平成16年度技術士第二次試験問題(化学部門)
 ●経験論文・化学一般(全科目)
 ●専門問題(化学装置及び設備)
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必須科目
化学一般(択一問題) 正解付
化学一般(記述問題)
選択科目
   経験論文(全科目共通)
専門問題(化学装置及び設備)

必須科目

化学一般(択一問題)

U−1 次の20問題の中から15問題を選んで、解答せよ。(解答欄に1つだけマークすること。)

U−1−1 固定された半透膜をはさんで溶液とその溶媒がある場合,浸透圧は溶液の濃度と絶対温度によって決まる。次のうち,この関係を表すものはどれか。
@ ラウールの法則  A ファントホッフの法則  B 質量作用の法則
C ヘスの法則    D デバイ−ヒュッケルの理論

正解 A


U−1−2 次の分析手法のうち,分子中の不対電子の有無及びその定量,分子中の不対電子の位置,及びその周囲の状態を解析するのに最も適した方法はどれか。
@ ESRスペクトル法     A 高速液体クロマトグラフ法
B 蛍光X線分析法      C 電子顕微鏡(透過型,走査型)
D 赤外線吸収スペクトル法

正解 @


U−1−3 現在,我が国では化学品の基礎原料である塩素と水酸化ナトリウムは,イオン交換膜法食塩電解により生産されている。これに関連し次の記述で間違っているのはどれか。
@ 陰極では酸素発生反応と塩素発生反応が起こる。
A 陰極で生成したOHと,イオン交換膜を通過したNaから水酸化ナトリウムが生成する。
B 一般に陽極の材料としては黒鉛が用いられる。
C 水酸化ナトリウムの生成量は,イオン交換膜を透過するNaの輸率によっておおよそ決まる。
D 塩素発生の標準電極電位が酸素発生のそれより高いのに,塩素発生を選択的に行わせることができる主な要因は,陽極の過電圧特性である。

正解 B


U−1−4 次の錯体に関する記述の中で,正しいのはどれか。
@ 一般にキレート環をもった錯体はキレート環をもたない錯体よりも不安定である。
A [Co(NH3)6]Cl2はヘキサアンミン塩化コバルトと命名される。
B アクア錯体とは,水に溶解する錯体を意味する。
C エチレンジアミンは3座配位子である。
D 一酸化炭素は配位子になり得る。

正解 D


U−1−5 アルコールに関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。
@ 炭素原子数3までのアルコールはすべて任意の割合で水と溶けあう。
A 1−ブタノールはヨードホルム反応に対して陽性である。
B 2−ブタノールを酸化して,銀鏡反応を行うと陰性となる。
C グリセリンは油脂の加水分解からも得られる。
D tert−ブタノール,2−ブタノール,1−ブタノールの順に沸点が上昇する。

正解 A


U−1−6 酢酸とその誘導体のうちでpKa(イオン化定数,25℃)が,最も小さい物質は次のうちどれか。
@ 酢酸      A トリクロロ酢酸  B トリメチル酢酸 
C シアノ酢酸   D ヒドロキシ酢酸

正解 A


U−1−7 元素に関する次の記述のうち,不適切なものを選べ。
@ 希ガス元素(第0族)は,化学的に不活性であるため,化合物を作らない。
A アルカリ金属は,再外殻のs電子を失って1価の陽イオンになり易く,また原子番号の大きいものほどイオン化ポテンシャルが小さい。
B ランタノイド元素は,電子配置の上では4f殻が満たされていく系列である。
C 遷移元素は錯体を形成し,酸化または還元反応の触媒としても有用である。
D 2種のハロゲン元素からなる二元化合物は,ハロゲン間化合物と言われる。

正解 @


U−1−8 分子式C10H12で示される炭化水素を接触水素添加したところ,3モルの水素を吸収した。分子中に何個の環が存在するか,次の中から選べ。
@ 0   A 1   B 2   C 3   D 4

正解 B


U−1−9 ゼオライトについて,間違っているものは次のうちどれか。
@ 多くの種類があり,それぞれ分子ふるい効果が異なる。
A アルミニウム,ケイ素及び酸素等からなる3次元網目構造を有する。
B 水熱法によって合成することができる。
C 天然に存在するものは,粘土鉱物の一種である。
D 触媒担体になると共に触媒としても有用である。

正解 C


U−1−10 アルコール及びフェノールに関する次の記述のうち,不適切なものはどれか。
@ エタノールは金属ナトリウムと反応し,Naエトキシドを生成する。
A フェノールは金属ナトリウムと反応し,Naフェノキシドを生成する。
B エタノールは水酸化ナトリウム水溶液と反応し,アセトアルデヒドを生成する。
C フェノールは水酸化ナトリウム水溶液と反応し,Naフェノキシドを生成する。
D 2−プロパノ−ルは塩化水素と反応し,2−クロロプロパンを生成する。

正解 B


U−1−11 酸価とは試料1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数である。試料2.00gに対して,滴定に要した0.10mol/L水酸化カリウムの2−プロパノール溶液は5.00mL,空試験の滴定に要した0.10mol/L水酸化カリウムの2−プロパノール溶液は0.50mLであった。酸価は次のうちどれか。なお水酸化カリウムの式量は56.1とする。
@ 12.6 mgKOH/g A 25.2 mgKOH/g B 50.4 mgKOH/g
C 1.26 mgKOH/g D 2.25 mgKOH/g

正解 @


U−1−12 ヘプタンが完全燃焼した時の反応について正しいものを次の中から選べ。
@ 1分子のヘプタンが完全燃焼するためには7分子の酸素を必要とする。
A 1分子のヘプタンが完全燃焼すると11分子の二酸化炭素が生成する。
B 1分子のヘプタンが完全燃焼すると4分子の水が生成する。
C 1kgのヘプタンが完全燃焼すると約3kgの二酸化炭素が生成する。
D 1kgのヘプタンが完全燃焼すると約1.5kgの二酸化炭素が生成する。

正解 C


U−1−13 高分子の重合に関する次の記述で不適切なものを選べ。
@ リビング重合によっては,単分散に近い分子量分布を持った高分子を製造することは困難である。
A 高結晶性イソタクチックポリプロピレンは,Ziegler-Natta触媒によって合成することができる。
B 熱硬化性樹脂は反応が進むと,未硬化の液体状態から架橋により三次元網目構造が形成されるので,その生成物は溶媒に溶けない。
C 乳化重合は,乳化剤を用いて水中でミセルを形成させて重合を進行させる方法である。
D ナイロン6は,ε−カプロラクタムを開環重合して得られる。

正解 @


U−1−14 高分子物質に関する次の記述で間違っているものを選べ。
@ 高分子の架橋構造は,共有結合以外にもイオン結合や水素結合によっても作られる。
A 相互侵入高分子網目(IPN)は,相互に化学結合していない独立の高分子網目が互いに侵入しあっている高分子のことである。
B FRPはガラス繊維,炭素繊維等の繊維を強化材として用いて,力学特性や熱的性質を改善した繊維強化プラスチックのことである。
C 高分子のミクロ相分離構造は,ブロック鎖の長さが揃ったジブロック共重合体からも作ることができる。
D 天然ゴムは,トランス−1,4構造を持つ立体規則性重合体である。

正解 D


U−1−15 悪臭防止法において,政令で指定されていない物質は次のうちどれか。
@ スチレン         A アセトアルデヒド
B イソブチルアルデヒド   C ベンゼン
D プロピオン酸

正解 C


U−1−16 有機酸に関する次の記述のうち,間違っているものを選択せよ。
@ 無水酢酸は,2分子の酢酸からH2Oを除いた化学式を持つ化合物である。
A フマル酸を脱水すると無水フマル酸が得られる。
B マレイン酸を脱水すると無水マレイン酸が得られる。
C ギ酸は還元性を有するので,過マンガン酸カリウムによって酸化され,炭酸ガスを生ずる。
D 酢酸は,水素結合によって2量体を作り易い。

正解 A


U−1−17 次に挙げる各種燃料のうち単位重量あたりの発熱量(kJ/kg)の最も大きい燃料を選べ。
@ ガソリン  A 石炭  B 木材
C 天然ガス  D 水素

正解 D


U−1−18 超臨界流体に関する記述として最も不適切なものは次のうちどれか。
@ 高温高圧下での大きな溶解作用と温度による溶解度の差を利用して人工水晶の合成が行われている。
A 有機溶媒の代替として二酸化炭素や水の超臨界流体が反応溶媒として使用される。
B 超臨界水は常温常圧の水には溶解しない有機物質を溶解することが可能である。
C 超臨界状態では水のイオン積が増大するために,超臨界水には塩基触媒の効果がある。
D 超臨界流体は,わずかな圧力変化で密度を自在に制御することが可能である。

正解 C


U−1−19 窒素分子の並進,回転,振動の自由度の組み合わせとして正しいものは次のうちどれか。
@ 並進の自由度 3, 回転の自由度 2, 振動の自由度 1
A 並進の自由度 2, 回転の自由度 2, 振動の自由度 1
B 並進の自由度 2, 回転の自由度 3, 振動の自由度 1
C 並進の自由度 3, 回転の自由度 2, 振動の自由度 3
D 並進の自由度 2, 回転の自由度 3, 振動の自由度 3

正解 @


U−1−20 水を一方の成分とする2成分系において,大気圧の条件下で水と共沸混合物を作る成分は次のうちどれか。
@ アセトン    A アンモニア   B ホルムアルデヒド
C エタノール   D メタノール

正解 C

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化学一般(記述問題)

U−2 次の問題について解答せよ。(青色の答案用紙を使用し,3枚以内にまとめよ。)

(1) 我が国の化学工業の中で,あなたが得意とする分野に関して,その@基礎技術,A生産技術及びB工業生産力について,グローバルな視点で現時点での問題点をとり挙げ,番号順に解説せよ。
(2) 上記の問題点を克服するための方策及びあなたの見解を述べよ。

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選択科目

経験論文(全科目共通)

T−1 次の2問題について解答せよ。(問題ごとに答案用紙を替えて解答問題番号を明記し,T−1−1は4枚以内,T−1−2は2枚以内にまとめよ。)

T−1−1 あなたが受験申込書に記入した「専門とする事項」に関する技術分野で,あなたが行った最も技術士にふさわしいと考える業績1件を選び,次の項目に従って述べよ。
(1) 業績名
(2) 実施の時期と期間,及びあなたの役割
(3) 技術的内容,成果及びあなた自身が苦労した点
(4) 経済的効果,現時点での評価及び将来展望

T−1−2 T−1−1に記述した業績とは異なる,あなたが行った技術士にふさわしいと考える業績1件を選び,次の項目に従ってその内容を述べよ。
(1) 業績名
(2) 実施の時期と期間,及びあなたの役割
(3) 技術的内容,成果及びあなた自身が苦労した点

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専門問題(化学装置及び設備)

T−2 次の2問題について解答せよ。(緑色の答案用紙を使用し,問題ごとに用紙を替えて解答問題番号を明記し,それぞれ3枚以内にまとめよ。)

T−2−1 技術経営(Management of Technology,MOT)は米国マサチューセッツ工科大学ビジネススクールのMOTプログラムに由来する名称であるが,近年,我が国の化学産業でもMOTの重要性が指摘されている。MOTにはテクノロジーマネジメント,リスクマネジメント,インフォメーションマネジメント等広範な内容が含まれる。
以下の問いに答えよ。
(1) 化学産業においてもMOTが必要とされる理由と課題について述べよ。
(2) あなたの現在の業務について,MOTの視点から,あるべきマネージメント体制について論ぜよ。

T−2−2 次の10項目から5項目を選択し説明せよ。
(1) 二重境膜説
(2) 反応装置の静的安定性
(3) Langmuir-Hinshelwood型の反応速度式
(4) オストワルド成長(Ostwald ripening)
(5) チクソトロピー
(6) チャンネリング
(7) 懸濁重合
(8) 蒸気圧縮式冷凍システム
(9) 酸露点
(10) 排出権取引

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