口頭試験が進み、いろいろな方から内容をご連絡いただいているのですが、少し気がついたことというか、これから口頭試験を受験される方にぜひ留意しておいていただきたいことがいくつかありますので書かせていただきます。
●経験論文説明は、初めて聞く人に説明するつもりで
経験論文をはじめとする筆記答案の採点者が、口頭試験の試験官を務められるようですが、経験論文内容説明のときは、初めて聞く人に説明するつもりで説明しましょう。
試験官が忘れていることもあるようですし、筆記採点者と交代していないとは限りません。
●質問の内容が整理できなければ聞き返そう
「なぜこの人はこんなことを言うのだろう」
「一体何が聞きたいのだろう」
こう思いつつも、緊張から来る焦りで「何か答えなくちゃ」と思う気持ちが勝ってしまって、「こういう意味かな」などと確証のないままに回答していくけれど、試験官の聞きたい答えが出来ず、さりとて試験官も何が聞きたいのか明確にしてくれず・・・・
こうやって問答がかみ合わないまま時間がすぎてしまうのが最悪です。
質問の意図がわからなければ聞きましょう。
●よく知っている試験官に当るとラッキー
「この道のエキスパートに当ったらゴマカシもきかないし、やだな」
と思うかもしれませんが、それはむしろラッキーです。その道のエキスパートがあなたの筆記答案に合格点を出してくれたんですから、あなたの技術力は保証済みなのです。
むしろ、選択科目までは合致しているけど、専門分野・経験論文テーマには詳しくない採点者の評価は確証のないものですから、口頭試験でひっくり返る可能性すらあります。
つまり、口頭試験で必要とされるのは、その道のエキスパートをうならせる論説ではなく、その道の専門家ではない人を納得させるコミュニケーション力なのです。
●じっとしてないで!
説明するときなどは、身振り手振りを大いに加えましょう。あまり派手なのはわざとらしくて嫌な印象を与えますが、じっと固まっているよりはよほどましです。
体を動かした方が緊張もほぐれますし、舌も回るようになります。
この週末、またかなりの受験生さんが挑戦されます。リラックスしてがんばってきてくださいね。
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No.6391 改正官製談合防止法が成立 投稿者:APEC 投稿日:2006/12/08(Fri) 12:03
官製談合防止法が改正されました。改正点は「ほう助」と罰則規定の新設です。
口頭試験では、こういった倫理上の問題を取り上げ、「それをなくすためにはどうしたらいいと思うか」という質問が出ることがあります。
私の意見ですが、倫理(自律)・法(他律)・システム(仕組み)の3つの方向からのアプローチが必要ではないかと思っています。
倫理面からは、技術者倫理も含む倫理の向上です。具体的には組織内外における倫理教育の徹底、さらに高等教育段階での倫理教育(JABEEでは技術者倫理教育が必須ですね)といったことです。
法の面からは、今回の法改正のような、これまでの法にあった「抜け道」をふさぐことと、罰則強化による抑止力アップです。
システムの面からは、たとえ誰かが非倫理的な行動を取ろうとしても、それが組織や社会に影響を及ぼさないような仕組みを整備することです。
姉歯のような問題なら、検査システムの信頼性アップなどでしょうし、談合なら特定業者の連続高値受注ができないような評価制度とか査定制度の見直し、市民オンブズマンの活用などでしょうか。(あまり考えないで言っていますので、あくまで例です)
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No.6394 RE:口頭試験で注意してほしいこと 投稿者:くりろう 投稿日:2006/12/08(Fri) 13:56
こんにちは。
私の意見として述べます。
まず、官製談合のシステム自体と技術士倫理は、別の領域ではないかと思っています。
社会常識(トピックス)として認識は必要ですが、それを口頭試験の質問にするのは審査官として、ちょっと???です。
一方、姉歯事件は技術士倫理に係わる部分が多く、これは形を変えて質問されるテーマだと思います。
技術者が身近に感じる問題ですからね。
公共事業に対する市民オンブズマンの適否は微妙なところです。
技術レベルを理解して経済性との是非を問うているなら問題ないですが、
目先が少し違う部分に着目している感が否めません。
したがって、倫理の解決手段でオンブズマンを持ち出すのは技術士としては適さないと思います。
でも、こんな事象に頭を悩ますのは年のせいかもしれません。
あ〜30年前に戻りたい!(^^;)
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No.6398 RE:口頭試験で注意してほしいこと 投稿者:金物屋 投稿日:2006/12/08(Fri) 16:08
12/3に鋼構造で口頭試験を受けました。
業界に談合の摘発があったせいかも知れませんが
談合問題について質問を受けました。
「談合を防止するためには企業として、個人として
どうあるべきか?」
という質問でした。
低入札問題についてもどう考えているのかを
質問されました。
参考になれば幸いです。
私は全体を通じて上手く回答できたか不安で
発表までは落ち着けそうにありません。
皆さんと一緒に喜べることを願うばかりです...。
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No.6401 談合はそれなりに取り上げられているようです 投稿者:APEC 投稿日:2006/12/08(Fri) 18:45
うーん、談合については現実問題としてけっこう多く質問が出ているんですよ。
市民オンブズは技術者としては不適当かもしれませんね。第三者監視という意味でしたが。
ちょっと広げて、「企業や組織の社会からの信頼ということも考える技術者」として、あるいは経営者とか技術者とかいう「セクション」にこだわらず、共通項であるコンプライアンスについてとかいった視点では、そういうのもありかなと思ったのですが・・・・
純粋に技術者として何ができるかというと、たとえば業務原価を抑えて、競争力をつけることにより、談合しなくても大丈夫と経営者に思わせるような努力といったところでしょうか。
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No.6403 RE:口頭試験で注意してほしいこと 投稿者:sonny 投稿日:2006/12/08(Fri) 21:16
官製談合も発注者側及び受注者側の幹部となると技術者であることが多いと思います
良質な社会資本整備を低コストで進めるという目標に対して、談合はそれを阻害する行為として社会に認められることのない事項です
これまでは発注者側が談合を取り仕切るというという図式が余り表面化していなかったので、最近、官製談合という言葉が大きくとりあげられています
そこで、それを犯罪として法律として取り扱えるようにするのが官製談合防止法です
そういった流れの中で特に官庁や企業の中で俯瞰的な立場で総合的な判断を行う技術者あるいは技術士の資質を問う試験において、官製談合をテーマとして取り扱うのは大いに妥当なことだと私は思います
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No.6404 RE:口頭試験で注意してほしいこと 投稿者:ぼうず 投稿日:2006/12/08(Fri) 22:56
本日、総監の口頭試験受けてきました。談合についてはきかれませんでしたが、公務員技術士として倫理観を問われました。最後は高い倫理観をとわれる総監技術士として責務を全うする覚悟ありますか?ときかれました。試験というより技術者はこうあるべきと気付かせてくれた30分でした。結果はどうあれ受けさせてくれてありがとうという気持ちです。
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No.6405 RE:口頭試験で注意してほしいこと 投稿者:ReNN 投稿日:2006/12/08(Fri) 23:12
みなさんの意見交換の肥やしになればと思い、官制談合抑止につながると思われる他国の入札制度について書かせて頂きました。
アメリカの制度を参考にすることが適当かどうかという問題はありますが、アメリカでは官制談合の発生がほとんど無いといわれています。
我が国と異なる点を整理すると、次のようになっています。
・工事(業務)発注にあたり、行政、市民(オンブズマンなど)、弁護士などが共同で作業に当たり、やりとりは全て議事録に残されます。
・指名競争制度はなく、一般競争が主流です。なお、一般競争は、技術力より経験値が重視される工事が主です。
・ちなみに、地元保護は法律で禁止されています(競争をさせることが技術、品質を高めるとの考えから)
・どうしても地元を保護する場合、ゲタを履かせる(地元外業者より一定率高くても、落札させる。全体としては競争下にある)方式がとられます。
・ちなみに、我々のような上流側の仕事は、一般競争ではなく、日本でいう総合評価方式です(少し流れが違いますが)
したがって、官制談合をなくすのであれば、第三者の監視は必要なことかも知れません。さらに、指名制度が無くなれば、宮崎で起こっているような事件は、発生しにくいでしょう。また、仕組みとして、発注者への一定のインセンティヴ、つまり税金の節約を行った行政マンに対して、良い評価を行うなどがあれば良いのかも知れません。我が国では、予定価格・指名競争制度なるものが存在し、発注者の裁量をなくすことで、汚職の抑止を図ろうとしています。
さて、「技術者の立場で意見を述べよ」という問題については「技術者の立場で何が出来るか」という観点で、もう少し自分なりに考えてみます。APECさんの意見も、一理あると思います。実際は政治力が働いている部分も多く、技術者としての立場で何が出来るか、非常に悩みますが。。。
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No.6412 RE:口頭試験で注意してほしいこと 投稿者:盛土屋 投稿日:2006/12/09(Sat) 10:43
公共事業に対する市民オンブズマンの参加は、ありうると思います。
現在国直轄のHPを見ますと入札監視委員会(学識経験者主体)というものがありますが、将来市民オンブズマンが手続き過程に参加することが出てくるかもしれません。
特に公共事業に関わる技術者は国民に技術を通じてサービスを提供してます。したがって、市民レベルがそうしたシステムに参加することはありえます。
技術者はそうした市民に適切に説明をする必要があります。今後そうした方向になると技術的観点では、
発注者は、入札時の技術要件をなぜこのように設定したのか、総合評価方式ではどうしてこのような技術テーマを設定したのか。技術審査でどのように評価したのか、
一方入札参加者は、技術要件に対して、自社の実績や技術者の経験がどうなのか、技術的課題に対してどう取り組むのかなど、市民にきちんと技術者として説明が必要になるでしょう。
そうした面で技術者・技術士としてのアカウンタビリティが必要になると思います。
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No.6472 RE:口頭試験で注意してほしいこと 投稿者:APECさんに感謝 投稿日:2006/12/11(Mon) 11:16
APECさんのおっしゃる内容については質問が十分考えられます。タイムリーにこのような話題を提供してくださるAPECさんに感謝申し上げます。
質問内容は試験大綱などに縛られたものだけでなく、試験官の性格や興味などが非常に大きく影響します。十人十色で、その時期のトピックなどについてちょっと尋ねてみたくなる方もいるでしょう。口頭試験の定義はこうだからこういう質問はないだろという議論ではなく、どんな質問が来てもおかしくないという認識を持っておくことが大切だと思いますが・・・。
そうすることで、精神的な余裕がうまれるのではないでしょうか。いつも拝見させていたただいていますが、APECさんの活動にただただ感謝する次第です。
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No.6522 Winny問題で有罪判決 投稿者:APEC 投稿日:2006/12/13(Wed) 11:07
技術者倫理に関するトピックです。サイトのトピックのページにも掲載します。
Winny開発者の金子被告が京都地裁で有罪判決を受けました。
サイトでもWinny問題を取り上げ、情報流出の問題と著作権侵害の問題に触れましたが、今回の判決は、映像データなどの違法コピーを助長したとして、著作権法違反のほう助罪に問われたものです。
Winnyの技術レベルはかなり高いのですが、こういった「新技術開発」の結果が悪用を招いたとして開発者が罰せられたのは異例であるというニュースが流れています。しかし、技術者倫理という視点で見れば、これは極めて当然ともいえる結果だと思います。
私は、このWinny問題は「技術者倫理」というカテゴリー発祥の原因であるマンハッタン計画にも通ずるものがあると思います。
技術者は、自分が行っている研究や技術開発の結果が社会に何をもたらすのかということを十分に考えて行動しないいけないのであり、新理論や新技術の発見や利便性のみを考えて研究開発を行うと、結果として原爆が出来てしまったり違法コピーが蔓延してしまったりするということです。
それは研究者・開発者自身がやったことではないけれど、何の責任もないということではないのです。
マンハッタン計画では科学者・技術者たちは法的責任はもちろん問われませんでしたし、倫理的に責められもしませんでした。ただ彼らには苦悩があり、そこから技術者倫理という「技術者に必要な倫理」が生まれたわけです。
それから半世紀ほどが経過し、Winnyでは倫理的にはもちろん、法的責任を問われるようにまでなりました。ニュースでは、「今後の技術開発などに与える影響は小さくない」と、ともすれば技術開発の障害となることを懸念するとも取れるようなことが書かれていますが、技術者倫理の面からみれば、このWinny判決は、技術者は自分の仕事の成果だけでなく、それが社会に与える影響もしっかり考えなければいけないということを示しているといえます。
また、「社会に与える影響もしっかり考える」ことは公益確保のことですが、それはもはや責務(倫理的要求)から義務(法的要求)に近くなってきたといえるでしょう。
ちょっとムズカシイ書き方になってしまいましたが、このようにWinny判決は、公益確保に関して、社会が強く厳しく要求しているということを示す事例であると思います。
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No.6524 RE:Winny問題で有罪判決 投稿者:昔のプログラマー 投稿日:2006/12/13(Wed) 13:41
いつもAPECさんの丁寧な議論と整理には感心していますが、上記の整理にはちょっと異論があります。Winny開発をマンハッタン計画になぞらえるのは無理がある気がします(共通する側面はあるかもしれませんが)。
むしろWinny開発は、(好意的に見れば)VTRの開発をしたソニーの技術者に近い気がします。この場合、当時は映画著作権の侵害を幇助する技術として非難されたわけですが、今では消費者のみならずクリエイターの利益にもつながっている技術といえます。同様に現在のPtoP技術にも将来的な公益につながる可能性を秘めた技術であるという側面があり、それは現行の法制度で運用上違法な事態が生じることと、両立してしまうのです。
APECさんは「技術者は自分の仕事の成果だけでなく、それが社会に与える影響もしっかり考えなければいけない」と書かれていますが、Winny開発者は「現行の著作権制度の見直しにつながることを考えていた」と主張しています(だから逮捕されたといわれる)。私利私欲のために開発したわけでも、単に面白がって社会の迷惑を顧みず開発したわけでもない可能性が高いのです。
「技術開発の障害となることを懸念」している情報関連技術者は大勢いると思いますが、その多くは倫理観が欠如した開発を自由に出来なくなることを懸念しているわけではないと思います。技術の先端分野では、法制度の整備が不十分であったり、何が公益かも見通しが十分でなかったりして、境界領域が広く、ただ現行法制度の遵守だけを考えて安全シフトで開発していたのでは、技術革新が望めない可能性があるからです。
もちろん違法行為は問題ですが、それが直ちに倫理観欠如と同等とはいえません。法律というものは社会が常に改定しながら運用していくもので、絶対的な存在ではありません。公益確保≠法令遵守であり、公益のために法律が改定されていくことが社会の重要な機能と思います(そのために国会議員を選出している)。
他の書き込みでも、逮捕されたり違法とされたものに対して倫理観が欠如した行為と決め付けているものがありますが、「倫理」というものをちょっと誤解していると思います(自分がよく知らないことを風評や社会的な評価を元に決め付ける方が倫理的に問題な気もします)。
試験に関しては、法制度と倫理・社会規範との関係について難しく考えすぎる必要はなく、法令遵守を基本として構わないとは思います。「公益確保が義務に近くなっている」というのも、正しい気がします。ただ、対象となる技術についてよく知りもせずに、「逮捕されたから(有罪判決が出たから)悪いやつです」と言い切ってしまうのは、技術者の姿勢として残念に感じます。話題になっていることなので、どんな技術なのか、何が問題なのか、将来的な可能性はないのかといった技術面についてまず検討してから、社会とのかかわりについて考えていただければと思いますが....。
・Winny裁判についての参考コラム
http://japan.cnet.com/column/mori/story/0,2000055916,20084906,00.htm
※話が元からずれたようで済みませんが、タイムリーな書き込みで気になったもので。
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No.6534 RE:Winny問題で有罪判決 投稿者:橋梁事故は怖い 投稿日:2006/12/13(Wed) 23:45
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No.6536 RE:Winny判決問題 投稿者:APEC 投稿日:2006/12/14(Thu) 00:04
昔のプログラマーさん、議論を深めていただきありがとうございます。
私の舌足らずを詫びなければならないと思うのですが、私は開発することが悪いとは申していないつもりです。(この「悪い」という言葉も嫌いなのですが)
私が技術者倫理に反しているのではないかと申し上げているのは、
●社会に与える悪影響や負のリスクに気づかなかった
●あるいは、それに気づいていて故意にそれらを犯した
ことです。
新技術の開発は、多くの恩恵をもたらすことが多いのは確かです。核分裂制御技術にしても、原爆を作った一方で原子力発電を生みました。
その一方で、社会に対する悪影響やリスクをはらむ危険もおおいにあります。
それは、社会がそれに対する備えができていないだけに、ダメージが大きくなる恐れを多分に持っています。
だから、新技術を開発する場合、その恩恵と問題点をつまびらかにするとともに、問題点が恩恵を上回る時点で社会に開放して様々な思惑を持った不特定多数の手にゆだねることは避けるべきだと私は思うのです。
Winnyはまさにそうではないでしょうか。その恩恵は確かにあるでしょうし、そういう技術があることを前提にして著作権その他も見直さねばならないかもしれません。
しかし社会にはまだそんな準備はできておらず、現にそれによって打撃を被る人たちがいるのですから、こんな時期に「野に放つ」べきではないと思います。これは裁判内容とは別の問題に関することですが、Winnyの持つ情報流出リスクをきちんと知っていたら、被害はもっと少なくなったと思いませんか?
もし金子氏が「現行の著作権制度の見直しにつながることを考えていた」と主張しているのであれば、それを承知の上でやったことになり、さらに非倫理的行為だと私は考えます。
それは「石を投げて波風を立てる」行為なのでしょう。私も注意喚起その他の理由であえて挑戦的に石を投げて波風を立ててみることはあります。
しかし、社会全体に悪影響を及ぼす危険があったり、それで実害を被る人が多数出るような波は立てるべきではないと思います。機能を限定するとか学会発表するとかもっとほかの「石の投げ方」があるのではないでしょうか。いきなりネットのど真ん中に放り込むのではなく。
もし著作権への問題提起だという理由がWinny放出を正当化するというのなら、それは「問題提起するためであれば、誰かに著作権侵害や情報流出で実害が出たってかまわない」ということにもなります。
新技術開発は大いにやればいい。しかし、長所だけを見て短所に気を配らないのは、専門技術職としての社会的責任の放棄だと思うし、短所を克服して長所を社会のために供することが技術者の腕の見せ所だと思うのです。
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No.6538 RE:Winny判決問題 投稿者:昔のプログラマー 投稿日:2006/12/14(Thu) 04:17
橋梁事故は怖いさん、APECさん、ありがとうございました。私も金子氏が面白半分につくった可能性はあると思いますし(少なくとも表面上はそう装っていた)、彼個人をそんなに弁護したいわけではありません(Winny等のユーザーでもないですし)。ただ、APECさんの再記述で違和感ある部分が分かってきたので、もう少し書いてみます。
APECさんが技術者倫理に反している点としてあげているのは「●社会に与える悪影響や負のリスクに気づかなかった」点で、「それによって打撃を被る人たちがいる」ということでした。
では、Winny開発がもたらす悪影響=公益の損失とは何でしょう。一般に考えられるのは著作権の侵害による著作者(技術開発者・クリエイター)の利益の損失です。またそれによる開発・制作意欲の減衰といったこともあると思います(今年に入って話題となった個人情報や国家情報の漏洩はWinny開発がもたらしたというより、情報管理システムの欠如です)。「この種のソフトは短期的には多くの消費者に利益をもたらすが、長期的には開発意欲の低下で良質な作品が減り、消費者にも損失になる」という考え方です。なので公益の損失といっても、人命や環境の大規模な損失につながる可能性があるというわけではありません。「なら良いって言うのか」と怒られそうですが、原爆開発などによる公益損失とは分けて考えた方がよいと思います。橋梁事故は怖いさんが教えてくださった引用にも「人の生命や健康にかかわることは、起きないように抑止する歯止めとなる行動が必要」なので倫理も重要とあります。
そうなると、このケースは技術の問題が技術の問題として跳ね返ってくる性格を持ち、技術者が公益性の有無について議論する余地を持つと思います。冷静に、技術的に、将来的な公益の損失について考える必要があります。
そして、著作者の利益損失については疑問視する試算や議論はすでに多くあります(巨額の損失を算出して固執しているのは著作権管理団体で、開発者や第三者ではない)。これらは空論ではなく、今までの歴史を見ても、VTRの開発はテレビや映画ソフトの違法的コピーを促進する技術であり(明らかにWinnyより不特定多数を対象にした技術開発)、レンタルショップがさらにそれを加速させ、著作権管理者は訴え続けましたが、最終的にはレンタルフィーをとる方が利益が高いことに気づいて、VTRは「合法的」で公益性の高い存在となりました。合法性については、情報が劣化するアナログ技術だったからかもしれませんが、現在になってくるとコピーが容易なmp3フォーマットは多くの人に利益をもたらしていますし、今は違法性の高い使われ方もするyouTubeも可能性の高いメディアという考え方も広がっています。デジタル放送のコピー回数制限も取り払われる方向性です。逆に現行の法制度をしっかり守って開発したソニーのフォーマットは利用されず公益性をあまり持っていません。
そもそもここでいう「著作者にとっての利益」というのは、金銭的なこともありますが、「著作者としての名誉」と「多くの人に愛されることの喜び」が大きな存在であることを忘れてはいけないと思います。それらを侵害するのはタダで作品を手に入れて楽しむ大衆ではなく、社会的な権力や市場支配力で作品を模倣して私益のために販売する大企業だったりすることもあります。そして、結局のところ作品を知った大衆が抱いた著者へのリスペクトが金銭的な利益になることも多く、作品のコピーと再配布が市場的にも意味を持って成立してしまうという変化が技術革新によって起き続けているのではないかと思います。
なので「Winny開発は公益の損失」という前提にひっかかってしまうんです。奇しくも同じ日に三菱自動車への判決も出て、逆に彼らは無罪になりましたが(法令順守?)、こちらはそれこそ倫理的な問題が問われる気がします。事例として技術開発における倫理問題ではないかもしれないですが。
最終的な結論である、ほかの「石の投げ方」があるのではということは、私もそう思います。それが出来る地位のある人だったわけですし、その方が彼自身の私益につながったはずですからね...でも、そこに彼なりのポリシーがあったのかなと思います。
もう一つ気になった点ですが、「Winnyの持つ情報流出リスクをきちんと知っていたら、被害はもっと少なくなったと思いませんか?」というのは、「漏えい事件を起こした人たちが」知っていたら被害が少なくなったという意味で、被害はそこまで教えなかった金子氏に責任があるということなんでしょうか。
情報流出リスク自体はインターネットそのものにあるので、Winny開発者には倫理的なものにせよ、責任を問うのはおかしい気がします。また、金子氏がウイルスによる昨今の被害について承知の上で開発した、ということはないと思います。非常識なまでに情報管理の方に問題があります。
この点については、APECさんは裁判の係争事項とは別と理解して書いておられますが、混同する人も多そうなのも気になります(あんな事態を起こしたソフトつくったんだから、有罪で当然だと)。
長々と済みませんでした.... とりあえず、倫理や公益というものは単純明瞭ではなく、だからこそ守る努力がいるということを言いたかったです。
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No.6540 RE:Winny判決問題 投稿者:APEC 投稿日:2006/12/14(Thu) 09:03
おはようございます。いい感じになってきましたね。かつて佐口師匠の掲示板で議論した感覚です。^^
2点だけ取り急ぎ書き込みます。
著作権に係る諸問題については私は詳細を知りませんが、どのようなルールであれ、随時見直しが必要と思っております。特に技術も意識(モラル・常識)も変化が激しい現代社会では。
ただ、何度も言いますがその進め方・手順・「石の投げ方」に問題があると思います。
倫理的に考察するのであれば、やはり原則である功利主義的に考えるべきかと思います。つまり、「最大多数の最大幸福」の原則ですね。
Winnyを作るべきだったか作らざるべきだったかとか、公開すべきだったか公開せざるべきだったかというような単純なYes/Noではなく、「もっといい方法がなかったか。それを探る努力をしたか」あるいは「最大多数の最大幸福を目指そうという考えがあったか」ということだと思います。
「気づかなかった」のであれ、「気づいていたが、かまわないと思った」のであれ、功利主義的に行動しなかったのであれば「非倫理的な行動だ」と判断できると私は考えます。
また、著作権侵害であれ、情報流出であれ、もし当初予想していなかった被害が発生した時には、しかるべき措置を取るべきだとも思いますし、それを怠った責任は問われてしかるべきだと思います。
情報流出ですが、これは製品の使いかたの問題のようなものだと思います。
PL法ではありませんが、情報流出のリスクを持ったソフトであることを「注意書き」する責任があるのではないかと。
ただこれについては、よくある「このソフトを使用した結果については責任を負いかねます」という免責ドキュメントがあればいいのかもしれませんが。
なお、「人命・健康にかかわること」が倫理的に制限されるとのご意見ですが、確かに技術士法にいう公益確保も「公共の安全」「環境の保全」などとされています。
しかし、個人などの権利(著作権)、個人の情報などを犯すことは倫理的に制限されないということにはならないと私は思います。
なぜなら両方とも違法行為ですから、違法行為を助長する行動が倫理的に許されるかという判断をすればいいと思うからです。
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No.6548 RE:口頭試験で注意してほしいこと 投稿者:トンネル専門 投稿日:2006/12/14(Thu) 12:48
12/9にNTTセミナーホールにてトンネルで受験しましたが、私の場合は、試験終了後はなんてことないものと楽観ししていました。その後、口答試験のメモを作成しながら冷静に振り返ると、だんだんと不安な状態になりました。もう気にしても結果は変らないものなので、来年の総監勉強でも始めるようにしたほうが良いのではないかと思っています。口答試験を受けた印象は、今回がだめであっても次は間違いなく合格できると感じました。
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No.6549 RE:Winny判決問題 投稿者:昔のプログラマー 投稿日:2006/12/14(Thu) 13:22
APECさま、お付き合いありがとうございます。
何となく納得してきました。今回の話はよく分かりました。私益<->公益という軸での倫理の問題として扱っているわけではないのですものね。多くの可能性と選択肢を探る姿勢は重要で、その点で倫理的に問題があったのではということは、理解できました。ただ、しつこいですが、同じ意味で、現行の法制度に合っているかどうかの判断だけで決めてしまうのは技術者の姿勢としてさみしいなということです。
あと細かい点ですが、
●もし当初予想していなかった被害が発生した時には、しかるべき措置を取るべきだとも思いますし、それを怠った責任は問われてしかるべき
⇒金子氏は逮捕されていなければウイルス対策はやりたかったと言ってました。それはウソではないと思います。
●よくある「このソフトを使用した結果については責任を負いかねます」という免責ドキュメントがあればいいのかもしれませんが。
⇒私も情報流出に対しては、その程度の責務と思います。Winnyがとりたてて情報流出させやすいわけでは全くないので。すでにパソコンメーカーやプロバイダが危険性について念入りに注意していたはずです。
●なお、「人命・健康にかかわること」が倫理的に制限されるとのご意見ですが....
⇒それ以外のことは倫理的に問題ないとはもちろん思いません。ただ議論の余地はあるのでは、というだけです。そして著作権保護の問題に関しては特に、ということです。人を死なせるような技術はほとんど余地なくクロですが、Winnyはもうちょっと広めに可能性を考えて判断しないといけないという感じです。
最後に、情報流出問題については、システム面の問題を一番重視すべきと思っています。一番おかしいのはWinnyを使っていることではなく、守秘すべき情報を(残業のためとかでも)自宅などへ持ち出すという行為です。
この行為自体倫理感が欠如した行為ですし、それが出来てしまうシステムというのはダメダメです。重要な情報をきちんと扱うセクションならば、USBメモリを差したり、CD等への書き込みをしたり一切出来ないようにするのが基本です。完了した業務の顧客の情報が個人のパソコンに残っていたとか、もうびっくりです。
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No.6556 RE:Winny判決問題 投稿者:APEC 投稿日:2006/12/14(Thu) 22:47
>現行の法制度に合っているかどうかの判断だけで決めてしまうのは技術者の姿勢としてさみしいなということです。
コンプライアンスの基本に関する話になりますが、法であっても不変ということはないし、不備があればどんどん変えていくべきだと思いますが、変わるまでの間は現行法を守るべきであり、それをやめたら社会秩序は保てなくなってしまうと思います。
結局「順序」ですよね。デストロイ&ビルドもひとつの考え方でしょうが、その課程で国民の生命財産に不利益が出てもいいやと考える(あるいは出るかどうか考えない)ことは、非倫理的です。
もちろん現行法を、たとえそれがどんなに不備があろうとも、守らない(あるいは違反をほう助する)のは非倫理的です。守りながら変えていくべきだと思います。
とりあえずこのWinnyに関しては、技術者倫理を考える題材としてあげさせていただいたわけですが、著作権議論などにあまり深く入り込むことは、この掲示板では避けたいと私は思います。この掲示板にはこの掲示板の目的がありますので。
なお、個人情報などの重要情報が安易に持ち出せるシステムに関しては、私もまったく同感です。
これこそ「3つの方法」で改善しないといけませんね。
1つは、情報管理に関する高い倫理観の育成。
2つは、情報漏洩に対する強い抑止力(法規制の強化)
3つは、重要情報の漏洩をさせない仕組みの整備。この場合セキュリティでしょうかね。
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No.6557 RE:Winny判決問題 投稿者:昔のプログラマー 投稿日:2006/12/15(Fri) 00:16
長々と引っ張って済みませんでした。判決を受けて、すでにいろいろな整理・議論が各所に出ていますし、これで終わりにします(私も最初は口頭試験について書き込もうとしていたのに)。
情報流失はまさしく、3つの方法どれも欠けていてどの対策も強化が必要ないい例ですよね。今日の日経の社説も「ウィニーを巡っては防衛庁の機密情報が流出する事件も起きており、元助手の責任は免れないだろう」とあり、やはり社会全体として勘違いしているようなので、きちんとした整理が必要と思います(マスコミや政府は、行政機関がまるで被害者のような言い方で済ませていますが、どう見ても国民に対する加害者です)。
某庁など、省昇格ではしゃぐ前にシステム強化をちゃんとしたのか教えてほしいですよ...。
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