Ⅳ 次の３０問題のうち２５問題を選択して解答せよ。（専門科目解答欄に１つマークすること。）
Ⅳ－１ 工業的に用いられている次の合成反応のうち，吸熱反応はどれか。
① プロピレンのアンモ酸化でアクリロニトリルを合成する。
② シクロヘキサンの脱水素でベンゼンを合成する。
③ エチレンの水和でエタノールを合成する。
④ プロピレンのヒドロホルミル化でブチルアルデヒドを合成する。
⑤ 一酸化炭素と水素からメタノールを合成する。
正解：2
Ⅳ－２ 次の化合物のうち，芳香族性をもたいないものはどれか。
① シクロブタジエン
② フラン
③ シクロペンタジエニルアニオン
④ ピリジン
⑤ シクロヘプタトリエニルカチオン（トロピリウムカチオン）
正解：1
Ⅳ－３ 有機化学工業ではトルエンは有用な出発原料であり，さまざまな誘導体が製造されている。トルエンを混酸によりモノニトロ化したときに得られる生成物として最も適切なものは次のうちどれか。
① o-ニトロトルエン
② m-ニトロトルエン
③ p-ニトロトルエン
④ m-ニトロトルエンとp-ニトロトルエン
⑤ o-ニトロトルエンとp-ニトロトルエン
正解：5
Ⅳ－４ 次の文章において，下線部分が誤っているものはどれか。
一般にハロゲン元素は① 陰性が強く，炭素との結合エネルギーが大きい。そのなかでも② フッ素は最も強く炭素と結合しており，あらゆる元素中で③ 最も高い電気陰性度をもっている。フッ素と炭素の化合物であるフルオロカーボンは，その分子間の④ 強い相互作用のため，ヘキサフルオロベンゼンの沸点はベンゼンと⑤ ほぼ同じである。
正解：4
Ⅳ－５ 接触改質は低オクタン価の直留ガソリンから高オクタン価ガソリン基材を高収率で得る方法である。次に示す反応のうち，あまり好ましくない反応はどれか。
① ヘキサンから２－メチルペンタンへの反応
② ヘプタンからメチルシクロヘキサンへの反応
③ ヘプタンからトルエンへの反応
④ メチルシクロヘキサンからトルエンへの反応
⑤ キシレンからベンゼンへの反応
正解：5
Ⅳ－６ 石油に関する次の記述のうち，誤っているものはどれか。
① API度が小さいほど，その液体の比重は大きい。
② ブタンの沸点は２－メチルプロパンの沸点より高い。
③ 原油を常圧で蒸留すると，ブタンとそれより軽いガス，ガソリン，ナフサ，ガスオイル，ケロシンの順に留出し，常圧残渣が残る。
④ 石油留分にテールエンドができるのは，実際の蒸留操作において石油留分のカットポイントでの分離が理想的な形で完全には行われないためである。
⑤ 硫黄含有量の大小で原油を比べる時，スイートな原油とは硫黄分の少ない原油のことを意味し，サワーな原油とは硫黄分の多い原油のことを意味する。
正解：3
Ⅳ－７ 石油製品に関する次の記述のうち，誤っているものはどれか。
① リサーチ法オクタン価はモーター法オクタン価よりも一般的に高い値を示す。
② セタン価はディーゼル燃料の自己着火性を表す値の一つで、大きいほど着火性が良い。
③ キシレン当量は重油を軽質油と混合したときの安定性の評価尺度で，一般的にはこの数値が大きくなるほど安定性が良い。
④ アニリン点は同一分子量では芳香族系，ナフテン系，パラフィン系の順に高くなる。
⑤ 芳香族炭化水素を水素化したナフテンの煙点は，出発原料の芳香族炭化水素の煙点より一般的に大きい。
正解：3
Ⅳ－８ 石炭に関する次の文章において，下線部分が誤っているものはどれか。
固体燃料の主体をなす石炭は，石炭化の進んだものから，① 無煙炭，褐炭，瀝青炭，亜炭，泥炭などの種類に分類される。無煙炭は燃料比（固定炭素分／揮発分）が４以上で，② 非粘結性である。褐炭は亜炭より石炭化度の進んだもので，燃料比は１以下で，③ 非粘結性である。瀝青炭は亜炭よりも炭素含有量が多く，発熱量の大きなものは④ 粘結性を有する。泥炭は褐炭よりも⑤ 炭素含有量が少なく，水分が極めて多い。
正解：1
Ⅳ－９ 潤滑油に関する次の文章において，下線部分が誤っているものはどれか。
エンジン油には種々の特性が要求される。その代表的な特性として次のようなものがある。油膜を保持し① 減摩，冷却，密封作用を行う適正な粘度を持つ性質，高温で長時間使用されることによって生成する酸化スラッジによる② 粘度減少が少ない性質，カーボンやスラッジによる③ 汚れを良く分散する清浄分散性に優れる性質，燃料の燃焼によって生成する酸の④ 中和能力が十分である性質，防錆や防食性が良い性質，⑤ 泡が立たず低温流動性が良い性質などである。
正解：2
Ⅳ－１０ 次の高分子のうち，熱可塑性樹脂に分類されない樹脂はどれか。
① アクリル樹脂 ② ポリエチレン
③ ポリスチレン ④ エポキシ樹脂
⑤ ポリ塩化ビニル
正解：4
Ⅳ－１１ 次の高分子のうち，合成ゴムの材料として使われないものはどれか。
① シリコーン ② スチレン－ブタジエンブロック共重合体
③ 塩素化ポリエチレン ④ エチレン－プロピレン共重合体
⑤ ポリ塩化ビニル
正解：5
Ⅳ－１２ 高分子製造で有用なカミンスキー触媒に関する次の記述のうち，誤っているものはどれか。
① エチレンやプロピレンの重合触媒である。
② メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒である。
③ 不均一系の触媒である。
④ 得られるポリマーの分子量分布が狭いのが特徴である。
⑤ この触媒の中心金属としてチタン，ジルコニウム，ハフニウムなどが知られている。
正解：3
Ⅳ－１３ 重合に関する次の記述のうち，正しいものはどれか。
① イオン重合を促進するためには，通常50℃以上で重合するのがよい。
② ラジカル重合を促進するためには，連鎖移動剤を使う。
③ 重縮合には，触媒に加えて開始剤を使うことが多い。
④ カチオン重合は，対イオンとなるアニオン活性点によって開始される。
⑤ 付加重合は，開始剤が作用して連鎖的重合が開始される。
正解：5
Ⅳ－１４ 高分子に関する次の記述のうち，誤っているものはどれか。
① 印刷工業の製版材料や電子工業におけるプリント配線の加工等では，感光して架橋する高分子が用いられる。
② 高分子は一般的には絶縁材料として使われるが，共役構造をもつポリアセチレンなどの電導性高分子も実用化されている。
③ 繊維には天然繊維，合成繊維などがあり，合成繊維には主に合成高分子が素材として使われる。
④ 熱可塑性の高分子を用いて複雑な形状の製品を連続的に大量生産するには，射出成形法が用いられる。
⑤ 腎臓機能が低下している人の血液を透析するための高分子膜として，逆浸透膜が使われる。
正解：5
Ⅳ－１５ 高分子材料の性質に関する次の記述のうち，正しいものはどれか。
① 高分子材料に力を加えたままにして，変形が時間とともに増大する現象をクリープという。
② 高分子材料に外力を加えた瞬間に変形が現れ，その外力をとりさると，もとに戻る現象を粘弾性という。
③ 溶融した高分子の流動において，応力を増すと急激に変形速度が大きくなる現象をダイラタンシーという。
④ 高分子材料に引張り応力を加えると弾性が現れ，内部応力が時間とともに消滅する現象を遅延緩和という。
⑤ ゴム弾性領域からガラス弾性領域に変化する温度を一次転移温度という。
正解：1
Ⅳ－１６ ギブスの相律は，化学熱力学で最も重要な法則の一つである。相律によると，平衡状態の系の自由度を規定するのは，成分数と相の数である。相律に関する次の記述のうち，誤っているものはどれか。
① 成分数が増え，相の数が減るほど系の自由度は増える。
② 成分間に反応平衡が存在していても，自由度は変わらない。
③ 自由度が零（ゼロ）の平衡系がある。
④ 相律は不均一系でも均一系でも成立する。
⑤ ２成分３相の系の自由度は１である。
正解：2
Ⅳ－１７ 流通系において，ある操作を物質に与えたとき，エンタルピーとエントロピーがどちらも操作前の値から変化する組合せは次のうちどれか。ただし，物質の気体状態は理想気体であるとする。
Ａ：定圧での気体の加熱 Ｂ：定温での気体の加圧 Ｃ：液体の蒸発
Ｄ：定圧での二種の気体の混合
① ＡとＢ ② ＡとＣ ③ ＡとＤ ④ ＢとＣ ⑤ ＣとＤ
正解：2
Ⅳ－１８ 次の文章に対するア，イ，ウの問の答えの組合せで正しいものはどれか。
単体のカルシウムに水を作用させて生成した物質をＡとする。この物質Ａに二酸化炭素を吸収させて生成した物質をＢとする。さらに物質Ａあるいは物質Ｂを加熱して得られる固体物質をＣとする。
ア．乾燥剤や脱水剤として用いられているものはどれか。
イ．石灰岩や大理石として天然に産出するものはどれか。
ウ．炭酸水素カルシウムの水溶液を加熱すると，沈殿物として生成するものはどれか。
ア イ ウ
① Ａ Ｂ Ｃ
② Ｃ Ａ Ｂ
③ Ｃ Ａ Ｃ
④ Ｃ Ｂ Ｂ
⑤ Ｃ Ｂ Ｃ
正解：4
Ⅳ－１９ イオン結晶に関する次の文章において，下線部が誤っているものはどれか。
イオン結晶に含まれる格子欠陥には，陽イオン空孔，陰イオン空孔，格子間イオン，不純物イオンがある。このうち，格子間イオンは① 小さな陽イオンによってつくられやすい。不純物イオンは置換型として格子サイトや，侵入型として② 格子間空隙に入る。結晶を構成するイオンと似た大きさや価数の不純物は③ 置換型として格子中にはいりやすい。また，ショットキー欠陥は，④ 陽イオン空孔と陰イオン空孔がペアとなって生成するものであり，フレンケル欠陥は，⑤ 不純物イオンと格子間イオンがペアとなって生成するものである。
正解：5
Ⅳ－２０ 硫酸の接触式製造に関する次の文章において，下線部が誤っているものはどれか。
接触式製造では，転化器においてSO2を① 空気中の酸素によって酸化してSO3を製造する。SO3の生成では，② 全圧を増加させ，かつ温度を下げることによって転化率を増大することができる。この反応を効率よく起こすために，転化器では③ 五酸化二バナジウムなどが触媒として用いられている。吸収塔ではSO3を④ 水に直接的に吸収させることによって⑤ 発煙硫酸または濃硫酸を製造する。
正解：4
Ⅳ－２１ ニ酸化ケイ素に関する次の文章において，下線部が誤っているものはどれか。
ニ酸化ケイ素の成分元素である① 酸素とケイ素のクラーク数の序列はそれぞれ1位と2位であり，地殻中では最も多量に存在する鉱物成分である。ニ酸化ケイ素の最小構造単位は② Si4+を中心として各頂点にO2-が配置する四面体である。つまり③ [SiO4]4-がニ酸化ケイ素の構造の基本単位となり，その④ 四面体の各頂点が他の四面体と共有しながら連続構造を形成している。二酸化ケイ素には石英，クリストバライト，トリジマイトなどの結晶形が存在しており，これらの変態に対応する構造の相違は，⑤ 四面体内のSi4+が2個のO2-とつくる結合角によるものである。
正解：5
Ⅳ－２２ 管内の流動に関する次の文章において，下線部分が誤っているものはどれか。
配管内の流体の流れには，流体が流れの方向にのみ動く① 層流と，流れの方向以外にも流体が動く② 乱流がある。流れの状態を表す無次元数が③ レイノルズ数であり，慣性力と粘性力の比と解釈される。一般にこの値が約2100④ 以下ならば層流である。直径の異なる配管に同じ流体を流した場合は，配管径が⑤ 細いほど，低速で乱流になりやすい。
正解：5
Ⅳ－２３ 次の文中の（ａ）～（ｅ）に入る語句の組合せで正しいものはどれか。
混合物を冷却して，目的物を結晶として取り出す精製法を晶析という。晶析の基本となる相平衡が固液平衡である。２成分の固液平衡において，固相が単一成分となり，理論的には晶析操作で純粋成分が得られる固液平衡の型を（ａ）という。これに対して，固相も混合物となる型の固液平衡を（ｂ）という。有機化合物どうしの固液平衡には，この２種のうち（ｃ）の方が多い。p-キシレンの精製には晶析が使われており，p-キシレンとm-キシレンの固液平衡は（ｄ）である。（ａ）の型の固液平衡では，純粋成分Ａにごく微量の，Ａよりも融点が高い成分Ｂを混合したとき，混合物の融解温度はＡの融点よりも（ｅ）。
（ａ） （ｂ） （ｃ） （ｄ） (ｅ）
① 共晶型 固溶体型 共晶型 固溶体型 低くなる
② 共晶型 固溶体型 共晶型 共晶型 低くなる
③ 共晶型 固溶体型 固溶体型 固溶体型 高くなる
④ 固溶体型 共晶型 共晶型 固溶体型 低くなる
⑤ 固溶体型 共晶型 固溶体型 共晶型 高くなる
正解：2
Ⅳ－２４ 黒鉛50gを酸素不足の状態で全て燃焼させたところ，一酸化炭素75％と二酸化炭素25％の混合ガスが得られた。この燃焼で発生した熱量は，次のどの値に最も近いか。ただし，（1）および（2）の熱化学方程式を用いよ。
C（黒鉛） + 1/2O2（気） = CO（気） + 111kJ/mol （1）
CO（気） + 1/2O2（気） = CO2（気） + 283kJ/mol （2）
① 154kJ ② 311kJ ③ 493kJ ④ 640kJ ⑤ 756kJ
正解：5
Ⅳ－２５ 直鎖状の不飽和脂肪酸であるリノール酸（分子量280）のヨウ素価は，次のどの値に最も近いか。ただし，各元素の原子量は，H=1，C=12，O=16，I=127とする。
① 45 ② 90 ③ 181 ④ 274 ⑤ 368
正解：3
Ⅳ－２６ あるポリプロピレン試料の密度を測定したところ，0.910が得られた。ポリプロピレンの非晶質部分の密度を0.860，結晶部分の密度を0.938とすると，このポリプロピレン試料の結晶化度は，次のどの値に最も近いか。ただし，ポリプロピレン試料の比容（密度の逆数）は，非晶質部分の比容と結晶部分の比容の和になると仮定せよ。
① 60.1％ ② 62.0％ ③ 64.1％ ④ 66.1％ ⑤ 68.2％
正解：4
Ⅳ－２７ 濃度が未知の，硫酸と塩酸の混合溶液1000mLがある。この混合溶液から200mLをはかり取り，0.200mol/Lの塩化バリウム水溶液を100mL加えたところ，沈殿2.33gが生じた。混合溶液中の硫酸の濃度は，次のどの値に最も近いか。ただし，各元素の原子量は，H=1，O=16，S=32，Cl=35.5，Ba=137とする。
① 0.02mol/L ② 0.05mol/L ③ 0.10mol/L
④ 0.20mol/L ⑤ 0.50mol/L
正解：2
Ⅳ－２８ ある液相二次反応の速度定数が，60℃，80℃で，それぞれ0.12，0.24L/(mol･s）であった。この反応の活性化エネルギーは，次のどの値に最も近いか。ただし，気体定数を8.314J/(mol･K)とする。
① 24kJ/mol ② 34kJ/mol ③ 44kJ/mol ④ 54kJ/mol ⑤ 64kJ/mol
正解：2
Ⅳ－２９ 含水率85wt％の粘土500kgを30wt％まで乾燥した。除去した水分量は，次のどの値に近いか。ただし含水率は乾燥基準とする。
① 149kg ② 195kg ③ 276kg ④ 344kg ⑤ 393kg
正解：1
Ⅳ－３０ 1時間あたり3000kgの流量の90℃の溶液を45℃まで冷却するのに，伝熱面積10m2の二重管式熱交換器を使用した。冷媒として20℃の水を向流で流したところ，水の出口温度は35℃であった。このときの冷却水の流量と，二重管式熱交換器の総括伝熱係数の組合せで正しいものは，次のうちのどれか。ただし，溶液の比熱は3.5kJ/(kg･K)，水の比熱は4.2kJ/(kg･K)とする。
冷却水流量 総括伝熱係数
① 6250kg/h 345W/(m2･K)
② 6250kg/h 1242W/(m2･K)
③ 7500kg/h 297W/(m2･K)
④ 7500kg/h 345W/(m2･K)
⑤ 7500kg/h 1242W/(m2･K)
正解：4