技術士第一次試験 平成13年度 適性科目 問題と正解・解説

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適性科目解答案一覧
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課題1
 技術士等の義務に関する規範として,法律には技術士法第4章の規定があり,日本技術士会には技術士倫理要綱がある。次に掲げる技術士法第4章を読んで,問題1と2に答えよ。

技術士法第4章技術士等の義務(注1)
(信用失墜行為の禁止)
第44条
技術士又は技術士補は,技術士若しくは技術士補の信用を傷つけ,又は技術士及び技術士補全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
(技術士等の秘密保持義務)
第45条
技術士又は技術士補は正正当の理由がなく,その業務に関して知り得た秘密を漏らし,又は盗用してはならない。技術士又は技術士補でなくなった後においても,同様とする。
(技術士等の公益確保の責務)
第45条の2
技術士又は技術士補は,その業務を行うに当たっては,公共の安全,環境の保全その他の公益を害することのないよう努めなけれぱならない。
(技術士の名称表示の場合の義務)
第46条
技術士は,その業務に関して技術士の名称を表示するときは,その登録を受けた技術部門を明示してするものとし,登録を受けていない技術部門を表示してはならない。
(技術士補の業務の制限等)
第47条
技術士補は,第2条第1項に規定する業務について技術士を補助する場合を除くほか,技術士補の名称を表示して当該業務を行ってはならない。
2 前条の規定は,技術士補がその補助する技術士の業務に関してする技術士補の名称の表示について準用する。
(技術士の資質向上の責務)
第47条の2
技術士は,常に,その業務に関して有する知識及び技能の水準を向上させ,その他その資質の向上を図るよう努めなければならない。
注1 : 技術士等とは,技術士及び技術士補を指す。

2−1 技術士等の義務に関する説明として,適切でないものはどれか。

(1) 技術が社会に及ほす影響の大きさは,正の効果も負の効果も拡大する傾向にあるので,高等の専門的応用能力を備える技術士等には,専門職技術者としての責務が生ずる。

(2)
 専門的職業といわれる会計士や弁護士などは,技術士とは別の分野の専門家であるが,同じように専門的職業人としての義務がある。

(3)
 技術士等は,公衆の安全,健康及び福利を最優先とする技術士倫理要綱を遵守する限りにおいては,技術士法で定める義務から免れる。

(4)
 技術士等の義務は,専門職技術者としての義務であり,国際的に共通するものである。

(5)
 技術士等が,第4章に規定された義務を果たさなかった場合には,制裁を課されることがある。


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解答案:3
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(1)・・・・○ 今の社会は科学技術社会である。
(2)・・・・○ そのとおり。
(3)・・・・× 倫理要綱を遵守することは当然で、その上で義務があるのであって、これを免れるのは「やむをえない理由」(緊急避難など)がある時のみである。倫理要綱と技術士の義務とは決してトレードオフの関係にあるのではない。
(4)・・・・○ ややひっかけくさいが、システムとしてではなく理念として「万国共通」という意味ととれる。
(5)・・・・○ そのとおり。


ざっと読めば、(3)以外はそのとおりだとわかります。
トレードオフ(二者択一)のような印象を与えるややこしい選択肢文ですが、消去法で考えればOKです。

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2−2 技術士は,「一般的な職業人」ではなく,科学技術に関する「専門的な職業人」であるという社会の認識がある。このような専門的職業人の特質の説明としてふさわしくないものはどれか。

(1) 技術士は,実務能力とともに,社会や公益に対する責任を企業等の活動の前提とする旨の高い職業倫理を備えることが必要である。

(2) 技術士は,適切な教育を受け,専門的な技術業務を遂行するのに十分な基礎的知識を備えている。

(3) 技術士は,自らの判断で業務を遂行する能力をもつ一方で,個人の技量が業務の成果に与える影響が大きい。

(4) 技術士は,特定の業務の実施について権限を与えられると,その権益を守ろうとして,他の技術者を排除しようとする傾向がある。

(5) 技術士は,自らの判断で業務を遂行する能力をもたなければならないが,その能力の範囲を明確に認識し,業務遂行上必要な場合には,他の専門職の助力を受けることがある。


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解答案:4
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(1)・・・・○ 会社の利益より公益を優先する。
(2)・・・・○ このあたりが文科省の考え方の根本であり、ワシントンアコード加入の条件でもある。
(3)・・・・○ そのとおり。それゆえに技術的にも倫理的にも高度な資質が求められる。
(4)・・・・× これは人間の陥りやすい弱い面だが、それをできるだけ抑えないとダメ。
(5)・・・・○ そのとおり。名称表示義務にもつながる考え方。技術士倫理要綱の2にも「専門技術の権威」として明記されている。

※非常にわかりやすい問題ですが、技術士法の理念(求めている人間像)を正確に理解することが大切です。

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課題2
 次に述べる行動の中で,技術士としてふさわしい行動はどれか。ふさわしい行動を○とし,ふさわしくない行動を×として,問題3(ABC),問題4(DEF),問題5(GHI)の各群について,○と×の最も適切な組合せを選べ。

2−3

A)環境分野を専門とする技術士Aは,自分の出身地である地方都市X市が,新しい事業を開始するに当たり環境アセスメントのコンサルタントを必要としていることを,その市の市長を務める父親から知らされた。
 
技術士Aは,数ヶ月後に公示された一般入札に応募し,この環境アセスメント業務を受託した。X市の規則には,自治体関係者の親族が入札に参加することを禁止する条項はなかったので,技術士Aは,自分が市長の息子であることをあえて関係者に明らかにはしなかった。

B)ある企業に勤める技術士(建設部門)Bは,同社の上得意先であるY町の町役場を訪問した際,担当者から,町が所有する歩道橋の改築工事に伴う構造上の安全確認業務を,口頭で個人的に依頼された。相手は頻繁に会う得意先であるし,仕事も忙しかったので,技術士Bは十分に明確な契約は結ばなかった。業務は全く問題なく無事終了し,最初に申し合わせた報酬は,約束どおり期日までに,技術士Bの銀行口座に振り込まれた。

C)ある企業に勤める技術士(電気・電子部門)Cは,自分が設計段階から関わっている同杜の新製品を宣伝するための文書を作成するように上司から指示を受けた。そこで原案を作成し,上司に見せたところ,上司は「なんだか,地味だね。もっと派手に新しい機能を宣伝してよ。どうせ素人にはわからないんだから,世界で最も進んだ技術による新機能であるとか,他社製品より数倍優れているとか,という宣伝文句を入れて,派手な文章にしてよ。」とコメントした。技術士Cは,その製品が,「世界で最も進んだ技術」も,「他社製品より数倍優れた機能」も持っていないことをはっきりと認識していたので,悩んだ末,「技術士として,そのような誇大広告はできません。」と上司に伝えた。

 
(1) ×
(2) × ×
(3) ×
(4) × ×
(5) × ×


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解答案:2
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A)・・・・× 公私の区別はきちんと。李下に冠をたださず。信用失墜行為になりますぞ。
B)・・・・× 個人的というのもいかんが、契約内容を明確にしないのも論外。技術士倫理要綱の5、「明確な契約」に反します。
C)・・・・○ 偉いな。なかなかできないぞ。技術士倫理要綱の9、「広告の制限」。

※しっかり読んで答えるべきですが、時間がなければ最後の1文(最後から1つ前の「。」の後)だけ読めば、たいていは判断できます。常識を問う択一のテクニックです。

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2−4

D)情報技術関連の企業に勤める技術士(機械部門)Dが,配置転換で会社業務のシステム管理をコンピュータで行う業務を担当する部署に配属された。情報技術を専門に学んだ経験はないが,もともと大学時代からコンピュータに強い関心のあった技術士Dは,この配属を喜んだ。技術士Dは,すでにいくつかのプログラム言語を熟知していたし,ネットワーク関係にもかなり詳しかったので,ある得意先の業務管理システムのソフト開発を社内で担当することになった。得意先の担当者が打ち合わせに訪れたとき,たまたま名刺をきらしていたので,技術士Dは,「今回のソフト開発を担当させていただいている技術士のDです。」と自己紹介をした。

E)技術士(衛生工学部門)Eは,大学時代の友人とあるゴルフ場でばったりと再会した。中規模の産業廃棄物処理工場を経営するこの友人は,Eが技術士であることを知ると,是非技術コンサルタントとして,彼の会社の廃棄物処理業務の監査をしてもらいたいと依頼した。技術士Eは,この申し出に同意し,厳格な守秘義務条項を含むコンサルタント契約を,友人の会社と結んだ。数ヶ月後,技術士Eがコンサルタントになる前の処理が原因で,この会社が法律で厳しく規制されている重金属による土壌汚染を引き起こしていることを,技術士Eは業務の中で発見した。技術士Eは友人にこの件を公表して,汚染処理を速やかに行うことを助言したが,友人は資金難を理由にこれを拒否した。また,技術士Eに契約書の守秘義務条項を示して,この事実を社外に漏らさないよう強く要求した。その後も,技術士Eは何度も友人を説得したが,友人はどうしても説得に応じようとしないので,ついに,技術士Eは契約書にある守秘義務条項を破って,関係官庁にこの事実を報告した。

F)技術士(経営工学)Fは,大手の建設関係の企業に勤めている。同社のある新規プロジェクトに発足当時から関与している技術士Fは,最近,そのプロジェクトの下請業者を選定する仕事を任せられた。下請業者の候補には,技術士Fが幼い頃世話になった叔父が経営する会社も含まれていた。ここ数年この叔父とはほとんど会っていなかったが,下請業者を最終的に選定するその週になって,叔父から電話が入った。叔父は「やあ,元気かい。お父さんやお母さんもお変わりないかな。ところで,赤坂に値ははるが,すこぶるうまい料理を出す料亭を見つけたんだが,今夜一緒に行かないか。久しぶりだからおごるよ。」と技術士Fを誘った。技術士Fは「時間は空いていますし,是非ご一緒させていただきたいのですが,仕事のこともありますので,来週以降にしませんか。」とこの申し出を断った。

 
(1)
(2) ×
(3) × ×
(4) × × ×
(5) × ×


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解答案:2
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D)・・・・× こんな誤解を生むような言い方はいかん。名称表示義務違反。
E)・・・・○ 守秘義務にそむく「やむをえない理由」の例。内部告発の条件を満たしています。こちら
F)・・・・○ あー、もったいない。って違うか。偉い。信用失墜行為になりかねないから。

※Eは異論があるかもしれません。私はこういうトレードオフになったケースでは、何と何をはかりにかけているかで判断します。なお、これが「関係官庁に報告」ではなくて「マスコミに公表」だとちょっとむずかしくなります。

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2−5

G)
ある造船会社に勤める技術士(船舶部門)Gが,ある会合で,大学時代の山岳部の先輩に再会した。同じく船舶部門の技術士であるこの先輩は,自分がプロジェクト・リーダーとなって最近完成させた新しい巨大海洋構造物の設計の特徴について,多くの聴衆の前で得意げに発表していた。先輩の発表によると,この構造物は近々この設計で着工されるそうである。技術士Gはその発表を聞きながら,設計の致命的な欠陥に気がついた。もし,このままの設計で建設されると,ある条件下では,構造物が崩壊し,多大な人的被害が発生する可能性が予見できた。しかし,それが本当に欠陥であるかどうか確信が持てなかったし,先輩の立場を考えると,その場で問題点を指摘することは,先輩の技術士としての名誉を傷つけることになると考えちゅうちょした。その後,問題点を再検討した結果,技術士Gは先輩の設計には明らかに欠陥があることを確信したが,他杜が担当する設計であるし,自らの業務も忙しくなったので,技術士Gはこの問題を放置した。

H)米国の製薬会社Pコープに勤務していた技術士(生物工学部門)Hは,ヘッドハンティングで日本の大手製薬会社Z製薬に引き抜かれた。技術士HがPコープ社で開発したある技術を,Pコープ社は日本でも特許申請をしていたが,まだ,正式には認められていなかった。技術士HがZ製薬で担当した仕事は,現在のところ,特許申請中の技術とは直接関係しなかったが,将来的には,この技術がZ製薬のある製造工程を飛躍的に改善し,コストを大幅に軽減する可能性があった。そこで,技術士Hの直属の上司が,技術士Hにこの技術の核心部について社内の関係者に口頭で説明するように求めた。技術士Hは,Pコープ社との雇用契約には守秘義務条項があったことと同社が現在日本で特許申請中であることなどを説明した上で,上司の要求を拒否した。

I)ある化学薬品会社の技術コンサルタントを20年以上勤めている技術士(化学部門)Iの自宅に,ある夜突然,この会社の社長から電話が入った。「Iさん,折り入って頼みがあるんだが。実は,先月フランスの得意先から我が社の主力商品の製造工程に関する質問が来たので,企業秘密に触れない部分についてだけ適当に答えておいたんだが,今日,その工程について来週までに詳しいデータが欲しいといってきた。ところが,担当者が休暇で海外に出ていて連絡が取れない。Iさん,申し訳ないが,適当にそれらしいデータを並べた報告書を作ってくれないかな。データはうちの若いエンジニアにどこかの論文から持ってこさせるから。もちろん,報酬はコンサルタント料とは別に払うよ。」と社長は懇願した。社長とは長年のつきあいであるし,この会社からのコンサルタント料は,技術士Iの収入の大きな部分を占めていたので,技術士Iはこの仕事を引き受け,社長の指示どおりに報告書を完成させた。

 
(1) × × ×
(2) × ×
(3) ×
(4) × ×
(5) × ×


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解答案:5
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G)・・・・× 前述Eと逆。公共の利益より「忙しい」「面倒」「関係ない」を優先させている。
H)・・・・○ 受諾してしまうと、信用失墜行為のおそれ大いにあり。相手がアメリカだけに訴訟も十分あるな。
I)・・・・× こんなの捏造じゃないか。信用失墜もはなはだしい。

※この問題は特に迷うところはないと思います。

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課題3
次の倫理綱領を読んで,問題6に答えよ。

 ある仮想的団体の倫理綱領は,次の3項目からなっている。
1)自然を尊重し,現在及び将来の人々の安全と福利,健康に対する責任を最優先し,人類の持続的発展を目指して,自然及び地球環境の保全と活用を図る。
2)自己の属する組織にとらわれることなく,専門的知識,技術,経験を踏まえ,総合的見地から事業を遂行する。
3)公衆,依頼者及び自身に対して,公平,不偏な態度を保ち,誠実に業務を行う。

2−6 この仮想的団体の倫理綱領は,いくつかの構成要素から成り立っているものと考えられる。ここでは,その構成要素を,仮に,以下の5項目に分類できるものとする。
  (あ)守るべき対象
  (い)同業者としての倫理
  (う)葛藤対応(忠誠の対象が複数ある場合)
  (え)自己啓発
  (お)環境保全
この文章で表現されている構成要素を正しく記述しているのは,次の(1)〜(5)のうちどれか。

(1) 守るべき対象,同業者としての倫理,葛藤対応,自己啓発,環境保全。
(2) 守るべき対象,葛藤対応,自己啓発,環境保全。
(3) 守るべき対象,同業者としての倫理,自己啓発。
(4) 守るべき対象,葛藤対応,環境保全。
(5) 守るべき対象,同業者としての倫理。


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解答案:1
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守るべき対象・・・・自然・地球環境、持続的発展。
同業者としての倫理・・・・所属組織にとらわれない。
葛藤対応・・・・「現在および・・・・健康に対する責任」を最優先。
自己啓発・・・・人類の持続的発展を目指す。「公衆、依頼者および・・・・誠実に業務を行う」
環境保全・・・・自然を尊重、など。
結局、(あ)〜(お)全部が入っている。

※自己啓発が入っているかどうかは意見が分かれるところでしょう。

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課題4
次の文章はある技術者協会の倫理規定の抜粋である。この倫理規定を読んで問題7に答えよ。

倫理規定
「自己の専門的能力の向上を図り,学理工法の研究に励み,進んでその結果を学会等に公表し,技術の発展に貢献する。」

2−7 技術士Jは技術士登録後,日々の業務において毎日忙しく仕事をしている。上記の倫理規定に従うと,多忙を極める技術士として正しい態度を組み合わせたものはどれか。ア)からエ)までの態度を読み,その組み合わせの正しいものを(1)から(5)の中から選べ。

ア)毎日の忙しい業務の合間にも,時間を割いて,自分の専門に関する学術誌を読み,また,時間を見つけて継続教育に参加し,自分の能力を高めようとする。

イ)技術士として,職業人として,すべての時間は与えられた業務に充てるべきであり,講習会に参加するなどの活動は仕事の妨げとなるので好ましくない。

ウ)業務上開発した新しい技術的な方法は人にまねされないようにできるだけ隠しておき,自分1人の力で,完成された方法に作り上げる。

エ)自分が開発した新しい方法について,特許などにも配慮した上で,学会で発表し,業界全体の技術力の向上に貢献するとともに,他者の批判を受けることによりこの方法を更に良いものに育ててゆく。



(1) アとウが正しい。
(2)
 アとエが正しい。
(3)
 イとウが正しい。
(4)
 イとエが正しい。

(5)
 すべて正しい。


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解答案:2
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ア)・・・・○ うん、偉い偉い。
イ)・・・・× 仕事してりゃいいってもんじゃないぞ。
ウ)・・・・× そういうせこいことしないの。
エ)・・・・○ よくできた人だねえ。

※これは簡単なサービス問題ですね。

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課題5
 次の文章はある技術者協会の倫理規定の抜粋である。この倫理規定を読んで問題8に答えよ。

倫理規定
「構造物の機能,形態及び構造特性を理解し,その計画,設計,建設,維持,あるいは廃棄に当たって,先端技術のみならず伝統技術の活用を図り,生態系の維持及び美の構成,並びに歴史的遺産の保存に留意する。」
「技術的業務に関して雇用者,もしくは依頼者の誠実な代理人,あるいは受託者として行動する。」
「自己の属する組織にとらわれることなく,専門的知識,技術,経験を踏まえ,総合的見地から土木事業を遂行する。」

2−8 技術士Kは,建設コンサルタントとして,鉄道地下駅の大規模な地下構造物の計画に従事している。構造物の施工に当たり,周辺の地下水位が高いために,水位を低下させる工法を採用する必要がある。周辺にはこの地域に残された貴重な林があり,樹齢150年を越える大木が何本か存在している。技術士Kの態度として正しいものは次のうちどれか。

(1) 依頼主との契約条項に樹木への影響を検討するという具体的な項目がないため,コンサルタントには関係ない。

(2) 地下水位の低下の樹木への影響については必ずしも因果関係が特定されているわけではなく,時間ばかりかかって結論が出ないことが予測される。コンサルタントの立場として特にこの問題に関わる必要はない。

(3) 地下水位の低下が及ぶ地域について算定し,その樹木への影響の可能性について依頼主である鉄道会社に意見を具申した。これに対して依頼主は特にこの問題に関心を示さなかった。コンサルタントとしても,依頼主に対して意見を具申したことで責任は果たしており,特にその後はこの問題を考慮しなかった。

(4) 地下水位の低下が及ぶ地域について算定し,その樹木への影響の可能性について依頼主である鉄道会社に意見を具申した。これに対して依頼主は可能性が低いことを指摘して,特にこの問題に関わらず,放置しようとした。今後樹木の枯死などの問題が顕在化した場合,依頼主に多大な影響が及ぶことが明らかであり,また,貴重な林の重要性を考え合わせて,更に強く依頼主に意見を具申した。ただ,確実にそうなるとは断言できないため,この意見が受け入れられない場合には仕方がないのであきらめる。

(5) 地下水位の低下が及ぶ地域について算定し,その樹木への影響の可能性について依頼主である鉄道会社に意見を具申する。これに対して依頼主は可能性が低いことを指摘して,特にこの問題に関わらず,放置しようとした。今後樹木の枯死などの問題が顕在化した場合,依頼主に多大な影響が及ぶことが明らかであり,また,貴重な林の重要性を考え合わせて,更に強く依頼主に意見を具申する。この意見に対しても依頼主の検討許可を得られないため,コンサルタントとして独自に調査結果をまとめ,かなり高い確率で林の木々の枯死が起こると判断したため,地方行政機関にこの可能性について検討を求める意見書を送った。


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解答案:5
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(1)・・・・× 生態系の維持って倫理規定にあるじゃない。
(2)・・・・× 同上。
(3)・・・・× もう少し押さないと。
(4)・・・・△ まあ仕方ないのかな。
(5)・・・・○ やりすぎと思う人もいるかもしれないが、これからはこれくらいする時代だよ。

※無関心から徹底まで、だんだんヒートアップする選択肢です。(5)がやりすぎかどうかの判断ですね。ちょっと正解をつけにくい問題かも。

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課題6
 次の文章を読んで,問題9及び10に答えよ。

 株式会杜JCOの転換試験棟での作業は,核燃料サイクル開発機構の原子炉「常陽」の燃料用として,高濃度の硝酸ウラニル溶液の製造を目的としていた。1999年9月29日から3人で製造の作業を開始し,事故は翌30日に起きた。核燃料物質の使用許可による【ア】(いわゆる正規のマニュアル)では,溶解塔でウラン粉末に硝酸を加えて溶解し,その溶液(硝酸ウラニル溶液)をポンプで貯塔へ送ってウラン濃度を均一化する作業を,1バッチ(作業単位:2.4sU)ごとに管理して行うことになっていた。ところが,社内の【ア】(いわゆる裏マニュアル)では,溶解塔を使わずに,ステンレス製バケツ(10リットル)内で手作業で溶解するように変更され,さらに実際の作業では,その【ア】さえも無視して,使用目的の異なる大きな沈殿槽へ,溶液をステンレス製パケッ(5リットル)と漏斗を用いて手作業で注入していた。事故時までに,沈殿槽に7バッチ分が注入されたという。
 30日午前10時35分頃,沈殿槽内の硝酸ウラニル溶液が臨界に達し,警報装置が吹鳴した。最初に瞬間的に大量の核分裂反応が発生し,その後,約20時間にわたって,緩やかな核分裂状態が継続した。10月1日午前2時30分頃から,沈殿槽外周のジャケットを流れる冷却水の抜き取り作業が開始され,午前6時15分頃,臨界状態は停止した。その後,ホウ酸水を注入し,午前8時50分には臨界の終息が最終的に確認された。
 事故の第一報がJCOから科学技術庁にもたらされたのは,30日午前11時19分であった。12時30分過ぎに科学技術庁から首相官邸へ連絡,午後2時には原子力安全委員会への正式報告がなされている。地元地方自治体では,午後3時に東海村による350m圏内の住民避難要請,午後10時30分に茨城県による10km圏内の屋内退避の勧告等,所要の対応が行われた。
 作業をしていた3人のうち,1人が同年12月21日に,もう1人が翌年4月27日に死亡した。2人の死は,大量被ばくには【イ】も及ばないという現実を突きつけた。

2−9 アの3箇所の【  】には,同じ言葉が入るが,次の(1)〜(5)のうち最も適当と思われるものはどれか。

(1) 就業規則
(2)
 作業手順書
(3)
 設備仕様書
(4)
 原子力基本法
(5) 倫理規程


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解答案:2
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これは作業の手順を書いてある。

※各々の選択肢である規定等の意味がわかれば楽勝です。

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2−10 イの【  】に入れる言葉として、次の(1)〜(5)のうち最も適当と思われるものはどれか。

(1) 住民避難
(2) 科学技術庁
(3) 原子力安全委員会
(4) 茨城県の対応
(5) 最新の医学


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解答案:5
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読めばわかるとしか言いようがない。

※これはむしろ国語の試験ではないかという気がします。

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課題7
 次の文章は,環境問題に対処する方法の1つ「予防原則」に関する議論である。この議論を読んで,問題11に答えよ。

 工場排水中に含まれていたメチル水銀が,生物濃縮を経て魚類の体内に蓄積され,日常的に魚を摂取していた地域住民を中心に,メチル水銀中毒患者が出た。水俣病である。既往の病状と異なるものであったために,様々な要素が原因ではないかと指摘された。しかし,真の原因の特定と対策が遅れ,これが水俣病の被害を拡大した。原因として指摘された複数の要素の中に,真の原因が含まれているとするのならば,すべての要素を予防的に取り除くことができる。それは問題の解決に繋がる。したがって,一旦指摘されたすべての要素を取り除き,その後,精緻な調査を行って真の原因を突き止めると同時に,真の原因ではなかったと確定した要素についてはその時点で復活させればよい。これに類する主張を「予防原則」とよぶ。一方,近年における環境の状況下では,「予防原則」は有効でないという主張もある。

2−11 「予防原則」について数名で議論をした結果,次に示すような意見が出た。現時点の状況を踏まえたとき,最も不適切だと思える意見はどれか。

(1) 人体にいささかでも悪影響を与える可能性のある有害物質を使用禁止にする方向は正しい方向である。

(2) 物質の有害性を誰が指摘するのか,を決めない限り予防原則は適用不可能である。

(3) すべての物質は,多かれ少なかれ有害性があるので,その物質を使用するメリットとデメリットのバランスで使用を決めるべきだ。

(4) 現在の環境の状況では,予防原則は適用困難である。なぜならば,非常に大きなリスクは回避できる社会的レベルに達していると同時に,環境リスク自身がほぼ無限に存在するからである。

(5) 今後起きるであろう環境問題にも,予防原則が適用できる場合もあれば,適用できない場合もあるだろう。


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解答案:4
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(1)・・・・○ 方向としては正しい。
(2)・・・・○ 利害関係者(例えば化学薬品会社で構成される業界団体)の指摘ではなく、公正中立な第三者機関の指摘に基づくことと決めない限り、予防原則は成り立たない。
(3)・・・・○ そのとおり。
(4)・・・・× 「非常に大きなリスクは回避できる社会的レベルに達している」のであれば、地球温暖化という非常に大きなリスクは回避されることになるが、京都議定書からの米国の離脱を見てもこの記述は正しくないと考えられる。「環境リスク自身がほぼ無限に存在する」のは事実、だからこそ被害発生や個別事例の科学的因果関係の証明を待たず、予防原則を適用することが効率的かつ効果的。「現在の環境の状況では,予防原則は適用困難である」なら、国の環境基本計画の『環境政策の指針となる四つの考え方』に『予防的な方策』があげられることはないと考えられる。
(5)・・・・○ そりゃそうだ。

※最初は2が正解としていましたが、イワゾーさんからご意見をいただき、修正しました。どうもありがとうございました。

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課題8
 次の文章は,地球規模の環境問題,ここでは,地球温暖化について成立する一般論を述べている。この文章を読んで,問題12に答えよ。

 環境問題を,地域環境問題と地球環境問題の2種類に分けて考えたとき,先進諸国における地域環境問題はかなり改善がすすみ,日本の場合においても1970年頃の状況を汚染のピークとして,その後一貫して改善の方向にある。今後,発展途上国においても,地域環境の問題は解決に向かうことが期待できる。これに対して,地球温暖化の問題は解決が極めて困難である。なぜならば,それは,化石燃料という有限な資源をどのように分配すべきか,という経済の発展に直接関係する問題だからである。発展途上国は次のように主張する。「先進国がここまで経済的な発展を果たすことができたのも,石油を中心とする安価なエネルギーをふんだんに使うことができたからである。発展途上国が温暖化防止の枠組みに参加するということは,これまでの温暖化に対して途上国は責任がないにもかかわらず,自らの将来的な経済発展を阻害する可能性があって,不公平である。まず,先進国が自らの姿勢を正すこと,これが第一歩である」。
 一方,先進国は,次のように主張する。「これまでの経済発展が,大量のエネルギー消費に支えられてきたことは事実だろう。しかし,その時点では,化石燃料の消費の結果放出される二酸化炭素が温暖化の原因物質であるといった指摘はなかった。したがって,その行為を非難するのは不適切である。そして,温暖化を防止することは,地球上に存在しているすべての人類の生存に関わることである。したがって,先進国のみならず,途上国を含めたすべての国家が,人類の未来のために二酸化炭素の放出量を削減する国際的枠組みに参加すべきである」。

2−12 この問題を環境倫理として議論したところ,次のような意見が出された。最も不適切だと考えられる意見はどれか。

(1) 途上国の権利はやはり保護すべきだ。結果として,起きるかもしれない温暖化は受容しよう。

(2)
 先進国と途上国との問題は,一般に南北問題と言われる問題である。

(3)
 化石燃料の消費に起因する温暖化問題も,結局経済問題の一種であり,市場経済メカニズムによって解決すべき類の問題であろう。

(4)
 未来世代の権利をいかに守るか,これは人類共通の課題である。

(5)
 温暖化問題には不確実性がある。各国の経済に影響がある枠組みに対する反対は,ある程度当然である。


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解答案:2
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(1)・・・・× 地球環境問題は南北問題と言われ、途上国の発展と「地球号」の保全はトレードオフの関係にありますが、途上国発展のために温暖化を受容するという考えは適切ではありません。
(2)・・・・○ そのとおりです。
(3)・・・・○ そういうアプローチは80年代からぐっと出てきましたね。環境経済学というやつでしょうかね。
(4)・・・・○ そのとおりです。
(5)・・・・○ そのとおりですが、エゴの張り合いにならず、いかに調和を優先するかが大切です。ね、アメリカさん。^^;

※ちょっとまぎらわしいのは(5)ですね。

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課題9
 次の文章は製造物責任に関する判決文の一部である。この文章を読んで,問題13及び14に答えよ。

 現代の社会生活は,他人が製造し流通に置いた製品を購入し利用することによって成り立っているといっても過言ではないが,規格化された工業製品の場合,流通の過程において販売会社や小売店が個々の製品の安全性を確認した上で販売することは通常予定されていないし,これを取得する消費者が個々の製品の安全性を判断する知識や技術を有しないことも明らかであるから,このような製品の流通は,製造者が製品を安全なものであるとして流通に置いたことに対する【ア】ということができる。
 それゆえ,製品の製造者は,製品を設計,製造し流通に置く過程で,製品の危険な性状により利用者が損害を被ることのないよう,その安全性を確保する高度の注意義務(安全性確保義務)を負うというべきであるから,製造者が,その義務に違反して【イ】製品を流通に置き,これによって製品の利用者が損害を被った場合には,製造者は利用者に対しその損害を賠償する責任,すなわち製造物責任を負う。

2−13 アに入れる言葉として,最も適当と思われるものほどれか。

(1) 調査の結論を尊重する
(2) 価格の設定が適性である
(3) 信頼に支えられている
(4) 品質管理を徹底する
(5) テレビ宣伝の効果による


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解答案:3
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もうこれは読めばわかるとしていいようがない。常識度のテスト。
性能や安全性も含めて社会に受け入れられた商品は売れて、それでない商品は淘汰の中で消えていく。市場主義の大原則。

※常識度のテストです。迷うとすれば(1)と(4)しかありませんが、これらは文脈がおかしくなるのでわかるはずです。

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2−14 イに入れる言葉として,最も適当と思われるものはどれか。

(1)美しい包装の
(2)利用者が喜ぶ
(3)価格の高い
(4)安全性に欠ける
(5)持ち運びに便利な


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解答案:4
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これも読めばわかる。中学程度の国語のテスト。

※迷う選択肢はないはずです。

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課題10
 次の事例を読んで,問題15に答えよ。

 1974年,満員の大型旅客機DC-10の初めての墜落事故がパリ郊外で起こった。乗客乗員全員の346人が死亡した。これが倫理的に問題であるのは,ジェット機の設計の欠陥のためにそのような事故が起こるに違いないということが,前もって知られていたからである。
 欠陥があったのは特に飛行機の胴体部であったが,それは,有名な飛行機会社D社の下請け業者C社によって開発されたものである。事故の2年前,胴体の開発計画を指揮する,C社の上級技術者Aは,同社の副社長宛にあるメモを書いた。それは,設計の欠陥が原因で起こるかもしれない様々な危険を箇条書きにしたものであった。彼が正確に記述していたのは,フライト中に貨物室のドアが吹き飛び,貨物室が減圧され,そのことによって貨物室の上にある客室の床が崩壊する可能性だ。操縦系統は客室の床下に沿って走っており,客室の床の崩壊は飛行機の全コントロールが失われるということを意味する。上級技術者Aは,ドアの設計のやり直しと,客室の床の強化を求めた。彼の考えでは,そのような変更をしなければ,DC-10の貨物室のドアが空中で開き,墜落を引き起こすということであった。
 しかし,C社の最高幹部は,この問題に対する根本的な対策を行なわず,次のように主張した。すなわち,「C社がこうむるであろう経済的な負担を考えると,D社にこの情報を伝えることはできない。なぜなら,設計のやり直しと必要な安全性の改善のための出荷の遅れのコストは非常に高くつき,しかもこのことが取引先D社が競争上不利な立場に置かれるであろう時期に起こるからである」と。

2−15 この事例に関して,以下の考え方の中で,適切でないものを1つ選べ。

(1)専門家には雇用者でも侵害できない公衆への義務というものがある。

(2)被用者である以上,雇用者を批判せず従うべきである。

(3)被用者としては,組織の長期的な利益を促進することを考えるべきである。

(4)雇用者に対して単なる攻撃的感情的態度をとることは好ましくない。

(5)公衆には,よく知らされたうえでの同意が必要であるから,場合によっては自分の技術者としての懸念が公衆に知られるようにすることも必要になる。


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解答案:2
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(1)・・・・○ そのとおり。
(2)・・・・× 時と場合による。
(3)・・・・○ それはそのとおりだ。
(4)・・・・○ そのとおり。いかなる場合も冷静沈着に。
(5)・・・・○ それは正しいが、安易にマスコミ公表したりすると誤った(あるいは偏った)情報が一人歩きするから注意が必要。

※(3)と(5)にちょっとしたひっかけがありますが、ほとんど迷わない問題です。