アスファルト舗装要綱 ※この資料は、伏龍さんにご提供いただきました。

CONTENTS
2-2 舗装の構成と役割
 2-2-1 概説
 2-2-2 各層の役割
2-3 構造設計の考え方
 2-3-2 設計条件の把握
2-4 設計交通量
 2-4-1 概説
 2-4-2 設計交通量のとらえ方
 2-4-3 設計交通量の決定
2-5 路床の設計
 2-5-4 路床の構築
4-6 基層および表層用加熱アスファルト混合物に対する特別な対策
 4-6-1 概説
 4-6-2 重交通道路における耐流動対策
 4-6-3 耐摩耗対策
 4-6-4 はく離防止対策
9-5 排水性舗装
 9-5-1 概説
 9-5-2 舗装構成
 9-5-4 配合
付録-1 用語の説明

2−2 舗装の構成と役割

2−2−1 概説
 アスファルト舗装は,通常,表層,基層および路盤からなり,路床の上に築造する.路盤は,一般に上層路盤と下層路盤に分けて築造する.

2−2−2 各層の役割
(1)表 層
 表層の役割は,交通荷重を分散して下層に伝達する機能とともに,交通車両による流動,磨耗ならびにひびわれに抵抗し,平坦ですべりにくく,かつ快適な走行が可能な路面を確保することである.また,一般に雨水が下部に浸透するのを防ぐ役割も有している.
 表層には,加熱アスファルト混合物を用いる.
(2)基 層
 基層の役割は,路盤の不陸を整正し,表層に加わる荷重を路盤に均一に伝達することである.
 基層には,通常,加熱アスファルト混合物を用いる.
(3)路 盤
 路盤の役割は,上層から伝達された交通荷重をさらに分散して路床へ伝達することである.このため,路盤は,耐久性に富む材料を用いて,必要な厚さに締め固める.
(4)路 床
 路床は舗装の下の厚さ約1mの部分をいう.路床の役割は,舗装と一体となって交通荷重を支持し,さらに,路床の下部にある路体に対して,交通荷重をほぼ一定に分散することである.
 路床は,その上に築造される舗装の施工基盤としての役割も持つ.

2−3 構造設計の考え方

2−3−2 設計条件の把握
 構造設計にあたっては,交通条件・路床条件・気象条件・材料条件等の設計条件に関する調査を行う.
(1)交通条件
 交通条件は舗装の相対的な強度を表す等値換算厚(TA)を決定する直接の条件であり,設計交通量として表現される.設計交通量は5トン輪荷重に換算した輪数を用いるのがより厳密な方法であるが,一般的には大型車交通量に応じた設計交通量の区分を用いる.なお,設計交通量の決定にあたっては,将来の交通量の変動を考慮する必要がある.
(2)路床条件
 交通条件とともに,路床の支持力は舗装の所要の等値換算厚(TA)を決定する直接の条件であり,構造設計上,欠かすことのできない条件である.TAを用いて構造設計を行う場合の路床の支持力の評価は,設計CBRにより行う.TAによらずに構造設計を行う場合は,設計CBRのほかに弾性係数等の指標により路床の支持力を評価する.路床の支持力は,同一の舗装断面としたい区間の中においても変動することがあるため,調査にあたってはその変動を十分把握できるよう配慮する.
(3)気象条件
 代表的な気象条件は気温である.気温は構造設計上,凍結深さを算定するための第一条件であり,さらに,材料の選択においても重交通路線における耐流動対策,あるいは積雪寒冷地域における耐摩耗対策等を検討する場合にも必要な条件である.
(4)材料条件
 材料は設計者が選択可能な条件である.これについては,使用する材料により等値換算係数が異なるため,材料の種類によって層厚が異なることになり,舗装の構造設計に影響する.また,路床で置換えや安定処理を実施する場合,使用する材料や工法によって設計CBRが異なることになるため,舗装構造に影響することになる.セメントコンクリートのように剛性の高い材料や,舗装構造の強化を目的とした材料を使用する場合は,TAによらずに構造設計を行うことになり,材料条件が構造設計の手法に影響することになる.
(5)その他の条件
 その他の条件として,橋やトンネル等の施工箇所の条件,あるいは地下水位等の条件がある.橋やトンネルでは舗装の構造はほぼ限定されたものになる.また,地下水位の条件は地下排水の採否に関係する.さらに,橋やトンネルを含め,補修が困難な箇所の舗装では,新設の段階からとくに耐久性の面で配慮を要する.

2−4 設計交通量

2−4−1 概説
 舗装の構造設計にあたっては,設計期間における交通量の推定を行い,設計交通量を決定する.

2−4−2 設計交通量のとらえ方
 設計交通量は,一般に大型車交通量によるものとする.

2−4−3 設計交通量の決定
 構造設計に用いる設計交通量は,設計期間における平均の1日1方向あたりの大型車交通量とし,次のように区分する.

設計交通量の区分 大型車交通量(台/日・方向)の範囲
L交通 100未満
A交通 100以上   250未満
B交通 250以上 1,000未満
C交通 1,000以上 3,000未満
D交通 3,000以上


2−5 路床の設計

2−5−4 路床の構築
 路床の構築は,一般に次のような場合に行う.
  @ 路床の設計CBRが3未満の場合.
  A  路床の排水や凍結融解に対する対応策をとる必要がある場合.
  B  舗装の仕上がり高さが制限される場合.
  C  路床を改良したほうが経済的な場合.

4−6 基層および表層用加熱アスファルト混合物に対する特別な対策

4−6−1 概説
 耐流動性,耐摩耗性,すべり抵抗性,耐はく離性など加熱アスファルト混合物が有している性能の一つをとくに向上または改善する必要のある場合,混合物に対して特別な対策を施す.

4−6−2 重交通道路における耐流動対策

 大型車交通量の多い道路では,路面にわだち掘れが生じやすいので,とくに耐流動性を向上させた混合物を表層または表層・基層に使用する.
 とくに大型車交通量の多いところでは表層による耐流動対策だけでなく,基層まで含めた耐流動対策を検討する.

4−6−3 耐摩耗対策
 積雪寒冷地域や路面の凍結する箇所では,タイヤチェーン等による路面の摩耗が激しい.したがって,そのような地域では耐摩耗性の高い混合物を表層に使用する.
 アスファルト量が多いほど耐摩耗性は向上するため,耐摩耗用混合物はアスファルト量が多くなる傾向にあるので,夏季の耐流動性についても考慮しておく.

4−6−4 はく離防止対策
 アスファルト混合物におけるアスファルトと骨材のはく離は,一度発生すると修復は困難である.したがって,はく離が予想される場合には,はく離防止対策を施す.
 一般に次のような場合にはく離防止対策を施す.
  @  過去に著しいはく離が生じた材料(とくに骨材)をやむを得ず使用する場合.
  A  既設舗装に著しいはく離が生じている箇所において打換え,オーバーレイなどの修繕を行う場合.
  B  地下水位が高い箇所の場合.
  C  PIの値が規格値の上限に近い上層路盤材を使用する場合.
  D  橋面で,とくに床版の排水が悪い場合.

9−5 排水性舗装

9−5−1 概説
 排水性舗装は路面より雨水をすみやかに排水することを目的として,排水性舗装用アスファルト混合物を表層・基層に用い,路盤以下へ水が浸透しない構造とする.
 排水性舗装用アスファルト混合物は,安定性,耐久性に関して各種耐久性試験によって十分確認したものとする.
(1)特長と適用箇所
  @  透水性舗装は,歩行者系道路を対象として路面の水を路盤以下へ浸透させるのに対し,排水性舗装は車道を対象として,路盤以下の強度が低下しないよう,路盤以下へ水が浸透しない構造とする.
  A  排水性舗装は,雨天時の水はね防止,ハイドロプレーニングの防止,夜間・雨天時の視認性の向上のほか,車両の走行騒音の低減などの付加的な効果もあるので,これらの特長を生かして,必要な箇所を選定し使用する.
(2)適用にあたっての留意事項
  @  排水性舗装は空隙率の大きな開粒度タイプのアスファルト混合物を用いるため,材料(骨材,バインダ)の選択,配合および施工についてはとくに配慮する必要がある.
  A  空隙率が大きいため,雨水・日光・空気等による劣化を受けやすい.したがって配合設計においてはできるだけバインダの膜厚を厚くすることが望ましく,このような目的に対しては特殊な高粘度の改質アスファルトや植物性繊維等の使用を考慮する.
  B  排水性舗装の機能を持続させるためには,当初の空隙率を維持する必要がある.供用開始後,ごみ・土砂などが侵入して目詰まりするとその機能が低下するので,定期的に機能を回復させる維持管理や,周辺土砂が流入しないように処置を講じることが必要である.
  C  縦断勾配の大きな急坂路に適用した場合,坂の下部において水の噴出または水たまりができることがあるので,このような場所で適用する場合は,坂路途中での路肩の排水構造物へ水を流出させる等の排水対策を別途検討する.

9−5−2 舗装構成
 排水性舗装の舗装構成は,表層または表層・基層に排水性舗装用アスファルト混合物を使用し,下の層が不透水層で,雨水等が舗装内部に滞留しない構成とする.

9−5−4 配合
 排水性舗装用アスファルト混合物の配合にあたっては,透水機能,耐久性を考慮した配合を行う.

付録−1 用語の説明

1.アスファルト舗装
 骨材をアスファルトで結合してつくった表層をもつ舗装.一般に表層・基層および路盤からなる.セメントコンクリート舗装を剛性舗装と呼ぶのに対して,たわみ性舗装ということがある.
2.交通量の区分
 舗装の設計に用いる交通量の区分.設計期間(原則として10年)における平均の1日1方向あたりの大型車交通量により,L・A・B・C・Dに区分している.この区分によって目標とする等値換算厚(TA)を定めている.
3.CBR
 路床・路盤の支持力を表わす指数.直径5pの貫入ピストンを供試体表面から貫入させたとき,ある貫入量における試験荷重強さと,同じ貫入量に対する標準荷重強さの比で,百分率で表わす.通常貫入量2.5mmにおける値をいう.
4.設計CBR
 アスファルト舗装の厚さを決定する場合に用いる路床の支持力.路床土がほぼ一定の区間内で,道路延長方向と路床の深さ方向について求めたいくつかのCBRの測定値から,それらを代表するように決めたものである.
5.TA法
 アスファルト舗装の構造設計手法のひとつで,路床の設計CBRと設計交通量に応じて目標とするTA(等値換算厚)を下回らないように舗装の各層の厚さを決定する手法.この手法はバランスのとれた舗装の構成を前提条件としており,従来あった舗装全厚の目標値(H)は設けず,各層ごとの最小厚さのみ限定を受ける.
6.等値換算厚(TA)
 アスファルト舗装の路盤から表層までの全層をすべて表層,基層用加熱アスファルト混合物でつくると仮定した場合に必要な厚さ.
7.等値換算係数
 舗装を構成するある層の厚さ1cmが表層,基層用アスファルト混合物の何cmに相当するかを示す値.
8.PI(塑性指数)
 土あるいは路盤材料中に含まれている細粒分等が塑性状態にある含水量の大きさをいい,液性限界と塑性限界の含水比の差で表わされる.この指数は土の分類に使われるほか,路盤材等の品質規格の判定項目にも使われている.また,アスファルト針入度と軟化点の関係から,そのアスファルトの感温性を表わす指標もPIという.