平成15年度技術士第二次試験問題(環境部門) ●環境保全計画 |
提供:SC30さん |
経験論文 1−1 選択科目 1−2 環境一般 2−1 環境一般 2−2 択一式問題の正答 |
【環境保全計画】
T-1 次の問題について解答せよ。(答案用紙6枚以内にまとめよ。)
あなたが技術的責任者として実施した環境保全計画に関する国内外の業務の内,技術士業務として適当と思われる最近の事例を2つ挙げ,それぞれの業務ごとに以下について論述せよ。
(1)業務の概要
(2)業務の技術的問題点と対応策
(3)現時点での評価
(4)現時点での評価を踏まえた今後の課題と解決方策のあり方
(Aグループ)
T-2-1(A) 循環型社会の形成の推進に関し,循環型社会形成推進基本計画(平成15年3月閣議決定)を踏まえ,以下の問いに答えよ。
(1)現状と課題について述べよ。
(2)国民の果たすべき役割はどのように期待されているか述べよ。
(3)国民に期待される役割をあなたが果たす上で,事業者及び地方公共団体に期待する役割について,あなたの考えを述べよ。
T-2-2(A) あなたが知っている市町村を具体的な対象として,地球温暖化防止のために二酸化炭素等の温室効果ガスの排出総量を削減するための計画を作成する場合を想定し,(1)計画の内容構成,(2)作成手順・データ収集の方法,(3)実効性のある計画とするための工夫などについて述べよ。
(Bグループ)
T-2-3(B) 大都市地域の大気汚染対策として,平成13年にいわゆる「自動車NOx・PM法」が制定された。(1)この制度の概要を述べるとともに,(2)問題点,課題を列記し,(3)今後の対策のあり方を論ぜよ。
T-2-4(B) 電気自動車,メタノール自動車,天然ガス自動車,燃料電池自動車など環境保全上普及が期待されている自動車を列記して,それぞれについて現時点での技術的特徴,将来の展望について要点を述べよ。また,効果的な普及方策を論ぜよ。
(Cグループ)
T-2-5(C) 土壌(地下水を含む)の汚染除去手法について複数の具体例を挙げ,その内容,技術的問題点及び課題を述べるとともに,今後の技術開発方向に関する見解を述べよ。
T-2-6(C) 我が国の水環境保全技術の開発途上国への移転に関して,現状の問題点を踏まえ,実効性のある移転に対する考え方を今後のあり方を含めて述べよ。
(Dグループ)
T-2-7(D) 環境影響評価におけるコミュニケーションの現状と問題点を整理し,これらの改善のための基本的方向と事業者,住民,行政それぞれがとるべき方策についてあなたの考えを述べよ。
T-2-8(D) 平成15年に自然再生推進法が施行されたが,それ以前から自然再生のための地域レベルでの取り組みが各地でなされている。その背景と課題を実例を挙げて論じるとともに,地域における自然再生のための計画を策定するに際しての留意事項を述べよ。
【環境一般】
U-1 次の20問題のうち15問題を選択して解答せよ。(解答欄に1つだけマークすること。)
U-1-1 地球温暖化問題についての次の記述のうちから正しいものを選べ。
@産業革命以降,現在までに人為的に排出された様々な温室効果ガスによる地球温暖化への直接的寄与度を比べると,二酸化炭素による寄与度は約80%,メタンは約10%である。
AIPCC第3次評価報告書によると,全球平均地上気温は1861年以降上昇しており,20世紀中に0.6±0.2℃上昇した。また,1990年から2030年までの全球平均地上気温の上昇は,1.4〜5.8℃と予測されている。
BIPCC第3次評価報告書によると,地球温暖化が農作物生産に与える影響は,数℃以下の温暖化なら中緯度の一部地域にとっては一般に好影響となるが,それ以上の温暖化は悪影響となる。特に熱帯では,一部の農作物生産は,わずかな気温上昇でさえも,生産量が減少する。
C我が国の平成11年度の二酸化炭素排出は平成2年度に比べ,総量で9.0%増加した。産業,運輸,民生の部門別では,民生部門が一番大きく増加した。
D気候変動枠組条約の京都議定書では,2008〜2012年を目標期間として,先進国全体の温室効果ガス排出量を1990年レベルに安定化することが合意された。
U-1-2 国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)に定める基本方針において,次の(イ)〜(ホ)のうち,特定調達品目(国及び独立行政法人等が重点的に調達を推進すべき環境物品等の種類)として定められているものはいくつあるか。
(イ)紙類 (ロ)OA機器 (ハ)公共工事 (ニ)自動車 (ホ)印刷
@1つ A2つ B3つ C4つ D5つ
U-1-3 循環型社会形成推進基本計画(平成15年3月閣議決定)において数値目標が設定されている3つの物質フロー指標の組合せで正しいものは次のどれか。
@資源生産性,循環利用率,最終処分量
A総物質投入量,循環利用率,最終処分率
B総物質投入量,中間処理量,最終処分量
C資源生産量,循環利用量,最終処分量
D資源生産性,中間処理量,最終処分率
U-1-4 大気汚染・騒音対策に関する次の記述のうち誤っているのはどれか。
@代表的なフロン破壊処理技術としては,ロータリーキルン法,セメントキルン法,高周波プラズマ法が含まれる。
A我が国に設置されている排煙脱硝装置は,平成10年度で,1,300基(鉱煙発生施設分を除く)を超えている。
B道路交通騒音対策としての道路構造対策には,掘割構造,遮音壁,環境施設帯,低騒音舗装が含まれる。
C航空機騒音対策のうち発生源対策としては,低騒音型機の導入,発着規制,騒音軽減運航方式(急上昇方式,カットバック上昇方式,低フラップ角着陸方式など)が実施されている。
D自動車燃料の品質規制が行われている項目には,鉛,硫黄,ベンゼン,水銀が含まれている。
U-1-5 水質汚濁に係る環境基準に関する次の記述のうち,正しいものを選べ。
@人の健康の保護に関する環境基準は河川,湖沼,海域の各公共用水域につき水域類型ごとに示されている。
A人の健康の保護に関する環境基準は全公共用水域について同じ項目と同じ基準が示されているが海域についてはふっ素及びほう素の基準値は適用しない。
B生活環境の保全に関する環境基準のうち,有機物の指標となる項目は河川及び湖沼が生物化学的酸素要求量(BOD)であり,海域が化学的酸素要求量(COD)である。
C全公共用水域について全窒素及び全燐の基準値が示されている。
D河川及び海域についてn−ヘキサン抽出物(油分等)の基準が示されている。
U-1-6 環境関連の次の条約のうち誤った説明はどれか。
@バーゼル条約:有害廃棄物の越境移動及びその処分の規制について国際的な枠組みを作ること並びに環境を保護することを目的とする条約
Aワシントン条約:野生動植物の種の国際取引を規制することによって絶滅のおそれのある種の保存を図ることを目的とする条約
Bラムサール条約:特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地及びその動植物の保護を促進することを目的とする条約
Cロッテルダム条約:大気中の温室効果ガスの濃度の安定化を究極的な目的とし,全ての締約国に温室効果ガスの排出及び除去に関する目録作成等の義務を課す枠組み条約
Dストックホルム条約:残留性有機汚染物質(PCB,DDT,ダイオキシン等)の製造,使用及び輸出入の原則禁止,非意図的な放出の放出源特定,廃棄物の適正な管理等につき規定する条約
U-1-7 近年,環境保全に関する各種法制度や計画の改定が相次いでいるが,次の記述のうち,それら内容について誤っているのはどれか。
@平成9年河川法が改正され,目的規定に「環境の保全」が追加され,河川整備計画が策定されることになった。
A平成12年に環境基本法に基づく環境基本計画が改定され,生物多様性の保全が戦略的プログラムに位置づけされた。
B平成14年に自然公園法が改正され,利用者の立入数を調整できる「利用制限地区」制度が導入された。
C平成14年に新・生物多様性国家戦略が関係閣僚会議決定され,生物多様性の現状として3つの危機が呈示された
D平成15年1月1日に自然再生推進法が施行され,同法に基づき自然再生基本方針が平成15年4月1日に閣議決定された。
U-1-8 環境分析で用いられる機器分析法に関する以下の記述のうち,正しいものを選べ。
@フレーム原子吸光法では,陽イオンはイオン化干渉の原因となり,陰イオンは難分解性物質生成の原因となりやすい。
A電気加熱原子吸光法では,原子化炉内の原子蒸気密度を高くすることにより,高感度かつ共存物質の影響を受けずに目的元素を測定することが可能である。
BICP発光分析法では,共存物質による物理干渉や化学干渉による測定誤差を生じやすいが,分光干渉による妨害は受けにくい。
CICP-MS分析法では,試料中に共存元素が高濃度に存在すると目的元素の減感効果(マトリックス効果)が見られる場合がある。この効果は,一般に共存元素の原子量の大きな元素ほど強く,かつイオン化エネルギーの大きな元素ほど強く現れる。
D熱伝導度検出器を用いるガスクロマトグラフ法では,キャリアーガスに熱伝導度の高いヘリウムや水素を用いるので,有機物質を非常に高感度に測定することができる。
U-1-9 環境測定に関する次の記述のうち,正しいものを選べ。
@底質試料中のトリクロロエチレンを分析する場合は,小石等の異物を取り除き,フルイを通さず直ちに測定を行う。直ちに測定できない場合は,汚染のない場所で凍結して保存する。
AGC-FID(水素炎イオン化検出器)の感度は,成分の分子量にほぼ比例する。
B環境水中のベンゾ(a)ピレンをGC-MS法で分析する場合は,遮光して前処理を行い,スプリットレス方式でガスクロマトグラフに注入し,SIM(選択イオン検出)法を用いて測定する。
C地下水中の1,4-ジオキサンを分析する場合は,ODSないしポリマー系カラムで固相抽出し,GC-MS法で測定する。
D土壌の汚染分析を行う場合,5地点混合方式では,採取した土壌を均等に混合し,風乾後,フルイを通して分析用試料とする。
U-1-10 フレーム原子吸光法でバナジウムを分析するには高温バーナが必要である。このとき使用するフレーム炎の種類として最もふさわしい組合せを次の中から選べ。
@空気−水素炎
Aアルゴン−水素炎
B空気−アセチレン炎
C一酸化二窒素−アセチレン炎
D空気−プロパン炎
U-1-11 室内空気汚染物質の標準的測定方法(室内空気中化学物質の測定マニュアル)が「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」によって示されているが,その方法と異なるものを次の中から選べ。
@未入居の新築住宅については,30分換気後,測定対象となる部屋を5時間以上密閉し,その後おおむね30分間空気を採取する。
A居住住宅においては,日常生活を営みながら空気を24時間採取する。
B試料の採取は,居間,台所,寝室,外気の4カ所で行う。
C試料の採取は,各地点につき2回ずつ行う。
D測定結果は,20℃,1気圧(101.3kPa)換算値とする。
U-1-12 大気汚染防止法で規定される「ばい煙」に含まれないものを次の中から選べ。
@いおう酸化物
Aばいじん
Bカドミウム及びその化合物
Cひ素及びその化合物
D塩素及び塩化水素
U-1-13 下記の評価量のうち,工場及び事業場における騒音の測定・評価方法にないものを選べ。
@騒音レベル中央値
A騒音レベルの平均値
B騒音レベルの90パーセントレンジ上端値
C騒音レベル最大値の平均値
D騒音レベル最大値の90パーセントレンジ上端値
U-1-14 外来種が導入先の生態系に及ぼす影響には様々なものがあるが,在来種と交雑することにより在来種の純系を失わせると危倶されているもののみを正しく挙げているのは,@〜Dのうちのどれか。
@タイワンリス カダヤシ アオマツムシ
Aマングース カミツキガメ アメリカザリガニ
Bアライグマ オオクチバス アフリカマイマイ
Cタイワンザル セマルハコガメ タイリクバラタナゴ
Dチョウセンイタチ ウシガエル セイヨウミツバチ
U-1-15 国立公園の景観を特徴づける植物に関する記述として,誤っているのは次のうちのどれか。
@釧路湿原国立公園:釧路湿原は我が国最大の湿原で,良く発達した高層湿原が全体のおよそ2分の1を占め,その外周にヨシ群落やハンノ木林などの低層湿原が成立しているが,乾燥化に伴いクマイザサなどの侵入が顕著になっている。
A大雪山国立公園:2,000m級の火山と,火山噴出物によってつくられた台地とが広大な丘陵状の起伏となり,そこにダイセツトリカブト,ジンヨウキスミレ等の特産種を含む我が国では類例を見ない広大で多彩な高山植物群落が発達している。
B秩父多摩甲斐国立公園:この公園の亜高山帯は標高1,600〜2,500mの間にあり,下方にコメツガ林,その上部にはシラベ−アオモリトドマツ林が発達しており,ハイマツ群落の見られる高山帯の占める割合はわずかである。
C阿蘇くじゅう国立公園:この公園を代表する景観の1つである広大な草原は,長年にわたる採草・火入れ・放牧によって森林への遷移が妨げられ成立している人為的なもので,採草地はススキ草原となり,放牧地はシバ草原となっている。
D西表国立公園:主要な河川の下流は溺れ谷地形を呈して海水が流入し,潮間帯には我が国最大規模のマングローブ林が発達するが,これらを構成するマングローブ植物はメヒルギ,ヤエヤマヒルギ,オヒルギなどで,河口から上流に向けてすみわけが見られる。
U-1-16 自然環境保全に関する法律に基づく指定地域の現状について次の記述のうち,誤っているものはどれか。
@自然環境保全法に基づき国が指定した原生自然環境保全地域は5地域,自然環境保全地域は10地域である。その合計面積は3万haに満たない。
A自然公園法に基づき国が指定した国立公園は28公園である。その合計面積は200万haを越えている。
B自然公園法に基づき都道府県が指定した国定公園は55公園である。その合計面積は190万haを越えている。
C絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律に基づき国が指定した生息地等保護区は7カ所である。その合計面積は1千haに満たない。
D鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律に基づき国が指定した鳥獣保護区は54カ所である。その合計面積は49万haを越えている。
U-1-17 次に掲げる各種行為群のうち,「国立公園及び国定公園の特別地域においては許可を要しないが,特別保護地区においては許可を要する行為」のみを挙げているのはどれか。
@土石の採取,水面の埋め立て,土地の形状変更
A屋根・壁面等の色彩の変更,広告の工作物等への表示,木竹の植栽
B指定地域内への車馬の乗り入れ,広告物の掲出,屋外における物の集積
C木竹の損傷,火入れ・たき火,家畜の放牧
D湖沼の水位・水量の増減,植物の採取,指定動物の捕獲
U-1-18 我が国の国立・国定公園内のビジターセンターに関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
@国立公園内のビジターセンターはすべて国(環境省)の事業として,また,国定公園内のものはすべて都道府県の事業として整備されたものである。
Aビジターセンターは,自然公園法上「案内所」として位置づけられている。
Bビジターセンターの立地条件はさまざまであるが,計画や設計をそれによって変えるのは好ましくない。
Cビジターセンターの基本的な機能として,展示による解説だけでなく情報提供や自然ふれあいの促進も含まれる。
D大部分の既設ビジターセンターの延床面積は,1,000u以上となっている。
U-1-19 国立公園や自然地域などでのインタープリテーションに関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
@広い意味ではインタープリテーションは,インタープリターによる直接サービス以外にビジターセンターの展示や国立公園のパンフレット,セルフガイドトレイルなど,インタープリターによらない間接サービスをも含むものと考えられている。
A我が国の国立公園内でインタープリテーション活動を行うことができるのは,環境省の認定したインタープリターに限られる。
B一般的にインタープリテーションは,単に事実情報の伝達というより,オリジナルな素材に触れ,直接体験を通し,また,解説的な方法や手段を使って,その根底にある意味や関係を明らかにすることを目指している。
Cアメリカの国立公園でのインタープリテーションは,フリーマン・ティルデンが著した「Interpreting Our Heritage」の考え方が基本となっている。
Dアメリカの国立公園では,教育がその目的の1つとされていたため,早くからインタープリテーションが重要と考えられてきた。
U-1-20 次の景観の種類のうち,「視点の移動の有無による相違」に該当するものはどれか。
@自然景観と人工景観
Aシーン景観とシークエンス景観
B眺望景観と囲繞景観
C内部景観と外部景観
D人文景観と人為景観
U-2 次の問題について解答せよ。(青色の答案用紙を使用し,3枚以内にまとめよ。)
内外の環境の現状を踏まえ,環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会を構築する上での課題,展望と技術士としての貢献の可能性について,あなたの意見を述べよ。
問題番号 |
正答番号 |
U−1−1 |
3 |
U−1−2 |
5 |
U−1−3 |
1 |
U−1−4 |
5 |
U−1−5 |
2 |
U−1−6 |
4 |
U−1−7 |
3 |
U−1−8 |
1 |
U−1−9 |
3 |
U−1−10 |
4 |
U−1−11 |
3 |
U−1−12 |
4 |
U−1−13 |
1 |
U−1−14 |
4 |
U−1−15 |
1 |
U−1−16 |
3,5※ |
U−1−17 |
4 |
U−1−18 |
4 |
U−1−19 |
2 |
U−1−20 |
2 |