適性科目解答案一覧 | |||||||
2-1 | 1 | 2-6 | 3 | 2-11 | 2 | ||
2-2 | 5 | 2-7 | 3 | 2-12 | 4 | ||
2-3 | 2 | 2-8 | 5 | 2-13 | 5 | ||
2-4 | 5 | 2-9 | 3 | 2-14 | 2 | ||
2-5 | 5 | 2-10 | 4 | 2-15 | 4 |
■注記■ここでは、技術士法と技術士倫理要綱、および下記文献を参考にしました。文中では「テキスト1」のように略称を使っています。これらは試験勉強のテキストともなりますので、可能なら入手してください。ただ、17年度はこれらテキスト中に「答え」が見つけられる事例は多くはありませんでした。
略称 | 書籍名 | 著者 | 訳編 | 発行所 | 参照 |
テキスト1 | 科学技術者の倫理〜その考え方と事例 | Harris,Pritchard&Rabins | 日本技術士会 | 丸善株式会社 | こちら |
テキスト2 | 環境と科学技術者の倫理 | Vesilind&Gunn | こちら | ||
テキスト3 | 科学技術者倫理の事例と考察 | 米国NSPE倫理審査委員会 | こちら | ||
テキスト4 | 大学講義 技術者の倫理入門 第2版 | 杉本泰治・高城重厚 | − | こちら | |
テキスト5 | 技術者倫理の世界 | 藤本温(編著) | − | 森北出版 | こちら |
テキスト6 | 技術士の倫理 | 日本技術士会倫理委員会 | − | 日本技術士会 | こちら |
課題1
これまで我が国を初めとする近代国家において、「科学技術の発展によってより豊かな社会を実現する」という考え方には社会的合意があったように思われる。工学の分野はまさにこの考え方に沿って地球の資源、とりわけ石油に代表されるエネルギーの大量消費のうえに現在の物質的に豊かな社会を実現させた。
一方、大量生産および大量消費に依存する我々の生き方は、環境面での地球の自然の浄化作用をはるかに超え、地球温暖化に代表されるさまざまな地球環境問題を生んでいる。
また、個々の些細な行動がさまざまに拡散し、めぐりめぐってまた自分自身に返ってくるという事実がある。地球上のほとんどのものは直接間接に連鎖し、ミクロ・マクロの循環系を形成している。このような視点に立てば、人間のあらゆる活動も、自然の摂理ともいうべき「循環」を基本に据えたものでなければならない。
さらに、人間も生態系の一部と認識した世界観、人間の進化の行く末を見極めようとする文明史的洞察など、これまでの科学技術には立脚しない社会変革の動きもある。文明進化の多様性を認め、自国にあった技術像、工学像のあり方を追求することも自然な姿である。
2−1 課題1の文章は、これまでの科学技術のあり方を振り返り、現在の時代の変化に、技術者がなにを感じ取るかについて述べている。その要約として、最も適切なものを次の中から選べ。
(1) いま我々が認識すべき時代感覚は、(1)有限的地球観、(2)循環思想、そして(3)文明進化の多様性、なのである。
(2) 今後の技術者が目指す方向は、(1)地球環境の保全、(2)循環調和型社会の形成、(3)それを支える社会システムの構築、なのである。
(3) 人間の根底の価値観が見直されており、これからの技術者の立脚すべき価値観は、(1)地球環境の脆弱感、(2)連鎖的思想、(3)自国文明優先感、なのである。
(4) 欧米流の社会経済的価値観は、(1)地球資源の収奪、(2)マクロの循環重視、(3)発展途上国への価値観の押し付け、なのである。
(5) 現在社会の持続的発展を図る要素は、(1)地球資源の有効利用、(2)循環型システムの活用、(3)先進国の価値観優先、なのである。
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正解は1
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基本的に、化石燃料の大量消費の上に成り立つ従来の科学技術社会の限界(宇宙船地球号)と、循環型社会の必要性、さらに多様な文明進化のあり方を認めて模索していくことの重要性を述べています。困ったことに、選択肢はいずれも抽象的であり、どれもがそれなりにうなずけるものばかりです。
選択肢(1)がもっとも掲載文の内容をストレートに要約しており、(2)と(3)は「間違いではないが、ちょっとニュアンスの違うものが含まれている」程度で、「取り方の違い」と言えなくもない内容です。
ですから、「どれが最も適切か」と言われれば(1)でしょう。(2)と(3)は「間違いではないけれど、(1)ほど適切ではない」という意味で△程度と思われます。「どれが適切化」と聞いている設問なら(1)〜(3)が全部正解で、出題ミスといえますが、「最も」と入っているので、「ミス」と言えるほどのものにはなっていません。
結局、極めてあいまいで、不適切な出題といえるでしょう。
(1) ・・・・○
文章の内容をストレートに要約しているのは(1)でしょう。
(2) ・・・・△
間違いとはいえません。(1)のような認識の上にたって、我々技術者が今後どうすべきかを考えると、(2)はまさにそうである、ともいえます。「社会システムの構築」が引っかかりますが、広く解釈すれば、文明進化の多様性を認識し、自国にあった進化スタイルを模索しようというコンセンサスが得られている社会の構築、という考えも含まれるでしょう。
(3) ・・・・△
「有限な地球」という考えは、脆弱感という取り方ができなくもありません。また、循環系の中にいるということは、連鎖にもつながります。そして自国独自の進化スタイルがあってもいいじゃないかという思想は、自国文明の優先感といえなくもないでしょう。ただ、異質なものへの寛容という視点でみれば、どちらかというと反目する面もあります。
(4) ・・・・×
これは、「地球資源の収奪」と「発展途上国への価値観押し付け」については、掲載文の認識の上にたって欧米価値観を厳しく見ればそのとおりです。ただ、「マクロの循環重視」というのは間違いですね。化石燃料大量消費社会には、「循環」という思想はありません。
(5) ・・・・×
「地球資源の有効利用」、「循環型システムの活用」はそのとおりでしょうが、「先進国の価値観優先」は、明らかに掲載文の思想に反します。
課題2
工学博士広井勇(1862〜1928)は、港湾および橋梁の分野における先駆的技術者であり、専門工学の確立者であった。
彼の出身は札幌農学校である。法学・農政学者の新渡戸稲造、植物学の宮部金吾らがいる。
《青年よ大志を抱け》という有名なことばをのこしたクラークは、わずか8ヶ月の在職で、広井らが第2期生として入学したときは、すでに去っていたが、真のピューリタンとしての彼の精神的感化は、広井・内村・新渡戸らに引き継がれたのである。
そこには、たとえ短い期間であったにせよ、たとえば吉田松陰が主宰した3カ年間の松下村塾がそうであったように、教えるものと教えられる者との人間的な信頼があり、精神的な結びつきがあった。師弟が一緒になって新しいなにものかをつくろうとする、いわば創造力の燃焼があった。
広井は、工事を担当すると、かならず率先してその第一線に立ち、請負人がやる以上に細かいところまで徹底的に工夫、改良、段取りなどを実行してみせた。ことに、まだ年も若く元気旺盛なときに担当した小樽築港工事(1897〜1908)の際には、朝は人夫などよりも早く現場に出て、夜は人夫よりも遅くまで事務をとり、あたかも請負人の世話役か何かのように立ち働き、けっして雇われている人だとか、官吏だとかいう様子はなく、尊大ぶるなどということが少しもなかった。当時の代表的実業家浅野総一郎は、小樽築港工事を視察し、半ズボン姿で甲斐甲斐しくコンクリートを練っていた広井をみて、ただちにその人物にほれこみ、生涯広井に対する尊敬の念を失わなかったという。
晩年彼は工学について次のように語っている。
「もし工学が唯に人生を繁雑にするのみのものならば、何の意味もないことである。これによって数日を要するところを数時間の距離に短縮し、一日の労役を一時間に止め、人をして静かに人生を思惟せしめ、反省せしめ、神に帰る余裕を与えないものであるならば、われらの工学にはまったく意味を見出すことができない。」
2−2 課題2の文章に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
(1) この文章の作者には、松下村塾や札幌農学校におけるような師弟関係の教育環境が、現代の日本にもありうるとの期待がある。
(2) 教える者と教えられる者との人間的な信頼、精神的な結びつきが、広井ら札幌農学校の動機の人びとの創造力の源泉となった。
(3) 広井はクリスチャンだったから「神に帰る」と言ったが、「人間に帰る」と言えば、普通の技術者にも当てはまる言葉である。
(4) 広井は、工学では、港湾および橋梁の分野で専門工学を確立する一方で、工事では率先して第一線に立つ、誠実な技術者であった。
(5) 小樽築港工事は、手作業でコンクリートを練った時代の産物であり、土木技術が高度に進歩した現代ではもはや何の意味もない。
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正解は5
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掲載文には、単なる師弟関係を超えた人間同士の信頼関係、自ら第一線に立ち行動すること、そして工学が貢献すべきものとして、効率化により、人の内面性を磨く時間を作り出すことがあるといったことが述べられています。
これも「最も不適切なもの」を選ぶので、「△より×が不適切」みたいな話になり、あいまい問題で、あまり良質とは言えませんね。
問題2−1とともに、非常に内面的な、そして抽象的な側面を持つ問題です。
技術者に「倫理」が必要であることは論を待ちませんが、これは「規範」です。意識レベルにあるのがモラルと常識(=共通意識)で、これが源泉となって規範が発生します。規範レベルには倫理と法があります。すなわち、モラルから倫理が、常識から法が発生します。なお、モラルと倫理をあわせて広義のモラルともします。(テキスト4p.4、テキスト6p.2など)
規範 ↑ 意識 |
倫 理 法 ↑ ↑ モラル 常 識 |
ここいおいて、規範は「人それぞれ」であるべきではありません。「社会の決まりごと」なのです。ですから、倫理は主に体系的に構築されていますし、それに基づき正誤判断ができます。ですから、○×式問題にすることもできます。
しかし意識レベルにあるモラルと常識は、「人それぞれ」の部分が多々あります。つまり多様性があります。だから、どれが正しくてどれが間違いという、「一つの価値観での正誤判断」にはなじまず、○×式の択一試験には向かないと思います。特に問題2−2は「プロジェクトXを見て、賛同しろ。」と言われているようで、出題者の独善性さえ感じてしまいます。出題者は、モラルと倫理、意識と規範の違いをちゃんと認識していないのではないかという気もします。
問題2−1で価値観の多様性を言いながら、単一の価値観による正誤判断をするあたりは、ブラックジョーク的でさえあり、モラルと倫理の区別がついていないという点で、適性科目始まって以来の愚問・悪問といえるでしょう。
こういった「愚問」が18年度以降はなくなることを期待したいと思います。
・・・・などと私が言っても仕方ないのですが。^^;
(1)・・・・△
それは確かに読み取れますが、明記されているものではなく、「正しい」とは断定できないでしょう。「そんなこと書いた本人しかわからんじゃないか!」と言われたら反論できませんからね。
(2)・・・・△
人間的な信頼・精神的結びつきがあったことは明記されていますが、それが創造力の厳選となったと言い切ることができるのでしょうか。つまり、「広井の創造力の源泉は、たとえばインフラ整備に対する強い使命感や、自己実現インセンティブなどではなく、師弟関係における人間的な信頼・精神的結びつきであった」と判断できるのでしょうか。元来技術者は、客観的証拠に基づいて判断していくべきものです。その点で、この選択肢に書いてあることは非常に主観的な判断ですね。「適切である」(○である)とはとても言えません。「明らかな間違いとは言えない」(×とは言えない)というだけです。
(3)・・・・△
広井がクリスチャンだなどとはどこにも書いてありません。ケチをつけるのでは決してなく、国家試験の択一問題として不適当です。「広井がクリスチャンである」ということを受験生の前提知識(それぐらい知ってなきゃ駄目だよ)とするなら別ですが。また、「人間に帰る」というのも非常に抽象的で、まるで哲学ですね。それでは仕事に忙殺される日々は「人間ではない」ということになります。ここでも価値観の押し付けが見られます。
(4)・・・・○
これはその通りです。掲載文の情報だけから判断できます。
(5)・・・・×
出題者が言いたいことは十分わかりますが、もし文末が「あまり意味はない」だったら、△です。「何の意味もない」とあるので、この掲載文に書いてあるようなことを伝える、という意味で間違いと判断できます。しかしこの選択肢も価値観の押し付けにすぎません。「最も不適切」なのはこの問題自体でしょう。
課題3 技術者と公衆の間で倫理問題に関する行き違いがおこる原因の一つとして、両者の倫理的姿勢の違いが考えられる。技術者は[ ア ]主義者になる傾向があって、「最大多数の最大幸福」という考え方をして、集合全体の正味の受益を重視し、その結果、個人に危害を及ぼすことの重要性を軽視しがちである。また、技術者は実証主義者だから、例えば定量的に提示できないとか、経験的なデータが少ないといったタイプの推論〜そういったものがまさに倫理問題に関わる推論なのだが〜は、無視したり退けたりしやすい。
つまり[ イ ]のものを無視する傾向がある。技術業へのこの〜公衆のための業務をする専門職業」というモットーを無視する〜自然科学的なアプローチは、技術者が「自分の仕事は公衆のニーズと密接に関係するものではない」と考えるのを容認することになりがちである。倫理的な見方のこのような相反は、技術者と公衆の相互関係に多くの問題を生じさせる根本的な原因であり、特に注意する必要がある。そのようにすれば、技術者は一般公衆がなじみやすい価値観に沿って仕事をすることになり、その結果、社会における技術者の価値を高めることになるだろう。
2−3 上記の[ ア ]に入る言葉として、最も適切なものを選べ。
(1) 経験 (2) 功利 (3) 原理 (4) 完全 (5) 教条
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正解は2
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「最大多数の最大幸福をもたらすものが善である」という考え方を功利主義といいます。(テキスト1p.87、テキスト4p.109、テキスト5p.95など)
2−4 上記の[ イ ]に入る言葉として、最も適切なものを選べ。
(1) 同形 (2) 異形 (3) 定形 (4) 有形 (5) 無形
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正解は5
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これは文脈から明確にわかるでしょう。
課題4 「ソフト・ロー(soft law)」には、適切な訳語がまだ定まっておらず、そのまま「ソフト・ロー」として使われているが、これは、国家による強制力がなく、自主的に順守されることによって実現されるルール(規範)をさす。ただし、企業や個人の[ ア ]に委ねられるものではなく、順守することによる、[ イ ]、順守しないことによる[ ウ ]、社会的批判がある。標準、行動規範(コード)、自主規制などがその例としてあげられる。順守しないと刑罰や行政処分を科される法律であるハード・ロー(hard
law)と対比してこう呼ばれる。ソフト・ローは、自主的規範(voluntary code)と呼ばれることもある。専門職業人の行動規範も、このように自主的に順守されることによって実現されるルールである。
2−5 上記の3ヵ所の[ ア ][ イ ][ ウ ]の中に入る言葉の組合せとして、最も適切なものを選べ。
ア | イ | ウ | |
(1) | 努力 | 自己実現 | 経済的制裁 |
(2) | 改善 | 効率向上 | 効率低下 |
(3) | 投資 | 利益向上 | 利益低下 |
(4) | 協力 | 規律向上 | 規律低下 |
(5) | 恣意 | 利益享受 | 経済的不利益 |
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正解は5
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ソフトローは倫理、ハードローは法と言うこともできます。
ア)・・・・恣意
倫理は規範、つまり「社会の決まりごと」であることを理解していれば、「人それぞれ」ではいけないことがわかります。
イ)・・・・利益享受
基本的に「いいこと」なのですが、どれも当てはまらないとはいえません。しかし(ア)で確定しているので、迷うことはないでしょう。
ウ)・・・・経済的不利益
自律的なものである以上、「制裁」などではないことはわかります。
課題5 スペースシャトル・チャレンジャー号爆発事故のケースでは、「当事者」である飛行士たちは、O−リングの安全性の問題について知らされていなかった。もしO-リングのリスクについて知らされていたら、彼らは果たして打ち上げに同意したであろうか。特に民間人のクリスタ・マコーリフはどのように反応しただろうか。一般に何らかのリスクを伴う行為を実行する場合には、そのリスクによる被害を受ける可能性のある本人に対して、そのリスクについて情報を提供し、本人がそれに納得していないかぎり、その行為は正当化されないであろう。これは、医学の場合に、危険を伴う手術に際して、患者の[ ア ]が必要であるのと同様の理由である。
2−6 上記の[ ア ]に入る言葉として、最も適切なものを選べ。
(1) ゼロ・リスク
(2) テクノロジー・アセスメント
(3) インフォームド・コンセント
(4) トレードオフ
(5) アカウンタビリティー
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正解は3
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サイトで散々書いてきた事例がもろに掲載されましたね。説明はこちらをお読みください。テキスト1p.182、テキスト5p.50などにも記載があります。
課題6 本年6月に、日本道路公団の鉄鋼製橋梁工事の発注に関わる入札談合が行われていたという事件が摘発された。橋梁メーカー各社が二つの談合組織を通じて、道路公団OBを工事発注の「配分表」を作成する仕切役として、長年にわたって入札の事前談合を繰り返してきたとされ、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で関係者が逮捕された。この事件に関して、次の記述がある。
ア) 長年にわたって、法律で禁止されている談合が継続的に行われてきたことは談合に関わった者の責任であり、法律で罰せられるのは当然である。
イ) 担当者は前任者から仕事を引き継いだだけで、自らの意思で違法行為を始めたわけではない。この行為はいわば社会全体の責任に帰するべきで個人の責任は問えない。
ウ) 一人一人の当事者が、自らの行動を倫理規定に則して判断していれば、このような問題は起きなかったと考えられ、倫理教育の重要さが改めて明らかとなった。
2−7 これらの記述の正誤を判定して、その正しい組合せを選べ。
(ア) | (イ) | (ウ) | |
(1) | ○ | ○ | ○ |
(2) | ○ | ○ | × |
(3) | ○ | × | ○ |
(4) | × | ○ | ○ |
(5) | ○ | × | × |
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正解は3
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トピックからの出題ですが、まだ捜査中で判決が出ていない事件に対して、処罰の妥当性や責任の所在に関する正誤判断をするとは、かなり思い切った(悪く言えば独善的な)出題です。率直に言って、取り上げるのは時期尚早と思いますが・・・・
ア)・・・・○
倫理の知識うんぬんではなく、感覚的にも当然です。
イ)・・・・×
コンプライアンスとは、こういう行為を許すものではありません。会社には違法行為を社員にさせない責任が、社員には違法行為をしない責任があります。
ウ)・・・・○
その通り。
課題7 以下の文章はある技術者協会の倫理規定の抜粋である。これを読んで次の設問に答えよ。
倫理規定:「自己の業務についてその意義と役割を積極的に説明し、それへの批判に誠実に対応する。さらに必要に応じて、自己および他者の業務を適切に評価し、積極的に見解を表明する」
2−8 都市中心部の地下鉄工事に際して、地下利用が集中化し、複雑化してきていることが問題になっている。このような中で、工事中のトンネルの上部が陥没し、地表の道路が崩壊する事故が発生した。A教授(技術士)は、事故原因の調査委員会の委員を技術専門家としての立場から依頼され、事故原因を特定する調査委員会に加わっている。上記の倫理規定に従うと、次のア)〜ウ)の態度について、技術専門家として正しい態度を○、正しくないと思われる態度を×とした場合、その適切な組合せはどれか。
ア) 事故の原因に関しては、これまでの技術基準には曖昧な点があり、必ずしも担当技術者個人の責任というわけではなく、全国で同じような基準で設計、施工されている。社会の不安を不必要にあおらないという観点から直接の原因を指摘する表現を避けて、事故は予見できない不可抗力が原因であったと主張することにする。しかし、基準をこのままで放置はできないので、今後、技術専門家としての検討を重ねて基準の更新を図ろうと思う。
イ) 技術的な問題点についてはこれまでの経験に基づく推論からある程度特定できたが、それを確かな証拠とともに証明するのは難しいので、原因については特定不可能ということにした。
ウ) 事故の原因は複合的なものであり、その原因の一つが技術者の過誤によるものと推定できた。自分も属する技術分野の社会的な権威が低下すると技術者集団全体として今後の仕事に差し支えが出るため、今回は想定以上の悪条件が重なったことに原因を求める。
(ア) | (イ) | (ウ) | |
(1) | ○ | ○ | ○ |
(2) | ○ | × | × |
(3) | × | ○ | × |
(4) | × | × | ○ |
(5) | × | × | × |
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正解は5
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ア)・・・・×
倫理規程に「業務を適切に評価し、積極的に見解を表明する」とありますので、誤りです。この種の事件は、積極的に情報を公開するのが原則です。
イ)・・・・×
推論からのある程度の特定(推定)であり、確かな証拠はないという内容を公開すべきであり、「特定不可能」という結論付けは、「適切な評価」という倫理規程に反します。
ウ)・・・・×
批判への誠実な対応をしようとしていません。倫理規程に反します。
課題8 技術士法並びに技術士倫理要綱に則り、次の技術士A、B、およびCの行動で、技術士としてふさわしい行動を0、ふさわしくない行動を×として、その最も適切な組合せを選べ。
2−9
ア) 技術士Aは、環境・上本関係のコンサルタント会社X社に勤務する技術者である。Aは、顧客であるK社から、業務の成果を取りまとめて国際的な学会の論文誌に投稿する論文を執筆する依頼を受けた。その際、調査や論文執筆にかかわる費用はすべてK社が負担するので、論文の著者名は、K社側の担当者であるSのみとするようにとの指示を受けた。上司に相談したところ、K社は、X社の最も重要な取引先であるので、K社の指示どおり論文を執筆するようにとのことであった。Aが書いた論文は、無事、国際的な論文誌に掲載されたが、そこにはAの名前はなかった。
イ) 技術士Bは、建築物の安全性などを検査する会社を経営している。BはL法律事務所から、築10年の賃貸マンションの検査をする依頼を受けた。このマンションは最近居往者から通常の生活に支障をきたす多くの欠陥があることが指摘され、これらの欠陥を修理することを求めて居住者はマンションの所有者を訴えていた。L法律事務所は、このマンションの所有者の顧問弁護士が所属する事務所であり、Bは所有者側の専門家証言を提供することが求められていた。Bは、守秘義務条項を含む契約書を結んだうえで、このマンションを検査したところ、居住者が指摘する欠陥以外に、建物の耐震構造に重大な欠陥があり、住民の安全が脅かされる可能性があることを発見した。しかし、これは依頼主の不利になる情報なので、守秘義務は絶対的なものであると考え、この事実をL法律事務所以外には報告しなかった。
ウ) 技術士Cは、大手重機械メーカーM社に勤務する技術幹部であった。Cは、M社のオーナー社長の強い意向を受けて始まった石油プラント設計システムソフトプロジェクトの開発責任者であった。このプロジェクトには10億円の開発費と5年の年月がかけられた。Cとその部下たちの献身的な努力の結果、この開発プロジェクトは無事成功し、画期的な設計システムソフトが完成した。しかし、社長の急死とともに社の方針が変った。同社のプラント設計のノウハウが他社に知られることを恐れて、このソフトは販売されないことになったのだ。そこで、Cは、部下散人を率いて独立し、このソフトの改良バージョンを販売する会社を設立した。その際、自らのアイデアで行った開発に開するソフト設計資料を大量にコピーして持ち出した。
(ア) | (イ) | (ウ) | |
(1) | ○ | × | ○ |
(2) | × | ○ | ○ |
(3) | × | × | × |
(4) | ○ | ○ | × |
(5) | × | ○ | × |
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正解は3
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技術士倫理要綱をおさらいしておきましょう。
技術士倫理要綱(昭和36年3月14日理事会制定、平成11年3月 9日理事会改訂) |
技術士は、公衆の安全、健康および福利の最優先を念頭に置き、その使命、社会的地位、および職責を自覚し、日頃から専門技術の研鑽に励み、つねに中立・公正を心掛け、選ばれた専門技術者としての自負を持ち、本要綱の実践に努め行動する。 (品位の保持) 1.技術士は、つねに品位の保持に努め、強い責任感をもって、職務完遂を期する。 (専門技術の権威) 2.技術士は、つねに専門技術の向上に努め、技術的良心に基づいて行動する。また、自己の専門外の業務あるいは確信のない業務にはたずさわらない。 (中立公正の堅持) 3.技術士は、その業務を行うについて、中立公正を堅持する。 (業務の報酬) 4.技術士は、その業務に対する報酬以外に、利害関係のある第三者から、不当な手数料、贈与、その他これらに類するものを受け取らない。 (明確な契約) 5.技術士は、業務を受けるにあたり、事前に相手方に自己の立場、業務の範囲などを明確に表明して契約を締結し、当該業務遂行上両者間で紛争が生じないように努める。 (秘密の保持) 6.技術士は、つねにその業務にかかる正当な利益を擁護する立場を堅持し、業務上知り得た秘密を他に漏らしたり、または盗用しない。 (公正、自由な競争) 7.技術士は、公正かつ自由な競争の維持に努める。 (相互の信頼) 8.技術士は、相互に信頼し合い、相手の立場を尊重し、いやしくも他の技術士の名誉を傷つけ、あるいは業務を妨げるようなことはしない。 (広告の制限) 9.技術士は、自己の専門範囲以外にわたる事項を表示したり、誇大な広告はしない。 (他の専門家等との協力) 10.技術士は、その業務に役立つときは、進んで他の専門家、あるいは特殊技術者と協力することに努める。 |
ア)・・・・×
要はゴーストライターですね。名誉をお金で売ってはいけません。倫理要綱6に反します。また公正業務原則あるいは同業発展原則(テキスト6p.6)に反します。
イ)・・・・×
公衆優先原則(テキスト6p.6)に反します。このような、公益確保の責務と守秘義務がトレードオフになった場合、契約の重要性や、「義務>責務だろう」といったことから、守秘義務>公益確保と判断される人もおられますが、原則は公益確保>守秘義務です。なお、このことは、守秘義務を犯しても公益確保を選択するという行動を、軽々しくとってもいいということには断じてなりません。
しかしこの選択肢、おそらく作成したのは7月〜8月でしょうが、そのわずか4〜5ヶ月先に起こることを見通したかのような問題ですね。^^;
ウ)・・・・×
ソフトのノウハウは頭の中にあるので、それを守秘義務等で制限するのは難しい側面がありますが、ソフト設計資料を持ち出すのは論外です。守秘義務に反します。「守秘義務を犯しても公益を確保する」というのとは全く違います。この行動の目的が利己であるからです。
課題9 新聞社が、河川沿いの住宅地の中の工場跡地に、印刷工場を新設する計画をたてた。朝刊と夕刊の印刷用紙のロール紙を、毎日、大型トラックで運ぶために道路沿いでは振動と排気ガスの問題が起きる。これによって迷惑を受ける沿道の市民団体が、工場建設予定地に隣接する河川を利用して、運搬船でロール紙を運ぶことを提案し、トラック輸送との比較調査をしたところ、交通渋滞の関係で運搬船の方が短時間で運ぶことができ、振動や排気ガスの問題も解決できることが分った。しかし荷揚げ設備の問題、護岸に聞する法規制などがあり、また台風などの影響で運搬船が使えず新聞が遅れる場合が想定されるなどの理由から、新聞社はトラック輸送に決定した。この印刷工場の技術者は、効率的な輸送の実施と交通渋滞による住民への健康被害問題の解決の両立を図る必要がある。
2−10 上記の文章に聞し、印刷工場の技術者としてとるべき態度で、次のア)〜エ)の態度について適切な態度を○、不適切な態度を×とした場合、その正しい組合せほどれか。
ア) 検討はしたが、トラック輸送に決まったので、振動や排気ガスの問題は法律に違反しない範囲で収め、それ以上のことはしない。
イ) 運搬船での輸送は、護岸利用などの法規則等の整備がされなければ、すぐには実施できないが、将来の状況変化における問題解決手段としての検討は続ける。
ウ) 設備費用がかかり住民の負担も残るが、トラック輸送と運搬船による輸送の併用にすることで上司を説得し、問題の再検討を行う。
エ) 運搬船による輸送によって、住民の問題は解決するし、省エネルギーにもなるので購読者に対する天候による新聞の遅れは許容してもらうことで計画を見直す。
(ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | |
(1) | ○ | × | ○ | × |
(2) | × | ○ | × | ○ |
(3) | × | × | × | ○ |
(4) | × | ○ | ○ | × |
(5) | ○ | ○ | × | × |
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正解は4
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二律相反(利益の相反)の問題です。これについてはこちらを参考にしてください。二律相反の最も適切な解決法と言われるものには、「創造的第3の解決法」があります。これは、どちらの利益のみを優先することもできないとき、両利益の要求事項のいくつかを取り込んだ中間的な第3の選択肢を取るというものです。
ア)・・・・×
これでは両立に対する努力を放棄したことになります。
イ)・・・・○
即時に解決できなくても、相反解消に向けて継続的に努力することが大切です。
ウ)・・・・○
「創造的第3の解決法」に近い、もっとも理想的な解決法の方向と思われます。臨時掲示板では、「住民負担が残るのは×」「勝手に決めちゃ駄目」などの意見があるようですが、「住民負担はゼロにして会社が全部かぶる」のは、健全な社会のあり方ではありません。また、「問題の再検討を行う」のであって、もう決めてしまっているわけでもありません。検討結果によって、たとえば平常時は船で運搬、天候不良などで運搬船が確保できないときはトラック運搬など、客観的な折衷案が出てくるものと期待できます。また、ここでの判断は、会社の経営者としてではなく、技術者としての判断の良否を問われているということもよく頭に入れておく必要があります。(経営者としては適切な判断でも、技術者としてはそうではない場合もあります)
エ)・・・・×
これでは両立になりません。いくら住民のためになるといっても、会社の利益や社会的責務を考慮しなくてもいいことにはなりません。
課題10 次の記述は、「公益通報者保護法」に関するものである。それぞれの記述を読み、その正誤を判定して正しい組合せを選べ。
2−11
ア) この法律の目的は、「公益通報者の保護を図るとともに、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかかる法令の規定の遵守を図り、もって国民生活の安定及び社会経済の健全な発展に資すること」である。
イ) この法律における「公益通報」とは、労働者が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的でなく、その労務提供先などにおいて、「通報対象事実」が生じたこと、または、まさに生じようとしている旨を、当該労務提供先や当該労務提供先があらかじめ定めた者、あるいは、勧告等をする権限をもつ行政機関などや当該通報対象事実を通報することがその発生やこれによる被害の拡大を防止するために必要であると詰められる者に通報することをいう。ただし、ここでいう「通報対象事実」とは、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかかる刑法などの法律によって規定される罪の犯罪行為の事実であり、環境の保全や公正な競争あるいは消費者の保護などにかかわる犯罪行為の事実は含まれない。
ウ) この法律は、公益通報をした一般職の国家公務員、裁判所職員、国会職員、一般職の地方公務員に対する免職その他不利益な取扱いの禁止についても適用されるが、派遣労働者については、適用されない。
エ) この法律は、書面により公益通報者から公益通報をされた事業者は、通報対象事実の中止や是正のために必要と認める措置をとったときはその旨を、通報対象事実がないときはその旨を、当該公益通報者に対し、遅滞なく、通知するよう努めなければならないことを定めている。
(ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | |
(1) | ○ | ○ | ○ | × |
(2) | ○ | × | × | ○ |
(3) | ○ | × | × | × |
(4) | × | × | ○ | ○ |
(5) | × | × | ○ | × |
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正解は2
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ア)・・・・○
法第1条に定められているとおりです。
イ)・・・・×
最後の部分が違います。環境の保全や公正な競争の確保、消費者の利益の擁護なども対象となります。(法第2乗)。
ウ)・・・・×
法第4条(労働者派遣契約の解除の無効)によって、派遣労働者にも適用されています。
エ)・・・・○
法第9条に、記載のとおりのことが定められています。
課題11 次の記述は、「個人情報保護法」の規定に関するものである。このうち正しいものを選べ。
2−12
(1) 個人情報とは、いわゆるプライバシー情報のことである。また、名刺や特定個人を識別できる遺伝子情報は、どちらも個人情報と考えられる。
(2) 顧客コードのように記号や数字の配列にすぎない情報は、個人情報から除外される。
(3) 組織の規模にかかわらず、すべての企業に個人情報保護法は適用される。
(4) 個人情報取扱業者は、個人情報を本人から書面で直接取得するときは、あらかじめ本人に対して利用目的を明示しなければならない。
(5) 個人情報取扱事業者が、個人データの取扱いを、他に委託する場合、その取扱いを委託された個人データの安全管理は、委託を受けた者の責任なので、委託元は監督を行う必要はない。
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正解は4
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(1) ・・・・×
個人情報とプライバシー情報は違います。
(2) ・・・・×
照合等により、容易に個人が特定できれば、個人情報です。
(3) ・・・・×
事業の用に供する個人データによって識別される人数が5,000人以下の事業者は「小規模事業者」とされ、法の適用除外となります。
(4) ・・・・○
その通り。個人情報取扱事業者の「5つの義務」のうちの1つで、法第17条(適正な取得)に定められています。
細かい話ですが、「個人情報取扱業者」ではなく、「個人情報取扱事業者」です。ただ、他が明らかな誤りなので、出題ミスとまでは言えませんが・・・・
(5) ・・・・×
法第20条(安全管理措置)に定められています。
課題12 次の記述を読み、その正誤を判定して正しい組合せを選べ。
2−13
ア)アメリカの内部告発制度は、州法などで内部告発者を保護する法律として定められている場合が多い。被用者が自らの属する企業の不祥事などを公的機関に通報したり、違法行為に対する反対表明などをしたことに対し、企業側が報復措置を行った場合に、従業員が民事訴訟を起こせることを規定した法律がある。連邦法では内部告発者保護法があり、企業改革広では、内部告発者保護を掲げた条文が盛り込まれている。
イ)日本の国家公務員倫理規定(政令)では、「職員が法又は法に基づく命令に違反する行為について倫理監督官その他の適切な機関に通知をしたことを理由として、不利益な取扱いを受けないよう配慮すること」とされており、内部告発者の保護に配慮されている。
ウ)日本の「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」では、「…事業者又は使用者がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反する事実がある場今においては、これらの者の従業者は、その事実を主務大臣又は原子力安全委員会に申告することができる。……事業者又は使用者は、前項の申告をしたことを理由として、その従業者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。」と定められており、内部告発者が保護されている。
エ)日本の公益通報者保護法では、公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇の無効等並びに公益通報に関し事業者及び行政機関がとるべき措置を定めることにより、公益通報者の保護が図られている。
(ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | |
(1) | ○ | ○ | ○ | × |
(2) | ○ | ○ | × | ○ |
(3) | ○ | × | ○ | ○ |
(4) | × | ○ | ○ | ○ |
(5) | ○ | ○ | ○ | ○ |
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正解は5
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ア)・・・・○
その通りですが、ちょっとマニアックですね。文脈から正しいだろうことはわかりますが・・・・
イ)・・・・○
その通りですが、「規定」ではなく「規程」です。この誤字を理由にイを×と判断し、(3)を選んだ受験生もいるので、本来は出題ミスとして処理すべきだとおもいます。
ウ)・・・・○
その通り。内部告発制度(公益通報者保護)に関しては原子力は先進です。
エ)・・・・○
その通り。
課題13 PL法では「『欠陥』とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当試製造物を引き渡した時期その他の当該製造特に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有するべき安全性を欠いていることをいう」と規定している。
肘掛けのない折りたたみ椅子に座ろうとした際に、金具がうまくかからなかったために椅子の脚が閉じ、そのときに椅子に添えていた指をはさみ、怪我をするという事故が発生した。
このときの製造業者に対するPL法上の損害賠償責任に関して、製遺物が欠陥品であるか否かについて、次の記述がある。
2−14 欠陥品についてのア)〜エ)の記述の正誤を判定して、その最も適切な組合せを選べ。
ア)折りたたみ椅子の使用者は自分の不注意で指をはさんだのであるから、製造業者に責任はない。
イ)金具をかけなくても椅子の形態になるのは、座ったときに金具がかからずに折りたたまれることかあり、設計上の安全性を欠いている。
ウ)折りたたみ椅子を組み立てるときに金具が十分かかっていなかったのであるから、組み立てた者の問題であり製造業者の問題ではない。
エ)肘掛けのない椅子に座る時には、椅子に手をかけることが通常に行なわれる。これは通常予見される使用形態であり、指をはさむのは欠陥品である。
(ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | |
(1) | ○ | × | ○ | × |
(2) | × | ○ | × | ○ |
(3) | ○ | × | × | × |
(4) | × | ○ | × | × |
(5) | × | × | ○ | × |
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正解は2
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ア)・・・・×
椅子に手を添えて座るという行為は、十分に通常の使用範囲ですから、責任はあります。欠陥があること、そしてそれでケガをしたこと、この2つがあれば、PL法適用条件は満たされます。
イ)・・・・○
その通りです。安全性が十分確保されないなら、それに関する十分な警告が必要です。
ウ)・・・・×
欠陥のある製品を製造した者の責任は免れません。
エ)・・・・○
その通り。警告がないことも「欠陥」であり、「警告書きがないのは欠陥品」と言えますから、正しい記述です。
課題14 東アジア共同体の創設を目指し日本が推し進める各国との自由貿易協定(FTA)を核とする経済連携協定の交渉が難航するなかで、フィリピンとは看護師の受け入れ人数で意見を調整中だ。交渉の先頭に立つドミンゴ・シアゾン駐日大使は、2005年7月、次のように語った。
看護師受け入れ話は私が大使として日本に最初に赴任した1993年から関係方面と殆めました。2度目の赴任のいまも交渉が続き、ようやく受け入れで基本合意しました。しかし、受け入れ数は200入と日本の人口に比べ少ない。
日本は変化に時間がかかる国だと承知していますが、社会の高齢化が進み外国人看護師や介護ヘルパーが必ず必要になる。日本は現実的な国なので、看護師不足が深刻になれば「お願いします」と頼まれると思う。フィリピンは若い国なので待てます。
フィリピン看護師の外国派遣は20年ほど前、オーストリア大使時代に私が始めました。当時のクライスキー同国首相がウィーンの病院に入院した時、世話をしたのが個人で出稼ぎに来ていた若いフィリピン入看護師(女性)たちです。
首相はいつも笑顔で優しい彼女らが気に入り「フィリピン人を大勢送ってほしい」と言う。私は早速、ウィーン市当局と看護師の受け入れ制度を整備し、年間200入を送り込んだ。以来、我が国は看護師の外国派遣を制度化し、日本へも働きかけているのです。
2−15 上記の文章に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
(1) 技術者資格の国際間の相互承認も、外国の看護師の受け入れも、大きな目で見れば、専門的能力のある人材の国際間の流動化の動きである。
(2) 看護師は交代勤務制を採用することが多く、業務の引継ぎが重要であり、日本語の習得レベルによっては問題が起きる懸念がある。
(3) 日本側は、厚生労働省や日本看護協会が、安易な受け入れは国内の医療や介護の水準低下を招くと主張した。
(4) 外国の看護師の受け入れは、日本の看護師の労働条件を低下させることにつながるので、職業選択の事由を侵害し、憲法違反の疑いがある。
(5) 専門職は、業務に関する知識や技能のほか、その業務上の対人関係において、優しさとか、思いやりといった資質が大切である。
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正解は4
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(1) ・・・・○
その通り。説明の必要はないでしょう。
(2) ・・・・○
その通り。業務内容の専門性・重要性が高くなるほど、こういった問題は重要視されねばなりません。
(3) ・・・・○
その通りですが、知っていなければならない知識かどうかは別問題です。問題文だけからは、この選択肢の正誤は判断できませんので、ちょっと適切さに書ける選択肢ですね。
臨時掲示板の中には、「安易な受け入れは国内の医療や介護の水準低下を招く」という主張が不適切であるという意見もありますが、その内容の適否ではなく、そういう主張があったという事実の正誤ですから、そのような意見はズレています。なお、この主張の中には、言語や文化の違いによるコミュニケーション不足から来るケアの不十分さも含まれているので、100%間違いと言い切ることもまた危険です。もちろん、このような主張の背景に既得権益維持という思惑が働いていないと言い切ることはできませんが・・・・
(4) ・・・・×
日本の看護師の労働条件低下とは言い切れません。日本の看護師が不足し、過酷な労働条件にあることはよく知られています。また、こういったことが憲法違反につながることはありません。
(5) ・・・・○
その通り。「ないと駄目」というものではありませんが、不必要なものでもありません。