技術士第一次試験 平成19年度 適性科目 問題と正解・解説

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適性科目解答案一覧
2-1 4 2-6 5 2-11 4
2-2 2 2-7 2 2-12 5
2-3 2 2-8 4 2-13 4
2-4 2 2-9 1 2-14 3
2-5 3 2-10 3 2-15 5

2-1 次の記述において、[ ア ]〜[ ウ ]に入る語句の組合せとして適切なものを(1)〜(5)の中から選べ。

 技術士は、1951年(昭和26年)、任意団体としての日本技術士会にはじまり, 1957年(昭和32年)に技術士法が制定されて国の制度になった。その後、1983年(昭和58年)技術士法の全面改正を経て長い間、技術士は一般の技術者とは違って、高等な資格のコンサルタント、という意識があった。
 2000年(平成12年)の技術士法改正は、技術者資格の国際間の相互承認、つまり技術士を国際的に通用する技術者資格とする趣旨によるものとされる。その際、日本技術士会では、技術士の英語訳を、
[ ア ]から[ イ ]に変更した。
 この改正はAPEC(アジア太平洋経済協力)との関係で推進された。すなわち、科学技術白書の平成12年版において、技術士制度を取り上げて紹介している中で、「APEC技術者資格相互承認プロジェクトをはじめとする技術者資格の国際的な相互承認の急速な具体化」という表現があることから、この改正が急がれた様子がうかがえる。
 この技術士法改正と同じ時期に、技術系の大学・高専の教育の資の保証を目指すJABEE(日本技術者教育認定機構)の制度が創設された。この認定は2001年にはじまり, JABEEが認定し文部科学大臣が指定した課程の卒業生は、技術士の第一次試験が免除されることになった。
 2000年の技術士法改正には、技術者資格の国際間の相互承認と並ぶテーマとして、
[ ウ ]の推進がある。すなわち、この改正で、技術士第一次試験の試験科目として新設された「適性科目」は「法第4章の規定の遵守に関する適性」に間するものであり、これが一般に倫理の科目として知られている。「法第4章の規定」では、「信用失墜行為の禁止」、「技術士等の秘密保持義務」、「技術士等の公益確保の責務]等々といった内容が規定されている。

(1) ア ; Professional Engineer (プロフェッショナル・エンジニア)
イ ; Civil Engineer (シビル・エンジニア)
ウ ; 職業の流動性
(2) ア ; Professional Engineer (プロフェッショナル・エンジニア)
イ ; Consulting Engineer (コンサルティング・エンジニア)
ウ ; 技術者倫理
(3) ア ; Consulting Engineer (コンサルティング・エンジニア)
イ ; Professional Engineeiパプロフェッショナル・エンジニア)
ウ ; 職業の規制
(4) ア ; Consulting Engineer (コンサルティング・エンジニア)
イ ; Professional Engineer (プロフェッショナル・エンジニア)
ウ ; 技術者倫理
(5) ア ; Civil Engineer (シビル・エンジニア)
イ ; Professional Engineer (プロフェッショナル・エンジニア)
ウ ; 職業の流動性

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正解は4
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技術士法改正前はコンサルティング、改正後はプロフェッショナルです。改正前の「コンサルティング」は文章からも読み取れます。これは、高度成長経済の時代を迎え、科学技術立国を志した我が国において制定された技術士法において、技術士は一般の技術者とは一線を画した、科学技術立国にとって必要な技術コンサルタントとなるべきハイレベルの技術者として認定された者でした。信用失墜行為が厳しく諌められるのはそういったことにもよります。
(ア)と(イ)がわかった時点で正解選択肢は(3)と(4)に絞られますが、(ウ)も常識的に技術者倫理であることがわかります。もちろん文章からも楽に読み取れます。

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2-2 技術士の義務に関する規範としては、次に掲げる技術士法第4章の規定がある。この規定を参考として、技術士等の持つべき姿勢に開するア)〜エ)の説明について、正しいものは○、誤っているものは×として、適切な組合せを(1)〜(5)の中から選べ。

技術士法第4章 技術士等の義務(技術士等とは、技術士及び技術士補を指す。)
(信用失墜行為の禁止)
第44条 技術士又は技術士補は、技術士若しくは技術士補の信用を傷つけ、又は技術士及び技術士補全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
(技術士等の秘密保持義務)
第45条 技術士又は技術士補は、正当の理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。技術士又は技術士補でなくなった後においても、同様とする。
(技術士等の公益確保の責務)
第45条の2 技術士又は技術士補は、その業務を行うに当たってば、公共の安全、環境の保全その他の公益を害することのないよう努めなければならない。
(技術士の名称表示の場合の義務)
第46条 技術士は、その業務に関して技術士の名称を表示するときは、その登録を受けた技術部門を明示してするものとし、登録を受けていない技術部門を表示してはならない。
(技術士補の業務の制限等)
第47条 技術士補は、第2条第1項に規定する業務について技術士を補助する場合を除くほか、技術士補の名称を表示して当該業務を行ってはならない。
2 前条の規定は、技術士補がその補助する技術士の業務に関してする技術士補の名称の表示について準用する。
(技術士の資質向上の責務)
第47条の2 技術士は、常に、その業務に関して有する知識及び技能の水準を向上させ、その他その資質の向上を図るよう努めなければならない。


ア)技術士等は、継続的な能力開発が必要であり、高度な職能を維持しなくてはならない。

イ)技術士等は、職務上の助言あるいは判断を下すとき、利害関係のある第三者または組織の意見をよく関くことが肝要であり、多少事実からの判断と差異があってもやむを得ない。

ウ)技術士等は、公共の安全と環境保全などにかかれる情報については、所属する組織等に速やかに公開するように働きかける義務がある。

エ)技術士等は、職務の遂行にあたり、その目的・方法・成果等について、相手の立場に立って分かりやすく説明する責任がある。

(ア) (イ) (ウ) (エ)
(1) ×
(2) ×
(3) ×
(4) ×
(5)

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正解は2
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(ア)・・・・○ 資質向上の責務の理念です。
(イ)・・・・× 中立公正を守り(技術士倫理要綱3)、事実に基づき判断します。(真実性原則)
(ウ)・・・・○ 公益確保責務です。(公衆優先原則)
(エ)・・・・○ これは常識的に正しいとわかります。

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2-3 2-2に掲げた技術士法第4章の規定に鑑み、技術上等が求められている義務・責務に関わるア)〜エ)の説明について、正しいものは○、誤っているものは×として、適切な組合せを(1)〜(5)の中から選べ。

ア)業務遂行の過程で与えられる情報や知見は、発注者や雇用主の財産であり、技術士等は守秘の義務を負っているが、依頼者からの情報を基に独自で調査して得られた情報はその限りではない。

イ)公衆の安全を確保する上で必要不可欠と判断した情報については、所属する組織にその情報を速やかに公開するように働きかける。それでも事態が改善されない場合においては守秘義務を優先する。

ウ)情報の意図的隠蔽は社会との良好な関係を損なうことを認識し、たとえその情報が自分白身や所属する組織に不利であっても公開に努める必要がある。

エ)機密を他に漏らしたり盗用したりすると、発注者や雇用主の正当な利益を大きく損なうので、業務上知り得た秘密を許可なくして他に漏らしてはならない。

(ア) (イ) (ウ) (エ)
(1) × ×
(2) × ×
(3) × ×
(4) × ×
(5)

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正解は2
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(ア)・・・・× 誰の財産かではなく、業務を通じて知りえた秘密は漏らしてはなりません。
(イ)・・・・× 公益確保を優先します。(公衆優先原則)
(ウ)・・・・○ これも公益確保責務に関することです。
(エ)・・・・○ 守秘義務の基本的な考え方です。

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2-4 瞬間湯沸かし器での一酸化炭素中毒事故やシュレッダー事故などが相次いだ問題を受けて、「消費生活用製品安全法」の改正法が平成19年5月14目から施行された。
 この法律によって、家庭用製品で死亡、火災など重大事故が起きた場合、製品の製造・輸入業者は、事故情報を10目以内に主務大臣に報告することが義務付けられた。主務対人はメーカーなどからの報告を受けてから原則として1週間以内に事故の概要を公表する。
 重大事故とは製品事故のうち危害が重大なものをさし、死亡事故、重傷病事故(治療に30目以上を要する負傷、疾病)または後遺障害事故、一酸化炭素中毒事故、火災などが例として示されている。
 この法律の対象は、製品の欠陥によって生じたものでないことが明らかなものは該当しない。しかし、一般消費者の目的外使用や重過失と考えられる場合は、本当に製品の欠陥によって生じた事故でないことを個別の事例によって判断する。
 消費生活用製品安全法では、「消費生活用製品」とは主として一般消費者の生活の用に供される製品と定義されており、家電製品、ガス機器、キッチン用品、衣料品などが考えられる。道路運送車両法で規制されている自動車や、食品衛生法、薬事法などで規制されている食品・食品添加物、医薬品、化粧品など他の法令で個別に安全規制が図られている製品は対象から除外される。
 以下の事例のうち、この法律の対象と考えられるものを選べ。

(1) てんぷら鍋を自動消火装置の付いていないコンロにかけたまま、その場を離れた時に火災が発生した。
(2) ホームセンターで売られている比較的安価なシュレッダーにおいて、家庭で子供が指を切断した事故。
(3) 包丁を用いて他人を傷つけ大怪我をさせた。
(4) レストランの厨房に設置されている業務用冷凍ケースから漏電があり、火災が発生した。
(5) 家屋の床下の柱が設計よりも細かったために、
【?】皇居して住人が重傷事故を負った。


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正解は2
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(1)・・・・× 重過失と判断されると思われます。その場合、コンロにかけられたてんぷら鍋の油に火が付くことは製品欠陥とはいえません。
(2)・・・・○ 当該法律が制定されるきっかけの一つとなった非常に有名な事故です。
(3)・・・・× 目的外使用であり、包丁で怪我をすることは、製品欠陥によるものとはいえません。
(4)・・・・× 業務用なので適用外です。

(5)・・・・× 建築基準法で安全規制が図られているので除外です。

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2-5 次の事例は実際にあった事件をヒントに、創作したものである。この事例において、一級建築士X氏の行動として考えられるア)〜オ)の記述について、倫理的に正しい行動を○、正しくないものは×として、適切な組合せを(1)〜(5)の中から選べ。

 ある日、一級建築士X氏にA設計社のY所長から電話が入った。X氏には、一つ気がかりなことがあった。それは、A設計社から請け負ったマンションの耐震設計で、地震荷重を間違え、小さい値を使ってしまったことだ。そのため鉄筋量が必要量より少なくなってしまった。しかし、プロが見ればすぐ気付くはずなので、A設計社から訂正の指示が来た時に、やり直せばいいと思っていた。
 「以前に頂いたマンションの耐震設計の件でしょうか。」と、X氏が間くと、Y所長は
 「そのマンションはすでに完成して、来月から入居がはじまるよ。あのマンションではなく2週間前にやってもらったホテルの耐震設計の件だ。もう少し経済設計はできないのかね。‥‥]
 気がかりだったマンションが完成し、入居がはじまることを知り、X氏はすっかり驚き、ホテルの話は上の空で、「私は、どうしたらいいのだろうか。‥‥」と悩んだ。


一級建築士X氏の行動として考えられるもの

ア)Y所長に強度不足を説明した。しかし、入居は予定通り行われようとしていたので、マンションの強度不足を検査機関へ通報した。それでも、事態は変わらないので国に通報する。

イ)Y所長に強度不足を説明した。しかし、入居は予定通り行われようとしていたので、マンションの強度不足を検査機関へ通報する。

ウ)マンションの強度不足は自らの誤りに原因があるので、Y所長にそのことを説明する。

エ)マンションの強度不足は自らの誤りに原因があるので、Y所長にそのことを説明する。しかし、それから先は自らの責任ではないので、事態の推移にかかわらず一切この件には口を出さないこととした。

オ)誤りを見過ごしたのはA設計社であり、A設計社の責任なので、Y所長にも何も説明しない。

(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ)
(1) × × × ×
(2) × × ×
(3) × ×
(4) ×
(5)

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正解は3
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問題発生の元々の原因はX氏のミスですから、(オ)は当然ながら非倫理的行動です。
(ア)〜(エ)は所長には説明しています。これは倫理的な行動です。したがって(ウ)は○です。
その先、(ア)と(イ)は公益通報に発展しています。ディジョージの公益通報の条件は、
 (1) 一般大衆に深刻かつ相当被害害が及ぶか?
 (2) 上司へは報告したか?
 (3) 内部的に可能な手段を試みつくしたか?
 (4) 自分が正しいことの、合理的で公平な第三者に確信させるだけの証拠はあるか?
 (5) 成功する可能性は個人が負うリスクと危険に見合うものか?
であり、(1)〜(3)が満たされれば公益通報は倫理的に許されます。また(4)、(5)も揃っていれば、今度は通報しないことが非倫理的であるとされます。
(1)は当然として(2)が所長への説明で、(3)についての記述が不十分気味ではありますが、公益通報は倫理的に許されると判断できます。ここで通報先ですが、公益通報者保護法によれば、監督官庁となっています。検査機関がどこかにもよりますが、これが監督官庁の窓口機関とすれば検査機関への通報は倫理的です。また検査機関が民間機関であれば、上記(3)に該当することも考えられます。いずれにせよ、検査機関へのつ法、(イ)は倫理的であると思われます。
ここで埒が明かなければ、検査機関が官庁であれ民間であれ、国への通報は妥当と判断されますから(ア)も○です。
対して(エ)は上記ディジョージの条件の(4)を満たすにもかかわらず通報を放棄しており非倫理的です。というか、公益確保という技術者倫理に背いています。
以上により、(ア)〜(ウ)は倫理的行動、(エ)と(オ)が非倫理的行動と判断されます。

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2-6 一般に使う貨物乗用車のモデルチェンジで積載量を増す必要があるが、軸受の寸法に制限があり、仕様の総てを満たす設計は出来ない。しかし実際に使われているほとんどの場合は設計許容値内である。
 公称積載量ギリギリやそれを超える使用がなされると走行中に軸受が破損し、事故となる可能性がある。一方、積載量の表示を競合他社に比べて下げると競争力が失われる。どうすれば良いか。ア)〜エ)の対応について、正しいものは○、誤っているものは×として、適切な組合せを(1)〜(5)の中から選べ。

ア)積載量を軸受の設計荷重そのものにとると余裕が全く無い。しかしギリギリの使い方をしない限り問題は起きないので、そのままにする。

イ)ギリギリの使い方をすると破損事故が起きる可能性がある。他社に負けて売上が落ちても設計に余裕をもてるように積載荷重の表示を下げる。

ウ)開発にコストおよび時間がかかって市場を他社にとられても、上司を説得し新規設計を行う。

エ)限界設計なので、使用条件を説明し暫定的に危険を知った上で使ってもらうように情報を公開し、次のモデルで直す。

(ア) (イ) (ウ) (エ)
(1) × ×
(2) × ×
(3) × ×
(4) × × ×
(5) × ×

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正解は5
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(ア)・・・・× ギリギリの遣い方をすると問題が起こるのですから事故の可能性を否定できず、公益確保の点で非倫理的です。
(イ)・・・・○ 倫理的行動です。利益は少なくなるでしょうが、それを公衆の安全より優先してはいけません。
(ウ)・・・・○ 倫理的行動です。

(エ)・・・・× 使用制限はあってもそれを知らずにギリギリの遣い方をするかもしれません。フールプルーフに対応しておらず、非倫理的です。

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2-7 次の技術者Aと技術者Bとの対話において、[ ア ]〜[ ウ ]に入る語句の組合せとして適切なものを(1)〜(5)の中から選べ。

A: 今から20年ほど前、正確には21年前かな、 1986年にアメリカと旧ソ遮でそれぞれ大きな事故があったけれど覚えているかな?
B: 僕は当時2歳だったので、事故自体の記憶はありません。でも、昨年はちょうど20年目ということで、その2つの事故の特集番組が組まれていたようですね。
A: で、どんな事故だったかな?
B: アメリカのコロンビア号の事故と、旧ソ遮のチェルノブイリ原発事故ですね。
A: いやいや、コロンビア号の空中爆発は2003年だよ。 1986年はチャレンジャー号の爆発事故だろ。
B: あ!そうでした。実はコロンビア号事故の方はよく覚えていまして、受験勉強をしながらテレビで見たのですが、工学部を志望する者として、事故原因がとても気になり、毎日、新聞を切り技いていました。今でも特っています。チャレンジャー号事故とコロンビア号事故には、打ち上げ時と、帰還時という違いがあるものの、事故原因に関しては類似した面があるという新聞記事がありました。
A: 受験勉強をしながらテレビか。まあいい。それで、どんな記事だった?
B: たしか、「沈黙の安全]ということが書かれていました。記事によると,NASAには、飛行管理者が技術者の上に立つ階級制が隠然と存在し、飛行管理者らが「安全だ」とする以上、技術者は不安をロにしにくく、結果として「安全」という見方が広がる。この点が、2つのスペースシャトルの事故に共通している、言い換えると、チャレンジャー号事故の時に指摘されていた悪しき風土が改善されていなかった、ということだったと思います。
A: そのとおり。コロンビア号事故調査委員会の報告書は、シャトルの安全な飛行の物理的問題の他に、事故の[ ア ]についてもかなりのページを割いているんだ。
B: あ、それは知っています。要するに、技術者だらけ、コロンビア号の左翼が焼け落ちて、宇宙飛行士たちの生命を奪う危険性について懸念を抱いていたけれど、NASAでは、安全情報に関して上層部との[ イ ]が妨げられていて、技術者による専門的意見の伝達が抑圧されてしまったというわけですね。
A: 君が切り技いた新聞記事ではそれを「沈黙の安全」と呼んでいるわけだ。
B: で、その2つの事故をチェルノブイリ原発事故と比べてみると何か大切なことが見えてくるのでしょうか?この原発事故でも「沈黙の安全」ということがあったのでしょうか?
A: アメリカと旧ソ連とではいろいろと事情は違うだろうがね。旧ソ連の場合、現場の技術者が懸念を抱いていたとしてもそれを表明するのは難しかったのではないだろうか。へたをするとシベリアでの強制労働が待っていたりしてね。もし彼らが上司や上層部に対して全く意見を述べられないのなら、あまりにも深刻な「沈黙の安全」ということになるよね。一方、アメリカそして僕たち日本の技術者は、現在、もっと自由な社会に住んでいて、そのことをとてもありかたく思う。会社にはそれぞれの社風とか文化とか伝統とか、いろいろと違いがあると思うけれど、我々は、旧ソ連の技術者と比べると格段に自由が保証されていると思うんだ。そして自由であるということは、よく言われることだが、それだけ[ ウ ]を伴うんだ。技術者として懸念を表明するという選択肢のない社会では[ ウ ]が技術者に押しつけられることがあっても、基本的には上の人間の[ ウ ]であると思う。しかし、だからといって自由主義社会が完全であるかといえば決してそうではなくて、例えば技術者が倫理的行動をとったときに不利益を彼らないような社会システムが、日本でももっと整ってほしいと思うけどね。
B: そうですね。今日はよい勉強になりました。[ イ ]を促進するためにも、今後もときどきこうした話をしましょうね。

(ア) (イ) (ウ)
(1) 組織的原因 妥協 快楽
(2) 組織的原因 意思疎通 責任
(3) 科学的原因 意思疎通 失敗
(4) 科学的原因 妥協 快楽
(5) 科学的原因 妥協 責任

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正解は2
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文章の流れから少なくとも(イ)と(ウ)は常識感覚でわかります。この時点で(2)以外ありません。

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2-8 科学技術が進歩するに従い専門分野は細分化され高度化されてきた。この結果、多くの入は科学技術を利用することの是非に関して内容をよく理解できないままに、専門家の判断に委ねざるを得ない状況になってきており、その成果の出来、不出来や欠陥の影響を受けることになる。一方、科学技術は社会に受け入れられることによって初めて貢献できる。
 そこで、公衆には科学技術に関してよく知らされた上で同意をするために「知る権利」がある。また、技術者は公衆が納得できるように説明する責任があり、そのための情報開示が求められる。
 上記に関連した次の記述のうち、不適切なものを選べ。


(1) 公衆は技術者に比べれば、科学技術の知識をほとんど持たない。公衆とは、よく知らされた上での同意を与える立場にないままに、その結果に影響される人々のことである。

(2) 技術者は自分の専門分野に関しては専門家であるが、自分の専門分野を離れると公衆である。つまり、公衆といわれる人は常に決まっているのではなく、ある人が一方の観点からは専門家であるが、別の観点からは公衆となる。

(3) 技術者が説明責任を遂行する努力をする一方で、公衆もまたそれを受け入れるための相応の努力をする必要がある。これが説明責任における対等の関係である。

(4) 技術者が技術上の説明を熱心にしても、公衆が納得しない場合はしかたがない。

(5) 技術者は他者に対する危害が及ばないように、公衆と使用者に対する説明責任を負っている。


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正解は4
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(1)・・・・○ 公衆の定義そのものです。
(2)・・・・○ 「公衆」を定義付けるときに忘れてはならないことです。
(3)・・・・○ これも重要な概念です。
(4)・・・・× 納得は強制できませんが、あきらめてはいけません。
(5)・・・・○ 公衆とユーザー(エンドユーザー)ということが重要です。

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2-9 最近の原子力発電や食品関係などに見られるように、企業の不祥事は内部告発が発端となって発覚することが多く、内部告発は社会の浄化に大きな貢献をしている。しかし告発者のその後の現実は厳しいものがある。そこで、公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇の無効等公益通報者の保護を図るために平成18年4月より公益通報者保護法が施行された。公益通報者保護法に関する次の記述のうち、不適切なものを選べ。

(1) 公益通報者保護法は、外部への通報を積極的に奨励する制度である。

(2) 内部告発後の企業の状況は食品会社の事例に見られるように厳しいものがある。企業は組織内での浄化を考え、きちんとした内部通報を受け入れる仕組みを作ることが重要である。

(3) 公益通報者保護法による通報者に対する保護は、外部に通報すれば、解雇等不当な取り扱いを受けると信じるに足りる相当な理由がある場合、通報しようとする証拠が隠滅され、偽造されまたは変造される場合、労務提供先より公益通報しかいことを要求された場合などの要件を必要とする。

(4) 書面により公益通報された事業者は、当該公益通報に対する是正措置をとった場合はその措置、通報対象事実がない場合はその旨を通報者に遅滞なく報告するように努めねばならない。

(5) 最近の事例を見ると、内部の不祥事が止めどもなく外部に公表されていく傾向が見える。企業におけるトラブルが発生した場合には、企業は連々かに情報を開示することが重要である。



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正解は1
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(1)・・・・× 積極的にではなく、やむをえず通報する場合に保護することを目的としています。
(2)・・・・○ 企業として社会的責任を果たす上で重要なことです。
(3)・・・・○ 法第3条の3の通りです。
(4)・・・・○ 法第9条の通りです。
(5)・・・・○ むずかしいことですが、それが可能な仕組み作りが重要です。

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2-10 技術者Aは市が公募している排水システムの改良プロジェクトに入札するため、自分の専門外の分野については、その専門家である技術者Bに口頭で依頼した。そして、Aはこの市のプロジェクトに落札できなかったが、BはAに対してそれまで行った業務の支払いを要求した。このとき、Aはどう対処すべきか。次のア)〜エ)について、技術者としてふさわしい行動を○、ふさわしくない行動は×として、適切な組合せを(1)〜(5)の中から選べ。

ア)Bの要求どおり支払う。
イ)Bと合意の上、減額して支払う。
ウ)口頭だけの依頼なので、支払わない。
エ)落札できなかったので、支払わない。

(ア) (イ) (ウ) (エ)
(1)
(2) × ×
(3) × ×
(4) × ×
(5) × × ×

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正解は3
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口頭であっても依頼しているのですから、対価の支払いは当然です。よって(ウ)と(エ)は×で、この時点で(3)か(5)です。
(ア)と(イ)の違いは価格をどうするかだけで、合意しておれば減額してもいいでしょうし、要求どおり支払ってもそれがいけないということはありません。

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2-11 あるA社の工場で機械を増設することになった。納入業者はB社に決まり、B社は機械の搬入、設置、運転指導後、機械をA社に引き渡す契約であった。
 このとき、次のア)〜エ)について、責任の有無として正しいものを○、誤っているものを×として、適切な組合せを(1)〜(5)の中から選べ。


ア)搬入の際にA社の入りロで通行人などに損害を与えた場合、機械はB社のものであっても、機械が運転されていたわけでなく、場所がA社の入りロなので第三者に対する賠償責任はA社にある。

イ)設置工事中の損失については、設置を担当しているB社に責任がある。

ウ)設置工事が完了し、機械を引き渡す前の機器の性能確認中に、A社の従業員が操作を行って機械が破損などした場合は、A社に責任がある。

エ)設置工事が完了し、機械をA社に引き渡した後でも、定常的に運転するまでの間に生じた機械の破損などの責任はB社にある。

(ア) (イ) (ウ) (エ)
(1) ×
(2) × ×
(3) × ×
(4) × × ×
(5) × ×

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正解は4
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(ア)・・・・× 搬入はB社が行うので、責任はB社にあります。
(イ)・・・・○ 設置はB社が行うので、責任はB社にあります。
(ウ)・・・・× 運転指導はB社が行うので、B社に責任がないとはいえません。
(エ)・・・・○ 引渡し後は基本的に運転するA社の責任です。ただし機械の欠陥による場合は別です。

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2-12 次の記述を読み、技師Aが、自分1人で判断する状況に置かれたとき、技師Aが負っている注意義務の対象となるア)〜エ)の注意義務について、正しいものは○、誤っているものは×として、適切な組合せを(1)〜(5)の中から選べ。

 ある事業所に、図−1に示す技師長、主任技師、技師という階層組織があって、それぞれの職務が決められていた。
 その階層組織は、固定的な職務の区割りに見えながら、実際には、事業のなかで日々変動する動的な実務があって、それを実情に合わせて配分されている。
 実際に遂行することになるのは、日々変動する“動的な”職務である。ある日、何か起きるかわからない。起きたらすぐに対応するためには、絶えず注意していなければならない。技術者は、自分の職務の周辺で、必要に応じて確認するなどの行動を起こすなどの注意義務を一般的に負っている。



ア)自分に割り当てられている業務
イ)目前にあることが自分の業務であるかどうかの判断が出来ない業務
ウ)主任技師Xが不在のときに発生し、技師長の指示から漏れたと考えられる業務
エ)通常は自分の業務ではなくても、緊急の場合、自分にできる業務

(ア) (イ) (ウ) (エ)
(1) × × × ×
(2) × × ×
(3) × ×
(4) ×
(5)

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正解は5
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技術者は、自分ができることである以上、全ての業務において注意義務を有します。

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2-13 ソフトウェアの契約書には、開封されたら使用されたか否かが分からないため、外箱に使用許諾契約書が書かれており、包装を破った人は許諾条件に同意したと見なされる契約書形態がある。ソフトの使用方法によっては他に影響の出る製品なので、契約書、説明書に注意を明記したが、製品梱包の過程でそれらは開封しなければ読めなくなってしまった。どうすれば良いか。ア)〜エ)の対応について、正しいものは○、誤っているものは×として、適切な組合せを(1)〜(5)の中から選べ。

ア)価格の安いソフトでもあるので、この程の契約書は開封したら契約内容を了承したと見なすのが普通であり、大きな問題にはならないので、開封したら使用者本人の意図とは関係なく、契約したものと見なし、相手にしない。

イ)契約書を別に梱包して、契約書を読んでから、本体を開封するかしないか選択できるようにする。

ウ)他に同様のソフトが無いので結局使うのであるから、開封したら契約内容を了承したと見なすとしても問題ない。開封後のトラブルを避けるためにもソフトは総て開封後返却無効とする。

エ)契約内容を別にインターネットで公開し、契約内容を確認できるようにする。

(ア) (イ) (ウ) (エ)
(1) × ×
(2) × ×
(3) × × ×
(4) × × ×
(5) × ×

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正解は4
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(ア)・・・・× インフォームドコンセントが成立していませんので誤りです。価格は関係ありません。
(イ)・・・・○ 問題ありません。
(ウ)・・・・× 「結局使う」と決め付けてはいけません。これもインフォームドコンセントが成立していません。
(エ)・・・・× インターネットを必ず読むとは限らないので、インフォームドコンセントが成立する保証がありません。

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2-14 次の技術者Aと技術者Bとの対話において、[ ア ]〜[ ウ ]に入る語句の組合せとして正しいものを(1)〜(5)の中から選べ。

A: 技術者の倫理とか技術者倫理という言葉を最近よく問くようになったね。倫理、倫理と言われるが、僕は、大切なのは倫理より、法律を守るコとだと思うんだ。“[ ア ]”こそが重要なんだ。
B: [ ア ]”という話は、英語の原義にもどって考えると、「規則や他者の要求に従うこと」という意味よ。つまり、法律だけを守っていても十分ではなくて、[ イ ]という意味での倫理を守ることも含まれるの。
A: そうなのか。でも、それは言葉の問題であって、現実には倫理よりも法律が大切だということには変わりはないだろ。僕らは技術者としてまず法律を守るべきなんだ。
B: そうかもしれないけれど、私が言いたいのは、現実に法律を守るためにも、倫理が必要だということなの。倫理観のない入が法律を破るわけでしょ。だからまずは広い意味での倫理教育が社内でも必要だと思うの。
A: だったらそれは、法律を守るためには倫理が必要だということであって、法律を守ることが目的に、倫理は手段になっているよ。ふつうは目的の方が大切だよ。手段は目的のためにあるのだから。
B: 書かれた法律を基準にして固定的に考えるからそうなるのよ。でも法律をつくるときには、まだ法律はないわけだから、法律をつくる入は、例えば[ イ ]を基礎にして立法するわけでしょ。立法というプロセスには倫理的思考が必要なわけで、法律を守る側にもそうした倫理的思考が要求されるように思うの。それに、世の中には法律の欠陥や網の目をくぐって悪いことをする人もいて、そうした人たちは法律的にはセーフでも、倫理的に問題があるのよ。
A: 君が言いたいことはまあ、だいたい分かったよ。で、君がいま挙げた例で、「法の網の目をくぐって悪いことをする人」というのは、「法律違反をする人」と比べるとどちらが悪いということになるの?
B: それはどちらも悪いわ。でも私が最近特に気になっているのは「法の網の目をくぐって悪いことをする人」なの。「法律違反をする人」の中には、法律を知らなかった人もいると思うの。法律違反だとは知らなかったという場合よ。でも、「法の網の目をくぐって悪いことをする」という場合、それはふつう、法律を知っていなければできない、あるいは、熟知してやっている、つまり、[ ウ ]であることがほとんどだと思うの。[ ウ ]であるだけこちらの方が悪質だとは思わない?
A: 確かに、それはあるなあ。近年、法の網の目をくぐった事件が、多数報道されて、倫理的には問題があるのではないかと言われているものな。

(1) ア ; corporate governance (コーポレート・ガバナンス)
   イ ; 社会規範
   ウ ; 故意
(2) ア ; corporate governance (コーポレート・ガバナンス)
   イ ; 経済性
   ウ ; 過失
(3) ア ; compliance (コンプライアンス)
   イ ; 社会規範
   ウ ; 故意
(4) ア ; compliance (コンプライアンス)
   イ ; 経済性
   ウ ; 寛容
(5) ア ; compliance (コンプライアンス)
   イ ; 経済性
   ウ ; 過失


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正解は3
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(ア)は最近よく言われる言葉であり、常識レベルです。
(イ)は法律の基盤となるものですから経済性のわけがありません。
(ウ)は「知っていてやる」のですから「故意」以外ありえません。

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2-15 相反するモラル上の責務と行動の問で、何を行うべきかを考える問題が相反問題である。相反問題について倫理的判断を下すうえで役立つ考え方に問するア)〜エ)の記述について、正しいものは○、誤っているものは×として、適切な組合せを(1)〜(5)の中から選べ。

ア)重みの大きい責務を優先することで、何をなすべきか判断が容易になることがある。例えば、安全優先か、利益優先か。

イ)ある汚染物質の排出基準を満たすうえで利用可能な技術には限界がある。そこで、新技術を開発して、排出抑制基準を満たす。このような方法は創造的中道法と呼ばれ、相反問題を解決する有効な方法の一つである。

ウ)次の3つの方法、すなわち、
 (1)他の代替案より多くの功利を生むか
 (2)費用に対して受益の大きいものを選ぶ
 (3)どの方針にみんなが従えば功利が最大になるか
 がある。これらは、功利主義の3つのテストと呼ばれるもので、複数の責務を総合的に判断し、とるべき行為を選ぶうえで有用である。

エ)「行為者として、受領者の立場・価値観・個人的感情に入れ替わっても自分の行為に同意できるか。」は、個人に対する尊重を確認する考え方の一つである。

(ア) (イ) (ウ) (エ)
(1) ×
(2) ×
(3) ×
(4) ×
(5)

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正解は5
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全てが正しい記述です。

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