・ウェイトで出題する」という「ルール化」を経て、そろそろ一次試験の内容も落ち着いたかなという印象を持っています。
    少なくとも今年度試験大綱が出た段階で問題指摘はなされていませんから、今年度は昨年度と同様の出題傾向が続くことはほぼ確実だと思います。
    ただ、20年度は合格率は激減したことから、「少し調整」のつもりでレベルを下げ、今年はまた激増というパターンになるかもしれません。

  4. 共通科目について
    共通科目はおおむね変化なく出題されていますので、過去問題でおおむねの傾向はつかめると思います。
    科目によって出題レベルが異なる傾向があり、例えば数学は高校の教科書レベルで十分合格ラインに到達できますが、地学は大学一般教養レベルの教科書がほしいところです。
    科目選択にあたっては、過去問題を解いてみるなど、十分検討する必要があるでしょう。
    なお、化学と地学を選択する受験者が少ないことから、これらが得意な人は簡単に平均以上の得点が可能と思われ、有利です。
    特に地学は単純暗記物が多いので、「詰め込み受験勉強」が有効な科目と思われます。
    勉強に使うテキストとしては、次のものをお勧めします。
    • 高校の教科書
      特に数学は、これだけで(数学Vまでやれば)50%程度の得点は十分可能になると思います。私は30年近く前に高校で使っていた教科書を今でも仕事の参考に使っていますが、こういったもので十分です。
    • 大学受験用のテキスト
      受験用テキストは、わかりやすく、また実力確認をしながら勉強を進めるPDCAでの学習ができるような構成になっています。本屋さんに行くといろいろなものがありますが、やはり「チャート式」などのスタンダードテキストがお勧めです。
    • 類似の試験問題
      たとえば公務員試験などです。例をあげておきます
      公務員試験『工学に関する基礎(数学・物理)の頻出問題』
      1種国家理工系公務員試験


  5. 基礎科目について
    基礎科目は17年度以降、応用的な出題が多くなっています。
    そのため、学生あるいは卒業後間もない人は得点しやすく、そういったものとは縁のない生活を送っていて知識が狭くなっている熟年者(特に理工系大学を出ていない人)は得点しにくくなっているという傾向が、さらに強くなってきたといえます。
    • スタンダードな対策
      出題傾向にあわせたスタンダードな対策としては、
       1.最低限の知識を身につけ、一歩踏み込んだ知識も持っておく。
       2.数多くの問題をこなし、トレーニングによって応用力を鍛える。
      というようなことが考えられます。
      そのためには、次のような具体的方法が考えられます。
      (1) 大学で使っているテキストなどを用いて勉強する
      大学の理学工学系で使う「物理学基礎」とか「構造力学」とか、そういったテキストを復習してみるのは効果的ではないかと思います。
      入手は、インターネットでできますが、どんな本かわからないという人は、最寄の技術系学部のある大学内の売店、あるいは大学の近くにある本屋さんなどへ出かけてみるといいでしょう。参考までに、私の持っている「大学テキスト」のリストを
      こちらに示します。
      (2) 多くの問題を解く
      このサイトの練習問題や演習問題、模擬試験など、あるいは市販の書籍などで、とにかく多くの問題を解いて応用力を身につけるトレーニングをします。
      ただし大事なことは、やみくもに問題を解くのではなく、正解に至る過程を勉強しながら解いていくことが必要です。つまり、正解がどれかということより、なぜ正解かということにこだわることが必要です。
      なお、こういったトレーニングと平行して、専門書籍やインターネットで知識を広げておくと効果があがります。

    • 効率的な対策
      最もお勧めな方法は、次のやり方です。
      1. サービス文章題を優先する
         基礎科目は、できるだけ効率的に最低ラインの6点に到達するようにしますが、そのためには、文章題を優先するのが一番です。
         基礎科目の問題は、主な問題タイプとして@文章題、A計算問題に分けられます。
         そして文章題はさらに@-1常識感覚で解ける問題と、@-2知識がないと解けない問題に分けられます。合格率が高い年は@文章題、特に@-1のサービス文章題が多くなる傾向があります。
         そこで、まず文章題を探しましょう。そして文章題の中から@-1サービス文章題を探して、これを手早く解いていきましょう。
      2. セオリー計算問題で補う
         サービス文章題だけで最低ラインに到達すればいいですが、なかなかそういうことはありませんし、それだけで5分野3問ずつの解答ができるわけでもありません。
         サービス文章題の次に狙い目なのは、セオリー計算問題です。計算問題の中には、よく出題されるセオリー的な計算方法を知っていれば簡単に解ける問題が多くあるのです。知識を必要とする文章題は「知っているか知っていないか」だけの勝負ですから、考えても無駄です。しかしセオリー計算問題は、いくつかの簡単な計算方法を覚えていれば対応できます。 
      3. あとは当てずっぽうでいい
         前記のサービス文章題とセオリー計算問題でおそらく最低ライン近くまでいきますので、あとは当てずっぽうでもかまいません。それでも正解率20%です。もちろん実際には問題文をちゃんと読んで考えて、少しでもそれらしい選択肢を選ぶと思いますから、まるっきりの当てずっぽうばかりでもないと思いますが。 

      参考図書
      一次試験のうち基礎科目と適性科目の受験対策をまとめました。
      基礎科目については9種類、余裕がある人のための追記を含めても13種類の問題に絞り込みました。
      問題を数多く解いてトレーニングを積むという人が多いのですが、わかったようなわからないような状態で演習問題を解きまくるのが果たして効率的だろうかという疑問もあって、とにかく頻出問題に対する理解を深めることに特化しています。
      そして適性科目とあわせて50問の練習問題も掲載しました。
      購入はこちら
      一次試験突破マニュアル
      内容: 拙著「技術士試験を応援する 第一次試験合格法〜基礎科目・適性科目編」の要約をベースに、平成19〜22年度試験内容を踏まえて補足し、専門科目(建設部門)の解説を加えました。
      また、基礎科目・適性科目・専門科目(建設部門)の平成22年度試験問題と正解・解説も掲載しています。
      さらに、サイトで公開しているオールインワンマニュアルに掲載しているものをベースにして作成した模擬試験を、基礎科目、専門科目(建設部門)について添付しています。
      形式: PDFファイル A4サイズ93ページ(マニュアル本体) + 模擬試験(問題および正解・解説)2編(基礎科目、専門科目)
      金額: 1,000円
      購入はこちらから
      ※ダウンロードできない・支払い条件に対応できない等で購入できない場合は、こちらにご相談ください。

  6. 専門科目について
    • 大学教科書で勉強を
      建設部門の専門科目は、知識体系や考え方を問うというより、断片的な知識を問う問題が目立っています。これは、大学で使っているテキストなどの出典から拾い出しのような出題をしているためではないかと思われます。
      さらに、17年度から顕在化した傾向として、大学で中心的に教えている内容に偏って出題されるということがあります。
      以上のことから、専門科目対策は、大学教科書で学習するのがいいと思われます。
      大学で教えている内容はあくまで原理原則であり、一次試験はこういった原理原則を知っているかどうかを問うものですから、「本当の基本原則を学習する」ということをよく理解した上で、大学で教科書として使っているような文献を購入して、それで勉強するのが一番です。
      普通に本屋さんで売っている土木工学の本などでかまいませんが、実務本は避けるほうがいいでしょう。たとえば土質でいえば地盤調査法や土質試験の方法と解説などではなく、土質工学ハンドブックなど「○○学」と書いてある本がいいでしょう。ただし、河川砂防基準道路構造令は別です。これは十分試験参考書になります。
      こういったテキストは、インターネットや技術系学部のある大学の売店や大学の近くにある本屋さんなどで購入できます。参考までに私の持っている「大学テキスト」のリストをこちらに示します。
    • 土質・構造・河川を主体に出題される
      出題内容は、土質・構造・河川水文主体です。
      具体的土質基礎(特に土質工学)、鋼構造コンクリート(特に構造力学・橋)、河川砂防(特に河川)で各5〜6問計16問、つまり全体の半分近くが出題されています。そして3問出題が都市計画、道路、建設環境で、他は2問ずつとなっています。さらに、下表に示すように各選択科目の出題数はあまり変動がなく、また科目ごとの出題内容もほとんど一定しています。 よって、今後も似たような問題構成が続くと思われます。
       このことから、勉強のウェイトも、土質基礎・鋼構造コンクリート・河川砂防に置きましょう。さらに正確には、土質、構造力学・鋼構造、河川・水理に重点をおきましょう。
      選択科目 21年度出題数・内容 22年度出題数・内容 23年度出題数・内容
      土質基礎 5 土質5 5 土質5 5 土質5
      鋼コン 6 構造力学2鋼2コン2 5 構造力学2道路橋2 コン1 5 構造力学2鋼1道路橋1 コン1
      都市計画 3 都計2都市交通1 3 都計2都市交通1 4 都計3都市交通1
      河川砂防 7 水理1河川4砂防1海岸1 6 水理1河川3砂防2 6 水理1ダム1河川3砂防1
      港湾空港 1 空港1 2 港湾1 空港1 2 港湾1 空港1
      電力土木 2 水力発電1発電全般1 2 水力発電1発電全般1 2 水力発電1原子力発電1
      道路 4 道路設計1舗装1
      道路計画2
      4 道路設計1舗装1
      道路計画1
      費用便益1
      3 道路設計1舗装1
      道路計画1
      鉄道 1 線路1 1 線路1 1 全般1
      トンネル 2 シールド1山岳1 2 シールド1山岳1 2 シールド1山岳1
      施工計画 2 工程管理1安全管理1 2 工程管理1施工管理1 2 工程管理1施工管理1
      建設環境 2 アセス1環境法令1 3 アセス1環境法令1
      リサイクル1
      3 アセス1環境法令1
      生物多様性1

  7. 適性科目について
    適性科目は15年度から出題傾向が変わりました。以前は一般常識を聞いているような問題が多かったのですが、15年度は技術者倫理の知識を問う問題が増え、年ごとに多少変化しつつ、同じ傾向が続いています。
    この科目も「教科書」から出されています。「教科書」は、こちらにいくつか紹介しました。
    試験の正解は受験者個人の倫理判断を聞いてはいないのです。テキストには何と書いてあるかを聞いているのです。ここのところを勘違いしないことです。
    自分の倫理観は横において、「これは試験。出題者は何と答えさせたいのか」という発想で問題に向かうことが必要です。
    以上のようなことから、適性科目への対処法は次のようにまとめられます。
    (1) この試験は教科書に何と書いてあるかを聞いているということを認識する。
    (2) 教科書を特定し、その内容を勉強する。

    この2点です。
    内容が倫理(理念・信念にもつながる)であるだけに、「この本に書いてあることを正解にしなさい」と言われているようで釈然としない点もありますが、とりあえず試験に合格したいと思うのならば、このような技術者倫理体系があると割り切って覚えるしかないと思います。
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