平成16年度技術士第二次試験問題(森林部門) ●森林一般(全科目) ●専門問題(林業) |
提供:林業技術者さん |
必須科目 | |
森林一般(択一問題) 正解付 | |
森林一般(記述問題) | |
選択科目 | |
専門問題(林業) |
必須科目
林業一般(択一問題)
Ⅱ-1 次の20問題のうち15問題を選んで解答せよ。(解答欄に1つだけマークすること)
Ⅱ-1-1 我が国の森林生態系における物質収支傾向を【降水による収入】と【流出による支出】に分けて述べた次の文章のうち,正しくないものを選べ。
① アンモニア態チッソ:収入に比較して支出はかなり少ない傾向にある。
② リン酸:収入,支出の間に明確な傾向がみられない。
③ カリウム:収入に比較して支出は多い傾向にある。
④ カルシウム:収入に比較して支出はかなり少ない傾向にある。
⑤ ナトリウム:収入に比較して支出はかなり多い傾向にある。
正解 ④
Ⅱ-1-2 森林の水源かん養機能に関する次の文章のうち,正しくないものを選べ。
① 森林を構成する樹木等の生育に伴い,主として根から吸収された土壌水分が葉などを通じて大気中に放出される現象を蒸発といい,地中の水分や樹冠等に遮断された水が気化する現象を蒸散という。
② 降雨水により,地表及びごく浅い土層の間に生じる流出を直接流出といい,その量は流域特性や地質,地形,地被状態に大きく影響される。
③ 降雨水により,地層中にしみこんだ深い中間流及び地下水は下方向に移動し,その多くは河川に流出する。これを基底流出という。
④ 降雨水が表層土壌を通って土壌中に入るのを浸透といい,浸透した水が土壌中を鉛直下方あるいは斜面に沿って横方向に移動する現象を透水と称し,浸透と区分している。
⑤ 貯留量とは土壌中に一般に滞留可能な水の量であり,貯留量に密接に関連する孔隙は粗孔隙である。
正解 ①
Ⅱ-1-3 木材の材質用語について述べた次の文章のうち,正しくないものを選べ。
① 柔組織は,典型的にはブロック状又は等径的な外形を有し,かつ単壁孔をもつ細胞から成る組織である。
② 未成熟材は,未成熟期の形成層によって形成された髄近くの木部である。
③ 壁孔は,細胞の二次壁の孔げき及びその孔げきを外側において閉じる壁の総称である。
④ 年齢は,樹幹の横断面に見られる1年の成長層である。
⑤ 晩材は,成長輪の中で密度が低く,細胞が大径で,成長期の後半に形成された部分である。
正解 ⑤
Ⅱ-1-4 下刈りについて記述した次の文章のうち,正しくないものを選べ。
① 下刈りを省いた翌年は,下刈り作業の功程が低下する。
② 下刈りは,夏の後期に実施するのが最も効果的である。
③ 下刈りは,各種の育林作業のなかで最も手間と経費がかかる。
④ 下刈りの省力化には,大苗造林や根元被覆がある。
⑤ 下刈りの回数は,造林木の成長と雑草木の成長の相互関係で決まる。
正解 ②
Ⅱ-1-5 林道の曲線の設計についての考え方を述べた次の文章のうち,正しくないものを選べ。
① 曲線半径は大きいほど自動車の走行には有利であるが,開設費用の面からは小さい曲線を用いた方が有利な場合がある。
② 曲線半径の大きさは,道路の幅員と車体の長さによって決める場合がある。
③ 自動車が曲線部を通過する場合,遠心力は速度及び曲線半径に比例して大きくなる。
④ 設計速度が同じ場合には,最小半径は片勾配及び路面とタイヤの摩擦係数が大きいほど小さくなる。
⑤ 林道規程では,級と曲線半径に応じて内側に拡幅するように定めている。
正解 ③
Ⅱ-1-6 次の文章はある木質形建材の定義について述べたものである。該当する木質建材の種類を①~⑤の中から選べ。
木材又は植物繊維を原料として,合成樹脂接着剤をバインダーとして加えて熱圧成形した板材料である。乾式法により製造したボードであり,繊維板の分類の一つである。厚さ2.5~75mm,密度0.35~0.9g/の範囲の多様なボードが製造されている。
① OSB (オーエスビー)
② LVB (エルブイビー)
③ MDF (エムディーエフ)
④ SST (エスエスティー)
⑤ PSL (ピーエスエル)
正解 ③
Ⅱ-1-7 以下の機種名は,林野庁の統計上,高性能林業機械とされているものである。それぞれの機種と作業内容の組合せが正しいものを①~⑤の中から選べ。
機種名
a フォワーダ b ハーベスタ c プロセッサ d スイングヤーダ e フェラーバンチャ
作業内容
ア 伐倒機 : 伐倒・集積作業
イ 造材機 : 枝払い・玉切り・集積作業
ウ 旋回ブーム式タワー付き集材機 : 簡易な移動式タワー付き集材機
エ 伐倒造材機 : 伐倒・枝払い・玉切り・集積作業
オ 積載式集材車両 : 積載式の集材作業
a | b | c | d | e | |
① | オ | エ | イ | ウ | ア |
② | ウ | ア | イ | オ | エ |
③ | ア | イ | オ | ウ | エ |
④ | オ | ア | エ | イ | ウ |
⑤ | ウ | エ | ア | オ | イ |
正解 ①
Ⅱ-1-8 次の地質年代と森林植物に関する組合せのうち,正しくないものを選べ。
① 古生代・デボン紀 - シダ植物による森林の出現期である。
② 古生代・二畳紀- 裸子植物の出現期である。
③ 古生代・ジュラ紀 - 針葉樹の全盛期である。
④ 古生代・白亜紀- 被子植物の全盛期である。
⑤ 新生代・第四期- 北方林や草原の発達期である。
正解 ④
Ⅱ-1-9 木材劣化微生物の生育条件について述べた次の文章のうち,正しくないものを選べ。
① 木材含水率が繊維飽和点以下の場合は,腐朽が起こりにくい。
② 飽水状態に近い高含水率の木材では,腐朽が起こりにくい。
③ 木材変色菌は辺材部では生育することができない。
④ 代表的な木材腐朽菌の活動に適した温度は,およそ24~40℃である。
⑤ 木材腐朽菌はセルロースやヘミセルロースを分解して利用することが出来る。
正解 ③
Ⅱ-1-10 森林の生物多様性を維持する施策について,[a]~[d]に入る語句の組合せのうち,正しいものを①~⑤の中から選べ。
保護林に外接する森林においては,設定基準,取扱い方針等を定めたガイドラインに基づき,原則として[a]による森林施業を行わず,複層林施業や天然生林施業を行うこととし,保護林内の環境の効果的な維持・形成を図る。保護林の中でも[b]については,ユネスコの考え方を参考に,森林生態系の厳正な維持を図るべき地区[c]と,そこに外部の環境変化の影響が直接及ばないよう緩衝の役割を果たすべき地区[d]とに区分する。この[d]は,自然条件等に応じて,森林の教育的利用や,大規模な開発行為を伴わない森林レクリエーションの場として活用する。
a | b | c | d | |
① | 主伐 | 原生自然環境保全地域 | 保全地区 | 保存利用地区 |
② | 皆伐 | 森林生態系保護地域 | 保全地区 | 保存利用地区 |
③ | 択伐 | 原生自然環境保全地域 | 保存利用地区 | 保全地区 |
④ | 皆伐 | 森林生態系保護地域 | 保存利用地区 | 保全地区 |
⑤ | 主伐 | 国立公園特別地区 | 保全地区 | 保存利用地区 |
正解 ②
Ⅱ-1-11 土の基本的性質について述べた次の文章のうち,正しくないものを選べ。
① 土のコンシステンシーは,土の工学的分類に用いられ,土の含水量によって硬かったり柔らかかったりする性質をいう。
② 液性限界とは,土の塑性状から液状になるときの含水比をいう。
③ 塑性限界とは,土の塑性状から半固体状になるときの含水比をいう。
④ 塑性指数とは,液性限界と塑性限界の差をいう。
⑤ 通常,粘土の塑性指数は小さく,砂質土の塑性指数は大きい。
正解 ⑤
Ⅱ-1-12 間伐と枝打ちの樹木への影響について述べた次の文章のうち,正しいものを選べ。
① 上層間伐を行うと下層間伐に比べて平均形状比が高まるので,間伐後5年間ぐらいにおける風害への安全性は高い。
② 枝打ちを行うと樹冠量が減るため,冠雪量も減りかつ形状比が高まるので,枝打ち後5年間ぐらいは冠雪害を受けにくい。
③ 間伐を行うと直径成長よりも樹高成長が増す。
④ 間伐を行うと樹高成長に変化はほとんどないが,直径成長は増す。
⑤ 枝打ちを行うと樹高成長は増すが直径成長は減少する。
正解 ④
Ⅱ-1-13 森林の二酸化炭素吸収について述べた次の文章のうち,正しくないものを選べ。
① 大気中の二酸化炭素濃度が上昇した主な原因は石炭・石油の採掘と消費であるが,森林面積の減少も結果的に大気中の二酸化炭素濃度の上昇をもたらしている。
② 森林面積の減少によって,土壌中に蓄積された炭素が分解され,大気中に放出される。
③ 森林土壌中の堆積有機物(Ao層)量が亜寒帯で多く,熱帯で少ない理由は,熱帯では落葉樹が少なく,土壌への炭素供給量が少ないためである。
④ 森林の伐採が大気中の二酸化炭素濃度を上昇させるのは,収穫された木材の腐朽・燃焼によって含まれていた炭素が放出されるためである。
⑤ 高齢の森林では光合成によって吸収する二酸化炭素の量と,枯死木の分解によって放出される量がほぼ同じになる。
正解 ③
Ⅱ-1-14 携帯型の高周波式含水率計(表面押し当て式)の原理や特徴について述べた次の文章のうち,正しくないものを選べ。
① 直流抵抗式に比べ比重の影響を受けにくい。
② 原理的には低含水率から高含水率までの広い範囲が測定可能である。
③ 水分勾配があり,内部の含水率が高い場合には,実際よりも低めの値が表示される。
④ 直流抵抗式に比べ温度の影響を受けにくい。
⑤ 木材の誘電率が水分によって変化することを利用している。
正解 ①
Ⅱ-1-15 山腹基礎工における各工種の目的について述べた次の文章のうち,正しくないものを選べ。
① のり切工は,不規則な山腹斜面を安定斜面に整形し,崩壊及び崩壊の拡大を防ぐことを目的とする。
② 土留工は,不安定な土砂の移動を抑止,斜面勾配の修正,表面流下水等の分散を図るほか,他の工作物の基礎及び水路工等の支保とすることを目的とする。
③ 水路工は,降雨又は湧水による斜面侵食の防止及び浸透による土の強度低下,間隙水圧の増大の防止を目的とする。
④ 埋設工は,地中に間伐材やそだを傾斜の方向に設置し,地下水の排除を行うことを目的とする。
⑤ 張工は,緑化工の施工が困難な場合に,斜面全体を石材やコンクリート等によって被覆し,斜面の風化,侵食及び軽微なはく離,崩壊等を防止することを目的とする。
正解 ④
Ⅱ-1-16 下記の特用林産物の最近5年間(平成10年~平成14年)における生産額を,高いものから並べた順番として,正しいものを①~⑤の中から選べ。
A 生しいたけ, B 乾しいたけ, C 生うるし, D 竹材
① A>B>C>D
② A>B>D>C
③ B>A>C>D
④ B>A>D>C
⑤ B>C>A>D
正解 ②
Ⅱ-1-17 日本に生育する次の樹種に関する記述の組合せで正しいものを選べ。
① スギスギ科非常に耐陰性が高い 心材・辺材色の区別が明瞭
② ヒノキヒノキ科 非常に耐寒性が高い 材は緻密
③ カラマツ マツ科非常に陽性未成熟材は乾燥でねじれが生じやすい
④ ブナブナ科非常に陽性散孔材
⑤ ケヤキニレ科非常に耐寒性が高い 環孔材
正解 ③
Ⅱ-1-18 1990年から2000年の世界の森林減少について述べた次の文章のうち,正しいものを選べ。
① 森林の減少面積が最も大きな地域は南アメリカであり,次いでアフリカでの減少が著しい。
② 森林の減少面積が最も大きな地域は熱帯アジアであり,次いで南アメリカでの減少が著しい。
③ 森林の減少面積が最も大きな地域は南アメリカである。過剰な焼畑や牧場等の農地開発などが原因である。
④ 森林の減少面積が最も大きな地域はアフリカである。急激な森林伐採,森林の焼き払いによる農地拡大などが原因である。
⑤ 森林の減少面積が最も大きな地域は熱帯アジアである。無秩序な商業伐採,大規模な森林火災などが原因である。
正解 ④
Ⅱ-1-19 日本の木材(用材)需要量と自給率に関する次の記述のうち,正しいものを選べ。
① 木材の需要量はバブル崩壊後急激に低下している。
② 木材の需要量は環境問題を反映して最近10年間目だって上昇している。
③ 木材の自給率は最近5年のうちに30%台にまで落ち込んだ。
④ 木材自給率の低下はバブルの崩壊によるところが大きい。
⑤ 木材の自給率はバブル崩壊後も製材用材の方がパルプ用材よりも高い。
正解 ⑤
Ⅱ-1-20 森林法第41条において「法第25条第1項第1号から第7号までに掲げる目的を達成するために行う森林の造成事業又は森林の造成若しくは維持に必要な事業」を「保安施設事業」と定義している。次の文章のうち保安施設事業の目的ではないものを選べ。
① 飛砂の防備
② 霧害の防備
③ 霜害の防備
④ 落石の危険の防止
⑤ 火災の防備
正解 ③
森林一般(記述問題)
Ⅱ-2 次の9項目のうち3項目を選んで解答せよ。(青色の答案用紙を使用し,項目ごとに用紙を替えて解答項目番号と項目名を明記し,それぞれ1枚以内にまとめよ。)
(1) 長伐期施業への移行の留意点
(2) 山地防災ヘルパー
(3) 住宅解体材のリサイクル利用方法とその評価
(4) 樹木根系の土壌緊縛力
(5) きのこ原木栽培の留意点
(6) 林道計画におけるGISの利用
(7) 竹林の拡大原因とその対策
(8) 木質建材からのホルムアルデヒド放散に関する安全対策
(9) 病虫獣害の生態的防除
専門問題(林業)
Ⅰ-2 次の3問題のうち2問題を選んで解答せよ。(緑色の答案用紙を使用し,問題ごと に用紙を替えて解答問題番号を明記し,それぞれを3枚以内にまとめよ。)
Ⅰ-2-1 特用林産物であるきのこの生産は,農山村地域において貴重な収入源であるとともに,就業機会の創出など農山村地域の振興に大きな役割を果たしている。そこで,きのこの生産の現状と,これを推進するに当たっての留意点を述べよ。
Ⅰ-2-2 国産材が不振である原因の一つに,素材の必要量が計画的にまとまったロットとしてコンスタントに供給されないこと,伐出,製材加工,流通過程を通してコスト高であるなどが指摘されている。このような状態を改善するために上流と下流が一体となって講じるべき方策について述べよ。
Ⅰ-2-3 低コストの森林施業として,除・間伐等保育経費が削除できるとされる疎植が検討されているが,木材利用上及び森林生態的な観点を含めて,これを推進するに当たっての留意点を述べよ。