技術士第一次試験 平成14年度 基礎科目 問題と解答案


平成14年度基礎科目について、私なりに解答を出してみました。

一部、後でインターネットなどで正解を調べたものもありますが、大部分は何の勉強もなしに解いてみたものですので、正解であるかどうかは保証できません。
ただ、参考になるようにと思い、解答決定までのプロセスをそのまま書きました。わからない問題はとんでもない解き方もしていますが、それも含めて参考になればと思います。

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(1)設計・計画に関するもの

  1. あるコンビニエンスストアには、12:00〜13:00の間に90人の客が来店する。この店にはレジ1台が設置されており、会計処理に要する時間は客1人当たり平均0.5分である。このとき、客がレジに並んでから会計が終了するまでの平均の時間は何分か、次のうちから答えよ。ここでは、単位時間当たりに客が訪れる数の分布はポアソン分布に従い、会計処理に要する時間は指数分布に従うものとする。なお、本問題に関係した公式を次に示す。
            平均応対時間(待ち時間+処理時間)=1/(1-ρ)・1/μ
    ここで、μ:単位時間当たりの平均処理人数、ρ:処理率(=λ/μ)、λ:単位時間当たりの平均到着者数である。

    (1) 0.5(分)
    (2) 1.0(分)
    (3) 2.0(分)
    (4) 3.0(分)
    (5) 5.0(分)


    解答案:3

    単位時間当たり平均到着数λ=90人/時=1.5人/分
    単位時間当たり平均処理人数μ=1人/0.5分=2人/分
    よって、処理率ρ=λ/μ=1.5/2=0.75
    平均応対時間=1/(1-ρ)・1/μ=1/(1-0.75)*1/2=1/0.25*1/2=4*1/2=2
    ※計算式が示されているので、難しく考えず素直に解けばすぐできます。「ポアソン分布に従う」とか、混乱させられる言葉にとらわれないことが大切です。

  2. 検査に関する次の記述で、もっとも適切なものを選択せよ。

    (1) 検査で不合格となった製品や建造物でも、その後、何らかの追加措置や部分的な手直しをもって性能を確保できる場合もあるので、不合格品を直ちに廃棄するのは得策ではない。
    (2) 最終成果物が設計で目標とした性能を満たしているか否か調べるには、数値でもって計測すること以外に検査の方法はない。
    (3) 製造施工の途中のプロセスでいくつかの検査を実施しても、一般に、最終製品の不合格率を低下させることには寄与しない。
    (4) 検査は極めて重要なので、常に部品や部材の全数検査をしなければならない。

    (5) 検査を行う主体は、すべて製造や建設に直接関与しない第3者(機関)でなければならない。

    解答案:1

    (1)・・・・○ そのとおり。ただし、不合格品の合格品への混入防止(識別)はきちんとやらねばならない。
    (2)・・・・× 定性的な測定(ガタつくなど)も検査方法としてあり。
    (3)・・・・× そんなことはない。成果品作成途中、解析中、設計妥当性検証など、大変有効である。
    (4)・・・・× 抜き取り検査でもよい(そちらのほうが主体である)。
    (5)・・・・× 設計者などの担当者自らや自社でも検査はできる。
    ※ISO9001を知っていれば簡単ですが、「以外にない」、「しなければならない」、「すべて」など言い切ってしまっているものを除けば絞れます。

  3. A地点からB地点に物資を陸上輸送するものとする。この場合、輸送に要する時間(輸送時間)をX時間とすると、輸送に要する経費は5X万円になる。一方、輸送中の振動や揺れなどの影響を受けることによって物資の市場価値がより低下することが懸念される。ここで、市場価値の低下分は125/(1+X)万円と見積もられている。トータルコストを最小にすべく輸送計画を立てるとすると、輸送時間をどのくらいに設定するのが適当か。

    (1) 1時間
    (2) 2時間
    (3) 3時間
    (4) 4時間
    (5) 5時間


    解答案:4

    輸送コストC=5X万円、市場価値低下D=125/(1+X)万円。
    トータルコストなのでC+Dを最小に持っていく。
    1時間の場合・・・・C=5*1=5万円、D=125/2=62.5万円、よって合計67.5万円
    5時間の場合・・・・C=5*5=25万円、D=125/6=20.8万円、よって合計45.8万円
    よって正解は(5)に近いほうにある。
    3時間の場合・・・・C=5*3=15万円、D=125/4=31.2万円、よって合計46.2万円
    4時間の場合・・・・C=5*4=20万円、D=125/5=25万円、よって合計45万円・・・・最小
    よって解答は(4)。
    **********皆様からの情報・ご指摘*****aokiさんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    この問題も解答直前を読む。「トータルコストを最小にすべく」ですので、H13の(1)2.と同じく最低値を求める問題であることをつかめば、あとはセオリー通り。
    y=5X + 125/(X+1)
    =(5X+5X+125)/(X+1)
    dy/dx={(10X+5)×(X+1)-(5X+5X+125)}/(X+1)
    ={(10X +15X+5-5X-5X-125)}  / (X+1) 
    =(X +2X-24) ×5 / (X+1) 
    dy/dx=(X+6)×(X-4) ×5 / (X+1)  =0
    X>0 により X=4
    解答は(4)。
    **********
    **********皆様からの情報・ご指摘*****Dr.nyasuさんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    f(x)=5x+125/(1+x)=5(x+1)-5+125/(1+x) 5(x+1)>0, 125/(1+x)>0
    なので相加・相乗平均の関係を用いて
    f(x)≧2√(5(x+1)*125/(1+x))-5=45
    等号成立は
    5(x+1)=125/(1+x) (x+1)2=52 x+1=±5 x>0
    より
    x=4 (答)
    ポイントは、a>0,b>0の時、相加・相乗平均の関係 (a+b)/2≧√(a*b) 等号成立条件:a=b が成り立ち、これを利用できるようにf(x)を変形するところです。
    【相加・相乗平均の関係の証明】
    a>0,b>0のとき√a,√bが定義でき (√a-√b)2≧0 が成り立つ。
    等号成立はa=bの時。
    左辺を展開するとa-2√(a*b)+b≧0となり、整理すると、相加・相乗平均の関係となる。

    **********

    ※計算式を作ろうとかあれこれ考える前にトライアル計算したほうが早いですが、効率的にやりましょう。全部計算してみて答えを見てから・・・・なんてことのないように。 そういうことができる資質が技術士には求められているのですから。
    ※・・・・とは言うものの、aokiさんのように一発で式を立てられる人はもっと効率的にできますね(^_^;)
    ※Dr.nyasuさんは相加・相乗平均の関係はエレガントです。最初はちょっとわかりにくいですが、紙に自分で式を書いて理解するよう努めてみてください。13年度にもこの方法で説ける問題が出ています。これを身につければ百人力ですね。

  4. 次の設計に関する記述の中で、もっとも不適切なものを選べ。

    (1) 設計・計画段階で解明されていない事象(法則や自然現象等)が理由で、後に不具合が発生したとすれば、その場合は設計者の責任は問えない。

    (2) 公共性の高い製品や構造物の設計において準拠しなければならない法律・通達・規準・示方書類は、一般には標準的なケースを想定している。特別な設計条件のためにこれらに従えない場合は、設計者は自己判断の許容される範囲を十分に確認した上で、責任を持って行動することが求められる。

    (3) 製造や施工において発生することが予測される不具合やリスクを回避することは、製造や施工に従事する設計者の責務なので、設計者が設計や計画段階でこれらを考慮する必要性はない。

    (4) 製品の販売や施工の現場を熟知していることは、より良い設計や計画を達成する上で大切な事である。

    (5) 公共性の高い事業の計画では、受益者であり負担者である納税者の近隣・地域・国レベルでの得失を考え、事業プロセスの透明性を十分に確保しておくことが重要である。


    解答案:3

    (1)・・・・△ そうかもしれない。
    (2)・・・・○ もっともらしい。
    (3)・・・・× そんな無責任な・・・・
    (4)・・・・○ もっともらしい。
    (5)・・・・○ もっともらしい。
    ※各選択肢をざっと斜め読みします。いちいちしっかり理解しようとしないで、「引っかかる」「気に入らない」ものを探すのが第一です。

  5. 各種のリサイクルに関する法律について、次の記述の中で誤っているものを選ぺ。
     
    (1) 特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)では、エアコン、テレビ、電子レンジ、掃除機、冷蔵庫、洗濯機などのうち、一定サイズ以上のものを特定家庭用機器として指定し、小売業者及び製造業者に対して、引取りと再商品化等といったリサイクルを推進することを義務付けている。

    (2) 容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容器包装リサイクル法)では、ガラス製容器、ペットボトル、紙製容器包装、プラスティック製容器包装の再商品化の義務を、容器包装を利用した中身メーカー、容器包装を生産・販売した容器包装メーカーなどの事業者に課している。

    (3) 食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)では、食品関連事業者(食品の製造・販売事業者など)が、食品廃棄物の発生抑制、減量化、また、肥料・飼料等の原料として食品循環資源の再生利用に取り組まなければならないとしている。

    (4) 建設工事にかかわる資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)では、一定規模以上の建設工事における、コンクリート、木材などの特定の建設資材について、その分別解体等及び再資源化等を対象建設工事受注者に対して義務付けている。

    (5) 国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)では、再生資源などの環境への負荷の低減に資する環境物品等への需要の転換を促進するため、国や地方公共団体に対して、環境負荷の少ない製品の調達の推進や調達方針を作成・公表する努力義務などを規定している。


    解答案:1

    (1)・・・・× この時点での家電リサイクルは4品目。
    (2)・・・・○ そのとおり。
    (3)・・・・○ そのとおり。
    (4)・・・・○ そのとおり。
    (5)・・・・○ そのとおり。
    ※身近な体験なども動員して、「怪しい」ものを探します。なお、家電リサイクル法の対象はテレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機の4つです。

  6. 次のうちから、誤っているものを選べ。

    (1) 自然物は設計という行為を経ないで存在しているが、一般的に人工物は設計という行為を経て存在している。

    (2) 設計された人工物が社会に及ぼす影響は、設計段階においては完全には把握できないものである。

    (3) 設計の仕様は、厳密に言えばすべてが言葉によって明示的に与えられているわけではなく、設計者が自分の判断と責任で付加する部分がありうる。

    (4) 設計物の使い方によっては、設計者が意図しない機能が発揮されることがある。

    (5) 設計仕様を満たす設計解はただ1つだけ存在する。


    解答案:5

    (1)・・・・○ そのとおり。
    (2)・・・・○ そのとおり。
    (3)・・・・○ そのとおり。脱マニュアル化ですね。
    (4)・・・・○ そのとおり。
    (5)・・・・× 「ただ1つだけ」ってことはないだろう。
    ※斜め読みがポイント。

(2)情報・論理に関するもの

  1. 一辺が2の正方形の中に、半径1の円が内接してあるとする。正方形の上から針の先端が正方形に入るように針をランダムに落とすと、針が円に入る確率はπ/4となる。この現象をシミュレートしてπを求める次のアルゴリズムの空欄[ア]に入る正しい選択肢を選べ。

     ・nを0に、mを1000に初期化する。
     ・乱数発生器を初期化する。
     ・以下の括弧内の手順をm回繰り返す。
       {・xに0から1の間の乱数を代入する。
        ・yに0から1の間の乱数を代入する。
        ・もし[ア]なら、nの値を1だけ増加する。}
     ・n/mを4倍する。


    (1) x+y<1
    (2) x<1かつy<1
    (3) x*x+y*y<1
    (4) x*x+y+y>1
    (5) x*x+y*y=1


    解答案:3

    要は、次のようなことをやっている。
    右図のように、円の中心を原点にしたXY座標を考える。
    x,yに0〜1までのランダム値を入れるということは、x=1、y=1で正方形の端だから、正方形の中には必ず「針が落ちる」。
    さらに円の中にも入ればカウンタ(変数n)を1つアップ。
    円内に入った場合、半径1cm以内、すなわち原点からの距離が1cm以内ということ。
    原点からの距離Lは、L=√x2+y2だが、L≦1cmなので、√を取って、x2+y2≦1でもよい。
    なお、簡単なBASICプログラムにすると下記のようになる(プログラムにできても答えがわかるわけではないが)。
        n=0:m=1000
        for I=1 to m
            x=RND:y=RND
            if x*x+y*y<1 then n=n+1
        next I
        print 4*n/m
    **********皆様からの情報・ご指摘*****aokiさんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    高校数学は、まずは、グラフを書くことです。これにより問題の概要がつかめます。
    「半径1の円」X2 +Y2=1のグラフ及び正方形の図を描く。
    「円に入る」・・・・円の中の領域は X2 +Y2 <1であります。
    解答は(3)らしい。
    あとは、斜め読みで「確率π/4」の意味を確認。「シュミレート」「乱数」の言葉を深く考えなくてもよい。

    **********

    ※何をやっているのか、各変数が何を表しているかがパッとわかるかどうか勝負です。右図のようなイメージが浮かべばOK。
  2. ジョーカーを除くトランプカード52枚のうちから1枚を抜き取った。
    ・このカードがハートであることを知った時の情報量は
         log24=2bit
     である。
    ・このカードがキングであることを知った時の情報量は
         log213=3.7bit
     である。
    このカードがハートのキングであることを知った時の情報量は次のどれか。

    (1) 1.2
    (2) 1.85
    (3) 3.1
    (4) 5.7
    (5) 7.4


    解答案:4

    Aカードが特定のマークである確率は1/4、特定の数である確率は1/13。
    要は確率Cをlog2Cとして情報化しているということ。
    「ハートのキング」のように特定マークで、かつ特定数である確率は1/(4*13)=1/52。
    よって、その情報量は、log252。
    22=4、23=8、24=16、25=32、26=64だから、25と26の間。
    よって正解は5と6の間。
    **********皆様からの情報・ご指摘*****nomuさんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    log2(4*13)=log24+log213=2+3.7=5.7
    **********

    **********皆様からの情報・ご指摘*****aokiさんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    確率の問題で、セオリー通りです。やはり、解答の直前を読みます。
    「ハートのキング」:積事象です。
    P(A∩B)=P(A)×P(B)
    に当てはめて、log2(4×13)。
    H14の1次試験では電卓持ち込み可能でした。(持ち込み不可の機種もありました。)log2(4×13)を計算できる電卓持ち込みが可能かH15手引書をよく読みましょう。指数、対数計算のできる電卓に慣れておきましょう。
    **********

    ※「2を底とする対数で確率を情報化している」というルールに気づけば楽勝です。52が2の何乗かを細かく出そうと思わないことも大切です。
     正確な数値でなく、「どれが正解か」がわかればいい というのが択一問題の特徴なのですから。
    ※nomuさん、そうですよね。A and Bだから単純にA*Bでいいんですよね。この場合でも、「13は2の3乗と4乗の間、4乗に近い」として概算します。
     しかし、こうして皆様にご指摘をいただくと、「数学的な頭」が失われていることを痛感します。技術士の端くれとしては恥ずべきことですね。
    ※aokiさん、電卓持ち込めたんですね。ご指摘の通り、指数・対数計算などを電卓でパパッとできることも必要な資質ですね。

  3. インターネットに関する次の記述の中から、誤っているものを選べ。

    (1) インターネットはコンピュータ同士が接続されたローカル・エリア・ネットワーク(LAN)が相互に接続されて世界中に広がったネットワークである。
    (2) インターネット上の電子メールでは、音声や画像のデータをバイナリデータの形式をそのまま送ることができる。
    (3) インターネット上に接続されたコンピュータには、1台ごとにIPアドレスと呼ばれる識別名がついている。
    (4) インターネット上の電子メールは、テキストデータ形式(7ビット文字符号系)でしか情報を送れない。
    (5) インターネットの普及は、商取引にも影響を与えている。

    解答案:2

    (2)と(4)が相反することを書いてあるので、どちらかが正解であることがまずわかる。よって、その他の選択肢は読む必要なし。
    メールでは画像・音声などのバイナリデータが添付ファイルとして送れる。
    しかしこれは、エンコード/デコードという変換処理を自動的にやっているのでそう見えるだけで、実際にはすべてのデータは7ビットASCIIコード(文字データ)で送られている。このエンコード/デコード機能を利用して7ビット文字データ以外のさまざまなデータ(バイナリデータ)をメールで送る規格がMIME規格で、OutlookExpressやNetscapeMessenger、PostPetなどの主要メーラーはこれに準拠している。これが「添付ファイル」機能の正体である。
    【参考:こちら
    8ビット文字データ(シフトJISなど)もISO-2022-JPというコード体系に変換して7ビット文字データで送信している。
    【参考:こちら
    以上により、(4)の記述は正しく、(2)の記述は誤りである。
    ※風太郎さんをはじめいろいろな方に情報をいただきました。最後は「やはり人まかせにしていてはいけない」と思い、自分なりに調べて結論を出しました。私は単純に添付ファイルはバイナリデータをそのまま送っているんだと思っていました。パソコン通信時代に「ish」という変換ソフトでテキストデータに直してから送ったりしていた記憶で「自動変換」など考えなかったんですね。あのishこそがエンコーダ/デコーダだったとは・・・・。でも、いい勉強になりました。
    ※問題の妥当性も議論になっていましたが、思っていたよりも単純な答えでした。「とにかくEメールというのは7ビット文字データしか送れないんだ。バイナリデータもシフトJIS文字も変換して送ってるんだ。」ということで、それぞれ規格があったということだったんですね。「問題作成者が知識不足だったのでは?」と疑ったこと、作成者にお詫びしたいと思います。

  4. 構文図を用いて文字列の集合を定義することができる。例えば、図1の構文図は整数の加減算式を定義している。この定義に従えば、1+2−3や1−2が整数の加減算式であることがわかるが、+1や-1は加減算式ではない。
     
    図1.整数の加減算式を定義する構文図 図2.a,bの文字列を定義する構文図

    次の文字列のうち、図2の構文図では定義されていないものを選べ。

    (1) a
    (2) b
    (3) ab
    (4) ba
    (5) aaa


    解答案:4

    図2の構文図で定義されないものだから、図1やその解説文は読む必要なし。
    図2を道順と考えれば、まずaに寄り道する場合があり、その場合はaに寄り道した分岐点より前に戻る。だから何度もaに行くこともあり得る。
    その後、aに行くかbに行くかの選択があり、それを通過した後でゴール。
    したがって、aは何度も通り得るが、bは1回だけ。またbの後にaに行くことはあり得ない。よって(4)はあり得ない。
    ※抽象的な図に悩むとダメです。道順などわかりやすいものに例えることがポイント。また、図1やその解説文をいちいち理解しようとしないことも大切です。


(3)解析に関するもの

  1. 次の記述の中で、誤っているものを選べ。

    (1) 電磁界解析では磁場が空気領域を遠方まで伝わるので、境界要素法や特殊な有限要素法が用いられる。

    (2) 物質のミクロな解析手法として知られる分子動力学法においては、解析のための時間ステップとしてしばしばフェムト法(10のマイナス15乗秒)程度のものが要求される。


    (3) 並列計算を行う場合、計算機台数が増加するにつれて一般に並列効率は向上する。なお、計算機をn台用いたとき、1台のときと比べて計算時間が1/anとなった場合、aを計算機n台のときの並列効率と呼ぶ。

    (4) ナビアストークス方程式において、レイノルズ数が大きくなると非線形性が増すために解を得ることが困難になる。

    (5) 人体表面電位から心機能を推定したり、渦電流から物体中の欠陥の大きさを推定する方法を逆解析手法と呼ぶ。

    解答案:3

    **********皆様からの情報・ご指摘*****三連星さんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    並列計算機の計算台数を増やすと、並列効率は「低下する」ので選択肢3が誤り。
    他の選択肢はよくわかりませんが、これ一発で決着。
    **********

    ※できれば避けたい問題。三連星さんのご指摘で正解は3ということがわりました。「知っていれば一発」ですね。

  2. 3次元直交座標系(x,y,z)におけるベクトルV(Vx,Vy,Vz)=V(x3,xy+y2+z,y2+z2)の点(1,1,2)における発散として、正しいものを次の中から選べ。ただし、ベクトルVの発散divVはdVx/dx+dVy/dy+dVz/dzで表される。

    (1) (3x2,x+2y,2z)
    (2) (3,3,4)
    (3) (3,3,0)
    (4) 6

    (5) 10

    解答案:5

    **********皆様からの情報・ご指摘*****風太郎さんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    Vx=x^3,Vy=xy+y^2+z,Vz=y^2+z^2より、dVx/dx=3x^2,dVy/dy=x+2y,dVz/dz=2z となります。これらに(x,y,z)=(1,1,2)を代入すると、簡単な計算で dVx/dx=3*1^2=3,dVy/dy=1+2=3,dVz/dz=2*2=4 であることが分かります。したがって、divV=dVx/dx+dVy/dy+dVz/dz=3+3+4=10。正解は5です。
    **********
    **********皆様からの情報・ご指摘*****aokiさんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    ベクトルの発散didVは δV/δX+δV/δY+δV/δZ で表される。
    偏微分の式なので一瞬戸惑うが「ベクトルの発散」の言葉を知らなくても、dy/dxの公式をセオリー通り使えばすぐに解答できる。

    **********

    ※パッと見てわからない問題は飛ばしておき、他にどうしようもなくなってから解くのが得策です。
     そもそも知識がなければ解けるわけがないので、上記のように感覚的に解いても、他設問解答番号とのバランス、エンピツころがしなどでもかまいません。
    ※風太郎さん、aokiさんのおかげでクリアに答えがわかりました。高校生数学のレベル、とのこと。汗顔の至りであります。(^_^;)

  3. 重みつき残差法を用いて、次のような2次元定常熱伝導問題を解くことを考える。
     
    支配方程式:k(d2T/dx2+d2T/dy2)+Q=0,領域Vにおいて (1)
    境界条件:T=0,Vの周辺Sにおいて (2)

    ここに、(x,y)は2次元直交座標系、Tは温度、kは熱伝導係数、Qは単位体積当たりの発熱率である。
    次に、領域Vにおいて既知の関数列Tj,j=1,2,3,・・・・,nを用いて求める関数Tを次のように近似する。

    (3)

    Tjを試験関数あるいは試行関数と呼び、ajは未知定数である。式(3)を式(1)に代入して残差

    (4)

    を求める。このとき、もし試験関数が問題の厳密解であれば残差は0となるはずである。しかし、式(3)が近似解であるため一般に残差は0とはならない。そこで重みつき残差法では平均的な意味で残差が0になるようにajを決定するわけである。すなわち、残差Rになんらかの重み関数Wj,j=1,2,3・・・・,nをそれぞれ乗じたものを領域V内で積分し、それらを0とおくのである。このことを式で表現すると

    (5)

    と書ける。なお、重みつき残渣法の代表であるガラーキン法においては、Wj=Tjである。
    上の説明をもとに次の中から誤っているものを選べ。

    (1) 式(3)に用いるTjとしては、x,yのべき級数がしばしば用いられる。
    (2) 式(3)においてnが大きくなるにつれて解の精度は向上する。
    (3) ajは座標(x,y)には無関係である。
    (4) 式(5)はajに関するn元連立方程式である。
    (5) 重みつき残差法を非線形の微分方程式の近似解法として用いることはできない。

    解答案:5

    **********皆様からの情報・ご指摘*****aokiさんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    重みつき残差法の問題です。問題文が長いので、「重みつき残差法」の分からない人はパスしましょう。「重みつき残差法」を知っている人は解答の前だけ読みましょう。大半は「重みつき残差法」の説明であり、必要な箇所は式(3)、式(5)だけですね。
    「線形微分方程式」は、「変数分離形」に直すことができ、数学の公式により解くことができる。それに対して、「重み付き残差法」は全ての方程式に使用できる。よって、(5)は誤り。解答:(5)
    大変高度な問題であり、簡単に説明できません。以下、極力分かりやすい言葉を選んで記述しました。
    (1)・・正しい。
    (2)(3)(4)は関連があります。
    式(5)はn元連立方程式であり、nが大きいほど連立方程式の解の精度が向上する。このため(2)も正しい。
    ajは式(5)の連立方程式の解であり、座標(x、y)とは関係ない。このため(3)も正しい。
    **********

    ※aokiさん、解説ありがとうございます。アドバイス通り、私のような数学苦手人間は避けたほうがいいようですね。


  4. 流れ場の中にdx,dy,dzを各辺の長さとする下図のような微小直方体を考える。単位時間にこの直方体に流入する質量から、直方体よ流出する質量を差し引いたものが、この直方体内の質量の時間変化である。考えている流体中に沸き出し(source)も吸い込み(sink)もないものとし、流体速度をv=v(x,y,z;t)=(u,v,w)、密度をρ=ρ(x,y,z;t)とするとき、この時間変化に関する方程式として正しいものを次の中から選べ。

     
    (1)
    (2)
    (3)
    (4)
    (5)

    解答案:2

    **********皆様からの情報・ご指摘*****風太郎さんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    この図は流体力学の教科書で「連続の式」を導出する時に出てくる図です。
    連続の式の導出自体はとてもややこしいので、連続式の一般形を理解(暗記)しているかどうかを聞く設問です。正解は2。
    これは流体力学の知識がないと解けないでしょう。工学部の専門課程レベルの問題です。 

    **********
    **********皆様からの情報・ご指摘*****伏龍さんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    (密度)=(質量)/(体積)を念頭において,単位時間当たりの密度変化(体積一定なので質量変化)に着目.
    dρ/dt(単位時間当たりの密度変化)=(x軸方向の密度変化)+(y軸方向の密度変化)+(z軸方向の密度変化)です.
    ここで(x軸方向の密度変化)=〔(流入質量)−(流出質量)〕/yz面です.
    つまり,(ρu)dydz−(ρu+∂(ρu)/∂x・dx)dydz=−〔∂(ρu)/∂x〕dxdydz.y軸とz軸も同様です.
    以上から,Aが正解となります(式が面倒なので簡略しますが,ご勘弁下さい)
    **********

    ※風太郎さん、伏龍さん、丁寧な解説ありがとうございました。
  5. 下図に示すような質量のない2つのバネからなる系を考える。ここに、上端は固定されており、u1とu2はそれぞれ点A,Bにおける変位、fは点Bに働く外力、k1とk2はバネ定数を示す。この系の全ポテンシャルエネルギー(=内部ポテンシャルエネルギー+外力のポテンシャルエネルギー)として正しいものを選べ。

    (1)
    (2)
    (3)
    (4)
    (5)

     


    解答案:4

    ----------【解答案】----------

    **********皆様からの情報・ご指摘*****風太郎さんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    バネ係数kのバネののびをXとすると、のびのエネルギーは「W=(1/2)KX^2」となります。この時点で正解は3か4。
    バネk2ののびは「u2−u1」なので、正解は4です。高校物理レベルの問題です。
    **********
    **********皆様からの情報・ご指摘*****伏龍さんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    バネによるエネルギー式は,E=(1/2)kx2.仕事量のエネルギーは,W=F・sです.
    まず,上の方の質点では,バネk1がu1伸びたので+(1/2)k1u12,かつ,バネk2がu1縮んだので−(1/2)k2u12
    次に下の質点で考えると,バネk2がu2伸びたので+(1/2)k2u22,そして,外力fは重力にしたがって,仕事をしたので−fu2です.これらすべてを合算すると,(1/2)k1u12+(1/2)k2(u2−u1)2−fu2でCが正解です.
    **********

    ※これも風太郎さんに正解をご教示いただきましたが、やはり択一セオリーで合っていました。これをもって、拙速に「一次試験は択一セオリーが通用する」と断定するのはどうかと思いますが、解析関連問題の出題担当者は素直な性格の同一人物なのでは?と思わせられます。
    ※伏龍さんに詳細な解説をいただきました。ありがとうございます。

(4)材料・化学・バイオに関するもの

  1. 材料は1つの原子や分子ではなく、それらの集合体である形になっているものとして使用されることが多い。例えば鉄で作られる鉄橋や、プラスチックでできた携帯電話のカバーなどを思い浮かべれば良い。それらのものは実用に耐えるための力学的強さを持っている必要がある。
    このことを踏まえ、次の記述のうち、最も適したものを選べ。

    (1) 材料の力学的応答には弾性的応答と粘性的応答があるが、力を受けるとそれに応じて材料が変形しひずみを生じ、弾性的応答のみによって応力σが生じるときは、応力は時間の経過とともに変化する。

    (2) 材料の比重は自重による破壊などを考慮するときに大切な数値であるが、代表的な材料である鉄、チタン、鉛、ガラス(窓ガラスに使われる無機ガラス)、プラスチックの比重を比較すると、軽い方からプラスチック、チタン、ガラス、鉄、鉛の順である。

    (3) 材料の強度を引っ張り試験で測定する場合、徐々にひずみを大きくしていくと最初はひずみに比例した応力が得られ、やがて破断に至る。このとき得られる荷重-変位曲線からひずみエネルギーを求めることができる。

    (4) 材料の破壊は材料の種類によって多くの状態が知られているが、一般的にある材料を用いて作られた成形体が均一で傷がない場合に比較して、小さな傷があるとそこに応力集中がおこり破壊しにくくなる。

    (5) 実用的な目的に使用される材料では、いつも何らかの荷重がかかっている場合があるが、時間とともに少しずつ変形して元に戻らなくなるのはプラスチックだけの特徴である


    解答案:3

    (1)・・・・× 弾性変形は、応力の時間的変化はない。
    (2)・・・・× チタンはガラスより重い。
    (3)・・・・○ その通り。
    (4)・・・・× 応力集中すると破壊しやすくなる。
    (5)・・・・× 塑性変形するのはプラスチックだけではない。

    ※雑学やかすかな記憶、身の回りの事柄などを動員して絞り込みます。文末でほとんど判断できます。

  2. 材料を製造するときは、できるだけ製造のときに消費されるエネルギーを少なくし、環境に悪影響を及ぼさないように配慮される。また、長く使えるように耐久性をあげる工夫もされている。
    このことを踏まえ、次の記述のうち、最も適したものを選べ。

    (1) 天然の木材は腐食されやすい構造をしているが、材料のうちでは比較的長く使えてひび割れなども起こりにくい。この理由は、木材は木から切り出して製材しても生きているので外的に対しても防御ができるからである。

    (2) 自動車のバンパーなどの材料として大量に使用されるポリプロピレンは、石油を精製してプロピレンを取り出し、それを重合すれば得られる。このようにして大量に使用される汎用プラスチックの反応回数は、1回か2回に限定されている。

    (3) 溶鉱炉や転炉で鉄を溶かすときには、1,000℃以上の高い温度が必要である。そのため、電気で加熱するので多くのエネルギーを必要とするが、高温で精錬するからこそ耐食性に優れた鉄ができる。

    (4) 銅は、歴史的にも古くから使われてきた金属であるが、最近では日本の銅は輸入に頼っている。外国の銅山では地中から酸化銅の形で掘り出される。従って、精錬の時には酸素を除去すれば良いので、エネルギーは消費するが有害物質の発生は少ない。

    (5) 石油や石炭は、化石時代の生物の死骸が堆積したものと考えられている。従って石油や石炭を燃焼させるとき、塩素などの存在には気をつけなければならないが、石油や石炭自体には生物に有害な毒性物質はあまり含まれていない。

    解答案:4

    (1)・・・・×  「生きている」のであれば、新陳代謝や栄養確保、成長、繁殖などを行うことになる。家の柱から枝が出てきてしまう。^^;
    (2)・・・・× 限定されてはいない。
    (3)・・・・× 溶鉱炉は電気による過熱には頼らない。
    (4)・・・・○ その通り(らしい)
    (5)・・・・× 塩素ではなく硫黄。CHONSPのうち2番目に抜けていく。
    **********皆様からの情報・ご指摘*****三連星さんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    選択肢3 転炉で鉄を溶かす(注:銑鉄から鋼鉄にする)場合、酸化熱の発生により熱の補給は不要。
    選択肢4 銅鉱石としては黄銅鉱が最も多いが、これは酸化銅でなく硫化銅。
    (以上、平凡社 マイペディアより)
    選択肢5
    石油や石炭の燃焼時に「塩素」の存在注意というのは、原子番号が1つ手前の「硫黄」のことでは?
    そうすると、消去法で2が正解らしいですが、裏付けが私にはとれません。
    **********
    **********皆様からの情報・ご指摘*****風太郎さんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    国内の銅鉱生産はほとんどが黄銅鉱などの硫化銅です。硫化銅の精錬では有毒な硫化ガスなど有毒ガスなどの発生が問題になります。
    一方海外だけに分布する「斑岩銅鉱床」という銅鉱床では、地表から150m位までの深度に酸化銅の層があり、その下に硫化銅の層が発達するそうです。そこで斑岩銅鉱床のある鉱山では、露天掘りで酸化銅を、坑掘りで硫化銅をそれぞれ生産しているようです。酸化銅の精錬では、硫化ガスの発生が無い分有毒な廃棄物の発生が少ないのは確かです。
    問題文は概ね妥当かと思うのですが、海外で生産されているのが酸化銅であると言い切ってしまうあたりが気になります。せめて「海外の銅山では酸化銅の生産が多い」とか「海外の露天掘り鉱山で生産されるのは酸化銅である」といった表現であればすんなり納得がいくのですが・・・。
    まあ最も誤りの少ない選択肢として、私は4が正解ではないかと思います。
    <参考サイト:
    こちらこちら
    **********
    ポリプロピレンの再生には、熱溶解による再成型と熱分解による油化の2つの方法があります。ポリプロピレンは熱分解すると原料のプロピレンに戻るそうなので、そこからまたポリプロピレンを合成するのに回数制限があるとはちょっと考えにくいです。
    l
    **********
    一般的には酸化銅よりも硫化銅の方が資源が多いそうです。
    しかしながら、「斑岩銅鉱床」については下記のサイトに次のような記述があります。
    ※斑岩銅鉱床(Porphyry Copper Deposit)斑岩(ポーフィリー)などの貫入岩に伴う大規模・ 低品位な鉱染状銅鉱床で、環太平洋造山帯、アルプスーヒマラヤ造山帯に 広く分布する。銅の資源として最も重要な鉱床タイプで、世界の銅の50%以上 を供給している。ノースパークス鉱山のE26鉱体は直径200〜300m、 長さが800m以上のパイプ状をなす。

    したがって、斑岩銅鉱床の露天採掘による酸化銅鉱石の産出は、世界の銅生産にとって無視出来ない位高い割合を占めていると推測します。
    そこで次の3点を押さえておけばいいのではないでしょうか?
    1.「斑岩銅鉱床」が重要
    2.斑岩銅鉱床では浅い深度に酸化銅の層が、深い深度に硫化銅の層があり、酸化銅と硫化銅の両方が生産される
    3.露天採掘では浅い層にある酸化銅鉱割合が高い
    **********
    斑岩銅鉱床 石原(1977)による解説〔『現代鉱床学の基礎』(203-204p)から〕
    こちら
    銅供給構造の変化に関する一考察
    こちら
    これらの資料にざっと目を通していただければ、世界の銅鉱石の生産方法が坑内掘りから大規模な露天掘りに、また産出される鉱石は硫化銅から低品位の酸化銅鉱石へ移行していることは明らかです。
    酸化銅の精錬では硫化ガスが出ない分、硫化銅に比べれば有毒物質の発生が相対的に少ないのは明らかです。銅イオンそのものにも植物の生長を阻害する作用がありますので有害であるとはいえますが、問題文の記述は誤りではありません。
    **********

    ※こういうわからない問題は避けましょう。 どうしようもなければ、あまり深く考えないで感覚的に答えます。
    ※当初は考えもしなかった「銅鉱石」が正しいのではないかと、これは風太郎さんに大変なお骨折りをいただき結論づけられました。また三連星さんにも情報をいただきました。感謝申し上げます。議論の内容全部は引用しませんでしたが、大変勉強になりました。
    ※銅鉱石の生産が、硫化銅から酸化銅に移行していることなど、高校や大学で多くの学生が学ぶことなのでしょうかね?結局、基礎科目で出題するには疑問の残る問題でした。

  3. ナノ(nと記す)は単位に用いる接頭語であり、近年、種々の分野で頻繁に用いられる。ある化合物1nmol/lの水溶液1nl中に含まれる化合物の分子数はおおよそ何個か。最も近い数値の番号を次から選べ。
    (nmol:ナノモル、nl:ナノリットルを表す)


    (1) 103
    (2) 106
    (3) 109
    (4) 1012
    (5) 1015


    解答案:2

    ナノは10-9だから、1nmol/l=10-9mol/lで、さらにこれを1nlなので10(-9-9)mol=10-18mol。
    1mol中の分子数はアボガドロ数で6*1023くらいだった(はず)だから、
    6*1023*10-18=6*10(23-18)=6*105
    これに一番近いのは(2)の106

    ※アボガドロ数を覚えていて、これが出てくるかどうかの勝負です。6より細かい数字(正確には6.02)はどうでもいいですが、1023の方を覚えているかどうかですね。

  4. 触媒について述べた以下の文章のうち、正しいとはいえないものはどれか。

    (1) 触媒は、反応の経路を変化させて活性化エネルギーを高くする。
    (2) 触媒には、固体状態で使用するものと、溶解させて使用するものとがある。
    (3) 触媒の性能を評価する場合、反応の転化率だけでなく、反応の選択性や耐久性も重要な要素となる。
    (4) 触媒は、反応の過程で反応物と共有結合や非共有結合を形成する。
    (5) 不斉触媒は、光学活性化合物を合成する反応に用いられる。

    解答案:1

    **********皆様からの情報・ご指摘*****つかぬことですがさんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    多くの触媒は活性化エネルギーを低くして反応し易くするものなので、ひとまず「正しいとはいえない」と言える。しかしガソリンに加えるアンチノック剤の様に反応を置きにくくする負触媒と呼ばれるものも存在するため「誤りともいえない」。他の選択肢は正しいと言える。そこで論理の問題が残る。選択肢1は「正しいとはいえない」のでこれを選べば良いが上の事情を知っている人は「誤りとも言えない」ためストレス(不安や躊躇)が残る。論理を貫けば1を選べるのが、そんなことを受験者(特に解っている人は辛いという仕組み)に要求すべきだろうか。出題者の倫理に欠けると思う。もし負触媒が出題者の念頭になかったのなら単なるお粗末である。(負触媒は独立見出しとして岩波の理化学辞典にも載っている)
    **********

  5. 化学反応と生体反応について述べた次の文章のうち、正しいとはいえないものはどれか。

    (1) 物質生産においては、酵素反応と合成化学との組合せや、バクテリアの利用と合成化学との組合せが可能であり、いずれも実際に行われている。
    (2) 水中で行う有機化合物合成が最近研究されているが、一方、酵素反応を有機溶媒中で行う試みもある。
    (3) グリーンケミストリーとは、環境への低負荷をめざして化学合成の高効率化を図る試みである。
    (4) 酵素の反応は、一般的に基質特異性が極めて高いが、天然には存在しない合成分子の反応にも利用することができる。
    (5) 生体内反応は、自由エネルギーで議論することはできないが、化学反応の進行のしやすさは、自由エネルギーで議論することができる。


    解答案:5


  6. ンパク質を構成するアミノ酸は計20あるが、アミノ酸1個に対してDNAを構成する塩基3つが1組となって1つのコドンを形成して対応し、コドンの並び方、すなわちDNA塩基の並び方がアミノ酸の並び方を規定することにより、遺伝子がタンパク質の構造と機能を決定する。しかしながら、DNAの塩基はアデニン、チミン、グアニン、シトシンの4種類あることから、可能なコドンは4×4×4=64通りとなり、アミノ酸の数20をはるかに上回る。
    この一見して矛盾しているような現象について、次の中からもっともふさわしい説明を選べ。


    (1) アミノ酸の基本数は20個であるが、生体内では種々の修飾体が存在するので、64−20=44のコドンがそれらの修飾体に使われる。
    (2) 64−20=44のコドンのほとんどは20個のアミノ酸に振分けられ、1つのアミノ酸に対していくつものコドンが存在する。
    (3) 64のコドンは、DNAからRNAが合成される過程において配列が変化してアミノ酸1つに対して1種類のコドンに収斂する。
    (4) 生物の進化に伴い、1つのアミノ酸に対して1つのコドンが対応するように64−20=44のコドンは、タンパク質合成の鋳型に使われる遺伝子には存在しなくなった。
    (5) コドン塩基配列の1つめの塩基はタンパク質の合成の際にはほとんどの場合、遺伝情報としての意味をもたない。

    解答案:2

    同義コドンのことだと判断。

    ※DNAの基礎知識(コドンのごく基礎的な知識)を知っていれば一発。DNAのことをざっと知るなら
    こちらこちらがお勧め。
  7. 遺伝情報はDNAに記されているが、生体の機能はほとんどがタンパク質の働きに依存している。したがって、生物が同じ形質をもった子孫を作り出すためには同じ遺伝子から同じ機能をもったタンパク質を作り出すための規則的な流れが必要である。DNAからタンパク質への情報の流れの中間に位置する物質をRNAとし、DNA→RNA→タンパク質の一連の流れを提唱した人がDNA2重らせんを発見したワトソンとクリックである。中心主義と呼ばれるこの遺伝情報の流れは、その後の研究で次々と正しいことが証明され、現代生物学の基本となったが、例外も見つかった。この例外において、次の中からもっとも不適切な説明を選べ。

    (1) RNAからDNAを合成する流れがみつかった。
    (2) DNAやRNAを必要とせずに生体内でアミノ酸を合成させる酵素がみつかった。
    (3) タンパク質の代表的機能である酵素作用をもつRNAがみつかった。
    (4) RNAを必要としないでDNAから直接タンパク質が合成される流れがみつかった。
    (5) DNAではなくRNAを最初の遺伝情報とする生物がみつかった。


    解答案:4

    (1)・・・・○ その通り。
    (2)・・・・○ その通り。
    (3)・・・・○ その通り。
    (4)・・・・× そのようなことはありません。
    (5)・・・・○ その通り。

    ※DNA、RNAなどに関するある程度の知識があれば解けるでしょう。お勧めサイトは前述しました。

  8. 分子生物学の発展にともなって、いわゆるバイオと総称される一連の遺伝子工学的技術も大きな進展を遂げたが、現代社会は生命に関する倫理上の大きな問題に直面することにもなった。これに関連した次の文章につき、かっこ内に入る最もふさわしい語句の組合せを選べ。

    クローン人間の作出が可能になるまでになった現代社会は、かつてないような厳しい倫理問題に直面しているが、その作出法と道の危険性を十分に理解することは人類の将来を考えるに当たってきわめて大切なことである。ヒトも含めてクローン動物の作出に必要な技術は体外受精と(ア)細胞の樹立である。(ア)は哺乳類の受精卵由来の初期胚からクローン化されたもので、分化できる全能性の細胞である。一方、(イ)細胞は生物体を構成している全細胞のうち(ウ)細胞以外のものを総称し、既に分化を終えこれ以上分化できないとされる細胞である。クローン動物の作出に当たっては、(イ)の核を、同種の核を不活性化した未受精卵に移植し、 新たに(イ)の核に分化能力を与えて仮親で発生させる。このような技術で最初に作出されたクローン動物は(エ)であるが、(オ)が早まる危険性も生じている。
     
    (ア) (イ) (ウ) (エ) (オ)
    (1) 胚(性)幹 生殖 老化
    (2) 胚(性)幹 成熟
    (3) 胚(性)幹 成熟
    (4) 胚(性)幹 生殖 老化
    (5) 胚(性)幹 成熟

    解答案:1

    体細胞クローンのことを言っており、(イ)が体細胞、(ウ)が生殖細胞だから、(1)しかない。
    これがわからなくても、羊のドリーは有名だし、老化が顕著であることも一般に知られている。(エ)が羊で(オ)が老化というと(1)しかない。

    ※これは単純に知識があるかどうかの勝負です。クローンに関する問題はよく出るので、基礎知識は押さえておきましょう。

(5)技術連関

  1. 環境問題に関する次の記述について、生後を正しく組み合わせているものを選べ。

    ア) 大気に排出される硫黄酸化物及び窒素酸化物は、都市の規模での大気汚染問題の原因となると同時に、準地球規模で酸性降下物の問題をもたらす。
    イ) 化石燃料に依存しない再生可能エネルギー源の中で代表的なものは水素ガスであり、燃料電池による発電の普及が期待されている。
    ウ) 廃棄物への取り組みとして近年言われる3RとはRetain、Reuse、Recycleであり、これらを通じて処分する廃棄物の量を減らすことがねらいである。
    エ) 同量のエネルギーを得るために化石燃料の燃焼によって発生する二酸化炭素の量を天然ガス、石油、石炭の中で比較すると、石炭が最も多い。

     
    (ア) (イ) (ウ) (エ)
    (1)
    (2)
    (3)
    (4)
    (5)

    解答案:5

    (ア)・・・・○ そのとおり。この時点で(4)か(5)に絞れる。違いは(イ)と(エ)なので、(ウ)はもう読まない。
    (イ)・・・・×? 水素ガスを使った燃料電池なんて知らないぞ。だいたい爆発性があるから危ないだろう。時間がなければここで(5)に絞って次に行ってもよい。
    (エ)・・・・○ そのとおり。よって答えは(5)に絞られた。
    **********皆様からの情報・ご指摘*****三連星さんに情報をいただきました。ありがとうございます。
    燃料電池: 知恵蔵1996年版より
    「水素燃料を大気中の酸素と電気化学的に反応させ、直接発電させる装置。燃料の水素は天然ガス、ナフサ、メタノールから製造できる。」よって、この部分については選択肢は正しいのですが、
    水素を天然ガスやナフサから製造するなら、再生可能エネルギーといえそうにありません。
    再生可能エネルギーとは、水力、風力、太陽光、バイオマスなど。
    **********

    ※正誤組み合わせ式の問題は、確実にわかる選択肢をまず探し、そこから絞り込んでいきます。これに無関係な選択肢は読む必要はありません。

  2. 地上に到達する太陽エネルギーは、真昼時に太陽光に直面する1平方メートルあたりにして、晴天時には最大パワー約1kWになるが、年間を通じての太陽エネルギー総量はわが国では1,000kW時/uである。電気への変換効率が約10%で受光面積50平方メートルの太陽電池システムを真昼に太陽に直面するように設置した場合、この太陽電池システムは石油火力発電所で使用する石油を年間何トン代替することができるか。石油火力発電所の効率を40%、石油1トンの発熱量を1,000万kcalとして、次の中から正しいものを選べ。なお、1calは約4.2Jである。

    (1) 0.5トン
    (2) 1トン
    (3) 3トン
    (4) 5トン
    (5) 10トン


    解答案:2

    1,000kW時/u*10%*50u=5,000kW時。
    1W=1J/秒、1W秒=1Jだから、5,000kW時=5,000*60*60kW秒=5*103*3.6*103*103J=18*109J≒1.8*1010J
    1,000万kcal*40%=400万kcal≒1,700万kJ=1.7*107*103J=1.7*1010J
    よって、1.8*1010/(1.7*1010)≒1

    ※とにかく単位をそろえることです。1W=1J/secという単位換算の知識がないと解けません。

  3. リスクは、次式で定義される。
        リスク≡生起確率×影響度
    リスク評価に際して、リスク・マトリックスを使用する。リスク・マトリックスの縦軸は生起確率、横軸は影響度を示すランク付けである。定性的に3ランク付け(縦軸:高・中・低、横軸:大・中・小)としたリスク・マトリックスを図に示す。リスクの判定基準を(高・中・低)の3ランクとした場合の正しいものを次から選べ。

     
      影響度
    生起確率

     リスク・マトリックス(?:判定基準)

    (1) 生起確率が高であれば、影響度に関係なく、リスクは高。
    (2) 生起確率が高、影響度が中であれば、リスクは高。
    (3) 生起確率が中、影響度が中であれば、リスクは低。
    (4) 生起確率が低、影響度が中であれば、リスクは中。
    (5) 生起確率が低であれば、影響度に関係なく、リスクは低。


    解答案:2

    題意に従い、高中低3ランクでリスク判定する表を埋めれば下表のとおりで、選択肢で表に合致しているのは(2)のみ。

     

    影響度

    生起確率

    ※リスクは毎年出ています。リスクの定義、リスクマトリクスは知っておきましょう。
     リスクに関する基礎知識導入には、Webラーニングプラザの総合技術監理コーナーがお勧めです。将来の技術士総監部門受験にも役立ちます。
    ※おおむね問題と同じ条件での定性的なリスク評価図は右図のようなものです。
     ここで「リスク削減領域」をリスク高、それ以外をリスク中・リスク小とします。
     単純にリスク保有(図の緑の領域)の6マスをリスク中・小それぞれ3マスづつに分けるなら、対角線上の3マスが「リスク中」となります。


  4. 18世紀後半からイギリスで産業革命を引き起こす原動力となり、現代工業社会の基盤を形成したのは、自動織機や蒸気機関などの新技術だった。これらの技術発展について、正しくないものを次の中から選べ。

    (1) 一見新しく革命的に見える技術も、多くは既存の技術をもとにして改良を積み重ねることで達成されたものである。
    (2) 新技術の発展により、手工業的な作業場は機械で重装備された大工場に置き換えられていった。
    (3) 新しい技術のアイディアには、からくり人形や自動人形などの娯楽製品から転用されたものもある。
    (4) 新技術の開発は、当時ヨーロッパ各地に広がっていた各大学の研究者が主導したものが多く、産学協同の格好の例といえる。
    (5) 新しい技術は生産効率を高めたが、反面で安い労働力を求める産業資本が成長し、長時間労働や児童労働などが社会問題化した。


    解答案:4

    消去法で解ける。
    (1)・・・・○ もっともらしい。
    (2)・・・・○ そんな気がする。
    (3)・・・・○ ありそうな話だ。
    (4)・・・・? どうだろう?学者バカともいう。産学協同も最近の話じゃないか?
    (5)・・・・○ そうだと思う。「ああ野麦峠」なんかそうだ。

    ※知識よりも感覚の問題です。