平成19年度技術士第二次試験問題(原子力・放射線部門)
 ●専門問題
提供:ssさん

各部門の部屋Topへ
第二次試験過去問題Topへ


専門問題

(20-1) 原子炉システムの設計及び建設 

1 次の5問題(1−1〜1−5)のうち2問題を選んで解答せよ。(問題毎に答案用紙を替えて解答問題番号を明記し、それぞれ3枚以内にまとめよ。)

1−1 常温で停止状態にある原子炉は未臨界状態にある。原子炉の運転では、ここから原子炉を起勤し出力を上昇させ、最終的には定格運転状態にして、ある一定の期間運転を継続し、一般には燃料の燃焼度が所定の値になるまで運転は継続される。
そこで、原子炉を“常温の停止状態”から“定格運転状態”を経で運転終了”させるまでの期間における原子炉の反応度変化(異常状態を除く)について、以下を論ぜよ。

(1)原子炉の状態変化とそれに対応する反志度変化について、「原子炉の状態」と「反応度変化の物理的意味」を明記し、あわせてその反応度変化を補償する設備とその操作手順(1燃焼期間分で良い)の概略を述べよ。
(2)原子炉において、原子炉の構造物の設計及び改造等で極端に大幅な変更は行わずに燃料の燃焼度を極力高めようとする場合に、設計上で取るべき方策とその可能性について論ぜよ。

1−2 原子炉のシステムでは原子炉内で熱を発生させ、それを熱除去系により炉外に取りだし、有効に利用した後、利用されなかった熱は放熱される。従って、原子炉熱利用システムでは、当然ながらニれらを行う系統設備が準備されている。
そこで、考えられる原子炉熱利用システムのうち1つを取り上げて、以下を論ぜよ。

(1)取り上げた「原子炉熱利用システム」について、そのシステムの概要を述べると共に、以下の設備について、その名称、主要な機能並びに典型的な設計上の特徴を述べよ。
   1)発熱(燃料体)設備   2)熱利用設備   3)放熱設備
(2)このシステムにおいて、発熱(燃料体)設備の設計を変更することなく、発生熱を有効に利用する場合についての対応策について論ぜよ。

1−3 米国のNRC(原子力規制委員会)は、リスク情報を活用して運転中の原子力発電プラントの安全目標を達成するために、「原子炉安全」、「放射線安全」及び「保障措置」について基本事項(NRCは「コーナーストーン」と称している)7項目を定めて、設置者が留意することを要求している。 この基本事項のうち、4項目は「原子炉安全」に係ねるものであるが、「原子炉安全」に関して、あなた白身の考え方をもとに下記について記述せよ。

(1)運転中の原子炉施設に「公衆の健康被害を最小にする」という安全目標を設定したときにあなたが、この目標を達成するために原子炉施設の計画、設計段階で考慮することが重要と考える基本事項を4つ示し、あなたの考えを述べよ。

(2)(1)で解答した基本事項から、任意に基本事項を2項目選択し、その各々について具体的な対象設備別を挙げ(1別、必要に応じて2別まで)、その「設計および建設」において考慮すべきことを具体的に論ぜよ。

1−4 原子力発電設備の設計条件とプラントの状態に関して、下記について記述せよ。

(1)「発電用原子力設備に関する技術基準」には「運転状態1」〜「運転状態IV」が定義されている。これらの「運転状態1」〜「運転状態IV」について、知るところを述べよ。

(2)「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」では「異常状態」を「運転時の異常な過渡変化」及び「事故」に区分している。原子炉(軽水炉以外も含む)の設計及び建設に考慮されている「運転時の異常な過渡変化」状態を1例挙げて、その起因事象、プロセス、関係する設備の受ける荷重状態を具体的に説明し、その荷重を受ける設備を設計する上での配慮事項を、前記(1)の「運転状態」との関係で具体的に論ぜよ。

1−5 原子炉施設を円滑に計画、建設するための技術監理には、経済性(品質、工程を含む)、人的資源、情報、安全、社会環境などへの配慮が必要となっている。これらの配慮が必要な項目について下記を記述せよ。

(1)前記の5項目は原子炉施設に限らず、プロジェクト管理に共通した監理項目である。これらから3項目を任意に選び、各々について、あなたがキーワードと考える用語を5つ以上使って説明せよ。キーワードと考えた用語には下線を施して、キーワードであることを明示すること。

(2)原子炉施設は膨大な物量と長期にわたる計画・建設期間という特殊性に加え、高い信頼性が要求される。(1)で解答した3項目の中から更に1項目を選択し、原子炉施設の特殊性に配慮して、あなたが重要と考えることを論ぜよ。


(20-2) 原子炉システムの運転及び保守 

1 次の4問題(1−1〜1−4)のうち2問題を選んで解答せよ。(問題毎に答案用紙を替えて解答問題番号を明記し、それぞれ3枚以内にまとめよ。)

1−1 原子炉システムの運転及び保守の再に、注意すべきは臨界問題である。臨界に関する以下の問いに答えよ。

(1)即発臨界と遅発臨界の違いについて記述せよ。

(2)反応度の定義をその単位と共に記述せよ。また、軽水炉の停止余裕について記述せよ。

(3)JCO臨界事故時の出力変化について記述せよ。また、臨界状態をどのように収束させたかについて記述せよ。

(4)停止中のBWRの制御棒が抜けて臨界になった事象がある。一般論として、反応度温度係数を負として、臨界未満の炉心に加わった正の反応度の大きさをパラメータとして原子炉出力の時間的変化について記述せよ。

(5)停止中のBWRの制御棒が数本抜け、制御室にて中性子検出器の計数率が指数関数的に上昇を始めて、原子炉が臨界になってしまったことが判明したとき、どういう措置をとるべきかについて時系列を追って記述せよ。

1−2 原子力発電所の通常運転および通常運転から逸脱した場合について、以下の問いに答えよ。

(1)通常運転中の監視制御におけるオペレーターの業務について記述せよ。

(2)通常運転状態から逸脱した場合のオペレーターの意思決定までの心的負担が「発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針」において、どのように考慮されているかについて記述せよ。

(3)通常運転状態から逸脱した場合の意思決定までの「事象ベース事故時手順書」の役割について記述せよ。

(4)「事象ベース事故時手順書」にない想定外の事故時に対処する手順書について記述せよ。また、注目するプラントパラメータについて記述せよ。

(5)プラントパラメータ間の相互干渉を考慮した意思決定方針について考察し、あなたの意見を記述せよ。

1−3 原子力発電所(PWR/BWRいずれかについて)高経年化について以下の問いに答えよ。

(1)高経年化評価対象部位について記述せよ。

(2)経年劣化事象について記述せよ。

(3)経年劣化現象に伴う材料の損傷について、材料と応力要因、材料と環境要因、材料と応力要因及び環境要因が重なって発生する損傷について記述せよ。

(4)高往年化技術評価に関して、次のキーワードを用いて記述せよ。
   キーワード=事業者、国、経年劣化事象、健全性、適切性、保全計画、追加保全策、30年、60年間、定期事業者検査

1−4 原子力発電所の稼働率に関する以下の問いに答えよ。

(1)日本の原子力発電所の稼働率の状況をアメリカ、フランス、ドイツと比較して記述せよ。

(2)日本において原子力発電所の稼働率を10%向上すれば、発電用原子炉(電気出力100万kW級)を約5基新設するのと同じエネルギーが確保できるという根拠を記述せよ。

(3)今後原子力発電所の稼働率を引き上げるのに取り組むべき技術的課題について記述せよ。

(4)その実現の可能性についてあなたの意見を記述せよ。


(20-3) 核燃料サイクルの技術 

1 次の5問題(1−1〜1−5)のうち2問題を選んで解答せよ。(問題毎に答案用紙を替えて解答問題番号を明記し、それぞれ3枚以内にまとめよ。)

1−1 軽水炉燃料サイクルと高速炉燃料サイクルについての主な相違点を挙げ、ウラン資源の有効利用の観点からあるべき燃料サイクルについてあなたの意見を記述せよ。

1−2 我が国の商業軽水炉MOX燃料利用の課題及びその解決策についてあなたの意見を記述せよ。

1−3 再処理プロセスにおける化学分離とウラン濃縮における同位体分離の分離法を環境保全の視点より考察せよ。

1−4 高レベル放射性廃棄物の処理及び処分について、その技術の現状から、実現化のタイム・スケジュールを展望し、その実現化のための重要課題について考察するとともに、その解決策についてあなたの意見を記述せよ。

1−5 経済性の観点から、我が国の核燃料サイクル技術の現状と課題及び今後のあり方についてあなたの意見を記述せよ。


(20-4) 放射線利用

1 次の4問題(1−1〜1−4)のうち2問題を選んで解答せよ。(問題毎に答案用紙を替えて解答問題番号を明記し、それぞれ3枚以内にまとめよ。)

1−1
 @ 放射線の照射利用が行われている、イ)高分子加工、口)電線・ケーブル製造、ハ)医療用具滅菌の各分野における照射施設の放射線原について知るところを記述せよ。
 A イ)〜ハ)の各分野の照射施設について、ラジオアイソトープ篠原との比較において、加速器を線原とした場合の得失を論じ、合理的な線原選択について記述せよ。

1−2
 @ 加速器の検査技術及び分析技術への応用例と最近の研究開発情況を示し、この分野における技術革新の進捗について記述せよ。
 A PIXE分析法及びRBS分析法の原理と特徴を記述し、それらの利用法の現状及び今後に期待される新たな利用法についてあなたの意見を記述せよ。

1−3
 @ 放射線によるがん治療法(y線、X線、電子線、陽子線、中性子線、重粒子線)のうち、2つを選択し、それらの原理及び特徴を記述せよ。
 A @で選択した2つの治療法について、放射線照射技術の現状を述べ、課題を挙げ、対応策についてあなたの意見を記述せよ。

1−4
 @ 放射線の直接作用と間接作用について解説せよ。
 A 放射線の照射効果を増進したり抑制したりする技術開発の意義を述べ、その可能性を論じ、併せてその有効利用についてあなたの意見を記述せよ。


(20-5) 放射線防護

1 次の5問題(1−1〜1−5)のうち2問題を選んで解答せよ。(問題毎に答案用紙を替えて解答問題番号を明記し、それぞれ3枚以内にまとめよ。)

1−1 内部披ばくは、経気道(吸入)、経口、経皮膚(傷口)により放射性同位元素を体内に摂取することに起因する。それぞれの摂取経路について、防護対策上必要な器具、設備、放射線検出器の概要を述べよ。また、実際に作業室内で表面汚染が発生したとして、応急的処置と恒久的処置に分けて、あなたのとるべき対策を論ぜよ。

1−2 原子力発電プラントや放射綿施設の高往年化に伴って予測される放射綿防護上の課題について、あなたの専門分野における技術的課題を挙げよ。そのうちから緊急性が高いと判断する課題を2つ挙げ、あなたが考える対策を論ぜよ。

1−3 次に示すのは、放射線管理に使用する代表的な放射線検出器である。気体電離型検出器、半導体検出器、シンチレーション検出器の各ジャンルからそれぞれ1種類の検出器を選択し、放射線検出の原理と特徴を説明せよ。また、環境モニタリングをする測定器を選定し、使用上、保守点検上の留意点について論ぜよ。
  1)気体電離型検出器;@電離箱、A比例計数管、BGM計数管
  2)半導体検出器;@Ge半導体検出器、ASi半導体検出器
  3)シンチレーション検出器;@Nal(T1)、AZnS(Ag)、B液体シンチレータ

I−4 ICRP Publ.74「外部放射線に対する放射線防護に用いるための換算係数」に示される「放射線防護モニタリングの目的のための諸量間の関係」を参考にして、物現量、実用量、防護量の概念を説明せよ。それらの関係をもとに個人披ばく線量評価に対する課題について論ぜよ。



1−5 下の図は、252Cf大強度中性子線源による照射施設の平面図である。密封中性子線源の使用施設を遮蔽設計する立場に立って、考慮すべき遮蔽計算項目、安全管理設備を説明せよ。また、これらの項目を用いて本施設の安全システム構築の考え方を論ぜよ。

第二次試験過去問題Topへ