平成14年度技術士第二次試験問題(情報工学部門) | 提供:たっくんさん |
必須科目 | |
情報工学一般(択一問題) 推定正解付 | |
情報工学一般(記述問題) | |
選択科目 | |
全科目(経験論文) | |
専門問題(情報システム) | |
専門問題(情報数理及び知識処理) | |
専門問題(情報応用) | |
専門問題(電子計算機システム) |
必須科目
情報工学一般(択一問題)
U−1 次の20問題の中から15問題を選んで解答せよ。(解答欄に1つだけマークすること。)
U−1−1 ソフトウェアの設計・実装や検証の段階では複数人でチームを組んで行う作業が多い。次の中で、必ずしも複数人で行うことを前提としないものに関することばとして最も適切なものはどれか。
@ インスペクション A ウォークスルー
B CRC(Class-Responsibility-Collaborator)カード
C ピアレビュー D ホワイトボックスアプローチ
推定正解 D
U−1−2 データベースを構築するときのデータモデルとして適していないものはどれか。
@ オブジェクトモデル A 回帰(regression)モデル
B 階層(hierarchical)モデル C 関係(relational)モデル
D ネットワークモデル
推定正解 A
U−1−3 COCOMO(Constructive Cost Model)に関する説明のうち正しいものはどれか。ただし、1995年に改訂された版に基づく。
@ アルゴリズムの複雑さを加味して機能規模を求める。
A コード行数に基づいて工数を求める。
B 主要なクラス数に基づいて工数を求める。
C データ項目から機能規模を計測する。
D ユースケース数とアクタ数から機能規模を計測する。
推定正解 A
U−1−4 UML(統一モデリング言語)で定められている図法のうち、ワークフローをモデル化する場合に適当なものはどれか。
@ 活動図(Activity Diagram)
A 協調図(Collaboration Diagram)
B クラス図( Class Diagram)
C シーケンス図( Sequence Diagram)
D データフロー図( Data-Flow Diagram)
推定正解 @
U−1−5 次のUMLによるクラス図は組織階層を表現したものである。これをもとに作成したオブジェクト図のうち、正しいものはどれか。ただし、関連の制約{階層}はこの関連が階層構造でなければならないことを示す。
@ | |
A | |
B | |
C | |
D |
推定正解 B
U−1−6 整数の配列を、要素の値が小さい順にソート(整列)するクイックソートについて、このアルゴリズムの効率が挿入法やバブルソートに比べて効率がいいのは、次のどの場合か。
@ 与えたデータが、すでにソート済みだった場合
A 与えたデータが、すべて同じ値だった場合
B クイックソートによる配列の分割過程で、毎回ほぼ半分くらいずつに分割できた場合
C クイックソートによる配列の分割過程で、毎回多くの要素のグループと少ない要素のグループに別れた場合
D 与えたデータの数が、10要素以下と少なかった場合
推定正解 B
U−1−7 再帰関数fを次のように定義する。
int f(int a,int b)
{
if(a==0) return b;
else return(a/10,(b*10)+(a%10));
}
関数呼び出しf(123,0)の返す値はどれか。
注:(ア)aとbは整数型の変数、(イ)a/10はaを10で割った商、
(ウ)a%10はaを10で割った余り、(エ)a==0はaが0に等しいことを表す。
@ 12 A 32 B 123 C 320 D 321
推定正解 D
U−1−8 2分探索木は各節点に値を保持するように構成された2分木であり、各値は次の性質を満たしている。
各節点の左部分木に保持される値はその節点の値より小さい。
各節点の右部分木に保持される値はその節点の値より大きい。
2分探索木Tに値xを持つ節点を挿入する操作は、Tに含まれる節点の親子関係は変更せず、上記の性質を満たしたままで、部分木を持たない節点(葉とよぶ)の子として値xを持つ節点を追加する操作である。
値4を持つ節点1つからなる2分探索木に対して、次の7つの値を順に挿入した場合、最終的にできあがる2分探索木の葉の個数はどれか。
5 3 6 8 7 2 1
@ 2 A 3 B 4 C 5 D 6
推定正解 @
U−1−9 数を扱うスタックについて考える。
push(n)は整数nをスタックにプッシュする操作、add()はスタックから整数を2つポップし、それらの和をスタックにプッシュする操作、mul()はスタックから整数を2つポップし、それらの積をスタックにプッシュする操作とする。
次の操作列を実行した後のスタックのトップ(先頭)の値は次のどれか。
push(3)
push(2)
push(5)
add()
push(3)
mul()
add()
@ 0 A 13 B 21 C 24 D 3253
推定正解 C
U−1−10 次は、BNF(バッカスナウルフォーム)で記述されたプログラム構文の一部である。<パラメタ指定>として正しいのはどれか。
<パラメタ指定>::=<パラメタ>|(<パラメタ指定>,<パラメタ>)
<パラメタ>::=<英字>|<パラメタ><英字>
<英字>::=a|b|c|・・・|x|y|z
@ (abc)
A ((abc,def))
B (abc,(def))
C ((abc,def),ghi)
D ((abc,def),(ghi))
推定正解 C
U−1−11 プロジェクトマネージメント国際標準の基本である知識体系(PMBOK)には、プロジェクトの目標(品質、納期、コスト)を達成するために不可欠な事項が9つの知識領域で定められている。この知識領域に該当するものは次のどれか。
@ アウトソーシングマネージメント
A 交渉マネージメント
B セキュリティマネージメント
C スコープマネージメント
D 運用・移行マネージメント
推定正解 C
U−1−12 ソフトウェアを中心としたシステム開発・取引を対象とした共通フレーム98(SLCP-JCF98)は、システム構想からその廃棄に至るまでのソフトウェア・ライフ・サイクル・プロセス(SLCP)を可視化し、日本における共通の枠組みを既定したものである。次の記述のうち、この既定に対する対応で最も不適切なものはどれか。
@ 海外を含めた取引をオープンなものにするため、自社標準を共通フレームベースに適合させる。
A 共通フレームは拘束力がないので、社内標準を優先する。
B 共通フレームは品質マニュアルの標準になるので、ISO9000関連規格取得のため積極的に採用する。
C 体系的によくまとまっているので、人材教育に積極的に採用する。
D 共通フレームをどのように利用するかは、取引者間でとりきめればよい。
推定正解 B
U−1−13 標準化は関係する人々の間で利益あるいは利便が公正に得られるために取り決めを定める活動であるが、それらの人々や適用範囲の広さにより、国際標準化、地域標準化、国家標準化、団体標準化、社内標準化、官公庁標準などに分けられる。これらの標準化に関する次の説明のうち最も不適切なものはどれか。
@ 標準化で互換性が生まれる。
A 標準化で思考や情報伝達が単純化できる。
B 標準化で個人の自由が妨げられても、全体の効率が下がるわけではない。
C 標準化しても技術レベルは向上しない。
D 標準化によって、信頼性、安全性の高い製品が得られるようになる。
推定正解 C
U−1−14 技術者は勤める企業に忠誠を尽くし、依頼者(顧客、上司など)の望みを叶えることが求められる一方で、公衆の安全、健康、及び福利を図る倫理的な責任がある。しかし、これら2つの問題はしばしば衝突する。このような場合に、技術者の判断が正しかったと考えられるものは次のどれか。
@ 技術者Aはリーダーとして、システムのトラブルが期限までに解決できないことを知っていたので、経営者にこのことを伝え稼動の延期を勧告したが、撤回を求められたので同意した。その結果、利用者に損失を与え、会社の不利益にもつながった。
A 指示された仕事は公衆の安全を脅かす行為になると考えられたが、拒否したり内部告発すると会社に多大な損失を与えることになるので、技術者Bは指示通り忠実に仕事を行い、結果として周囲の住民に被害を与えた。
B 医療機器のソフトウェアで通常的な用法と異なるコマンドを設定し、操作説明書にはそのことを記しておいた。しかし、治療技師たちによる誤った操作を排除できず、患者に危害を与えることにつながった。
C 職場で使用するパソコンソフトの使い勝手が悪かったが更新する予算がなかったので、個人が購入して自宅のパソコンで使用しているソフトをコピーして使った。
D 技術者Cは、担当する組織(顧客)がソフトウェアを違法に複製して使用していることを知ったので注意したが聞き入れられなかった。顧客に対する守秘義務は知っていたが、公衆の福利を優先して告発した。
推定正解 D
U−1−15 経営情報システムに期待される役割に、利用者の業務や管理の支援の他に、組織全体としての調整とコントロールの支援がある。このために組織ではさまざまな工夫がなされているが、次のうち誤った考え方はどれか。
@ ITを活用して新しいビジネスモデルを実現させるためには、業務プロセスやその運用スキルのレベルアップが必要である。
A ITをビジネス戦略に活用するには、組織の構成員や企業文化を分析するよりも、ITインフラの統合を推進することが優先される。
B 経営における全体システム思考では、まず全体としてあるべき姿を探り、それを実現するために既存の分業と専門化のあり方を検討する。
C CIO(最高情報責任者)の役割は、事業への洞察や戦略の立案など経営の最高責任者(CED)の視点と、IT価値に対する深い理解を有するIT部門の視点とを、結びつけ支援することである。
D ERPの導入が競争優位に影響を与えるといわれるが、経営戦略面で有効な施策と必ずしも一致するとは限らない。
推定正解 A
U−1−16 2つのプロセスP1とP2が並列に実行可能であるための条件として最も適切なものはどれか。ただし、プロセスP1の入力集合をIi、同じく出力集合をOiとし、φは空集合とする。
@ I1∩O2=φ I2∪O1=φ I1∩I2=φ
A I1∩O2=φ I2∩O1=φ O1∩O2=φ
B I1∪O2=φ I2∩O1=φ I1∩I2=φ
C I1∩O2=φ I2∩O1=φ O1∪O2=φ
D I1∪O2=φ I2∪O1=φ O1∪O2=φ
推定正解 A
U−1−17 主記憶とCPUとの間に適切な大きさのキャッシュメモリをおくと、CPUから見た主記憶の平均呼出し時間を短縮することができる。いま主記憶自体の呼出し時間が250ns(ナノ秒)、キャッシュメモリのヒット率が0.5の時に、平均呼出し時間が200nsであったとすると、キャッシュメモリの呼出し時間はいくつと考えられるか。
@ 100ns A 125ns B 150ns C 175ns D 250ns
推定正解 B
U−1−18 一般的なWebベースの情報公開システムのセキュリティ対策として、最も正しいものを選べ。
@ インターネットを介して幅広い利用者からのアクセスを許可するため、FireWallを設置しなくてはならない。
A Webサーバは、安定した運用が必要であるため、同じソフトウェアであれば、最新版ではなく、少し古めの版で運用すべきである。
B WebサーバにはNAT(Network Address Translation)機能を使ったプライベート・アドレスを用いて運用をすることが推奨されている。
C 遠隔からのシステム・メンテナンスを行う場合には、TELNETプロトコルを用いてアクセスしてはならない。
D Javaは、セキュリティの高いソフトウェアを書くことが出来る言語なので、Web上で動的なコンテンツを作成する場合には、Java以外の言語で書いたソフトウェアを使用しなくてはならない。
推定正解 B
U−1−19 次の説明文は、オペレーティングシステムに関する説明文である。間違っているものを選べ。
@ UNIXは、マルチユーザ・マルチプロセスを提供しているオペレーティングシステムである。
A Microsoft Windows XPはマルチユーザ・シングルプロセスを提供しているオペレーティングシステムである。
B Macintoshの最新のオペレーティングシステムであるMacOS Xは、UNIXベースのオペレーティングシステムであり、UNIXの多くのソフトウェアを比較的容易に移植することができる。
C 既存のオペレーティングシステム上に、ハードウェアをエミュレートし、別のオペレーティングシステムを稼動することができる、例えばVMwareを使うことにより、Linux上でMicrosoft Windows2000を実行することができる。
D UNIXは、ワークステーション用のオペレーティングシステムとして普及してきたが、現在はIBM PCアーキテクチャからスーパーコンピュータまで様々なハードウェアで稼動している。
推定正解 A
U−1−20 次の説明文の中で、インターネットの特徴を最も適切に説明しているものを選べ。
@ インターネットは、ベスト・エフォート型の通信方式なので、通信データが破棄されたりするため、ファイル転送プロトコル(FTP)を用いてデータ転送をおこなった場合、データ落ちが発生することがある。
A インターネットは回線交換方式の通信方式を用いているため、RSVPなどに代表される技術を使い帯域確保を実現することができる。
B インターネットは、パケット交換方式の通信であり、中継ノードが自律的に経路制御を行い、エンド−エンドの通信を維持している。
C インターネットの通信は、すべて1対1の通信であるため、放送型アプリケーションの開発はできない。
D インターネットのアプリケーションは、すべてクライアント・サーバモデルで構築され、サーバを用いないアプリケーションを構築することができない。
推定正解 @
情報工学一般(記述問題)
U−2 次の問題について解答せよ。(茶色の答案用紙を使用し、問題ごとに用紙を替えて解答問題番号を明記し、それぞれ1枚以内にまとめよ。)
情報工学部門の選択科目(情報システム、情報数理及び知識処理、情報応用、電子計算機システム)のうちで、あなたが選択した科目を除いた3科目の中から2科目を選んで、解答せよ。
U−2−(1) 情報システム
企業の合併によるシステム統合を実現する場合について、既存システムを温存し、インターフェースを作成してシステム統合を行う方式の問題点を列挙し、その解決策を論述せよ。企業の業種・業態は自由に想定してよい。
U−2−(2) 情報数理及び知識処理
スクリプト言語(Perl、Tcl/Tk、JavaScript、・・・)を若手エンジニアにどう教育したらよいか。システム記述言(C、C++、Java、・・・)と対比して、できるだけ経験的に説明せよ。
U−2−(3) 情報応用
企業情報システム開発において、現状のビジネスプロセスを分析し、課題と対策を明らかにしたあと情報化モデルを展開する。このとき情報の流れを整流し、ビジネスプロセスを再構築し、状況やふるまいの共通性を見出し、データを抽象化する作業が行われる。この作業の意義について経営的視点から論述せよ。
U−2−(4) 電子計算機システム
電子計算機の処理速度やスループットを向上させるために採用している諸方策を、主としてアーキテクチャの観点から解説せよ。
全科目
T−1 次の問題について解答せよ。(答案用紙5枚以内にまとめよ。)
あなたが受験申込書に記入した「専門とする事項」に関連して、あなた自身が体験したもの5件以内を簡潔に列挙せよ。時期の古いものから順に、業務名、該当期間、その業務に関わったメンバーの数、あなたの役割を記せ。(用紙1枚以内)
次にその中から技術士にふさわしいと思う2件について、詳しく(用紙各2枚程度)説明せよ。業務内容、主要な技術課題と解決策、そこで生かした情報工学に関する専門知識、あなたが発揮した創意工夫、そして最近の技術水準からみたときの評価と将来展望に言及すること。
情報システム
T−2 次の問題について解答せよ。(緑色の答案用紙を使用し、10枚以内にまとめよ。)
情報システムの分析設計手法には、その構成要素を「手続き」や「機能」のまとまりとしてとらえる方法と、「モノ」や「モノ」の関係としてとらえる方法などがある。
(1) それぞれの方法について、その概要、利点、難点を述べよ。
(2) あなたの経験を取り上げて、それらの方法を適用する際にどのような工夫をしたかを述べよ。また、それを論ずる上で焦点となるモデル図を示して説明を加えよ。
情報数理及び知識処理
T−2 次の3問題のうち2問題を選んで解答せよ。(緑色の答案用紙を使用し、問題ごとに用紙を替えて解答番号を明記し、それぞれ5枚以内にまとめよ。)
(1) 完全情報二人ゲイムについて、ゼロ和の場合と非ゼロ和の場合それぞれについて、具体的にモデル化と戦略とを説明せよ。
(2) 単なるテキストやHTMLは、構文処理はできても意味的処理は不十分であると認識されてきている。そこで、ダイナミックHTMLやXMLあるいはセマンティックWebが試行されるようになった。応用分野を示して、その手法を概観し、問題点、将来展望を論述せよ。
(3) ユーザビリティの評価手法をいくつか挙げ、それぞれの手法について、その概要、応用される分野、長所・短所、発展性などを述べよ。また、あなたの経験を取り上げ、ユーザビリティ評価をどのように実施すべきかを具体的に論ぜよ。
情報応用
T−2 次の2問題について解答せよ。(緑色の答案用紙を使用し、問題ごとに用紙を替えて解答問題番号を明記し、T−2−1は6枚以内に、T−2−2は4枚以内にまとめよ。)
T−2−1 顧客満足度を高めるために企業内に蓄えられている取引データ、クレーム情報などを戦略的に活用することが求められている。その手法として、データウェアハウスを活用した情報システムを構想し、次の4項目について述べよ。
(1) 対象とする業務
(2) 情報システムの狙いとその概要
(3) 使用する分析ツールとその利用法
(4) 予想される効果
T−2−2 次の5項目のうち2項目を選んで論述せよ。(1項目2枚以内)
(1) WebサービスにおけるXMLの位置づけについて
(2) クロード・シャノンの情報理論が果たした役割について
(3) ユビキタス・コンピューティングが生涯学習環境に与える影響について
(4) バイオメトリックスによる個人認証の事例を1つ挙げ、その可能性と限界について
(5) 電子署名に関して、PKI(Public Key Infrastructure)の導入が個人の生活に及ぼす功罪について
電子計算機システム
T−2 次の3問題について解答せよ。(緑色の答案用紙を使用し、問題ごとに用紙を替えて解答問題番号を明記し、T−2−1は4枚以内に、T−2−2及びT−2−3はそれぞれ3枚以内にまとめよ。)
T−2−1 一般顧客を対象としたE-Commerce(インターネットを介した商取引サービス)を提供するWebベース・システムについて、セキュリティと性能面でどんな技術的要件を考慮すべきかを論ぜよ。また、今後のインターネットの広帯域化がE-Commerceシステムに及ぼす影響と将来展望について意見を述べよ。
T−2−2 高品質ソフトウェアを作成するには、ソフトウェア・テストをどのように実施すべきかをソフトウェア開発プロセスの観点から論ぜよ。また主要なソフトウェア・テスト技術について、その概要及び長所短所を述べよ。
T−2−3 ギガビットイーサネットに関する以下の設問に答えよ。
(1)ギガビットイーサネットについて、その特徴を述べよ。
(2)ギガビットイーサネット導入にあたって、その性能を引き出すためにシステム構成上配慮すべき事柄を挙げて説明せよ。
(3)ギガビットイーサネットの将来動向について論ぜよ。