技術士第一次試験 平成13年度 専門科目《建設部門》

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(4−1)択一問題

  1. 土質および基礎に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

    (1) 間隙比は間隙の体積と土粒子の体積の比であり、含水比とは間隙水の質量と土粒子の質量の比である。
    (2) 圧密度とはある時刻における圧密沈下量と最終沈下量との比である。
    (3) 正規圧密粘土地盤上に盛土を構築する場合、最も危険なのは盛土構築直後である。
    (4) 鉛直壁で支持された砂地盤の土圧が最も大きくなるのは、主働破壊状態にあるときである。
    (5) 杭の鉛直支持力とは、先端支持力と周面摩擦力との和である。


    解答案:4

    (1)・・・・○ そのとおり。ちなみに、間隙体積と全体積の比は間隙率(単位%)。
    (2)・・・・○ そのとおり。
    (3)・・・・○ そのとおり。粘土は難排水性なので盛土直後は圧密強度増加が進行していないため。
    (4)・・・・× 最大になるのは極限平衡状態のとき。
    (5)・・・・○ そのとおり。厳密には先端支持力+周面摩擦力−杭自重だが。
    ※これは知らなければ答えられませんね。しかし、(2)(3)(5)はごく基本的なことですので、知っておいてほしいところです。
     
  2. 両端埋め込みの5径間連続梁の中央の径間に等分布荷重が作用している場合、当該径間の曲げモーメント分布の概形として正しいものはどれか。

    (1) 正弦半波
    (2) 一定
    (3) 一次関数
    (4) 2次関数
    (5) 3次関数


    解答案:3

    **********皆様からの情報・ご指摘*****ずけさんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    等分布荷重が作用している径間では、せん断力の分布図が1次関数となり、したがってモーメントの分布図は2次関数になると思います(いい加減な考え方ですが・・・)。よって解答は(3)ではないでしょうか。
    **********
     
  3. 日本の都市計画に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

    (1) 都市計画区域は国土面積の3割弱を占めているが、そこに全人口の9割以上が居住している。
    (2) 市街地区域においては、都市計画で定められた容積率の範囲内で、複数敷地間で特例的な容積率制限を定めることができる。
    (3) 都市計画事業によって著しく利益を受ける者に対しては、当該事業に要する費用の一部を負担させることが都市計画上、可能である。
    (4) 市街地区域であれば、用途地域が定められていなくとも、特定用途制限地域制度により、建築物等の概要を定めることができる。
    (5) 市町村が都市計画区域内の都市計画を決定する場合、あらかじめ都道府県知事に協議し、その同意を得る必要がある。


    解答案:4

    **********皆様からの情報・ご指摘*****伏龍さんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    都市計画法第13条第1項第7号より『・・・市街化区域については,少なくとも用途地域を定める・・・』とあります.
    **********

    ※都市計画に関しては、「Echoの宅建○×問題1000本ノック」(こちら)がお勧めです。
     このサイトの都計法に関する記載をひととおり読めば、都市計画に関する設問はほぼOKだと思います。
     
  4. 河川、砂防及び海岸に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

    (1) 平成12年9月の東海水害では、庄内川の洪水の一部が庄内川の支川である新川に流れ込んだ。これは、新川が破堤した一因であり、庄内川の堤防も決壊の危険性が高まった。

    (2) 湖沼の富栄養化現象は、窒素化合物やリン化合物の濃度が高まることによって起きるが、その対策として湖水を爆気するのは窒素やリンの分解を促進するためである。

    (3) ダムの最低水位は水平に計画されるが、実際の堆砂状況はダム堤体付近では最低水位を超える一方で、流入河川では最低水位以下にとどまっており、水平には堆砂していない。

    (4) 土石流の流下域における対策工には、土石流の停止を目的とする砂防ダムと、土石流の減勢とエネルギー減殺を目的とする透過型のダムなどがある。

    (5) 津波や高潮対策として一般的なのは防潮堤であるが、港湾機能をもち、流入河川の多い内湾で、高い防潮堤をめぐらせるのが困難な場合には、離岸堤がよく採用される。


    解答案:2

    **********皆様からの情報・ご指摘*****三連星さんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    (1)×
    新川上流の降雨により破堤した。本川が破堤し、支川に流れたわけではない。
    (2)○
    正しそう。好気性微生物により分解をうながすため。嫌気性微生物では、分解の効率が悪いし、硫化水素のようなよろしくない副産物が生じる。
    (3)×
    日本のダムに流入する土砂は、粘土は少なく砂や砂利が多いので、貯水池上流部に堆砂する。
    (4)×
    透過型:土石流の停止が目的。ダムに溜まった土砂は中小洪水で流出するため、いずれは空になる。
    不透過型:貯水池上流の河床勾配が緩くなるので、土石流の減勢として働く。
    よって、特徴を逆さに書いている。
    (5)×
    内湾の場合、湾を横切る形で防波堤を設ける。
    コロナ社 港湾工学(初版:S32) P291。  本が古いので、現在のやりかたは違うかもしれません。
    **********

    ※三連星さん、ありがとうございました。専門知識がなくても、常識で(1)と(3)は除外できます。(5)もちょっと考えれば常識的に除外できます。
     
  5. 港湾及び空港に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
     
    (1) コンテナ輸送システムは、荷役の機械化、荷役時間の短縮などの利点から急速に成長したが、港湾施設としてコンテナ専用設備の新設が不要だったことも一因である。

    (2) 日本における港湾の基準水準面は、原則として海図の基本水準面を採用するが、これは、どの港湾でも東京湾中等潮位(T.P.)より高い。

    (3) 防波堤の構造のうち、傾斜堤は、水深が浅くなると施工性や経済性で問題が生じやすく、また、反射波が大きく、付近の海面を乱す。

    (4) 首都圏では、近年の航空需要の増大に対応するため、羽田空港の沖合展開や成田空港の暫定滑走路建設が、現在構想段階にある。

    (5) 航空機騒音問題については、音源対策として便数や発着時間の規制など、空港の改良として滑走路の移転や緩衝緑地の設置など、空港周辺対策として家屋等の防音工事などが講じられてきた。


    解答案:5

    (1)・・・・× コンテナ埠頭を要する。
    (2)・・・・× 「どの港湾でも」が間違い。
    (3)・・・・× 傾斜堤ではなく直立堤の内容。
    (4)・・・・× 構想段階ではないはず。
    (5)・・・・○ そのとおり。なお、家屋の防音工事は補助という形。【参考:こちら

    ※(1)がよくわかりませんが、(5)はいかにも本当っぽくなっています。しかし、「個人所有物を公費で補修するの?」という疑問がわいたので調べました。
     
  6. 火力発電に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

    (1) 汽力タイプでは、燃料をボイラーで燃やしてつくった高温・高圧の蒸気を回して発電する。現在、火力発電の中では、発電能力・発電量ともに、圧倒的に高い比率を占めている。

    (2) 内燃力タイプでは、ディーゼルエンジンなどの内燃機関を回して発電する。島などでの小規模発電用として利用されている。

    (3) ガスタービンタイプでは、灯油や軽油などの燃焼ガスでタービンを回して発電する。ピーク時の需要に対応する役割を担っている。

    (4) コンバインドサイクルタイプは、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた新しい発電方式であり、若干劣る熱効率に改善余地を残す。しかし、需要の変化に即応した運転が可能である。

    (5) 火力発電所では、光化学スモッグや酸性雨の原因となる硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、ばいじんなどによる大気汚染防止のため、対策がいろいろとられている。


    解答案:4

    (1)・・・・○ そのとおり。
    (2)・・・・○ そのとおり。
    (3)・・・・○ そのとおり。
    (4)・・・・× コンバインドサイクル発電は、熱効率に優れている。
    (5)・・・・○ そのとおりっぽい。
    ※火力発電のタイプとその概要に関する知識が必要です。(1)〜(4)は、こちらにそのまま答えが出ています。 
  7. 道路に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

    (1) 日本では多車線道路の基本交通容量は、2200[pcu/時/車線]を一般に用いている。

    (2) 交通セル方式とは、都心部をいくつかのセルに分割し、セル同士の境界に歩行者専用道などを設置して自動車の横断を規制する方法である。

    (3) 自転車専用道路の復員は3m以上、自転車歩行者専用道路の幅員は4m以上を必要とする。

    (4) 一般に、K値もD値も、地方部より都市部で高い値を示す傾向にある。

    (5) DPF(Diesel Particulate Filter)を装着することにより、ディーゼル車からの粒子状物質発生量を大幅に削減することができる。


    解答案:4

    (1)・・・・○ そのとおり。
    (2)・・・・○ そのとおり。車は隣のセルに行くには一度セル外へ出て決められた進入路から入る。
    (3)・・・・○ そのとおり。道路構造令の知識を問う。
    (4)・・・・× K値は年間交通量をピーク時間交通量に変換する指標、D値はK値や年間ピーク時における往復交通の偏り。だから?
    (5)・・・・○ そのとおり。
    ※結局、都会はいつもべたーっとムラなく交通量が多いので、ピーク時間交通量の突出や偏りがなく、逆だということではないでしょうか。
    ※私は「K値」と言われれば支持力や変形特性、あるいは硫黄酸化物のK値規制、D値といえば遮音性能しか思い浮かびませんでした。
     一次試験問題としてはどうかと思いますが、道路専攻の人には何でもないレベルなのでしょうか?
     
  8. 鉄道に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

    (1) 線路の緩和曲線に用いられる3次放物線は、設定が容易であるが、サイン半波長逓減曲線に比べ、乗り心地は悪い。
    (2) 四段階推定法の分布交通量の推計には、Wardropの第1原則(利用者均衡解)に基づいた方法論が用いられる。
    (3) 多期間にわたるプロジェクトの便益計測のためには、将来便益を現在価値に割戻し計算する必要がある。
    (4) 現在山梨実験線で検討されているリニアモーターカーは、磁気浮上方式の中の、誘導反発式を採用している。
    (5) トランジットモールの導入により、都心商業地の活性化や道路交通環境の改善、公共交通の活性化を図ることができる。


    解答案:2

    (1)・・・・? 緩和曲線【参考:こちら】はわかるが、どっちが乗り心地がよいかと言われると・・・・
    (2)・・・・× 分布交通量ではなくて配分交通量の推計に使う。
    (3)・・・・○ それはそうだろうと思う。
    (4)・・・・△ 下記考察結果では、「それは宮崎実験線。山梨実験線は「誘導反発吸引磁気浮上方式。」となる。
    (5)・・・・○ そのとおり。【参考:こちら
    **********皆様からの情報・ご指摘*****あきさんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    1については、要はどちらが急に曲がるかということではないでしょうか?3次曲線の方が急な気がします。従って1は正しい?「鉄道ではサイン逓減曲線を用いる」そうです。
    でも4も一般的に「磁気浮上誘導反発方式」と言っているような気がしますが、「吸引」がないと間違いなんですかね?奇問ですね。

    **********
    **********皆様からの情報・ご指摘*****あきさんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    (1)について・・・・
    サイン逓減曲線は、片勾配のすりつけに使うに使うのではなかったか?(一般道路などは、手を抜いてあり直線すりつけ。)
    平面形状要のすりつけ曲線と縦断形状用のすりつけ曲線がごちゃまぜになっているので、(1)は誤りです。
    (2)について・・・・
    JR東海の図は、磁気反発方式にしか見えません。磁気吸引方式は、レールが上にあり、車両を吸い付かせる形。
    で、制御は磁気反発方式の法が簡単。レールと車両の間隔を一定に保つことを考えます。
    磁気反発方式:間隔が離れると反発力が弱まるので間隔は元に戻る。
    磁気吸引方式:間隔が離れると吸引力が弱まるので、間隔は更に大きくなる。
    結果として、磁気吸引方式では、磁力を細かく調整する必要があるが、反発方式なら何もしなくてもある程度フィードバックできる。
    **********
    **********リニアモーターカーに関する私のレス
    リニアモーターカーですが、
    こちらには次のように記されています。
    --------
    では、リニアモーターカーはどのようなしくみで浮かび上がっているのでしょうか。ここでは「反発磁気浮上方式」について説明しましょう。
    ・・・・(中略)・・・・
    そこでリニアモーターカー・マグレブは、はじめゴムタイヤで走りながらだんだんスピードを上げていき、十分な磁気の反発力が生まれたところで浮かび上がります。これは、飛行機が離陸する時に、タイヤで滑走路を走るのとにています。
    鉄道総合技術研究所の宮崎実験線では、主にこの方式がテストされていました。
    しかし、1993年(平成5年)から実験が開始された山梨実験線では、コイルをガイドウェイの側壁(横側にある壁)につけ、より安定した走行ができる「誘導反発吸引磁気浮上方式」と呼ばれる新しい方式が採用されています。
    宮崎実験線は誘導反発、山梨実験線は誘導反発吸引、というように違うタイプを採用しているんだ、ということだと思います。
    なお、山梨実験線の吸引は、上からではなく横から(反発極のすぐ上に吸引極を置く)のようです。
    **********
    **********皆様からの情報・ご指摘*****伏龍さんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    Wardropの第1原則の基づく均衡理論は,利用者の均衡解を求めることから四段階推定法の配分交通量の推定に用いられるのであって,分布交通量の推計ではない.
    **********

    こちらに、「反発磁気浮上方式は宮崎実験線でテストされた。しかし山梨実験線では「誘導反発吸引磁気浮上方式」という新しい方式が採用された」とあります。これを読んだまま適用すると、選択肢の文は、「それは宮崎実験線。山梨実験線では違う方式」となり、誤り、という判断になります。うーん、重箱の隅ですね。 
  9. トンネルに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

    (1) 日本の山岳トンネルの標準工法は、鋼アーチ部材と矢板による支保工によってトンネル周辺地山を支持して安定を保つ工法である。
    (2) TBMによる掘削は、地山が良好な場合には高速掘進が可能となるので、日本での長大道路トンネルの施工に採用されている。
    (3) 特殊断面シールド工法は、2ないし3連の複円形シールドや楕円や矩形の非円形シールドを用いる工法である。
    (4) 軟弱粘土地盤中のシールドトンネルは、施工後の圧密沈下や地震時における地盤の滑動の影響も検討して設計すべきである。
    (5)  「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」の施行により、将来設置される大深度地下施設に支障が生じないように地上建築物には制限がかかるので、地上の土地所有者は注意が必要である。

    解答案:1

    **********皆様からの情報・ご指摘*****ずけさんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    この問題は、(1)の記述が誤りです。山岳トンネルの標準工法はNATM工法であり、この工法では吹付コンクリートとロックボルトが主な支保部材となります。また、この二つの部材で地山の安定が図れない場合に鋼アーチ支保が追加されます。なお、NATM工法では矢板は用いられません。問題文(1)は、以前まで標準工法であった矢板工法についての記述だと思います。
    **********
     
  10. 施工計画、施工設備及び積算に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

    (1) ネットワーク式工程図におけるクリティカルパスとは、工事に要する日数が最長となる経路を指す。
    (2) 土砂、コンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊、木材の発生量が、法令に定める規模を越える場合は再生資源利用計画をたてる。
    (3) 騒音規制法において、著しい騒音を発生する作業とされる特定建設作業には、圧入式くい打ちくい抜き機を使用する作業が含まれる。
    (4) 公共工事積算において、建設機械の運転経費は直接工事費に、運搬経費は間接工事費に区分される。
    (5) 公共工事におけるVE(バリュー・エンジニアリング)には、受注者の技術提案によりコスト縮減を図るものがある。

    解答案:3

    (1)・・・・○ そのとおり。
    (2)・・・・○ そのとおり。
    (3)・・・・× 圧入式くい打ちくい抜き機は特定建設作業には含まれません。
    (4)・・・・○ そのとおり。
    (5)・・・・○ そのとおり。
    ※(3)が誤りだということが最初にわかったので、他は調べていません。これは知っていないと解けないでしょう。
     

(4−2)記述問題
 次の11問題のうち3問題を選んで簡明に解答せよ。(3枚綴りの答案用紙を使用し、問題ごとに用紙を替え、解答問題番号を明記し、それぞれ1枚以内にまとめよ。)

  1. 砂地盤で液状化現象が発生する原因と具体的な被害事例について述べよ。
     
  2. 橋梁接合部を少なくするいわゆるノージョイント化について、メリットを2つ挙げ説明せよ。
     
  3. 都市計画法第12条で定める市街地開発事業の中の、土地区画整理事業と市街地再開発事業について、それぞれの目的と事業内容、事業手法について対比的に説明せよ。
     
  4. 山地・山麓部、ダム、河道、海岸において発生している土砂に係る問題をこの4つの地域ごとに述べよ。
     
  5. 港湾の係留施設の設計において定めるべき設計条件となる、自然条件、利用条件、形状条件について、それぞれを簡潔に説明せよ。
     
  6. 風力発電の設置に際して配慮すべき環境面での問題を3つ挙げ説明せよ。
     
  7. 道路設備に関する費用便益分析において、計測すべき代表的な便益項目を3種類挙げ、それぞれの計測方法について簡潔に述べよ。
     
  8. 日本の鉄道整備に関わる代表的な開発利益の還元方法について3種類挙げ、それぞれの内容について簡潔に述べよ。
     
  9. 山岳トンネルにおける補助工法を3つ挙げ、その目的と効果について述べよ。
     
  10. 高所作業、水上作業、車両系建設機械作業、道路維持修繕作業の4つの作業について、想定される事故をそれぞれ1つ挙げ、その原因と対策について述べよ。
     
  11. 河川、ダム、海岸、港湾、空港、道路、住宅団地の中から2つ取り上げ、その整備が動植物・生態系に与えると考えられる一般的な影響を、工事中と共用後に分けて述べよ。