技術士第一次試験 平成20年度 適性科目 問題と正解・解説

第一次試験過去問題Topへ


適性科目解答案一覧
2-1 4 2-6 1 2-11 4
2-2 4 2-7 3 2-12 3
2-3 3 2-8 1 2-13 2
2-4 4 2-9 1 2-14 4
2-5 4 2-10 5 2-15 4

2-1 次に掲げる技術士法第4章の規定を参考として、技術士等が求められている義務・責務に関わるア)〜エ)の説明について、正しいものは○、誤っているものは×として、適切な組合せを(1)〜(5)の中から選べ。

技術士法弟4章 技術士等の義務(技術士等とは、技術士及び技術士補を指す。)
(信用失墜行為の禁止)
第44条 技術士又は技術士補は、技術士若しくは技術士補の信用を傷つけ、又は技術士及び技術士補全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
(技術士等の秘密保持義務)
第45条 技術士又は技術士補は、正当の理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。技術士又は技術士補でなくなった後においても、同様とする。
(技術士等の公益確保の責務)
第45条の2 技術士又は技術士補は、その業務を行うに当たってば、公共の安全、環境の保全その他の公益を害することのないよう努めなければならない。
(技術士の名称表示の場合の義務)
第46条 技術士は、その業務に関して技術士の名称を表示するときは、その登録を受けた技術部門を明示してするものとし、登録を受けていない技術部門を表示してはならない。
(技術士補の業務の制限等)
第47条 技術士補は、第2条第1項に規定する業務について技術士を補助する場合を除くほか、技術士補の名称を表示して当該業務を行ってはならない。
  2 前条の規定は、技術士補がその補助する技術士の業務に関してする技術士補の名称の表示について準用する。
(技術士の資質向上の責務)
第47条の2 技術士は、常に、その業務に関して有する知識及び技能の水準を向上させ、その他その資質の向上を図るよう努めなければならない。


ア)技術士等は、その専門職業上の職務を遂行するにあたり、公衆の安全、健康、福利に対し配慮しなければならない。

イ)技術士等は、部下が作成した企画書を承認する前に、設計、製品、システムの安全性と信頼度について、上司として責任を持つために自らも検討しなければならない。

ウ)技術士等は、過去に知り得た顧客の技術情報が、自分がそれ以前に持っている知識に大半合致していたので、他の依頼者への報告書に顧客技術情報をすべて記載した。

エ)技術士等の判断が依頼者に覆された場合、依頼者の主張が安全性に対し懸念を生じる可能性があるときでも、予想される可能性について発言する必要はない。

(ア) (イ) (ウ) (エ)
(1)
(2) × × × ×
(3) × × ×
(4) × ×
(5) ×


---------
正解は4
---------

技術士法44条〜47条の理解度を問う問題は、19年度も出題されました。
(ア)・・・・○ 公益確保の責務です。
(イ)・・・・○ 技術者としての責任でもあります。
(ウ)・・・・× 守秘義務に反します。
(エ)・・・・× 公益確保に反します。
(ウ)と(エ)が誤りであることは常識感覚でわかると思います。

戻る


2-2 技術士第二次試験を受験するには、次の2つの要件を満たす必要がある。

A技術士補となる資格を有する
 →技術士第一次試験に合格、又は、認定された教育課程※を修了
 ※その教育課程の修了が技術士第一次試験の合格と同等であるものとして文部科学大臣が指定したもの
B所定期間の技術的実務経験を有する
 →下図における経路1〜3を参照

上図が示すとおり、技術士捕となる資格を有する者は、一般に「修習技術者」と呼称されている。修習技術者が積む技術的実務経験については、「修習技術者のための修習ガイブック」が示されており、その中で最も大きい括りとして、「専門技術能力」、「業務遂行能力」、そして「行動原則」の3つが基本修習課題とされている。(下表参照)

表.基本修習課題の整理

基本修習課題 必要とする能力 修習の場
専門技術能力 ・基礎技術知識および理解力
・専門分野における技術知識、計画、設計、応用能力
主に企業等組織内部における専門教育、訓練
業務遂行能力 ・計画および設計
・リーダーシップおよびマネジメント
・コミュニケーション、国際的な適応力
企業等組織内部および技術者協会等の研修による体系的な学習、教育、訓練
行動原則 ・専門職技術者の社会的責任(技術者の行動原則、社会、環境、安全への配慮) 企業等組織内部および技術者協会等の研修による体系的な学習、教育、訓練

次のア)〜オ)の中に、修習技術者の基本修習課題の1つである「行動原則」の達成目標として正しいものがある。(1)〜(5)の中から正しいものの組合せを選べ。

ア)業務遂行に係わる法規を理解し遵守する。
イ)専門とする業務を、自立して遂行できる技術知識を習得し経歴を積む。
ウ)所属する組織において、リーダーシップを発揮し目標を達成する。
エ)倫理観を備え、業務遂行過程で倫理的判断を下しその責任を負う。
オ)定めた目標を達成するための、業務の計画、設計を実行し達成する。


(1) ア、イ  (2) イ、エ  (3) ウ、オ  (4) ア、エ  (5) イ、オ


---------
正解は4
---------

行動原則は、業務目標遂行や能力発揮といったことではなく、コンプライアンスと倫理です。イ、ウ、オは専門技術力や業務遂行能力に分類されます。

戻る


2-3 医師や弁護士と同様に、技術業も専門職業(profession)の1つと見なされ、技術者は専門職の倫理に従って行動する。専門職に関する次の記述のうち、適切でないものを選べ。

(1) ある専門職業に入るには、かなりの期間の訓練が必要で、その訓練は知的な性格のものでなければならない。多くの職業が広範な実習と訓練を必要とし、実務的な技量を必要とするが、専門職に必要とされる訓練の焦点は、実務的な技量よりも知的な内容におかれる。専門職の知識と技量は1つの理論体系に基づいている。

(2) 技術業は専門職として免許され、登録されたりすることなく行うことができるので、医者、弁護士などとは違って境界領域に属する。それでも、技術業が専門職として区分されるのは、正規の訓練を必要とし、特別な専門技術が重要な役割を果たしているからである。

(3) 専門職の公衆に対する倫理規程がある。これは専門職の行動において、公衆が期待していることをまとめている。その中で「技術者は、依頼人又は契約者との利益を専門職の第一の責務と考えるべきで、この義務に反する行動は回避すべきである」と規定されている。

(4) 技術者はその専門職の義務の遂行において、依頼人や契約者との義務の遂行とともに、公衆の安全、健康、及び福利に対する義務も持っている。

(5) 最近、技術者の行動で最優先すべきことは、公衆の安全、健康、及び福利に対する義務であるという考えが浸透してきている。

---------
正解は3

---------

依頼人や契約者ではなく、公衆の利益を第一に考えるべきです。

戻る


2-4 産業界や研究機関等において、研究成果の公表に関する基本的認識が欠けていると思われる事例がある。技術倫理協議会は12の学協会が参画している団体であるが、2008年3月に研究者・技術者が論文作成するにあたっての指針をまとめている。研究・技術論文作成に対する次の考え方のうち、適切でないものを選ぺ。

(1) 研究が科学的であるためには、研究結果の客観的検証が必要で、研究の経過や手法、取得データなどに関する記録は保存しておかねばならない。

(2) 学術的な研究論文は、成果のオリジナリティと学術的・技術的価値が重要で、新しさを主張するとともに、研究の成果を社会共通の財産として還元することを目的としている。

(3) 研究論文の著者に関して、内容について応分の貢献をした人は連名者にする必要がある。連名者は論文の内容に関し、正確さや有用性、先進性などの責任を負っており、論文の内容を説明することが求められる。これらのことが可能でない人を連名者にすることは適切でなく、謝辞等で触れるのが適当である。

(4) 研究成果は再現性が基本要件で、基本データのねつ造や改ざんがあれば再現が不可能になる。ただし、説明などの都合で、結論と矛盾するあいまいなデータを適宜取捨選択することは認められている。

(5) 学術研究論文では先発表優先の原則があり、著者のオリジナルな内容であることが求められる。先人の研究への敬意を払うと同時に自分のオリジナリティを確認し、主張する必要がある。他人の研究成果の盗用は最も忌むべき行為で、引用には、引用箇所を明示して、原著作者の名前を明記する。


---------
正解は4
---------

恣意的なデータの処理は避けるべきです

戻る


2-5 技術士第二次試験のロ頭試験では、次の5つが試問される。
    i経歴及び応用能力
   A体系的専門知識
   B技術に対する見識
   C技術者倫理
   D技術士制度の認識その他
 ロ頭試験の合格基準は、これら5つの試問事項それぞれの得点が全て配点の60%以上であることとされている。
 今後とも現行の口頭試験の方法に変更がないものと仮定した場合、次のア)〜エ)の中に、技術士を目指すロ頭試験受験者のモラルとして望ましくないものがある。(1)〜(5)の中から望ましくないものの組合せを選べ。

ア)次週に同じ技術部門のロ頭試験を受ける同僚に頼まれたので、既に受けたロ頭試験の様子や試験官に聴かれた質問などを全て教えた。

イ)所属する組織が受験者支援を組織的に行っている。同じ口頭試験を受ける受験者のために、ロ頭試験の内容を報告するよう事前に求められていたので、全て報告した。

ウ)所属する組織が受験者支援を組織的に行っている。同じ口頭試験を受ける受験者のために、口頭試験の内容を報告するように事前に求められていたが、組織的な試験妨害になる可能性があることが気になり、報告を断った。

エ)所属する組織が受験者支援を組織的に行っている。ロ頭試験が全て終了した時点で、来年度の受験者支援のための情報提供を求めてきたので、試験内容を思い出せる限り担当者に報告した。


(1) ア、エ  (2) イ、エ  (3) イ、ウ  (4) ア、イ  (5) ア、ウ

---------
正解は4
---------

試験実施中は公平を期するために内容を漏らすべきではありません。終了した後は(エ)のようにこの限りではありません。

戻る


2-6 守秘義務とは、一定の職業や職務に従事する者、従事した者に対して、法律の規定に基づいて特別に課せられた、「職務上知った秘密を守る」べき法律上の義務のことであり、公務員、弁饅士、医者、技術士など多数の職業において、法律によって定められている。これら法律上の守秘義務を諜せられた者が、正当な理由なく、職務上知った秘密を漏らした場合、処罰される。よって、技術士は法律上、技術士資格を持たない技術者とは明らかに違う。
 技術士の職務上知り得る情報に関するア)〜エ)の説明について、正しいものは○、誤っているものは×として、適切な組合せを@〜Dの中から遷ぺ。

ア)職務上知り得た営業に関する情報は、守秘義務の対象になる。
イ)職務上知り得た技術に関する情報は、守秘義務の対象になる。
ウ)職務上知り得た生産に関する情報は、守秘義務の対象になる。
エ)職務上知り得た個人に関する情報は、守秘義務の対象になる。。

(ア) (イ) (ウ) (エ)
(1)
(2) ×
(3) ×
(4) ×
(5) ×

---------
正解は1
---------

全て正しい記述です。

戻る


2-7 次の技術者Aと技術者Bの対話において、[ア]〜[エ]に入る語句の組合せとして、適切なものを@〜Dの中から選べ。

A: 今日は、倫理規程について情報の交換をしようか。
B: インターネットで調べてみましたが、近年、多くの学協会が倫理規程や倫理綱領、さらには各種宣言を公にしていますね。
A: 何か共通の特徴のようなものはあるのかな?
B: 倫理規程の多くは、「公衆の安全、健康、福利を最優先する」という全米プロフェッショナル・エンジニア協会(NSPE)の倫理規程と類似した文言を採用しているようです。
A: つまり、その文言が技術者倫理の要であると考えられているということかな。
B: そうかもしれません。しかし、実際に技術者倫理を根付かせようとするときには、日本の社会的、制度的な特徴をよく考えておかなけれぱならないようです。
A: どのようにかな?
B: まず、従来、日本の学協会の多くは[ア]というよりは[イ]であったということです。日本工学会のホームページを見てみると約100の正会員(学協会)が挙げられていて、その英語名称にEngineer(s)が含まれているのは、数えてみると15団体程度に過ぎないようです。つまり、日本の学協会は民間の「エンジニア」を主たる対象として形成されてこなかったと考えられるわけです。
A: でも、土木学会の英文名称はJapan Society of Civil Engineersであり「engineers」という用語が入っているし、この学会では早くから倫理規程がつくられていたと聞くが。
B: そういう学会もありますが、最近まで倫理規程を設けていなかった学協会も多くあります。そして日本の学協会の元来の[イ]という性格のゆえに、倫理規程をつくっても、民間の技術者にはなかなか普及しにくいのではないかと、考えられるわけです。
A: なるほど。そういう意味では日本では[ウ]倫理のほかに、[エ]倫理も大切になってくるのだろうね。
B: そうだと思います。現場で働く技術者に普及しなくては意味がないわけです。他の問題としては、米国では技術者倫理はプロフェッショナルの倫理として理解されていますが、日本では、[ウ]をプロフェッショナルとして理解する伝統が浅いという点があるようです。
A: 僕は白分はプロだと思って仕事をしているのだが。
B: いや、今ここで、プロフェッショナルとかプロフェッションというのは、自分がプロであると思っているかどうかではなくて、社会からプロフェッショナルとして認知されているかどうかという問題として考えてください。
A: では、さしあたり、そうしておこう。
B: 西洋では医師、弁護士、神父が伝統的にプロフェッショナルであるとされていました。その後、米国では技術者もまたプロフェッショナルとして団体を形成してきました。一方、日本ではいまだ技術者をプロフェッショナルとして、あるいは技術業をプロフェッションとして捉えるまでには至っていないという見方があるわけです。
A: そうなのか。でも、日本においても徐々に、プロフェッショナル化は進んでいる、あるいは目指されていると見ることもできないだろうか。
B: はい。たとえば、社団法人日本技術士会は、平成19年1月1日こ、「技術士プロフェッション宣言」を制定しています。プロフェッションの元の意味は、西洋の、神に対してプロフェス(告白する)ということに由来するようです。今のプロフェッション宣言で言われる「プロフェッション」という概念には次の4つの特質があると説明されています。
   1.教育と経験により培われた高度の専門知識及びその応用能力を持つ。
   2.厳格な職業倫理を備えている。
   3.広い視野で[オ]する。
   4.職業資格を持ち、その職能を発揮できる専門職団体に所属する。
A: なるほど。こうしたブロフェッション化が、今後どの程度、普及するかはその動向を見守らなければならないね。
B: それと同時に、先ほど言われたように、[ウ]倫理と[エ]倫理との関わりも今の日本では考えていかなければならないでしょうね。

(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ)
(1) 職能団体 学術団体 経営者 技術者 業務を独占
(2) 学術団体 職能団体 技術者 企業 業務を独占
(3) 職能団体 学術団体 技術者 企業 公益を確保
(4) 学術団体 職能団体 技術者 企業 公益を確保
(5) 学術団体 経済団体 企業 技術者 公衆の安全を最優先

---------
正解は3
---------

文章の流れから少なくとも(ア)と(イ)は常識感覚でわかります。また(オ)もわかりますから、(3)以外ありえません。

戻る


2-8 現在、多くの企業や組織が倫理の道具性を認識するようになり、「倫理プログラム」と呼ばれる活動の一環として、倫理規程・行動規範等を作成し、それに準拠した行動をとることを求めている。ア)〜オ)の説明に倫理規程・行動短縮等制定の狙いに含まれるものは○、含まれないものは×として、適切な組合せを@〜Dの中から選べ。

ア)一般社会と集団組織との「契約」に関する明確な意思表示
イ)集団組織のメンバーが目指すべき理想の表明
ウ)倫理的な行動に関する実践的なガイドラインの提示
エ)集団組織の将来メンバーを教育するためのツール
オ)集団組織の在り方そのものを議論する機会を提供するためのツール

(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ)
(1)
(2) ×
(3) ×
(4) ×
(5) ×

---------
正解は1
---------

全て正しい記述です。

戻る


2-9 技術者には科学技術のもたらす危害を防ぐ大きな使命があり、事故に対する技術者の社会的責任が問われている。最近の事故や事件に関する次の記述のうち、適切でないものを選べ。

(1)JR福知山線脱線事故の直接原因は、半径304mのカーブに約116 km/h の速度で突入した運転士のスピードの出し過ぎである。運転士は前駅でのオーバーランの結果生じた運行の遅れを取り戻そうとしてあせっていたものと推察される。再発防止のためには、ヒューマンエラーを防止するための教育が特に重要である。

(2)JCOの臨界事故は、「臨界安全形状に設計されていない沈殿槽に臨界量以上のウランを合む硝酸ウラニル溶液を注入したこと」が原因である。これに関し、事業所長、製造部長、核燃料取扱主任者などが、決められた作業手順を遵守するように指導をしていなかったこと、また作業手順を遵守せずに作業をしたこと、作業方法の相談を受けた核燃料取扱主任者が専門家としての注意義務を怠ったことなどの業務上の過失責任を聞かれた。

(3)美浜原子力発電所3号機の配管破損事故の原因は、破裂箇所が点検リストから漏れており、長い間点検されていなかったことである。この事故の前に、当該箇所が点検リストから漏れていることが見つかっていたのに、その際に適切な対応がとられなかったことに対する関係者の注意義務が問われた。

(4)雪印乳業鰍ナ起きた集団食中毒事件の原因は、氷柱の落下による停電トラブルのために工程中の生乳の温度管理に不適切が生じたこと、低脂肪乳の原料に使われた脱脂粉乳中に規定を上回る菌数が確認されていたのに、それを使用したことである。これに関し基準を逸脱しているにもかかわらず、それを使用しても大丈夫と判断した工場長等の管理責任が問われた。

(5)年賀葉書の古紙配合率偽装が問題になった。日本製紙連合会は「古紙の配合率を上げることが、紙の強度や印刷の仕上がりに影響することを社会に説明してこなかった」と釈明した。このような事態に至ったのは、技術者が技術的には対応できないことを関係者にきちんと説明していなかったことに起因する。



---------
正解は1
---------

直接的な原因はスピードの出しすぎですが、さらにその原因は不注意などのヒューマンエラーではなく、運行の遅れなどを責める日勤教育等の安全より利益を優先していた会社経営にあります。したがって、会社経営方針・体質を変えないと根本的な事故防止にはなりません。

戻る


2-10 工業製品の寿命はその部品に加わったエネルギーの総量に関係するものが多い。運動部品は磨耗により許容限界寸法に至り部品交換を行うし、樹脂製部品で熱や紫外線などの影響を受ける部品は樹脂の内部で分子結合の達識の切断が進み、強度低下や絶縁劣化で設計上の限界に至り機能を停止する。非常に大まかであれば寿命は推定がつき、産業界では償却や安全のために機械の寿命は意識されている。しかし、家庭用の量産機器では常に新機種が作り出され、機械は寿命になる前に買換え、廃棄が行われ寿命を意識することが無くなってきている。
 この状況の中で30年以上使われた家庭用扇風機のモーターの絶縁劣化が進み火災を起こした。
 家庭用電気機器のメーカーの技術者は今後どうすればよいか。ただし、消費者保護を目的としたPL法においてもメーカーに無限責任を要求しているわけではない。また、消費生活用製品安全法では、消費生活用製品の販売者が重大製品事故を知った時は、製造メーカー又は輸入事業者に通知し、それを知った製造メーカー又は輸入事業者は10日以内に経済産業省に報告しなければならないとされている。
 ア)〜オ)の説明について、正しいものは○、誤っているものは×として、適切な組合せを(1)〜(5)の中から選べ。

ア)扇風機の設計寿命は15年程度とされているから、30年使い続けるのは好ましくない。使用者の認識不足に対してメーカーは正しい使用方法の普及活動を行うべきである。

イ)たとえ何年使おうとも、常識的に使用者は電気機器が燃えるとは思わない。不良品でなくともメーカーが全ての責任を持つ必要がある。

ウ)機械は必ずいつかは壊れるものであるから、一定期間が過ぎたら安全に壊れる設計が理想である。

エ)扇風機やヒーターのように使わない時期がある機械は、寿命を期間では決めにくいのでメーカーは目安となる寿命を知らせるべきである。

オ)家庭用電気機器は技術の進歩が達いので、一定期間使えばまだ動いても新しい機器に買換えるのが普通であり、メーカーは何も行動を起こさない。

(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ)
(1) × ×
(2) ×
(3) × ×
(4) × ×
(5) × ×

---------
正解は5
---------

両極端な意見は間違っていることが多いといえます。というか常識感覚でわかると思います。

戻る


2-11 工業製品は品質の維持、安全性、互換性、共通性など様々な理由により、JIS(日本工業規格)に代表される基準が定められているものが多い。しかし、これらの基準は法や規則と違い強制的に適用するのではないため罰則は無い。
 2007年5月に、ジェットコースターの運行中に事故が起きた。直接の原因はジェットコースターの車軸の破損である。ここでは、ジェットコースターの運転に当たっての点検作業において車軸の定期的な検査は行われていなかった。また、事故後、他の遊戯施設のジェットコースターの点検作業内容を調査したところ、車軸の定期的な検査が行われていない施設がかなりの数に及んだ。
 JIS A1701には遊具についての規定があり、その中に車軸の探傷試験(傷や材料欠陥を調べる非破壊試験の一種)を毎年実施するように定められている。
 次のア)〜オ)のうち、遊戯施設のジェットコースターの管理責任者が取るべき行動として正しいものは○、誤っているものは×として、違切な組合せを(1)〜(5)の中から違べ。


ア)今まで故障や事故になったことも無く、他の施設でも定期点検の中で車軸の探傷試験を行っていないので探傷試験は余裕のあるときに行う。

イ)車軸が損傷するとは考えられないし、探傷試験は自分ではできないので時間も費用もかかるから、指示があれば行うが、はじめから予算計上はしない。

ウ)JISに基準はあるが、JISはものの製作のための基準、メーカーに対する基準であり、購人者に対する基準ではないから、メーカーから何か言ってくるまで何もしない。

エ)何があっても絶対に安全な機械は無いので、機械は製造者のみならず使用者、運転者も注意が必要である。JISに検査の方法まで規定しているのであるから、最低限の基準と考えて車軸の定期的な検査を実施する。

オ) JISの内容は決められた基準でありそれ自体に拘束力は無いが、ほかにメーカーの運用マニュアルがあり、そこでJISに従うように記載があれば、いかなる状況でも決められたとおりに必ず行わなければならない。

(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ)
(1) × × ×
(2) × ×
(3) × × ×
(4) × × ×
(5) × ×

---------
正解は4
---------

常識感覚でわかると思いますが、基本的に無責任・他に責任を転嫁しているものは誤りです。

戻る


2-12 食品には賞味期限/消費期限の表示が決められている。
 賞味期限:すべての品質が十分に保持できると認められた期限で、比較的傷みにくい食品に表示されるもの。
 消費期限:腐敗などの衛生上の危害が発生する恐れがないとされる期限で、製造日を含めておおむね5日以内で品質が急速に劣化する商品に表示されるもの。

 賞味期限/消費期限は製品の種類、製造方法、保管条件等により異なるが、真の期間は製造技術者が最もよく知っているはずである。
 最近、生命に直接の影響を与えるまでに至らないまでも、賞味期限/消費期限に関する問題が起きている。この期限の決定と遵守について本来あるべき姿として、次のア)〜エ)のうち、正しいものは0、誤っているものは×として、適切な組合せを@〜Dの中から選べ。

ア)賞味期限があまり長いと新鮮さが無いように見えるので、味が変わる最小限の期間の1/10にしておき、表示期限が過ぎても再使用できるようにしておく。

イ)賞味期限/消費期限ともに、通常想定される使用条件においても安全である範囲になるように決め、わかりやすく表示する。

ウ)加工・輸送・保管等について、方法・時期・期間の全てを検討し、最も厳しい条件においても品質を維持できる期間を賞味期限とする。

エ)消費期限は季節や保管状況により腐敗などの衛生上の危害を防止する期限だが、新しい表示の製品のほうが価値があるので期限は短いほど良い。表示は店頭に配列可能な最短の期限とし、表示時刻が過ぎれば飼料等に使用可能な安全な品質のものでも直ちに廃棄する。

(ア) (イ) (ウ) (エ)
(1) × ×
(2) ×
(3) × ×
(4) × ×
(5) × ×

---------
正解は3
---------

(ア)・・・・× 表示が何の目安にもなりません。
(エ)・・・・× 逆に極端に走っており、経済性を無視するのも誤りです。

戻る


2-13 ある建設企業では、入社して3年目になる若手技術者A氏が設計した内容は、上司B氏が責任を持って十分にチェックする体制になっている。あるとき、A氏が現在手がけている設計の参考のため、過去に設計したものを利用しようとしたところ、重大な計算ミスが見つかった。このとき、次のア)〜オ)について、A氏がとる行動としてふさわしくないものの組合せを(1)〜(5)の中から選べ。

ア)B氏に、設計ミスがあった現在建設中の工事に対して、中止も含めて対策をとるよう依頼する。

イ)B氏が責任を持って遂行していることなので、そのままにする。

ウ)B氏に、設計ミスがあった現在建設中の工事に対して、中止も含めて対策をとるよう依頼したが、B氏は対策をとらなかったので、組織内の別の人に話し、対策をとるよう、B氏を説得してもらう。

エ)B氏に、設計ミスがあった現在建設中の工事に対して、中止も含めて対策をとるよう依頼したが、B氏は対策をとらなかった。それで、B氏を説得してもらうよう組織内の別の人に話したが、B氏は対策をとらないので、これ以上何もしない。

オ)B氏に、設計ミスがあった現在建設中の工事に対して、中止も含めて対策をとるよう依頼したが、B氏は対策をとらなかった。それで、B氏を説得してもらうよう組織内の別の人に話したが、B氏は対策をとらないので、社長に直訴する。



(1) ア、ウ  (2) イ、エ  (3) イ、ウ  (4) ウ、エ  (5) ウ、オ


---------
正解は2
---------

(ア)・・・・○ 当然の処置です。
(イ)・・・・× 会社として考えれば放置すべきではありません。
(ウ)・・・・○ まずは組織内で対処すべく努力が必要です。
(エ)・・・・× 放置してはいけません。組織内でできる限りの努力をする必要があります。
(オ)・・・・○ 組織内なのでOKです。もし社長も対応しなかった場合、組織外への公益通報に至ります。

戻る


2-14 大量生産では、同じ原料を使い、同じ装置で、同じ製造条件のもとで、同じ品質のものを再現性良く生産する。規格値をはずれたものは出荷できないが、製造過程では、規格値よりも厳しい管理値を設けるのが通常である。このような工場で製品を出荷するときの品質管理体制として、次のア)〜エ)のうち、正しいものは○、誤っているものは×として、適切な組合せを@〜Dの中から選x。

ア)同じことを繰り返して製造しているので、安定した製造ができた時点で検査はやめ、その後は、特に管理しない。

イ)同じ条件下で製造していても、統計的には、ばらつきがあるので、管理値にはずれるものが見つかったが、規格値に入っているので、生産ラインに関して、何もしない。

ウ)安定生産が確保できるまでは、全数検査する。

エ)全数検査はコストが上がるので、重要部品でも最初から抜き取り検査を行う。

(ア) (イ) (ウ) (エ)
(1) ×
(2) ×
(3) × ×
(4) × × ×
(5) × × ×


---------
正解は4
---------

(ウ)以外は誤りです。

戻る


2-15 次の技術者Aと技術者Bの対話において、[ア]〜[ウ]に入る語句の組合せとして、適切なものを@〜Dの中から遵べ。

A: 相談したいことがあるんだ。内部告発について一般的なことでいいから教えてくれないかな。
B: 問題が何であれ、まずは、君の会社の中で解決することが基本だと思う。君の会社のコンプライアンス体制はどうなっているのかな?
A: 「コンプライアンス、コンプライアンス」と上司はいつも言っているよ。ほかに、コーポレート・ガバナンスとか。この頃は[ア]という言葉もよく聞くようになったかな。コンプライアンスとの違いがどうもよくわからないけどね。上司は、カタカナ言葉やアルファベット文字をよく口にするけれど、どうも上滑りしているような気がしてね。
B: [ア]というのは、企業の社会的責任のことで、社会に対して企業が積極的に貢献すること。コンプライアンスというのは、狭い意味では法令遵守だが、本来の意味はもっと広くて、規則や規範を守ることを意味している。だから、[ア]は、コンプライアンスよりも、さらに積極的に社会に貢献しようという姿勢がある、ということかな。
A: そうなのか。すると、‥‥‥。困ったな。具体的には言えないんだ。
B: でも、いきなり内部告発というのは、お勧めしないよ。
A: 内部告発者を保護する法律はどうなっているのかな。日本には公益通報者保護法があったように思うが。通報したことによって解雇されたとしても、それは無効になるんだったね。通報は年間に何件ほどあるのだろうか。
B: 内部告発と公益通報は厳密には異なると思うけれど、それは置いておこう。内閣府の公益通報者保護制度ウェブサイトによると、この法律が施行された初年度、すなわち、平成18年4月1日から平成19年3月31日の1年間に、外部の労働者から全行政機関が受けた公益通報者保謹也に基づく公益通報は、受理件数は5,572件、調査に着手した件数が5,158件、措置を講じた件数が4,447件だったらしいよ。
A: そうなのか、思ったより多いじ々ないか。
B: この法律では「解雇の無効」のほかに、「労働者派遣契約解除の無効」と「不利益取扱いの禁止」という規定も設けられているんだ。
A: なるほど。
B: 注意すべきことは、[イ]
君の問題が、法令違反なのか倫理違反なのかは重要だと思うよ。いずれにせよ、まずは、社内の身近な人に相談してみることだね。
A: それでだめならマスコミに通報ということだな。
B: ちょっと持ってくれ。法律をよく確認しておいてよ。通報先によって保護要件が異なるんだ。通報先というのは、「企業などの事業者内部」「行政機関」「事業者外部、たとえば、マスコミ」に通報した場合に分けられていて、それぞれについて定めがあるんだ。特に外部通報については、「内部や行政に通報すると不利益な取り扱いを受けるおそれがある」とか「内部通報では証拠隠滅のおそれがある」とか「人の生命・身体への危害が発生する急迫した危険がある」その他といった、要件があるんだ。
A: 通報先に3つの区別があるわけだ。
B: そして、この法律によって保護される通報は、「不正が目的ではないこと」とある。つまり、私怨やいやがらせの通報は保護されないんだ。そして上の3つの区別のうち、「行政機関」と「事業者外部」に対する通報については、不正だと信じたことについて[ウ]がなくてはならないんだ。
A: [ウ]か‥‥‥どうすればいいのだろう。あの図面は‥・・‥。
B: ともかく、まずは内部で何とかすることをお勧めするよ。一般的なことだが、「人を動かす」ことが大切だろう。誰か相談する人はいないのか。
A: そうだな。まずは相談してみるか。

(1) ア;CSR
  イ;この法令は倫理違反に関する通報を含めて通報者を保護するということなのだ。
  ウ;信ずるに足りる相当な理由

(2) ア;CSR
  イ;この法令によって通報者が保護されるのは、法令違反に限られるということなのだ。
  ウ;決定的書類

(3) ア;MOT
  イ;この法令は倫理違反に関する通報を含めて通報者を保護するということなのだ。
  ウ;具体的被害

(4) ア;CSR
  イ;この法令によって通報者が保護されるのは、法令違反に限られるということなのだ。
  ウ;信ずるに足りる相当な理由

(5) ア;MOT
  イ;この法令では、法令違反よりも倫理違反が優先されるということなのだ。
  ウ;決定的書類



---------
正解は4
---------
(ア)は知識問題ですが、MOTは技術経営ですから倫理とは別問題です。もっともCSRもMOTも知らなければわかりませんが。
(イ)も公益通報者保護法に関する知識が必要です。ただ、倫理と法律は自律と他律であり重なる部分の少ないものですから、そのあたりの正しい感覚があれば(2)か(4)以外は謝っていることがわかるでしょう。
(ウ)も法律知識ですが、「決定的書類」などというのは何となく違うとわかるのではないでしょうか。

戻る