平成18年度技術士第二次試験問題(農業部門) ●農業一般・問題および択一正解 |
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択一問題
2-1 次の20問題のうち15問題を選んで解答せよ(解答欄に1つだけマークすること)。
2-1-1 我が国の食料需給に関し、国民の食生活における供給熱量比率の推移等を示す下表において、(ア)〜(オ)に当てはまる用語・数値の組み合わせとして適切なものを(1) 〜(5) の中から選べ。
供給熱量比率(一人一日あたり、%) | 総合食料 自給率(%) |
|||
(ア) | (イ) | (ウ) | ||
昭和40年代 | 71.6 | 16.2 | 12.2 | (エ) |
昭和60年代 | 61.2 | 26.1 | 12.7 | 53 |
平成15年代 | 57.9 | 29 | 13.1 | 40 |
平成27年代 | 60 | 27 | 13 | (オ) |
注1:総合食料自給率は、供給熱量ベース
注2:平成27年度の「供給熱量比率」は望ましい食料消費の姿を、また、「総合食糧自給率」は食料・農業・農村基本計画(平成17年3月策定)の総合食料自給率目標を示している。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 炭水化物 脂質 タンパク質 73 45 (2) 炭水化物 タンパク質 脂質 53 50 (3) タンパク質 脂質 炭水化物 63 45 (4) 脂質 炭水化物 タンパク質 63 55 (5) タンパク質 炭水化物 脂質 73 50
正解は1
2-1-2 世界の農産物の生産と需給に関する次の記述のうち、適切でないものを選べ。
(1) 農産物生産は、天候不順や異常気象等により、不作や作柄変動の可能性があり、価格、生産量共に不安定な側面を有している。
(2) 農産物の生産の増加は、農用地の面的拡大のほか、近年では主として品種改良や化学肥料の投入、かんがい施設の整備等による単位面積当たりの収量の上昇によって支えられてきた。
(3) 農産物の需要は、主として開発途上国では畜産物の消費が拡大することが予想され、飼料用穀物を中心に穀物需要の大幅な増加が見込まれている。
(4) 主要農産物貿易は、少数の特定の国・地域が輸出に大きな比率を占めるコウゾとなっており、特にとうもろこしと、大豆は寡占状態となっている。
(5) 主要農産物は貯蔵性が高く貿易向きであるので、基本的にはまず輸出に仕向けられ、その余剰が国内消費に回される消費構造となっている。
正解は5
2-1-3 次の記述において、(ア)〜(エ)に当てはまる用語の組み合わせとして適切なものを(1) 〜(5) の中から選べ。
農村には、農地・農業用水、多様な動植物、(ア)等多様な地域資源が存在している。特に、農地、農業用水等は、農業生産にとってもっとも基礎的な資源であり、食料の安定供給の確保や(イ)の発揮に不可欠な社会共通資本である。
この膨大かつ広範な農地・農業用水等の維持管理は、従来、主として(ウ)、集落活動や土地改良区等を通じて行われてきたが、今後、地域農業の構造改革に伴い、少数になる担い手でだけでこれを担うのは困難である。したがって、構造改革の加速化に対応するためにも、その維持管理に農業者だけでなく、(エ)等も含めた多様な主体が参画して取り組む施策を構築する必要がある。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) 農業労働力 多面的機能 公的管理 土地改良区 (2) 農村景観 多面的機能 農業生産活動 地域住民 (3) 農業労働力 自然循環機能 農業生産活動 土地改良区 (4) 農村景観 自然循環機能 農業生産活動 土地改良区 (5) 農村景観 多面的機能 公的管理 地域住民
正解は2
2-1-4 食の安全・安心のための政策大綱(農林水産省、平成15年6月)の政策展開方向に関する次の記述のうち、適切でないものを選べ。
(1) 新たな食品安全行政に対応するため、科学者、消費者、生産者、事業者、行政等がお互いに情報や意見を交換するリスクコミュニケーションを推進する。
(2) 産地段階から消費段階にわたるリスク管理を確実に実施するため、人畜共通感染症を含む家畜防疫体制を強化する。
(3) 消費者の安心・信頼を確保するため、トレーサビリティシステムを導入・普及する。
(4) 食の安全・安心を確保するため生産環境に関するモニタリング調査の実施など環境保全の取り組みを促進する。
(5) 食に対する安心・信頼を確保するため、遺伝子診断法などを導入し、遺伝子組み換え作物が流通しないよう検査・監視する。
正解は5
2-1-5 2005年農林業センサス結果による農家構造に関して、前回(2000年)と比較した次の記述のうち、適切なものを選べ。
(1) 販売農家世帯年齢は、65歳以上が31.6%で、前回に比べ減少している。
(2) 販売農家数は、195万戸で、前回に比べ役5万戸の微増にとどまっている。
(3) 家族経営の経営耕地規模別経営体数は、前回に比べ5ha未満階層が増加しているが、5ha以上階層は減少している。
(4) 農業経営体数を組織形態別にみると、法人化している経営体が1.9万経営体で、前回に比べ減少している。
(5) 家族経営の借入耕地面積は、68.8万haで、前回に比べ減少している。
正解は4
2-1-6 エコファーマー(愛称名)に関する記述のうち、適切なものを選べ。
(1) 持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律に基づいて、持続性の高い農業生産方式の導入計画を作成し、農林水産大臣の認定を受けた農業者をエコファーマーという。
(2) 化学肥料低減と化学農薬低減の2つの技術に取り組む農業生産方式は、持続性の高い農業生産方式として認められる。
(3) 持続性の高い農業生産方式に関わる技術として、たい肥等勇気質資材施用や生物農薬利用などが農林水産省令に定められているが、局所施肥などの施肥法は定められていない。
(4) エコファーマーに認定されると、農業改良資金や税制上の特例措置が受けられる。
(5) 認定された持続性の高い農業生産方式の導入計画の実施状況について、報告の義務や罰則は定められていない。
正解は4
2-1-7 食料・農業・農村基本計画(平成17年3月策定)における食料自給率等に関する次の記述のうち、適切なものを選べ。
(1) 食料自給率は、国内の食料消費が国内の農業生産物でどの程度賄えているかを示す指標であり、直ちに不足の事態における国内農業の食料供給力の程度を示すものではない。
(2) 食料の安定供給を将来にわたり確保していくためには、国内の農業生産の増大は困難であることから、輸入と備蓄を基本としていく必要がある。
(3) 食品の廃棄や食べ残し等の、いわゆる食料ロスの増加の問題は、個人の意識の問題であり、国が取り組む施策の対象とはならない。
(4) 新しい基本計画では、生産額ベースの総合食料自給率の目標を設定しており、この目標値では、平成27年度に45%となっている。
(5) 水田を始めとする農地や農業用水等の確保を図ることは、国内の農業生産の増大に結びつくものの、不測時の食料安心保障の確保とは直接的にはつながらない。
正解は1
2-1-8 野生鳥獣による農作物の被害に関する次の記述のうち、適切なものを選べ。
(1) 野生鳥獣による被害面積、被害金額は、近年急激に増加している
(2) 野生鳥獣による被害金額は獣類によるものがほとんどで、鳥類によるものは、近年ごく僅かである。
(3) 平成16年度のイノシシ、シカ、サルによる被害金額は、獣類によるものの8割以上を占める。
(4) 平成16年度の獣類による被害のうちでは、イノシシによる被害が、面積、金額ともに最大である。
(5) 平成16年度の鳥類による被害金額では、カラスによる被害が8割以上を占める。
正解は3
2-1-9 高病原性鳥インフルエンザ(以下鳥インフルエンザという)に関する次の記述のうち適切でないものを選べ。
(1) 鳥インフルエンザウイルスは、加熱により死滅するので、感染した鶏肉であっても十分加熱すれば食べても差し支えない。
(2) 鳥インフルエンザワクチンの接種は、万が一、地域内の感染が続発し迅速な淘汰が困難tなった場合に、都道府県が国と協議して実施する。
(3) 鳥インフルエンザまん延防止のため感染鶏または抗体保有鶏が検出された農場の鶏は、殺処分され、発生地域の鶏は移動禁止となる。
(4) 養鶏業者は感染防止のため野鳥やネズミ等の進入を防止できる飼育施設以外では飼うことができなくなった。
(5) 鳥インフルエンザ感染が明らかになった国からの鶏肉は、輸入停止されている。
正解は4
2-1-10 我が国の食料・農業・農村施策の用語に関する次の記述のうち、適切でないものを選べ。
(1) 特定農業法人とは農業経営基盤強化促進法に基づいて、地域の農地の過半を農作業委託や借り入れなどにより集積する相手方として地域の地権者の合意を得た農業生産法人
(2) 地産地食とは、地域の消費者ニーズに即応した農業生産と、生産された農産物を地域で消費しようとする活動を通じて、農業者と消費者を結びつける取り組み。
(3) 耕地利用率とは、全耕地面積から耕作放棄地及び不作付地の面積を差し引いた面積、すなわち過去一年間に作付されたことのある耕地面積の全耕地面積に対する比率(%)
(4) HACCPとは、原材料から加工、包装、出荷に至るすべての段階で発生する可能性のある食品衛生上の問題点を検討し、その発生を防止または減少させる管理方式
(5) 日本型食生活とは、主食である米を中心として、水産物、畜産物、野菜や果実などがバランス良く加わった、健康的で豊かな食生活。
正解は3
2-1-11 下表は日米欧5カ国の農畜産物の自給率(熱量供給ベース、2002年、%)を示したものである。(ア)〜(エ)に当てはまる国名の組み合わせ(1) 〜(5) のうち、適切なものを選べ。
(注)食用穀物とは米、小麦、ライ麦などである
(ア) (イ) (ウ) (エ) 食用穀物(注) 149 117 61 173 豆 類 146 49 7 87 野 菜 類 96 47 83 89 果 実 類 83 5 44 74 肉 類 108 70 53 106 牛乳・乳製品 98 95 69 115
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) アメリカ フランス イギリス 日本 (2) フランス イギリス 日本 アメリカ (3) フランス アメリカ 日本 イギリス (4) フランス アメリカ イギリス 日本 (5) アメリカ イギリス 日本 フランス
正解は5
2-1-12 農業経営に関する次の記述のうち、適切なものを選べ。
(1) 認定農業者とは、農業者自ら農業経営改善計画を作成・申請し、市町村の基本構想等の基準に適合する農業者として、市町村から認定を受けた者である。
(2) 有機JAS認定制度とは、登録認定機関が有機農産物や有機加工食品を有機JAS規格に適合していると認定すると共に、有機JASマークを貼付する制度である。
(3) 農地転用許可制度において、農地所有者が自らの農地を農地以外の用途に転用する場合には転用許可手続きは不要である。
(4) 我が国のかんがいを目的とする水利権は、全て歴史的経緯の中で成立した水理秩序が権利として社会的承認を得たいわゆる慣行水利権である。
(5) 農用地区域とは、農地法に基づき今後長期にわたり農業上の利用を確保すべき土地として、都道府県が農業振興地整備計画でようとを定めて設定する区域である。
正解は1
2-1-13 GAP(適正農業規範)に関する次の記述のうち、適切でないものを選べ。
(1) GAPとは、食品安全、環境保全、労働安全、品質向上などを目的として適切な農業生産を実施することである。
(2) 食品安全GAPの実施にあたっては、農林水産省が定めた全国、全作物一律の項目や内容に基づいて、取り組むことが基本とされている。
(3) 食品安全GAPは、食品の安全性に悪影響を与える要因やそれを抑える生産方法を留守とアップして、実施・記録し、より適切な生産方法に見直していくことである。
(4) 農林水産省は、食品安全GAPへの取り組みを推進しており、食料、農業、農村基本計画にも位置づけられている。
(5) GAPは、ヨーロッパ、中国、タイなどの海外の国々でも進められている。
正解は2
2-1-14 稲の栽培とかんがいに関する次の記述のうち、適切でないものを選べ。
(1) 中干しとは、稲の栄養成長期間中、最高分けつ期前後に、落水して水田を干すことをいう。
(2) 域水深とは、水田における蒸発散量と水田浸透量の合計を水深単位で表したもので、単位としては、津上mm/日を用いる。
(3) 水路損失とは、かんがい用水を送水、配水する間に用水路からの蒸発、浸透、漏水などによって失われる用水の損失のことをいう。
(4) 深水かんがいとは、稲の幼穂形成期に異常な高温から幼穂を守るために行う高温障害対策のことをいう。
(5) 堪水直播とは、苗代育苗と田植えの過程を省略して、堪水状態の本田に直接播種する稲の栽培方法のことをいう。
正解は4
2-1-15 バイオマスに関する次の記述のうち、適切でないものを選べ。
(1) バイオマスは、生物によって生産されるため、「広く、薄く」存在し、生命と太陽エネルギーがある限り持続的に再生可能な資源である。
(2) 家畜排泄物は、そのほとんどがたい肥として利用されているが、地域によって需給の不均衡が生じている。
(3) 食品廃棄物は、そのほとんどが肥料や飼料に再生利用されており、消却・埋め立て処理されている割合はきわめて低い。
(4) バイオマスの持続的な利活用のためには、その生産、収集、変換、利用の各段階が有機的につながり、全体として経済力のある循環システムを構築することが重要である。
(5) 稲わら、もみ殻等の農作物非食用部は、一部は飼料、畜舎敷料、たい肥等として利用されている者の、大半が農地へのすき込み等低利用にとどまっている。
正解は3
2-1-16 特別栽培農産物の表示ガイドラインに関する次の記述のうち、適切なものを選べ。
(1) 特別栽培農産物とは、化学合成農薬の使用回数及び化学肥料の窒素成分量を、ともに慣行の5割以下に減らして栽培された農産物をいう。
(2) 性フェロモン剤等誘因剤は化学合成農薬と同様、節減の対象となる。
(3) 野菜冷凍食品や、乾燥野菜などの加工食品、山野草、きのこなどはガイドラインの対象となる。
(4) 水耕栽培など土を用いない栽培で生産された農産物であっても、ガイドラインの対象となる。
(5) 不特定多数の消費者を対象とした通信販売などはガイドラインの対象とならないが、特定の生産者と消費者が結びついた場合は対象となる。
正解は1
2-1-17 農薬に関する次の記述のうち、適切でないものを選べ。
(1) 農薬は安全性を確保するため、製造、輸入から販売そして使用に至るまで全ての過程で法律により厳しく規制されている。
(2) 農薬は一部の例外を除き、国(農林水産省)に登録された農薬だけが製造、輸入及び販売できる。
(3) 農薬の有効登録件数のうち、劇物または毒物である農薬の数は、普通物である農薬の数より多い。
(4) 最近において農薬販売量の最も多い国はアメリカで、日本はアメリカの半分以下である。
(5) 日本の農薬販売量は、1990年頃に比べ2000年頃の方が少ない。
正解は3
2-1-18 我が国のかんがいの特質に関する次の記述のうち、適切でないものを選べ。
(1) 我が国の水産資源総使用量に占める農業用水の割合は、米消費低迷による水田の減少で半分以下に低下している。
(2) 我が国の主要な農業用水の多くは、開発の歴史が古く、早くより河川からの取水を開始しており、水利権として優先的な権利をもっているものが多い。
(3) 農業用水の使用は、水田かんがい期に集中しており、都市用水に比べて季節的変化や、気象条件による変化が大きい。
(4) 農業用水の大部分を占める水田かんがい用水は、その取水量のうち多くが河川等を通じて還元し、下流地域で反復利用される。
(5) 農業用水は、広域の農地に用水を供給するため、地域の豊かな水環境の形成や地下水などの涵養など、多目的な機能を果たしている。
正解は1
2-1-19 施設園芸に関する次の記述のうち、適切なものを選べ。
(1) 施設園芸が本格的に取り組まれるようになったのは、米の生産調整が始まった時期と一致しており、水利権として優先的な権利をもっているものが多い。
(2) 生分解性プラスチックは使用後自然界に存在する微生物によって低分子化合物に分解されるが、水や二酸化炭素などの無機物にまでは分解されない。
(3) 施設整備農家数は、近年一貫して増加傾向にあり、平成17年には全農家数の過半を占めるに至っている。
(4) プラスチックハウスの被膜資材として、諸外国では主にポリエチレンフィルムが使われているが、我が国では塩化ビニルフィルムが主であり、ビニルハウスの呼び名が広く定着している。
(5) 養液栽培面積は、着実に増加し、平成11年には1,056haに達し、全施設園芸面積の40%を占めるに至っている。
正解は4
2-1-20 環境影響評価に関する次の記述のうち、適切でないものを選べ。
(1) 環境影響評価は、環境に影響を与えるおそれのある行為の実施にあたり、あらかじめその環境への影響について予測又は評価を行い、環境の保全について適正に配慮しようとするものである。
(2) 環境保全措置の検討にあたっては、環境保全上の価値の「代償措置」を優先して検討し、その次に「環境影響の回避・低減」を検討するのが一般的である。
(3) 環境影響評価法の環境要素は、「環境の自然的構成要素の良好な状態の保持」、「生物多様性の確保及び自然環境の体系的保全」、「人と自然との豊かな触れあい」、「環境への負荷」の4つに区分されている。
(4) 環境影響評価法の対象事業は、規模が大きく、環境影響の程度が著しいものとなるおそれがあり、かつ、国が実施し、助成しまたは許認可等を行う事業である。
(5) 環境影響評価の適正な実施により、環境保全に適正な配慮がなされるとともに、事業に対する住民等の理解が進み、環境保全をめぐる紛争の防止につながる。
正解は2
記述問題
2-2 次の問題について解答せよ。(青色の解答用紙を使用し、3枚以内にまとめよ。)
「食料・農業・農村基本法」の理念や、「食料・農業・農村基本計画」(平成17年3月策定)の基本方向を踏まえ、次の5項目の課題の中から1項目を選び、主として技術的側面からあなたの意見を述べよ。(課題の項目番号を明記すること。)
(1) 望ましい食生活の実現と食料安定供給への取り組み
(2) 世界の農産物需給と食料自給率向上への取り組み
(3) 地域農業の構造改革と国内農業生産の展開
(4) 環境保全を重視した農業生産の推進
(5) 農村の地域資源の保全・活用と活力ある農村の創造