=平成18年度試験について=
平成18年度の技術士第一次試験について、私見を述べています。
更新:2006.09.09

INDEX
1.試験の内容・合格基準
2.試験結果〜合格率など
3.一次試験の傾向
4.教訓:一次試験の特徴と対応について
 4-1 一次試験は基礎知識の確認試験
 4-2 大学の「教科書」から出題される
 4-3 共通科目について
 4-4 基礎科目について
 4-5 専門科目について
 4-6 適性科目について

1.試験の内容・合格基準

一次試験は、2006年10月9日(月・祝日)に行われます。
一次試験の合格基準は以下のとおりです。合格基準の発表資料はこちら、配点はこちら
わかりやすいように、共通科目をのぞいて考えましょう。
合格条件は、以下の4条件をすべて満たしていることです。
 (1) 基礎科目 15問×1問1点=15点 40%正解=6問6点以上
 (2) 専門科目 25問×1問2点=50点 40%正解=10問20点以上
 (3) 適性科目 15問×1問1点=15点 50%正解=8問8点以上
 (4) 基礎と専門の合計(15点+50点=65点)で50%正解=33点以上

上記のすべてを満たしていることが合格基準です。逆にいうと、
 ●基礎正解6問(6点)未満
 ●専門正解10問(20点)未満
 ●基礎と専門の合計得点が33点未満
 ●適性正解8問(8点)未満

のどれかに該当するとアウトです。なお、共通科目は平均点以上であることが合格基準です。
合否判断は、前記合格基準を満たしているかどうかで決まります。
基礎と専門のところがわかりにくいかと思いますので、図表にしてみました。なお、図はNagaseさんに作成していただきました。ありがとうございます。
基礎科目正解数 専門科目正解数 判定 不合格根拠
5以下 (何問でも関係なし) × 基礎正解40%未満
6 13以下 × 基礎+専門で50%未満
6 14以上
7 12以下 × 基礎+専門で50%未満
7 13以上
8 12以下 × 基礎+専門で50%未満
8 13以上
9 11以下 × 基礎+専門で50%未満
9 12以上
10 11以下 × 基礎+専門で50%未満
10 12以上
11 10以下 × 基礎+専門で50%未満
11 11以上
12 10以下 × 基礎+専門で50%未満
12 11以上
13 10以上
(何問でも関係なし) 9以下 × 専門正解40%未満
なお、「基礎科目で0点の分野があると不合格」というウワサが流れたことがありますが、それはガセネタです。現実に確実に0点分野がある(完全に捨てて解答せず)人も合格してますし、技術士会に直製電話で問い合わせ、「技術士会としてはそのような基準は設けていない」との答えをいただいてもいます。これは某受験参考書にその旨の記載があったのがウワサの元のようですが、無責任極まりない話だと思います。

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2.17年度試験結果〜合格率など

●受験者数・合格人数・合格率
17年度試験の受験者数は36,556人で、15年度(56,873人)の64%、16年度(43,968人)の83%となりました。年々緩やかに減少しています。これは、15年度の新制度完全移行に伴い激増した受験生の多くが一次試験を突破し終えたこと、JABEE認定校の増加に伴う一次試験免除者が増加したことが主な原因と思われます。
合格者数は10,063人、合格率は対申込者22.6%、対受験者27.5%で、16年度(合格者22,978人、対申込者合格率41.5%、対受験者合格率52.3%)に対して、合格者数で4割強、合格率で5割強に激減しました。建設部門を除けば、対申込者合格率32.6%、対受験者合格率39.6%で、建設部門が全体の合格率を引き下げてはいるものの、他部門も例年に比べ合格率はダウンしています。なお、建設部門の合格率は、対受験者20.1%で、16年度の48.3%から4割程度に激減しています。

部門 申込者数
(人)
受験者数
(人)
合格者数
(人)
対申込者合格率% 対受験者合格率%
16年度 17年度 16年度 17年度
機械 2,219 1,781 853 58.0 38.4 75.7 47.9
船舶・海洋 28 22 16 48.4 57.1 68.2 72.7
航空・宇宙 69 47 23 29.3 33.3 44.7 48.9
電気電子 3,059 2,502 430 39.3 14.1 50.3 17.2
化学 438 362 172 42.3 39.3 56.1 47.5
繊維 47 38 13 44.6 27.7 53.2 34.2
金属 224 193 76 62.2 33.9 72.6 39.4
資源工学 30 23 18 55.6 60.0 76.9 78.3
建設 27,531 22,605 4,535 38.4 16.5 48.3 20.1
上下水道 2,777 2,281 721 51.2 26.0 63.4 31.6
衛生工学 942 782 345 50.4 36.6 65.2 44.1
農業 1,185 1,023 571 67.0 48.2 83.9 55.8
森林 372 301 141 45.0 37.9 56.7 46.8
水産 159 133 52 43.9 32.7 53.7 39.1
経営工学 190 153 105 43.9 55.3 55.9 68.6
情報工学 1,139 893 617 38.3 54.2 49.3 69.1
応用理学 759 634 208 25.7 27.4 31.0 32.8
生物工学 475 402 175 43.0 36.8 59.4 43.5
環境 2,510 2,077 766 38.4 30.5 47.5 36.9
原子力・放射線 358 304 226 71.2 63.1 84.4 74.3
合計 44,511 36,556 10,063 41.5 22.6 52.3 27.5


●合格者数の内訳
受験内容による合格者数の内訳を見てみます。

(共通科目受験者)
共通科目を受験して合格した人は15年度(全体で317人、建設部門で133人)から16年度(全体で455人、建設部門182人)にかけて増えました。これは、大学生・専門学校生などの受験者が増えていることを示していると思われるものの、JABEE認定校の増加で、今後は減少していくのではないかと予測しました。結果、17年度は363人(建設部門71人)で、予想通りでした。JABEE認定校はさらに増えているので、今後は共通科目受験者はさらに減少するものと思われます。
なお、共通科目の選択科目は、数学・物理が圧倒的多数で、次いで生物、地学と化学はマイナー科目になっています。これは例年変わりません。
なお、共通科目の合格ラインは平均点以上であることですが、受験生の皆さんからの情報では、50%以上得点できればおおむね安全圏のようです。

(適性科目のみ受験者)
適性科目のみの受験者(既技術士)の合格者数は、全体で727人人、建設部門492人でした。15年度は同じく7,631人・5,489人、16年度は1,803人・1,244人ですから、どんどん減っており、15年度の実に1割になりました。これは、既技術士の多くが15年度に一次試験を突破したことを示しています。しかしなお、700人もの旧制度技術士が一次試験を受けていなかったとは、まあのんびりしているなあと感じます。
なお、基礎科目・適性科目免除者、すなわち既技術士で登録部門とは別部門で一次試験を受験した人が15人います。これは、力だめしあるいは単なる勘違い(別部門の二次試験に挑戦するためには、挑戦部門での一次合格が必要と思っていた)と思われます。

部門 受験内容による合格者の内訳 共通科目選択状況
合計 一般 共通受験 適性のみ 基礎適性 数学 物理 化学 生物 地学
機械 853 745 97 11 0 92 95 2 2 3
船舶・海洋 16 15 1 0 0 1 1 0 0 0
航空・宇宙 23 19 2 2 0 2 2 0 0 0
電気電子 430 395 18 17 0 17 17 1 0 1
化学 172 159 11 2 0 5 5 11 1 0
繊維 13 12 0 1 0 0 0 0 0 0
金属 76 73 0 3 0 0 0 0 0 0
資源工学 18 16 0 2 0 0 0 0 0 0
建設 4,535 3,967 71 492 5 55 46 8 13 20
上下水道 721 637 14 69 1 10 8 2 4 4
衛生工学 345 310 3 29 3 2 2 0 1 1
農業 571 506 27 38 0 7 5 14 23 5
森林 141 133 3 5 0 1 0 0 3 2
水産 52 48 0 4 0 0 0 0 0 0
経営工学 105 98 4 3 0 2 2 0 2 2
情報工学 617 577 29 11 0 19 18 1 11 9
応用理学 208 176 6 26 0 4 5 0 1 2
生物工学 175 135 40 0 0 3 1 38 38 0
環境 766 714 34 12 6 8 6 14 24 16
原子力・放射線 226 223 3 0 0 3 3 0 0 0
合計 10,063 8,958 363 727 15 231 216 91 123 65

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3.一次試験の傾向

最近5年間の建設部門における受験者数・合格者数・合格率を見てみましょう。
なお、適性のみ受験を除いた対受験者推定合格率=(合格者数−適性のみ合格者数)/(受験者数−適性のみ合格者数)は、14年度が4.7%、15年度が43.7%、16年度は43.8%、17年度は18.3%です。
年度 申込者数 受験者数 合格者数 対申込者合格率 対受験者合格率
13 15,048 10,414   968  6.4  9.3
14 22,330 15,535  1,907  8.5 12.3
15 44,821 37,833 19,370 43.2 51.2
16 35,628 28,325 13,672 38.4 48.3
17 27,531 22,605 4,535 16.5 20.1

この数値から、一次試験の傾向についてまとめてみます。

  • 合格率が激減
    15年度は受験者数・合格者数・合格率とも激増し、16年度はほぼ同水準で推移した。これを見て新制度導入に伴う一時的変動が落ち着きつつあると判断したが、17年度は合格率が激減した。
    この原因は、主に問題難易度が上昇したことにあると思われる。
    また、15年度以降の試験で一気になだれ込んだ「二次試験候補生」の中から基礎力のある受験生がクリアして抜け、またJABEE認定校増加により科学技術系大学卒業生の受験が減り、結果的に受験生の平均レベルが落ちているという可能性も否定できない。
  • 共通科目について
    共通科目受験合格者推移を見ると、学生の受験気運が高まっている一方で、JABEE認定による一次試験免除効果が現れて、結果的に減少に転じているもとお思われる。
  • 基礎科目について
    基礎科目は、一捻り入った出題が増えた。このため、表面的な暗記勉強では対処できない問題が増えたと思われる。
    技術士会技術士試験等検討特別委員会の「技術士試験に関する改善提案」で基礎科目での「丸暗記」からの脱却が提案されていたが、予想以上に早く改善案が取り入れられたということだと解釈される。
    このことから、今年度応用的問題が増えたのは偶然ではないと判断され、今後も17年度と同様、暗記勉強だけではクリアできない問題が主体になると思われるので、基礎知識マスター後、応用力を養う必要が出てくると思われる。
  • 専門科目について
    問題数が増加し、建設部門については選択科目ごとに均等に問題数が配分されるのではないかと予想していたが、逆に16年度より偏りが顕著になり、土質、構造、河川水文等に顕著なウェイトが置かれた
    このため、土質基礎・構造・河川砂防などに縁遠い分野の実務技術者において、取りこぼしが多くなったのではないかと推定される。
    これも、 技術士会技術士試験等検討特別委員会の「技術士試験に関する改善提案」で専門科目でのより基礎的なレベルでの出題が提案されていたのに沿ったものであると解釈される(詳細は後述)ので、今後もこの傾向は続くと思われる。
  • 適性科目について
    適性科目は、15年度以降は技術者倫理に関する知識問題が増えている。今後も、「技術者倫理を知識として知っているか」という問題が出されていくものと思われる。その場合、JABEE認定校で使われている技術者倫理のテキストが出題出典となっていくと予想される。
    同時に、17年度は単なる知識のみにとどまらず、哲学関連知識にも出題範囲が広げられそうな兆候も見られる。しかしこれは出題者の思想の違いによるものかもしれず、何ともいえない。
    いずれにせよ適性科目は、合格ラインに達することは易しい点では変わりない。
  • 既技術士の受験について
    既技術士の適性のみ受験は、15年度に駆け込みが大量にあったものが落ち着いてきていると思われ、今後はさらに減少するのではないかと予想される。
  • 失格条項について
    16年度より、試験の厳正化を目的とした「失格条項」が導入された。厳格な公平性の確保という目で見れば、その内容自体は異常でも不適切でもないが、もし失格者が大量に出ているのであれば、周知の徹底や失格になりにくい工夫も検討されるべきと考える。
    ※たとえば、基礎科目は30問弱の中から15問選択解答であり、解答数がオーバーすると失格になる。RCCM試験にも同様に20問中10問選択解答という問題があるが、答案用紙には解答マークの他に、選択問題番号を記入するマークもある。マーク数が多くなり手間が増えるが、失格になる可能性は減少する。
  • 18年度の難易度
    合格率が一気に低下したのは、問題難度アップが原因と思われる。これに伴い合格者数も、16年度約23,000人→17年度約10,000人と半分以下になった。
    このことを踏まえた18年度の予測であるが、2つの全く異なる可能性が考えられる。
    • 難易度が下がる?
      順当に考えれば、文科省は技術士数を増やしたがっていることから、17年度は意図するところと異なった結果となってしまったと思われる。
      当然ながら、18年度は再び難度を抑えて合格率アップを図るのではないかと思われる。
    • 難易度は高いまま?
      JABEE認定による一次試験免除者を加えると、新規修習技術者誕生数は、さほど減少していないと推定される。JABEE認定プログラム数は年々増加していることも考え合わせれば、一次試験合格者数を増やさないと困る理由は特になく、ここで試験何度の調整を行う必要もないと判断することが考えられる。
      さらにうがった見方をすれば、文科省はJABEE認定校を増やしたいのであるから、「JABEE認定でなければ一次試験を受けないといけなくなって、大変だよ」という状況を作り出したいと思っているかもしれない。
      今回の問題難度アップは、もしかしたら一次試験のハードルをある程度高めようという意図が働いているのかもしれない。
      そうであれば、17年度と同程度の出題レベル・合格率で推移する可能性も十分にある。
なお、15年度以降、JABEE認定校が激増しています。受験生数≦大学定員総数となる大学全入時代を迎えて大学の生き残り競争が激化する中、JABEE認定校はさらに増加すると思われますので、今後数年で一次試験受験者は大きく減少し始め、JABEE修了による修習技術者が、一次試験合格による修習技術者数を上回ってくるものと予想されます。

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4.教訓:一次試験の特徴と対応について

 17年度試験内容を踏まえて、18年度の一次試験はどうなるか?そして対策は?ということについて、私なりの考えをまとめてみたいと思います。

  1. 一次試験は基礎知識の確認試験
    「平成18年度技術士第一次試験実施大綱」(こちら)に、「一次試験試験の程度は、共通科目については4年制大学の自然科学系学部の教養教育程度、基礎科目及び専門科目については、同学部の専門教育程度とする。」と明記されています。
    すなわち、一次試験はエンジニアリング系大学の専門課程、具体的にはJABEE認定課程を修了したと同等程度の基礎知識を有しているか否かを確認する試験です。
    なぜいまさらこんなことを言うかというと、「どんな問題が出るか」、「正解は何か」がこの点に集約されているからです。


  2. 大学の「教科書」から出題される
    15年度の建設部門専門科目4−4は次のような問題でした。

    4−4 溶接に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
    (1) 母材(接合されるべき材)と変わらない継ぎ手強度を得ることが出来る。
    (2) 溶接部の熱影響は複雑であり、溶接以外の接合方法に比べて応力の流れが複雑でかつ明確でない。
    (3) 設計、施工の自由度が大きく、適用しうる板厚の範囲が広い。
    (4) 外形的あるいは熱影響による不良な溶接により、応力集中箇所が出来やすい
    (5) 一体化した構造を作りうるので、減衰性の低下を招きやすい

    この問題の正解が(2)か(5)か、「正解を語る掲示板」でずいぶんと議論された中、次のような情報がありました。
    この問題についてですが、大学時代(10年も前ですが)に使っていた教科書で以下のように記述されてます。
    伊藤学著『大学講義シリーズ11 鋼構造学』(コロナ社) 「溶接の特徴」の項より
    ……機械的接合方法であるリベットあるいは高力ボルト接合と比較して次のような利点がある。
    連続的接合であるので、応力の流れが概して円滑である。
    ……構造上の特徴から次のような点に注意しなければならない。
    むだのない、一体化した断面に作りうるということは、構造物あるいはその構成部材における剛性の不足や振動減衰性の低下を招きやすい。
    正解は(2)です。
    「いや、教科書ではそう書いてあるかもしれないが、実際はそうとは限らない」
    という反論はあるでしょうが、これが正解であることは覆りません。
    一次試験の問題は、技術士会から依頼された作成者が作ると思われますが、この問題を技術士会に提出するときには、正解がどれかということと、その根拠としての問題出典を添えるはずです。
    14年度の一次試験の後、
    「大学で習っていない内容の問題が出ている。作成者は大学で何を教えているかを知らないのではないか。大学関係者に出題させるべきだ」
    という意見が文科省科学技術・学術審議会技術士分科会(確かそういう名前)で出されていたことを考え合わせると、15年度以降の試験問題は、基本的に「大学の教科書」からの出題であったと思われます。
    大学では基礎知識を教えますから、例外的な部分はあまり入れずに一般論を広く浅く教えます。つまり、極論すれば、実現場での様々な例外やそれに対する技術、あるいは各技術者の経験則とは無関係に、「大学の教科書には何と書いてあるか」を問う試験だと言うことができるでしょう。
    したがって、このような現実をまずは賛否を別にして認識し、それに対処するべきではないかと思います。
    また、技術士会の技術士試験等検討特別委員会で「技術士試験に関する改善提案」(中間報告)によると、
     ・問題数の増加(選択の幅を広げる)
     ・基礎科目での「丸暗記」からの脱却、専門科目でのより基礎的なレベルでの出題
    等の提案がなされていました。
    17年度試験では、基礎科目は一捻り加えた応用問題が多く出題され、まさに改善提案の通りになりました。専門科目は、一見して難易度が上がったようにみえますが、大学で中心的に教えられている土質・構造・河川水文にウェイトが置かれたということで、教科書に沿った出題がより顕著になったという意味において、より基礎的なレベルでの出題と言えるのではないかと思います。
    上記改善提案がこんなに早く、明確な形で試験に取り入れられるとは思いませんでしたが、今後もこのような傾向は続くと思われます。
    つまり、
     ・基礎知識を応用して解くような問題を出す
     ・実務ではなく大学で教えている内容・分野ウェイトで出題される

    ということです。
    このような、「やりながら考えて修正して」を繰り返す試験改革は、大学入試における共通一次試験以来の文科省のお家芸です。PDCAサイクルを回しながら改善していっているようでいて、実は各方面からの要請に迎合しているだけ・・・・という面も昨今の教育改革を見ていると無きにしも非ずかなァと懸念されますが・・・・。


  3. 共通科目について

    共通科目はおおむね変化なく出題されていますので、過去問題でおおむねの傾向はつかめると思います。

    科目によって出題レベルが異なる傾向があり、例えば数学は高校の教科書レベルで十分合格ラインに到達できますが、地学は大学一般教養レベルの教科書がほしいところです。
    科目選択にあたっては、過去問題を解いてみるなど、十分検討する必要があるでしょう。
    なお、化学と地学を選択する受験者が少ないことから、これらが得意な人は簡単に平均以上の得点が可能と思われ、有利です。
    特に地学は単純暗記物が多いので、「詰め込み受験勉強」が有効な科目と思われます。
    勉強に使うテキストとしては、次のものをお勧めします。
    • 高校の教科書
      特に数学は、これだけで(数学Vまでやれば)50%程度の得点は十分可能になると思います。私は30年近く前に高校で使っていた教科書を、今でも使っていますが、こういったもので十分です。
    • 大学受験用のテキスト
      受験用テキストは、わかりやすく、また実力確認をしながら勉強を進めるPDCAでの学習ができるような構成になっています。本屋さんに行くといろいろなものがありますが、やはり「チャート式」などのスタンダードテキストがお勧めです。
    • 類似の試験問題
      たとえば公務員試験などです。例をあげておきます
      公務員試験『工学に関する基礎(数学・物理)の頻出問題』
      1種国家理工系公務員試験


  4. 基礎科目について

    • 14年度から15年度にかけて
      やさしい問題とむずかしい問題の差が広がったように思われいます。
      また、私が15年度の受験対策として示した「覚えるべき知識」、あるいは模擬試験で問うた知識のレベルに比較して、もう一歩踏み込んだレベルの問題が出たと思います。
    • 16年度
      16年度は大きな変化はありませんでしたが、「細かい丸暗記もの」が減った印象がありますので、日常的に科学技術に関する知識を蓄積している人にとっては得点しやすかったのではないかと思います。
      また、出題傾向が広がってきました。つまり、ヤマがかけにくくなってきました。たとえば材料・化学・バイオ分野では、15年度まではDNA・クローンの問題が最低1問出ていましたが、16年度は遺伝子に関する問題が出ただけでした。技術連関分野でも、必ず出ていたエネルギー単位換算がらみの計算問題がなくなっています。すなわち、一夜漬けがやりにくくなってきたといえます。
      すなわち、科学技術に関する素養(基礎知識と思考力)を持っているかどうかを試すという目的に照らすと、完成度が上がってきたといえる思います。
    • 17年度
      単純な知識確認問題から、それを使って応用的思考ができるかどうかを問う、一捻り加えた問題が増えました。
      たとえば設計・計画分野の1-1-1は例年も出ているシステム信頼設計の問題ですが、フォールトツリーを使い、信頼性ではなく危険率で計算するようにしています。このため、直列・並列とAND/ORの関係が正しく理解できていない(うわべだけ理解している)と、ANDとORを取り違えた答えを出してしまいやすくなっています。実際そのような人は多くいたようです。
      同じく1-1-6はさらに応用性の高い問題になっていますが、これも故障率(危険率)とAND/ORのひっかけがあります。さらに今度はAND/ORとも直列並列とも書いてないので、自分でシステム信頼性の問題であることを見抜かねばなりません。この知識が身についていれば非常に簡単なのですが、頭で覚えているだけであれば、手ごわい問題となるでしょう。
      情報も、アルゴリズムやビットに関する問題が一捻り加えてあり、ットワークに関する問題もやや難易度が上げてあるようです。
      また、例年はサービス問題の多い材料化学バイオや技術連関では、さらに一歩踏み込んだ知識を求められるようになっています。
      このように、一捻り加えたり求める知識レベルを上げたりして、基礎科目は難しくなりました。
    以上のことから、学生あるいは卒業後間もない人は得点しやすく、そういったものとは縁のない生活を送っていて知識が狭くなっている熟年者は得点しにくくなっているという傾向が、さらに強くなってきたといえます。例年公表している「これだけ覚えてシート」のような一夜漬け特訓で身につけられる知識では、なかなか太刀打ちできなくなりつつあります。

    そこで対応としては、
     1.最低限の知識を身につけ、一歩踏み込んだ知識も持っておく。
     2.さらに、その知識を使った様々な応用例を知っておく
    というような勉強をする必要があるでしょう。

    そのためには、次のような対策が考えられます。
    (1) 大学で使っているテキストなどを用いて勉強する
    出題ネタ本を勉強すれば、ほぼ確実に問題範囲はカバーできます。ただし大変なボリュームになります。
    大学の理学工学系で使う「物理学基礎」とか「構造力学」とか、そういったテキストを復習してみるのは効果的ではないかと思います。
    入手は、インターネットでできますが、どんな本かわからないという人は、最寄の技術系学部のある大学内の売店、あるいは大学の近くにある本屋さんなどへ出かけてみるといいでしょう。参考までに、私の持っている「大学テキスト」のリストを
    こちらに示します。
    (2) ある程度ヤマをはって、基礎知識→応用力と段階的に勉強する。
    そのようなテキストが入手できないとか、時間が取れない人は、過去問題から出題されそうな事項を絞りこんで(ヤマをはる)、それに関する最低限の知識を身につけた上で、さらに専門書籍やインターネットで知識を広げておくという方法があります。
    絞込みと最低限の知識は、たとえば試験直前に公開した「これだけ覚えてシート
    (こちら)でも、解析分野を除けばそこそこできます。ただ、これはあくまで最初のステップとしての知識効率的に仕入れるツールとして使うべきであり、もはやこれだけでクリアできるとは思わないほうがいいでしょう。
    「自分は科学技術に関する素養があまりない」と思う人は、できるだけ早い時期からコツコツと知識を広げる努力が必要だと思います。そして知識を広げるには、インターネットの活用がお勧めです。専門書を買って、膨大な記述の中から知識を拾い出すより、はるかに効率よく知識を吸収できます。
    そして、応用力を身につけるようにしましょう。実際にどのようにその知識が使われているのか、これもインターネットが活用できますので、できるだけ実例に関する知識を身につけ、簡単なメソッドなどは身につけておきましょう。。
    その課程で関連雑学も身につけばしめたものです。「思考力問題」というのは、実は関連雑学を知っていると解ける問題が少なくありません。



  5. 専門科目について

    建設部門の専門科目は、知識体系や考え方を問うというより、断片的な知識を問う問題が目立っています。これは、大学で使っているテキストなどの出典から拾い出しのような出題をしているためではないかと思われます。16年度試験前に、前述の改善提案を受けて、さらに教科書的になっていくのではないかと予想しましたが、そのとおりになってきています。
    選択肢記述の正誤については、極論すれば自分の知識や経験から考えて判断するよりも、教科書に何と書いてあるかで正解を判別するほうが確実ということになります。 特に、エンジニアリング系大学へ行っていなかったり、行っていても教わったことを忘れているなどして、もっぱら仕事を通じて知識を得てきた人は要注意です。

    さらに、17年度に顕在化してきた傾向として、
     大学で中心的に教えている内容に偏って出題
    される(土質・構造・河川水文主体
    ということがあります。17年度は土質5問、構造4問、河川水文5問で、この3分野だけで14問、基礎や海岸も加えれば16問が出題されました。前述のように、専門科目は14問とれば十分(14問以上得点する必要なし)なので、土質・構造・河川水文に強ければ専門科目は楽勝です。逆にこれらの分野に弱ければ、積み上げは大変です。

    以上のことから、専門科目対策としては、大学教科書で学習するのがいいと思われます。
    大学で教えている内容はあくまで原理原則であり、一次試験はこういった原理原則を知っているかどうかを問うものですから、「本当の基本原則を学習する」ということをよく理解した上で、大学で教科書として使っているような文献を購入して、それで勉強するのが一番です。普通に本屋さんで売っている土木工学の本などでかまいませんが、実務本は避けるほうがいいでしょう。たとえば地盤調査法や土質試験の方法と解説、河川砂防基準などではなく、土質なら土質工学ハンドブックなど、「○○学」と書いてある本がいいでしょう。
    こういったテキストは、インターネット・技術系学部のある大学内の売店・大学の近くにある本屋さんなどで購入できます。参考までに、私の持っている「大学テキスト」のリストをこちらに示します。
    なお、「これだけ覚えてシート」には最低限の知識をまとめておきましたが、安全圏に入るだけの知識を身につけるには、これだけでは不十分です。

  6. 適性科目について
    適性科目は15年度から出題傾向が変わりました。以前は一般常識を聞いているような問題が多かったのですが、15年度は技術者倫理の知識を問う問題が増え、16年度は大部分がそういった問題になりました。
    この科目も「教科書」から出されています。「教科書」は、こちらにいくつか紹介しました。
    試験の正解は受験者個人の倫理判断を聞いてはいないのです。テキストには何と書いてあるかを聞いているのです。ここのところを勘違いしないことです。
    自分の倫理観は横において、「これは試験。出題者は何と答えさせたいのか」という発想で問題に向かうことが必要です。
    以上のようなことから、適性科目への対処法は次のようにまとめられます。
    (1) この試験は教科書に何と書いてあるかを聞いているということを認識する。
    (2) 教科書を特定し、その内容を勉強する。

    この2点です。
    内容が倫理(理念・信念にもつながる)であるだけに、「この本に書いてあることを正解にしなさい」と言われているようで釈然としない点もありますが、とりあえず試験に合格したいと思うのならば、このような技術者倫理体系があると割り切って覚えるしかないと思います。
    なお、17年度はこれら「教科書」のバックボーン知識、哲学・倫理学の知識に踏み込んだ問題も見られましたが、問題数としては知れたものですので、合格点を取るという視点では、無視してかまいません。

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