平成19年度技術士第一次試験専門科目問題(金属部門) 提供:アトキンスさん   各部門の部屋Topへ
第一次試験過去問題Topへ

Ⅳ 次の35問題のうち25問題を選択して解答せよ。(専門科目解答欄に1つマークすること。)


4-1 金属の結贔構造に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

① 格子定数αの体心立方格子の原子』径dは,√3・a/2である。
② 単位胞中の原子の数は面心立方格子で4個,体心立方格子では2個である。
③ 面心立方格子で原子密度が最も高い面は{111}であり,密度が最も高い方向は<110>である。
④ 立方晶系の(hkl)面と[hkl]方向は垂直である。
⑤ ミラー指数の2乗和が大きい面ほどその面間隔は大きい。


4-2①~⑤は,熱力学的諸量の関係を示した図である。A, Bは成分,θはギブズエネルギー,Hはエンタルピー,Sはエントロピー, Pは圧力, Tは温度,Tmは融点,Tbは沸点,αBはB成分の活量,xBはB成分のモル分率を表す。このうち誤っている図はどれか。




4-3 ヒュームーロザリーは主としてCuまたはAgを含む二元系合金の状態図を整理して,一般則を見出した。この法則に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

① 原子半径の差が15%以内のとき,広い固溶体ができる可能性がある。
② 価電子数の異なる原子は固溶範囲が狭い。
③ A-B二元系において,Aの原子価がBの原子価より大きい場合, A側固溶体がB側固溶体に比べ固溶範囲が広い。
④ 価電子濃度がほぼ一定のところで固溶限が現れ,またある一定値のところに類似の構造をもつ中間相が現れる。
⑤ 両金属元素の結晶構造が等しい場合には固溶体をつくりやすい。


4-4 下図に示すように, A-B二元系合金の状態図中Xの組成の溶液を温度T0から冷却した際,温度変化を定性的に示した図として正しいものは①~⑤のうちどれか。





4-5 下図は酸素ガス1モルあたりの酸化物の標準生成ギブズエネルギーを温度の関数として表した図(エリンガム図)であり,この図を用いて種々の金属の製・精錬反応の到達度合を予測することができる。①~⑤の記述のうち,誤っているものはどれか。




① アルミニウムの線(4/3A1 + 02 = 2/3Al2O3)は鉄の線(2Fe + 02 = 2FeO)より下にあることから,スクラップなどで鉄中に混入したアルミニウムは酸化精錬では除去しにくいことがわかる。逆にアルミニウム中に混入した鉄は酸化により容易に除去できると考えてよい。
② それぞれの線(2m/n M + O2 = 2/n MmOn)より上の領域の条件では酸化物が,下の領域では金属が案定であり,酸素ポテンシャルと温度をパラメータとした一種の状態図といってよい。
③ 左縦軸上のC点,H点はそれぞれ,2CO + O2 = 2CO2, 2H2 + O2 = 2H20を表す直線の絶対零度軸における切片であるが,その値は各反応のエンタルピー変化を表し,両点を通る直線上では,それぞれ,CO2/CO比, H2O/H2比の値が一定である。
④ これらの線は,反応物や生成物が純物質(活量が1)であることを前提に作成されているが,実際の酸化精錬反応では,それぞれ金属中不純物あるいはスラグ中に溶解除去された酸化物として存在している。そのような(活量が1より小さい)場合には,これらの線を絶対零度軸における切片を中心に回転して,希釈された分を補正して考えることができる。
⑤ これらの線のほとんどはほぼ同じ傾きをもち,右上がりになっている。これは,それぞれの酸化反応(2m/nM+02=2/nMmOn)において気体1モルが消失するため,反応のエントロピー減少量がほぼ同じであることを示している。


4-6 次に示す特徴に該当する元素は①~⑤のうちどれか。

密度は4.5g/cm^3と比較的小さく,軽量高強度な耐食材料として近年用途が拡大している。原料鉱物資源は安走な酸化物として存在し,還元が困難であるため,複雑な製・精錬工程が必要となり,生産性は高くない。一方,窒素との反応性も高く,表面窒化したものは装飾品にも用いられている。

①アルミニウム②シリコン(ケイ素) ③スカンジウム
④チタン ⑤マグネシウム


4-7 鉄の精錬プロセスについての次の記述のうち,下線部分が誤っているものは①~⑤のうちどれか。

高炉-転炉法における精錬工程では,原料から混入する不純物を効率的に除去するため種々のプロセスが開発されてきた。炭素やガス成分以外はスラグ-メタル反応によりスラグ中に除去されるが,その原理や最適条件は元素によって異なる。鉄中のシリコンやリンは酸化反応により除去されるため,<①高温>で<②酸化性雰囲気>が好ましいのに対し,硫黄は<③硫化物イオン>の形に還元されて除去されるため,<①低温>で<②還元性雰囲気>が好ましい。いずれの元素も鉄中では炭素との相互作用(反発力)が<④大きい>ため,溶銑段階で,できるだけ除去されている。精錬スラグについては,上記のいずれの元素も塩基度の<⑤高い>組成が好ましいが,廃棄スラグの環境問題からフッ素(蛍石)の使用が困難となり,溶銑予備処理プロセスも変化しつつある。


4-8 高炉(溶鉱炉)製銑プロセスに関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

① 高炉は炉上部から装入された鉄鉱石とコークスが,炉下部から吹き込まれた高温の空気と反応する向流型の反応装置である。
② 高炉から排出されるスラグは主としてCaO, SiO2, A1203からなり,高炉セメント原料等に再利用される。
③ 高炉内へ装入されたコークスは,羽口前で燃焼して,主として一酸化炭素ガスとなる。
④ 高炉では鉄鉱石の還元剤としてコークスが用いられているが,羽口より吹き込まれている微粉炭や廃棄プラスチックにより一部が代替されている。
⑤ 自溶性焼結鉱は,鉄鉱石に主として珪石を添加して焼結したものであり,珪石添加により鉄鉱石の被還元性は向上する。


4-9 非鉄金属製錬に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

① アルミニウムの製錬では,バイヤー法によりボーキサイトからアルミナを得て,これをホールエルー法により溶融塩電解精製して,溶融アルミニウムを得る。
② チタンの製錬では,酸化チタンを塩化して塩化チタンを得て,それをマグネシウムにより還元して金屑チタンを得るクロール法が主流である。
③ シリコンは珪石の炭素熱還元により得られるが,鉄やチタン等の不純物は原理的に除去することが難しいため,半導体級の高純度シリコンを得るためには,超高純度の珪石を原料に用いる必要がある。
④ 銅製錬の白溶炉では,銅鉱石中の硫黄が酸素と反応して発熱し,鉱石は溶融状態になり,マットとスラグに分離される。
⑤ 亜鉛の乾式製錬では,酸化亜鉛を溶鉱炉でコークスにより還元し,発生した亜鉛蒸気を溶融鉛中に溶解して,鉛を冷却し,温摩による溶解度差から亜鉛を析出させる。この方法がISP法であり,結果として鉛の製錬も行われる。


4-10 次の説明の[ ]欄について, 1~3についてはI群から,ア~ウについてはⅡ群から,それぞれ適切なものを選んだ組合せは①~⑤のうちどれか。

電気銅は電解精錬法によって生産される。[1]では,銅とともに,[ア]が溶解する。しかし,[イ]は溶解できずスライムとして沈殿する。[2]では,銅が析出するが,[ウ]は析出できず溶液中にとどまる。こうして,[3]に高純度の銅が得られる。

Ⅰ群:a.陽極
   b.陰極
Ⅱ群:c.イオン化傾向が銅(Cu)より大きいFeやSnなど
   d.イオン化傾向が銅(Cu)より小さいAgやAuなど

 1 2 3   ア  イ  ウ
① a  a  b   c  d  c
② a  b  b   c  d  c
③ a  b  b   d  c  d
④ b  b  a   c  d  c
⑤ b  b  a   d  c  d



4-11 銅管と鉄管を絶縁性のゴム管でつないだ。銅管が上流になるようにして水を流したところ,銅の腐食に伴い鉄にも腐食が生じた。鉄の腐食が上流からのCu2+イオンの還元によるとすると,鉄の腐食量(体積)は銅の何倍か。①~⑤の中から選べ。ただし,溶存酸素は銅の溶解によって消費され,鉄の溶解には関与しないものとする。必要であれば,以下の値を用いよ。

原子量:銅(64),鉄(56)
比重:銅(8.9):鉄(7.9)

① 10倍 ② 5倍 ③ 2倍 ④ 1倍 ⑤ 1/2倍


4-12 下図は,3つの酸化物中における金属イオンの拡散係数の温度依存性を表したものである。これらを含む合金を空気中,1,000℃で酸化する際,生成する酸化皮膜の成長速度の順番で正しいものは次のうちどれか。




①FeO < A1203 < NiO
②FeO < NiO < Al203
③NiO < A1203 < FeO
④Al203 < FeO < NiO
⑤Al203 < NiO < FeO


4-13 めっきに関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

① 亜鉛系めっき鋼板の耐食性評価を塩水噴霧試験によって行う。
② 隣のビルから雨だれがかかる所にある屋根に亜鉛めっき鋼板を用いる。
③ 亜鉛めっき鋼板の耐食性は,緻密で安定な腐食生成物が形成されることによる。
④ スズめっきが食料用缶詰に用いられるのは,缶中ではスズの方が鉄より貴だからである。
⑤ 銅は鉄より貴な金属なので,銅めっきは耐食性を発揮させるために用いられる。


4-14 次の鉄鋼材料に対する表面改質法のうち,基材の表面硬化法として使われないものはどれか。

① 黒染め(黒色酸化処理)② レーザー焼入れ
③ イオン注入  ④ 浸炭
⑤ ショットピーニング


4-15 次の記述のうち,溶射の特徴として誤っているものはどれか。

① 高真空を要する。
② 大型構造物に施工できる。
③ 皮膜形成速度が非常に大きい。
④ 被覆材を選ばない。
⑤ 空孔が存在する。


4-16 純Ni中のNi原子の自己拡散係数を1,000℃および1,200℃で測定し,次の結果を得た。1,000℃:4.2x10^(-16) m^2/s,1,200℃:1.5×10^(-14) m^2/s。これらの測定値に基づいて,純Ni中のNiの拡散の活性化エネルギーを求めた。最も近いものは①~⑤のうちどれか。必要であれば以下の近似値を用いよ。
   log(1.5)=0.18, log(4.2)=0.62, 1n(x)=2.3log(x), R =8.31J/(mol・K)

① 60kJ/mol ② 130 kJ/mol③ 280 kJ/mol
④ 420kJ/mol⑤ 600kJ/mol


4-17 Cu単結晶を室温で引張試験して得られた応カ-ひずみ曲線についての次の記述のうち,誤っているものはどれか。

① 降伏点に続いて容易すべり域が現れる。
② 容易すべり域に続いて直線硬化域が現れる。
③ 直線硬化域に続いて交差すべりが生じ,強度増加の割合が減少する。
④ 直線硬化域は転位の切り合いで生じる。
⑤ 交差すべりは刃状転位が異なるすべり面へ移動することで生じる。


4-18 金属材料の引張試験に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

① 最大引張荷重を引張試験片の原断面積(初期断面積)で割った応力を引張強さと呼ぶ。
② 応カ-ひずみ関係がσ=Fε^nと記述できる材料の対数ひずみ(真ひずみ)で表した一様伸びの値はnである。
③ 高圧容器中において高圧下での引張試験を行った際の破断伸びの値が,大気中で引張試験を行った際の破断伸びの値より大きくなるのは,静水圧の付加によりくびれの発生が遅れるからである。
④ r値(ランクフォード値,塑性ひずみ比)とは,板材の単軸引張試験における幅方向対数ひずみの厚さ方向対数ひずみに対する比である。
⑤ 一様変形している場合の引張試験片の真応力は,体積一定条件が成り立てば,公称応力と公称ひずみから換算できる。


4-19 等方性の金属材料の降伏に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

① 単軸引張降伏応力が100MPaの材料は,100MPaの単軸圧縮応力で降伏する。
② 単軸引張降伏応力が100MPaの材料は,50MPaの高圧容器内では50MPaの引張応力で降伏する。
③ トレスカの降伏条件(最大せん断応力説)に従う単軸引張降伏応力が100MPaの材料の薄肉パイプをねじるとき,50MPaのせん断応力で降伏する。
④ ミーゼスの降伏条件(せん断ひずみエネルギー説)に従う単軸引張降伏応力が100MPaの材料の薄肉パイプをねじるとき,約57.7MPaのせん断応力で降伏する。
⑤ 単軸引張降伏応力が100MPaの材料は,高圧容器内で1OOMPaの静水圧で降伏する。


4-20 高温クリープについての次の記述のうち,誤っているものはどれか。

① 純金属の転位クリープでは負荷直後からクリープ速度が減少する遷移域が生じる。
② 金属の転位クリープでは結晶粒径が小さいほどクリープ速度は小さくなる。
③ 合金の転位クリープで転位のすべり運動が変形を律速する場合,負荷直後からクリープ速度が増加する逆遷移クリープが生じる。
④ 合金の転位クリープのすべり運動が変形を律速する場合,変形が進行しても,転位組織は発達しない。
⑤ ナバローヘリングクリープでのクリープ速度は体積拡散係数に比例する。


4-21 次の語句のうち,転位と関係しないものはどれか。

① オロワン応力 ② ひずみ時効 ③ ラスマルテンサイト
④ ボアソン比 ⑤ シュミット因子


4-22 オーステナイトについての次の記述のうち,誤っているものはどれか。

① すべり系は8つある。
② 炭素が固溶する八面体中心位置の空隙の長さは約0.1nmである。
③ 配位数は12である。
④ オーステナイト単相域での炭素の最大固溶量は2.1mass%で,この値以下の鉄-炭素合金を鋼と呼ぶ。
⑤ 純鉄では1,392℃を超えるとBCCの鉄になる。


4-23 共析鋼をオーステナイト域まで加熱し,塩浴などに直接挿入して恒温保持した。次の記述のうち,誤っているものはどれか。

① 650℃で保持すると,パーライト組織となった。
② 500℃で保持すると,微細パーライト組織となった。
③ 400℃で保持すると,羽毛状のベイナイト組織となった。
④ 300℃で保持すると,針状のベイナイト組織となった。
⑤ 200℃で保持すると,マルテンサイトが生成した。


4-24 焼入性についての次の記述のうち,誤っているものはどれか。

① 焼入れた丸棒の中心部に未硬化芯が残らない最大の直径を,その鋼材の臨界直径と呼ぶ。
② 焼入れた瞬間に表面温度が焼入れ液の温度になるような理想的な条件で求めた臨界直径を,理想臨界直径と呼ぶ。
③ 理想臨界直径を現実に求めることはできないが,ジョミニ距離を実測することで推定できる。
④ ジョミニ距離とは水冷端からマルテンサイトが生じている位置までの距離のことである。
⑤ 亜共析綱においては炭素量が増加するとジョミニ距離は長くなる。


4-25 冷間加工後の再結晶に関する次の説明のうち,誤っているものはどれか。

① 再結晶させるためにはある程度以上の塑性変形を加える必要がある。
② 再結晶させるために必要な温度は,塑性変形が小さいほど高くなる。
③ 塑性変形量を増すと,再結晶粒は微紬化する。
④ 変形前の初期結晶粒径が大きなものほど,同一の焼きなまし条件で再結晶させるためには塑性変形量を増ず必要がある。
⑤ 再結晶が完了した後,焼きなましを続けても結晶粒径はほとんど変化しない。


4-26 鋼のマルテンサイト変態に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

① 母相とマルテンサイト相との間には一定の結晶学的方位関係が成立する。
② マルテンサイト相内には高密度の格子欠陥が存在する。
③ 母相とマルテンサイト相で組成の変化がない。
④ マルテンナイト変態は表面起伏と形状変化を伴う。
⑤ 高温から冷却してMs点に達すると母相全体がマルテンナイトに変態する。


4-27 鋼の組織変化に関する次の記述のうち,誤っているものばどれか。

① Nb, Ti, Vなどの微量元素を添加した低合金鋼では,再結晶が抑制されたり相変態が遅延する。これらの効果が十分発揮されるためには,加熱時にこれらの微量元素の炭化物,窒化物を形成せず固溶している必要がある。
② 第2相粒子を含む鋼中の粒界移動は,第2相粒子によるピン止め効果のため著しく遅延ずる。このとき平均結晶粒径は保持時間の1/2乗に比例ずる。
③ パーライト変態の駆動力は共析温度からの過冷度に比例する。
④ マルテンサイトでは,炭素や窒素などの侵入型元素が体心立方構造内に規則的に配列するため格子をひずませ,結晶構造が体心正方晶となる。
⑤ 炭素鋼や低合金鋼をオーステナイトの低温域で加工すると,オーステナイト中に格子欠陥が蓄積する。その結果フェライトの核生成サイトが増加し,結晶粒が微細化する。


4-28 白動車のプレス用鋼板についての次の記述のうち,誤っているものはどれか。

① 固溶炭素および固溶窒素を著しく低下させたIF鋼が使用される。
② 炭素量を低下させた目的はストレッチャー・ストレインの発生を抑えることにある。
③ プレス成形性はr値(ランクフォード値,塑性ひずみ比)が大きいほど良好である。
④ r値を大きくするには鋼板の幅に比べ厚さをより大きく変形させればよい。
⑤ 丁値を大きくするには鋼板の板面に平行に{111}面を多く存在させればよい。


4-29 金属材料の硬さ試験に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

① ビッカース硬さ(HV)は,対面角136度の正四角すいのダイヤモンド圧子を押込む際の試験荷重(N)の0.102倍を,圧痕(永久くぼみ)の表面積(mm^2)で割った値である。
② ブリネル硬さ(HBW)は,超硬合金球の圧子を押込む際の試験荷重(N)の0.102倍を,圧痕の表面積(mm^2)で割った値である。
③ ロックウェル硬さ (Cスケール,HRC)は,頂角120度,先端丸み半径0.2mmの円すいダイヤモンド圧子を2段階の試験力(初試験力,全試験力=初試験力+追加試験力)で押込んだ後,初試験力に戻したときのくぼみの永久変形量h (圧子の変位差,mm)から換算式HRC=100-500 hにより得られた値である。
④ ショア硬さ(HS)は,ダイヤモンド圧子のついたおもりを一定の高さから落下させ,おもりの重さ (N)の0.102倍を圧痕の表面積(mm^2)で割った値である。
⑤ ヌープ硬さ(HK)は,対稜角が172.5度と130度の底面が菱形の四角すいダイヤモンド圧子を押込む際の試験荷重(N)の0.102倍を,圧痕の投影面積(mm^2)で割った値である。


4-30 板の圧延加工に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

① 圧延荷重を小さくして圧延機のロールハウジングの変形を少なくするためには,作業ロール(ワークロール)の直径を大きくする。
② 広幅の薄板圧延の場合には,幅広がりは圧延方向の長さの増加に比べれば極めてわずかである。
③ 長さ方向の板厚を制御するために,圧下制御や張力制御などが行われている。
④ 薄板の圧延において幅方向の板厚制御が不適切であると,板中央部の中伸び(中波)や板端部の端伸び(耳波)などの平坦度不良を生じる。
⑤ 圧延中に前方張力または後方張力を加えると,圧延圧力が減少する。


4-31 押出し加工と引抜き加工に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

① 押出し比が等しいとき,一般に直接押出し(前方押出し)の押出し力は間接押出し(後方押出し)の押出し力より大きい。
② 鋼の場合と同様に,アルミニウム合金の熱間押出しにおいてもガラス潤滑法が有効に利用されている。
③ テーパーダイス(コニカルダイス)を用いた丸棒の引抜きにおいて,引抜き力を最小にするようなダイス半角が存在する。
④ テーパーダイスを用いた丸棒の引抜きにおいて,ダイス面圧を減少させてダイス寿命を向上させるために後方張力(逆張力)を付加することがある。
⑤ 引抜きの断面減少率には限界があり,一般に1回のパスだけで製品ができあがることは少なく,最終製晶を得るために数回から数十回の引抜きを繰り返す必要がある。


4-32 板材のせん断加工に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

① クリアランス(ポンチ(パンチ)とダイス間のすきま)を小さくすると,せん断面が増加する。
② 高延性材料で単純な閉輪郭形状の場合,クリアランスを極めて小さくした状態で,ダイスまたはポンチの刃先に比較的大きな丸みをつけることによって,全面をせん断面にすることができる。
③ せん断の途中でポンチの進行方向を逆向きにすることによって板の両面にだれを作れば,かえり (ばり)の発生を抑えることができる。
④ クリアランスを極めて小さくした状態で背圧をかけながらせん断すると,きれいなせん断面が得られる。
⑤ クリアランスを板厚の10%程度として高速でせん断することによって,延性材料のかえりの発生を抑えることができる。


4-33 円筒の深絞り加工に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

① ダイス肩半径を大きくしすぎると,口辺しわを発生しやすくなる。
② ダイス側のみを潤滑する場合に比べて限界絞り比を大きくするために,ポンチ(パンチ)側とダイス側を十分に潤滑する。
③ フランジ部に発生するしわはしわ押え力の付加で抑制できるが,必要以上に大きなしわ押えカは破断の原因となる。
④ 1回の深絞り加工で成形できる絞り比には限界があり,直径に比べて深い製品を得るためには再絞り加工を行う。
⑤ クリアランス(ポンチとダイス間のすきま)を板厚と同じ大きさに設定すると,容器の側壁はしごき加工を受ける。


4-34 鋼板の溶接に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

① 大入熱溶接熱影響部の靭性改善の手段としては組織の微細化のみでは限度がある。ボンド部やオーステナイトーフェライト2相域に加熱された熱影響部の靭性の低下は島状マルテンサイトと呼ばれる組織の形成が原因とされ,この組織を分解させ,脆化を緩和する必要がある。
② 加熱,圧延,圧延後の水冷を制御する加工熱処理技術が開発され,母材の機械的特性の向上に大きく貢献したが,溶接硬化性,水素割れ感受性,溶接熱影響部の靭性などの改善効果はほとんどない。
③ 溶接構造物の安全性を評価するためには,脆性亀裂発生特性のみならず,亀裂伝播停止特性の評価も必要である。
④ 大入熱溶接熱影響部,特にボンド部の脆化を抑える手段として,オーステナイト粒内におけるフェライト核生成の促進による変態組織の微細化が有用である。
⑤ 溶接熱影響部の最高硬さは加熱後の冷却速度と化学組成に依存する。この化学組成の影響を炭素当量として表し,鋼板の溶接性を評価する指標としている。


4-35 次の分析技術についての説明文で,最も不適切なものはどれか。

① X線光電子分光法(XPS)は, X線を照射したときに放出される光電子を分光器によって測定するもので,極表面における元素分析と化学結合に関する情報を得ることができる。
② オージェ電子分光法(AES)は,電子を照射したときに放出されるオージェ電子を分光器によって測定するもので,微小領域での極表面における元素分析を行うことができる。
③ グロー放電発光分光法(GDS)は,グロー放電により発する光を分光する方法で,超高真空を必要とせず,深さ方向の元素組成分析を短時間で行うことができる。
④ 蛍光X線法(XRF)は,内殻電子の励起にX線を使用し,試料からの特性X線(蛍光X線)を測定することによって,試料の極表面での元素組成分析を行うことができる。
⑤ 電子プローブ微小部分析法(EPMA)は,電子照射によって放出される特性X線を測定することによって微小領域の元素分析が行え,試料を動かすことにより,2次元の分布測定を行うことができる。


正解
問題 正解 問題 正解 問題 正解 問題 正解 問題 正解 問題 正解 問題 正解
1 5 6 4 11 4 16 3 21 4 26 5 31 2
2 2 7 1 12 5 17 5 22 1 27 2 32 5
3 3 8 5 13 3 18 3 23 2 28 4 33 2
4 4 9 3 14 1 19 5 24 4 29 4 34 2
5 1 10 2 15 1 20 2 25 5 30 1 35 4