筆記試験対策〜選択科目(問題V) 最終更新:2021.06.25
TopPage 試験概要 過去問題 出願対策 問題T 問題U 口頭試験 体験記

=CONTENTS=
1.出題内容
2.問題対策
3.部門・科目別の出題傾向と対策

 問題Vの課題解決問題対策について、建設部門を中心に記しています。
 出題内容の予想もしていますが、これは「絶対こうなる」というものではなく、あくまで私の予想です。ただ、技術士会から公表された資料を素直に読むとこういうことだよね、という、それなりに根拠のあるものではあります。
 なお、受験対策は人それぞれです。それぞれの立場で、ポイントは変わってきます。また、若年層・熟年層でも変わってきます。 うのみにするのではなく、参考にできるところは参考にするというスタンスでお読みください。

答案用紙はA4サイズ・600字詰めです。
模擬練習用答案用紙を用意しましたので、お使いください。
ダウンロード時は1ページですが、1枚目を超えると自動的に2枚目が現われます。
なお、この答案用紙はすごろくさんよりご提供いただいたものです。
問題3答案用紙

1.出題内容

 選択科目のうち問題Vは、選択科目に関する問題解決能力と課題遂行能力を問います。答案は記述式で、600字詰め答案用紙3枚以内です。

問題Vの内容

概念 問題解決能力及び課題遂行能力
社会的なニーズや技術の進歩に伴い,社会や技術における様々な状況から,複合的な問題や課題を把握し,社会的利益や技術的優位性などの多様な視点からの調査・分析を経て,問題解決のための課題とその遂行について論理的かつ合理的に説明できる能力
出題内容 社会的なニーズや技術の進歩に伴う様々な状況において生じているエンジニアリング問題を対象として,「選択科目」に関わる観点から課題の抽出を行い,多様な視点からの分析によって問題解決のための手法を提示して,その遂行方策について提示できるかを問う。
評価項目 技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)のうち,専門的学識,問題解決,評価,コミュニケーションの各項目

評価項目 筆記試験における
評価内容
T U-1 U-2 V
専門的学識 基本知識理解
理解レベル   @基本 @業務  
問題解決 課題抽出 @     @
方策提起 A     A
評価 新たなリスク B     B
技術者倫理 社会的認識 C      
マネジメント 業務遂行手順     A  
コミュニケーション 的確表現
リーダーシップ 関係者調整     B  
※表中の丸数字は設問番号です

  1. 出題形式
    2019年度の問題Tの問題文を比較してみましょう。

    (建設部門道路科目 問題V-1) (建設部門道路科目 問題V-2)
    2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の円滑な運営には,大会関係者及び観客の輸送を安全,円滑に行うことが求められるため,高度な交通マネジメントが必要である。このような状況を踏まえ,交通マネジメントの実施計画を策定する道路技術者として,以下の問いに答えよ。

    (1) 平時の交通処理能力を大幅に上回る大会期間中の交通需要に対して,技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。
    (2) (1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
    (3) (2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
    橋梁, トンネル等の道路構造物については,平成25年から平成26年にかけての道路法,同施行令及び同施行規則の改正を経て,平成26年度に策定された定期点検要領等に沿って,各道路管理者において点検が実施されており,平成30年度で一巡回の定期点検が完了したところである。道路構造物のメンテナンスを担当する技術者として,以下の問いに答えよ。

    (1) 地方公共団体が, 二巡回となる道路橋の定期点検を実施するに当たって,技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。
    (2) (1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
    (3) (2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述ベよ。

    (機械部門機械設計科目 問題V-1) (機械部門機械設計科目 問題V-2)
    我が国では2010年から2025年までの15年間で,社会全体の高齢化率(65歳以上人口の割合)が23%から30%に大幅に上昇すると予想されている。2025年時点で介護職員は34万人不足する見込みである。このような状況の中で,高齢者の移動,入浴,排泄,他の支援の際に,介護者の負担を軽減するための介護機器,歩行等を補助する介護機器,認知症の人を見守る介護機器などが開発されている。新たな介護機器を開発し,普及させるには,介護される高齢者と介護者の双方のニーズを把握し,それに応じた機器を開発することが必要である。今後もこのような介護機器の役割はますます重要になると考えられ,その開発には最新のロボット技術や情報処理技術などの活用が期待されている。

    (1) 介護機器の開発・設計・導入・普及に関して,具体的な介護機器の例を1つ挙げ,機械設計の技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。
    (2) 抽出した課題のうち最も重要と考える課題を 1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
    (3) 解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
    工業製品の設計・生産・販売のグローパル化の進展に伴い,国際標準化に関する取組の重要性が増している。例えば, JISや社内規格等の国内規格をそのまま使い続けることがビジネス上のリスクとなる可能性があり,国際規格との整合を考慮、して圏内規格を新たに整備あるいは更新することが必要になる場合も考えられる。このような状況を考慮、して,以下の問いに答えよ。





    (1) 具体的な製品の例を1つ挙げ,機械設計技術者としての立場で多面的な観点から国際標準化に関する課題を抽出し分析せよ。
    (2) 抽出した課題のうち最も重要と考える課題を 1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
    (3) 解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。

    赤字の部分は問題V-1でもV-2でも同じです。つまり出題テーマが変化するだけで各設問で問われることは変わらないのです。この点は2020年度も変わりありません。
     設問1:課題の抽出
     設問2:解決策の提示
     設問3:新たなリスクとその対策
    ということですね。まあつまり問題Tの設問4がなくなっただけで、後は同じです。

  2. 評価内容(コンピテンシー)の内容
    採点基準(コンピテンシー)については問題Tのところで解説しているので省略しますが、問題Tが受験部門全般にわたる専門知識等を求められたのに対して、問題Vは受験科目に関する専門知識になります。この点は異なりますので、問題TとVの区別をしっかりつけてください。

    例:建設部門において災害がテーマであった場合の科目別のテーマ
    科目 考えるべき支点・テーマ
    土質基礎 斜面崩壊や液状化
    鋼コン 地震動等の外力による構造物の損傷
    都市計画 防災都市作り
    河川砂防 水害や津波・高潮、斜面災害、土砂災害など
    道路 避難路確保、物流幹線のリダンダンシー
    施工計画 災害復旧・復興の担い手となる
    建設環境 防災と環境の両立や防潮林
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2.問題対策

 問題対策としては、問題Tと同じく、以下の4段階で準備されることをお勧めします。
  1. 社会的重要テーマを絞り込む ※基本的に問題Tと同じです
    問題Tと同じく、出題テーマは専門分野と社会経済との関わりといったもの、つまりは社会的重要テーマが出題テーマとして考えられます。ただし、問題Tは部門全体がテーマの範囲でしたが、問題Vは選択科目がテーマの範囲となります。たとえば災害がテーマであれば、建設部門の中でも土質基礎科目は斜面崩壊や液状化などがテーマになるでしょうし、鋼構造コンクリートは地震動等の外力による構造物の損傷がテーマになるでしょう。都市計画であれば防災都市作りが、河川砂防であれば水害や津波・高潮などもテーマになるでしょう。建設環境であれば防災と環境の両立や防潮林などが取り上げられるでしょう。部門全体を対象とした問題Tであれば、もっと大枠の防災減災のあり方などを取り上げ、科目横断的に(というか科目にこだわらず)提案することができますが、選択科目を出題範囲とする問題Vでは、「その科目ならではの切り口」になるものと思われます。
    そして、問題Vは2018年度までと基本的に変わっていないことを踏まえれば、これまでの出題傾向から今年出題される可能性の高い重点的テーマをある程度絞り込むことができます。

  2. 知識を蓄える ※基本的に問題Tと同じです
    社会的重要テーマについての知識を蓄えないと、そもそも書くネタがなく、高評価答案は作れません。
    知識を蓄えるためには、次の2段階ステップでの取り組みがお勧めです。
    1. 白書等の文献(建設部門であれば日経コンストラクション等もお勧め)やこのセミナーテキスト・動画等の、「重要テーマについてざっくり説明している資料」でまず大枠を理解する。
    2. 建設部門であれば国交省や国総研、各種専門誌、さらにはネット情報等で、さらに一歩深い情報を得て、知識を深める。特に国土交通白書は、現状と施策については紹介してあるものの、課題解決に関わるロジック、すなわち現状からどのようにして施策につながっていくのかという部分の説明が薄いので、課題抽出分析→解決の方向性→具体策といったストーリーを理解しようと思うと、白書だけでは不足。

  3. ロジック構成を考える(課題解決の視点で主要施策と実現策までの流れを整理する) ※問題Tと同じです
    (2)で蓄えた知識を活用して、@課題抽出→A課題分析→B解決策の提案→C新たなリスク抽出→Dその対策というロジック構成を考えます。
    文章を書くこととロジックを考えることを同時にやったりせず、まずロジック構成を整理して書くべきことを全部決めてから文章を書くことが重要です。
    Bは現実の施策等に一致することが望ましいと思われます。
    Cは、2013〜2018年度の問題Vの設問3に見られた「解決策実現に向けてさらに一歩踏み込んだ、さらなる具体策」に近いものになるでしょう。すなわち、「白書に書いてあること」、いわば「国等が提唱する大きな方向性、スタンダード」なので、これを地域や現場で実現しようとすると様々な問題が出てきます。たとえば老朽化インフラの予防保全であれば、その担い手はどうするのかとか、予防保全に転換するためには現に損傷しているインフラを全部修復しないといけないが、そのための予算がそもそもないとかいったことです。ちなみにCは専門技術的視野だけにならず、幅広い視野で考えることが求められますが、これは「人・モノ・カネ」の視点で考えるようにするといいでしょう。
    そしてDはCへの対策なので、これが最終的な実現策になることもありますし、さらなる改善策になることもあるでしょう。また提案とは別の二次リスク対策になることもあると思います。いずれにせよ、これについては白書に書いてある内容から一歩先に進んで、実際に現場で実行されている施策等であることもあれば、受験生自身が実務の中で経験した実例を書いたほうがいいこともあるでしょう。
    以上の@〜Dは、骨子にまとめておくといいでしょう。なお、この骨子は経歴票の業務内容詳細(小論文)で用いたものと似ていますが、解決策提案で終わらず、新たなリスクとその対策まで考えているという点で異なります。

    @問題 A問題分析→課題抽出
    B方策提起 C新たなリスク Dその対策
    困ったこと
    重大性・困難性等について読み手が納得できるものがよい
    多様な視点が求められるので、技術だけでなく予算や担い手など幅広く考えるといい
    問題の発生原因・発生機構などを分析してなすべきこと(課題)を抽出 問題分析結果から必然的に求められる解決策
    基本的には実際の施策や取組みに沿ったものがいいと思わる
    解決策を提案したがための二次リスク、あるいは解決策実現に際してのボトルネック
    技術的なものだけでなく、コストや期間、リソースや合意形成、環境影響や安全など幅広く考えるとよい
    新たなリスクへの対応策
    実際の施策等を踏まえることが望ましい
    設問1 設問2 設問3

  4. 読みやすい文章を書く力を身につける ※基本的に問題Tと同じです
    最後は答案用紙に文章を書かねばなりません。後述の問題Uであれば、箇条書き等が有効なこともありますが、ロジック主体の問題T・Vでは、箇条書きだけではロジックをうまく表現できません。
    そうすると、簡潔明瞭で読みやすい文章を書く力が必要になってきます。従来の試験でもそれは必要なことでしたが、2019年度からは「コミュニケーション」という評価項目が明示されているので、採点者は読みにくい文章・わかりにくい文章に対してマイナス評価をすることができるようになっています。
    文章力を身につける即効的な方法はありませんが、お勧めは合格答案を読む・引用するということです。APEC-semiでは合格答案実例集を提供していますが、こういったものを活用し、複数の合格答案を読み、読みやすいと思ったもの、自分の文章の感性に合っていると思うものを選んで、これを「お手本」として文章を書いてみるといいでしょう。言い回しとか言葉の使い方などを「盗む」わけですね。さらには「写す」という作業を繰り返して文章スタイルを身につけて合格した人もいます。
    ロジック構成を考えることと、文章を書くことは、自分の頭の中にある答案イメージのアウトプットです。勉強をすること(このテキストを読むことや講義を聴講することを含みます)はインプットです。
    しかしインプットだけがんばってもアウトプットの練習をしないと高得点を取れる答案は作れません。インプットと同じくらいアウトプットの練習をしてください。

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3.部門・科目別の出題傾向と対策


a.土質及び基礎

2016年度は地質リスクとICT・生産性、2017年度は災害と生産性向上、2018年度は担い手不足に伴うイノベーションによる品質確保、防災減災老朽化対策、2019年度には維持管理(予防保全)と地盤の不確実性が出題。これを受けて、2020年度は担い手不足・生産性向上と災害のいずれかは出題される可能性が高いと予測したが、ICT導入と防災減災が出題された。

・これを受けて、2021年度は地盤の不確実性と人材育成、維持管理のいずれかあるいはこれらが複合した問題が出される可能性が高いと思われる。地盤の不確実性は、自然の堆積物であることから不均質であること、それに加えて柔構造・水の影響を受けるといったことがあるため、既往データの有効活用やサウンディングや物理探査等を活用した補完調査といったものが必要である。そして人材育成は、そういった地盤の不確実性もあって経験工学判断のウェイトが高くなり、属人性が高いのが土質基礎分野の特徴なので、OJTOFF-JTやナレッジマネジメントを積極的に導入する必要がある。維持管理は予防保全を原則とするが、ここでもコンクリート構造物と比較した場合に地盤は不均質で経験工学的判断を必要とする上に膨大にあるというように、常に同じような「土基礎科目だからこその特徴」を念頭に置くとよいと思われる。

 

b.鋼構造コンクリート

・鋼構造については、2016年度は維持管理とインフラ海外展開、2017年度はICT・生産性向上と巨大災害、2018年度は維持管理と想定外外力、2019年度は労働災害と劣化・損傷という予想外の出題であった。これを踏まえ、2020年度は「主要3テーマである生産性向上(人に関する教育や技術継承と、ICTを活用した省人化・省力化)、災害、維持管理のいずれにも注意。特に生産性向上は担い手三法、入管法改定、働き方改革などを踏まえて考察しておくとよいと思われる」と予想した。

・コンクリートについては、2016年度は初期欠陥防止と温暖化緩和策(変化球ばかり)、2017年度は生産性向上と維持管理、2018年度は防災減災と生産性向上、2019年度は海外インフラ整備、温暖化ガス削減が出題。これを受けて2020年度は「最近出題がない維持管理が要注意であるとともに、i-Bridge等の推進や改定入管法・働き方改革なども踏まえた生産性向上(特にICT活用)について、施策や現状の動きをしっかり把握」とした。

・そして2020年度は鋼構造とコンクリートが統合され、BIM/CIMの活用と性能規定化の推進が出題された。鋼構造・コンクリートいずれについても生産性向上を予想していたのでその点では近い出題であったと思われる。

・これらをうけて2021年度は、引き続き鋼構造とコンクリートが統合された状態での出題が考えられるわけだが、鋼構造とコンクリートのどちらにも共通するテーマでないと出題できないという点で従来よりも予想がつけやすくなったとも言える。順当には防災減災と維持管理が中心になると思われるが、生産性向上の中でBIM/CIMに絞り込んで出題されたように、想定外外力への対応や長寿命化技術など、その分野での特定テーマに絞り込んだ出題も考えられるので、様々な施策や技術について幅広く情報を収集して勉強しておくことが望ましいと思われる。

 

.都市計画

1問は20152019年度と5年連続コンパクトシティ関連(立地適正化計画や都市のスポンジ化)で、もう1問は2016年度が空き家対策、2017年度が市街化区域内農地、2018年度が被災地の復興まちづくり、2019年度は都市のスポンジ化と都市構造再編、2020年度は1問は引き続き立地適正化計画をはじめとするコンパクトシティ関連問題、もう1問は路・駐車場の空間利用、歴史風致のまちづくり、災害といったものを予想していたが、グリーンインフラとコミュニティ組織が出題。これはかなり意外であった。

・これを受けると2021年度は、1問はまちづくりに関する問題という点では従来と同じでもコンパクトシティに関する施策から出題されるとは限らないと考えておくべきと思われる。 例えばSDGsの視点すなわち「住み続けられるまち」で考えると、災害に強いまち、高齢者に優しいまち(グリーンスローモビリティなどを含む)、効率的なインフラの維持管理ができているまち、そしてスマートシティなど、様々な切り口が考えられるので、勉強量の差が如実に出ることになるかもしれない。元々一つか二つの予想問題の答案だけを覚えて楽に合格しようと思っている時点で間違いなのだが、ますますそうなったと思って、いろいろな施策や取り組みを幅広く勉強しておくことが求められると思われる。

・もう1問は2020年度と同じく路・駐車場の空間利用、歴史風致のまちづくり(インバウンド対応含む)、災害(木造家屋密集地、液状化、都市水害など)が考えられる。インバウンド増加を前提にした観光まちづくり・歴史風致のまちづくりは新型コロナで頓挫したわけだが、この状態がずっと続くとは現時点では考えられないので、ことさらにコロナ対応を考える必要もないと思われる。

 

.河川砂防

2016年度はICTと災害、2017年度はICT・生産性向上と維持管理(ストック活用)、2018年度はICT活用、災害ソフト対策、2019年度は自然災害時の防災重要インフラ機能維持と西日本豪雨を踏まえた減災対策が出題されたのを受けて、2020年度は「災害ソフト対策が再び取り上げられる可能性は十分あるし、ダムや地下河川の効果を踏まえた出題も考えられる。ICT・生産性向上と維持管理の出題の可能性あり。革新的河川管理プロジェクトを考えると維持管理とICT活用にまたがった複合的な出題も考えられる」としていたが、データプラットフォームを前提としたICT活用と総合的な土砂管理が出題。半分的中といったところ。

2021年度は東日本台風や九州豪雨を踏まえると、災害ソフト対策が再び取り上げられる可能性は十分あり、ストック効果の最大化にフォーカスした出題も考えられる。またもう1問はSDGsを踏まえて環境面にシフトした出題も考えておくとよいと思われる。

 

e.港湾空港

2016年度は人流・物流(V-1として3年連続)と維持管理、2017年度は民営化と災害、2018年度は生産性革命と工期遅延挽回方法、2019年度はインフラシステム輸出とライフサイクルコスト縮減の出題であったのを踏まえて、2020年度は「再度人流・物流、特にICT活用、さらに生産性革命プロジェクトにあげられているテーマを含んだ出題、災害についても台風21号に伴う高潮被害等を踏まえた出題が考えられる」と予想していたところ、インバウンド対応と担い手不足対応(生産性向上)つまり人流とICT活用で、おおむね予想の範囲内であった。

2021年度は再度災害(台風21号に伴う高潮被害等を踏まえた出題やBCP)、ICT活用をさらに進めた生産性革命プロジェクト諸施策等の出題が考えられる。

 

.電力土木

・災害と維持管理が二大テーマで、2016年度は災害、2017年度は維持管理(災害の視点とリプレース)、2018年度は経年劣化対策、不適切な品質管理・コンプライアンス。2019年度は電力土木施設の維持管理運用と技術継承が出題された。これを踏まえて2020年度は「台風1519号の被災を踏まえて、電力供給継続の視点での災害対策と維持管理、ICT活用を中心とした災害対策を優先的に準備しておくべき」と予想したが、環境負荷低減と維持管理運用が出題され、維持管理以外は予想外であった。

2021年度は、近年出題されていない災害(特に2020年度の予想と同様、電力供給継続の視点でBCP的に考える)と生産性向上(ICT活用による担い手不足に対応した効率的な災害対策や維持管理など)について準備しておくといいのではないかと思われる。

 

 

.道路

2016年度はメンテサイクルと事業評価、2017年度は暫定2車線と地震時緊急輸送道路、2018年度は高速道路が物流に果たす役割と大雪による交通障害、2019年度は東京オリパラ開催時の交通マネジメントと2巡目橋梁点検が出題されたことから、2020年度は「生産性革命プロジェクトやSDGsを踏まえた次世代モビリティ(MaaSその他)を中心に災害(グローバリゼーションを含めて重要物流道路に絡めて出題など)に注意」と予想していたが、自転車の活用推進と防災対策が出題された。災害は視点は異なるものの予想通りだったが、自転車は意外であった。

2021年度は、2020年度に予想していた生産性革命プロジェクトや次世代モビリティが本命と思われる。維持管理はインフラメンテナンス2.0につながるので生産性革命プロジェクトと同時には出題されないとは思われるが、それは逆にインフラデータプラットホームを基盤としたICT活用と次世代モビリティを中心に勉強しておけば、まるっきり空振りということは免れるのではないかということでもある。

・問題Uも含めて行政目線での出題・タイムリーな出題が目立つ。施策をどれだけ知っているかが勝負になってくる傾向が強いので、国交省HP等で道路行政について理解を深めておくべき。

 

.鉄道

2016年度は駅改良と生産性、2017年度は豪雨対策と地震防災減災、2018年度は駅・駅周辺整備、鉄道施設の維持管理、2019年度は都市鉄道における施設整備、地方の鉄道施設の維持管理が出題されたことから、2020年度は「生産性向上(ICT活用による省人化・省力化、人材育成・技術継承)に注意すべきと考える。災害についても台風1519号などを踏まえた出題が予想される」と予想していたが、水害に対する鉄道施設強化と都市鉄道における定時制の強化について出題された。災害は予想通りであったが、都市鉄道の定時制強化は予想外。

2021年度は再度生産性向上(ICT活用による効率的な維持管理や担い手不足対応、さらに広げてスーマートシティを構成する交通インフラとして)が予想され、維持管理・保線などに特化した出題も考えられる。また可能性は高くないと思われるが、地下工事のリスク(福岡地下鉄や道路ではあるが調布の陥没事故を踏まえるとリニアへの影響も小さくない大深度地下施工)なども抑えておきたいところ。またまちづくりに絡めた駅前整備などが久々に出る可能性もある。

 

i.トンネル

2016年度は災害と品質確保(生産性や教育?)、2017年度は環境(低炭素・自然共生)と生産性向上、2018年度はメンテナンスサイクル(ただし災害や人口減少、国際競争にも言及させる)と環境保全、2019年度は労働・公衆災害防止とトンネルの安全性・公益性・品質確保について出題されたのを踏まえ、2020年度は「災害や生産性向上についてあまり出題しやすい分野ではないことも踏まえると、維持管理が最右翼かと思われる。また技術継承にも注意が必要。ただ予想しにくい科目であることは確かなので、できるだけ幅広く勉強しておくべき」と予想していたが、補助工法の要否判断(福岡地下鉄を踏まえたか?)と状態変化に伴う変状リスクが出題され、予想外であるだけでなく、かなり専門技術寄りの出題であったことが特に予想外であった。

・今後の出題傾向予測がかなり難しくなってきたが、社会的重要テーマでの出題という本来の問題Vとしてみると、やはり維持管理と技術継承・生産性向上(ICT活用による施工や維持管理)が中心ではないかと考える。

・鉄道と同様、大深度地下法に影響を及ぼす可能性すらある調布の陥没事故を踏まえ、地質リスクに対する備えというテーマで、場合によってはそこにICT(効率化だけでなくAI活用なども含めて)を絡めた考察を求める出題も考えておいてもいいかと思われる。

 

j.施工計画

2016年度は労働力不足と杭データ流用を受けての品質確保、2017年度は民活とi-Con2018年度は労働災害と生産性向上、2019年度は技能労働者の労働環境と建設リサイクルが出題されたのを踏まえ、2020年度は「時流を踏まえれば生産性向上(ICT活用等)と働き方改革(建設キャリアアップシステムや技術者配置の合理化等の生産性革命プロジェクト含む)および労働安全(ICT化により資本集約型生産が進めば事故も減る)を中心に、やはり災害(早期の災害復旧に担い手不足の問題やその対策としてのICT活用、包括的民間委託などの制度活用による担い手確保)が考えられる」と予想したが、過疎地での維持管理と担い手確保育成が出題され、災害以外は予想の範囲内であった。災害はまたも出題なし。

2021年度は、ICTを活用した効率化が考えられ、単純にはi-Constructionの方向性があるが、新型コロナも踏まえてテレワークなども含めた生産体制変化にまで踏み込む可能性もある。災害は早期の災害復旧貢献のためにどうあるべきかという視点で考えておくとよいと思われる。

 

.建設環境

2016年度は温暖化適応策と災害復旧復興における環境配慮、2017年度は生態系ネットワークと再生可能エネルギー、2018年度はグリーンインフラを組み合わせた防災・減災とエコシティ、2019年度は生物多様性の保全再生と都市と緑・農が共生するまちづくりが出題されたのを踏まえ、2020年度は「SDGsの視点での自然共生やまちづくりの持続性という問題が出やすいと思われる」と予想していたが、ヒートアイランド現象とグリーンインフラが出題され、SDGsの視点の中であり、自然共生という点ではグリーンインフラは含まれるかなとは思うが、全体には予想外。

・これを踏まえると、2021年度はSDGsSociety5.0を踏まえたスマートシティを中心とした持続可能なまち・国土づくりというテーマを中心に、新型コロナに伴う東京一極集中からの変化や各省庁の一次産業におけるスマート化なども踏まえて、農村環境・自然共生型社会的な方向の出題もありえると思うので、国土交通白書だけでなく環境白書等もよく読んでおくとよいと考える。

 

m.建設部門以外の部門・科目

 

(上下水道部門・上工水)

2016年度は水源・浄水場・送配水システムにおける安全で美味しい水の供給困難要因と熊本地震を受けた水道の地震対策、2017年度は水循環基本法・基本計画と水道事業の基盤強化と、タイムリーな問題と普遍的な問題が混在、2018年度は水道事業持続のため事業体が行うべき取組と、原水水質汚濁が進み施設能力も過大となった浄水場更新計画、2019年度は安全・安心な水道水の供給と水道施設の再構築が出題されたことから、2020年度は「水道事業の継続という大きなテーマに対しての問題を多様な視点で把握し、複数の課題を整理しておくことが有効と思われる。また災害や水道インフラ老朽化に伴う安定供給リスクという切り口もある」と述べていたが、配水区域再編と内外環境変化に対応した浄水施設更新機能強化について出題された。大きな方向性は予想に近かったと思われる。

・これらを踏まえると、ICT/IoT活用による効率的な水道インフラの持続可能性確保や、それに絡むが担い手確保といったテーマを中心に、都市集約化や過疎化といったまちづくりの課題と連携した水道インフラのあり方(広域化なども含む)などについて準備しておくべきと思われる。

 

(上下水道部門・下水)

2016年度は農集排の下水道統合判断(仮想事例)と管路施設維持管理、2017年度は地震による下水処理場機能喪失と雨水排除能力不足&老朽化の対応(いずれも仮想事例)、2018年度は浸水災害対策と下水処理場における地域バイオマス受け入れ計画、2019年度は既存施設を活用した高度処理の導入と管渠の老朽化対策であったことから、2020年度は「下水道事業継続の視点を大前提として、人口減少少子高齢化・防災減災・老朽化の問題に関して、ストック効果の最大化・ICT活用や生産性革命プロジェクトも踏まえて」と2019年度と同じ取組みを促していたが、気候変動を踏まえた浸水対策と施設や維持管理、事務等の共同化が出題され、災害は予想外であったが共同化のほうは方向性としては大きく外れていなかったと思われる。

2021年度は上水道科目と同様、ICT/IoTを活用した維持管理や事業継続を中心に、SDGsを踏まえて環境の側面でも理解を深め、仮想事例付与条件の読み取り力も過去問題でトレーニングを積んでおくのはいいのではないかと思われる。

 

(衛生工学部門・廃棄物・資源循環:旧・廃棄物管理)

2016年度は廃棄物エネ活用と処理広域化、2017年度は資源エネ利活用地域貢献と労災防止、2018年度はエネ回収とAI/IoT活用というように、1問目がエネルギー活用を中心とした出題、2問目が処理施設運営関連の出題が続いていた。

・ところが2019年度からは、2019年度が廃棄物処理の地域循環共生圏と超高齢化社会対応、2020年度が廃棄物処理場の今日的な環境課題と廃棄物処理施設の地域防災拠点化というように出題傾向が明瞭に変化。

・同様の傾向が続けば、1問目は環境の側面からの出題、2問目は廃棄物処理の拡大的な社会的役割が予想されるので、環境白書やSDGsの視点で知見・ロジック展開の準備を準備しておくべきと思われる。1問目はGHGゼロに向けた再エネ(スマートシティやVPPなども含んで考える)にも注意。2018年度までのエネルギー活用問題も参考になるのではないかと思われる。2問目はG20大阪サミットでの大阪ブルー・オーシャン・ビジョンやレジ袋有料化なども踏まえた減量化やリサククル率向上なども注意。

 

(農業部門・農業農村工学:旧・農業土木)

2016年度は大区画化と水利施設、2017年度は農地・水利施設(基盤整備全般)とパイプライン、2018年度はため池の防災・減災対策と新たな農業水利システムの構築、2019年度は農業水利施設の効率的保全、大規模都市利用型農業展開ほ場整備計画が出題されたのを踏まえ、2020年度は「TPPもにらんだ生産性向上と農山村活性化という農業部門全体の重大テーマの中で生産基盤整備(農業土木)を中心とした視点での出題が続くものと思われる。したがって、農地整備(大区画化・水田汎用化)や水利施設に関する問題が続くと思われる」と予想していたが、新たな農業水利システムの構築と災害リスクの高まりへの対応(排水事業におけるポンプ場更新という非常に具体的な仮想事例)について出題され、1問目は予想の範囲内であったが、2問目はやや意外であった。

・これを踏まえると、2021年度は引き続き、TPPもにらんだ生産性向上と農山村活性化という農業部門全体の重大テーマの中で生産基盤整備(農業土木)を中心とした視点での出題が続くものと思われる。したがって、農地整備(大区画化・水田汎用化)や水利施設に関する問題が続くと思われる。

・いずれにせよ、問題T対策も含めて、農業部門全体を見渡した俯瞰的視野(上記視点に経営の視点も含め、大規模営農や6次産業化などにも言及した視野)での農村活性化・持続性が語れるように情報を収集し、理解・考察を深めておく必要があろう。

 

(応用理学部門・地質)

2016年度は理解不足による社会問題化と地層処分、2017年度はインフラ整備のICT適用とトランスサイエンス問題、2018年度は地盤情報等の集積と利活用、失敗事例のナレッジマネジメント、2019年度は自然災害への対応とエネルギーミックスが出題されたことを踏まえ、2020年度は「ociety5.0SDGsといった俯瞰的視点での出題、たとえばICT(特にIoTAI、ビッグデータ等)の土木地質分野への導入(災害対応やインフラ整備・維持管理への応用など)やエネルギーミックスを含むスマートシティ等に関して見識を高めておくことが効果的ではないかと思われる。また技術継承や科学技術教育、マネジメントも重視すべき」と述べていたところ、地質図の品質向上と防災減災(防災意識社会への転換)が出題され、完全に予想外であった。特に地質図の品質は、問題Vらしからぬ出題であった。

・例年と同様に出題傾向が予想しにくいのだが、2020年度の予想と同様のICT活用やスマートシティ、Society5.0関係、技術継承・人材育成といったところを重視すべきではないかと思われる。

・応用理学部門は、特定分野の「技術バカ」「専門博士」になってしまわず、異分野の技術者との協働や総合的視野で複合化した科学技術をマネジメントすべきという資質要求が強いので、専門分野における知見の「深さ」よりも、分野横断的な知見の「広さ」をアピールできるようにするとよい。

・科学技術白書は必読。

 

(環境部門・環境保全計画)

2016年度は森里川海生態系保全と自動車エネルギー低炭素化対策、2017年度は温暖化ガス削減対策と多様な主体への環境保全普及啓発、2018年度は温暖化ガス排出削減シナリオと生物多様性、2019年度は地域気候変動適応計画と海洋プラスチック問題出題されたことを踏まえ、2020年度は「SDGsを含めた低炭素社会・持続可能性社会と、生物多様性が要注意」と予想していたが、洋上風力発電所と災害に伴う有害物質漏洩という、まったく予想外の出題であった。テーマも予想外だが、出題に当たっての視野が予想外に限定されたものであった、

・この数年間の出題傾向から、1問は低炭素社会が常に出ており(その点では2020年度の洋上風力発電も該当する)、もう1問は生態系が頻出であることがわかる。これを踏まえると、2021年度は、2020年度と同様、低炭素社会・持続可能性社会と生物多様性が要注意と思われる。

・いずれも、政策・計画策定の視点で、自分が国や自治体の環境施策策定担当者になったつもりで考えるのがお勧め。

・環境部門の他の科目の過去問題にも目を通しておくこと、環境白書は必読であることも忘れずに。

 

(環境部門・自然環境保全)

2016年度は生物多様性地域戦略策定と自然公園等のインバウンド受け入れ、2017年度は世界自然遺産と探勝歩道のユニバーサルデザイン整備、2018年度は再生可能エネルギーの導入と施設整備、侵略的外来種対策、2019年度はエコツーリズムと生物多様性地域戦略が出題されたのを踏まえ、2020年度は「再度自然公園運営上の問題が最優先ではないかと思われる。施設の老朽化(利用者の安全確保にも関わるし、たとえば探勝路の浸食などは自然環境負荷増大になる)とその維持管理、担い手確保(特に自然教育ガイドやインバウンド対応など)、ICTAI化(環境教育の質向上だけでなく、維持管理の効率化やインバウンド対応など効果は幅広い)、災害復旧、外来種対応など、問題は多種多様。2019年度と同様、グリーンツーリズムと関連した農泊的な里山体験や環境学習についても知見を深めておくとよい」と述べていたところ、事業に伴う生物多様性への影響最小化と高山植物への衰退対策(いずれも仮想事例)が出題され、後者は自然公園施設運営上の問題という点で予想の範囲内だったが、前者はアセス的切り口で予想外。

2021年度は、やはり自然公園運営上の問題が続くのではないかと思われる。保全対象を高山植物というように絞り込むこともあると思われるし、問題の切り口として2020年度予想のようなものがあると思われる。さらに解決の方向性としてICT活用や人材育成、制度整備などがあろう。こういった広い視野から考察するトレーニングを積んでおくことが必要と思われる。

・環境部門の他の科目の過去問題にも目を通しておくこと、環境白書は必読であることを忘れずに。



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