最終更新:2024.06.04
答案用紙 フォーム
2024(令和6)年度出願書式等(技術士会HPからダウンロードできるものと同じものです)
これで出願書類を作成します。
Excelの入力解説です。
受験申込み案内です。必読。
Excelマクロが動かない時はこちらを使います。
技術士試験出願方法は、郵送による書類提出のみです。
出願書類の配布は3月25日から、出願受け付けは4月1日(月)から4月15日(月)までです。
標準的な出願手順
出願手順は、次のようになります。
- 受験申込書様式等をダウンロードする
Excelファイルです。申し込み案内もダウンロードできますので、熟読してください。 - 申込書と経歴票をPC上で入力しPDF→印刷する
申込書と経歴票はExcelシート上で各項目に入力できるようになっています。
なお、各項目には字数制限があります。2020年度まではPDFファイルに入力していたので、空欄を残した状態で印刷して手書きで補足することができましたが、Excelシートでは字数制限を超える等するとエラーになってPDF出力自体ができなくなっています。したがって、中間的に印刷しようと思ったら、ダミー情報でもいいので必要項目全てに入力しなければなりません。特に注意してほしいのは、経歴票の業務内容欄は60字、業務内容詳細(小論文)は720字の文字数制限が厳密にあることです。
なお、Excelマクロが動かない人のために別途PDFも用意されていますが、こちらは印刷したものに手書きしたものだけが有効です。PDFファイル上にDocuworksなどでテキストデータを書き込んだり、印刷したPDFにプリンタで位置合わせして印字したり、別途プリントアウトしたものをハサミで切り貼りしてコピーしたものなどは受け付けられません。 - 印刷して貼付等する
入力が終わったらPDF出力して、これを印刷して写真を張ります。
証明欄は捺印は不要になりました。証明者の電話番号とメールアドレスを入力すれば証明されたものとみなすそうです。 - その他の必要書類を添付する
大学院の修了証明書や監督要件証明書その他、必要な書類を揃えます。 - 郵送する
申込書・経歴票・必要書類が一式揃ったら、技術士会に郵送します。
出願は締切日の消印有効です。また、出願受付は土日祝日は除かれます。
基本的な必要書類は、受験申込書、業務経歴票、その他必要書類です。
願書作成から受験は始まっています。経歴票の内容は口頭試験までひびきますし、小論文は口頭試験での合否を分けます(そのうえ、口頭試験で説明してフォローする機会が与えられない可能性が高い)。
日数に余裕を持って、十分に検討して作成しましょう。
1.受験申込書
申込み案内を技術士会HPよりダウンロードして熟読の上で作成してください。
- 受験地
今年の受験地は、北海道・宮城・東京・神奈川・新潟・石川・愛知・大阪・広島・香川・福岡・沖縄で昨年と同じです。
会場によっては「冷房なし」会場、アクセスがややこしい会場、複数のキャンパスを持つ大学などが選ばれる可能性もありますので、6月に届くと思われる会場案内には十分に目を通し、服装やアクセス確認などを怠りなく準備してください。
なお、試験会場については、以下のことに注意してください。
●自家用車で会場に行くのは避けること→駐車違反・移動などで呼び出されたら再入室できない
●交通混雑・乗り継ぎ・天候等による交通機関の乱れ等があり得るので、十分余裕を見て来場すること→交通機関乱れは遅刻理由にならない
●冷房温度調節ができない場合があるので、服装に十分注意すること→冷房の効き過ぎで寒い会場がある
●会場への道順・施設状況等について会場事務局等に電話問い合わせしないこと
●下見のため構内建物に立ち入らないこと - 受験部門など
【部門】
いまさら迷うことはないでしょう。ただ、業務内容によっては複数部門に通用することがよくあります。たとえば地すべりなどをやっていると、建設部門・河川砂防と森林部門・森林土木、農業部門・農業農村工学などを、また環境関係では、建設部門・建設環境、環境部門、衛生工学部門などを同じ経歴とネタで受験できることもあります。
【選択科目】
よくあるのが、施工業者さんの方などで、設計と施工計画のどちらにすればよいかという悩みです。
単純に言えば、設計は「いかにいいものを設計するか」、施工計画は「設計済みのものをいかに上手に施工するか」です(図面通りという意味ではありません。施設目的と設計思想を尊重しつつ、手直し・変更提案なども含みます)。維持管理なども悩ましいところですが、わからなければ周囲の人に聞くか、掲示板で訊ねましょう。
逆に、「どっちだろう」と思うような経験論文事例は、両方の選択科目に通用する可能性が大です。たとえば「道路か施工計画か」と悩んでいるような場合、まず合格しやすいと思われるほうで技術士取得してしまって、翌年は同じネタを少しもう一方の科目よりに書き直して受験すれば、比較的省力的・効率的に2科目連取できます。「合格しやすいと思われるほう」とは、選択問題(専門問題)で高得点が期待できる科目です。過去問題を見て、場合によっては実際に解いてみて、高得点が取れそうなほうでの受験をお勧めします。
また小論文作成にあたり、「1つのネタは1つの部門・専門科目にしか使えない」と思い込む必要はありません。むしろ、狭い専門分野に特化した「専門バカ」はこれからの時代にはあまり活用されず、複数分野にまたがったマルチな技術者が望まれています(技術士制度改定もその方向です)。ちょうど複数分野の境界付近で仕事をしているということは、マルチな技術者になれるということで、これはむしろチャンスです。
【専門とする事項】
「専門とする事項」は、願書に添付される申し込み案内の「選択科目の内容」をよく見て参考にします。また受験時に不利にならないようにします。以下の点を参考に文言を考えてください。 - 学歴
大学院の場合はこれを記入しますが、この在学期間を経験年数に含める場合、以下のことに注意します。
●経験年数に含められるのは最大2年です。たとえ4年在籍していても2年までしか経験年数に算入できません。(実際の年数を入力しておけば、Excelが勝手に2年に切ってくれます)
●終了証書のコピーまたは修了証明書・在学証明書が必要です。証明書は取り寄せ期間を考慮しましょう。 - 受験資格の選択
受験資格の選択により、必要書類等が変わります。
(A)一次合格+監督者(指導技術者)の下で経験4年
通常の書類の他に、「監督者要件証明書」および「監督内容証明書」が必要です。内容は下表のとおりです。
なお、下表の書類はインターネット申請時にも別途紙で郵送する必要があります。
書類名称 | 14年度まで | 15年度以降 | 17年度以降 |
監督者要件証明書 | 監督者(指導技術者) | 社長(所属企業の長) | 監督者自身の経歴、受験者指導の経歴 |
監督内容証明書 | 受験者 | 監督者(指導技術者) | 監督を行った年月、監督事項、監督手段・内容など |
いずれもそれほど大した内容ではありません。なお、「監督事項」は、一般に次のようなものです。
a) 4年間の監督の最初に4年間の目標プログラムを作成する(面接指導)。
b) 監督内容は、OJT(業務の指導)とOff-JT(折をみて研修・講習などを行う)からなる。
(受験願書に書かれたOff-JTの例)
社会技術研修会・技術図書読書・修習度進捗チェック(面接指導)・講習会受講・フォーラム出席など
c) 最後に「修習の修了確認」を行います(修習計画と整合チェックの面接)
(B)士補登録+指導技術士の下で経験4年
通常の書類のみでOKです。指導技術士に証明など何かをしてもらう必要はありません。
ただしこの資格で受験する場合、経歴のほうがかなり制限されるようで、たとえば勤務先は自分ではなく指導技術士の勤務先、役職名がすべて「技術士補」、業務は指導技術士の補佐業務などのようです。(この点については、杓子定規にそのとおり運用されているかどうかわかりませんから、必ず確認してください)
いずれにせよあまりお勧めできる受験資格ではありません。技術士補に登録しているからといって何か有利になる点もないようです。
(C)一次合格+経験7年
通常の書類のみでOKです。
なお、(A)と(B)は合算できます。したがって、たとえば一次試験合格あるいはJABEE過程修了後、2年間は単に修習技術者として実務経験をつみ、それから技術士補になって2年たつ場合、最初の2年を(A)で、後半の2年を(B)で合計4年として申請できます。
- 総監受験の場合
総監受験の場合、以下のいずれかの条件での受験となります。
(A)総監のみ受験
既に総監選択科目に該当する部門の二次試験に合格している場合(例:建設部門道路に合格済で、総監-建設・道路のみ受験)は、選択科目が免除になるので、このチェックボックスにチェックし、合格証番号あるいは登録番号等を記入します。
(B)併願:総監と同部門の総監以外部門を受験(例:総監-建設・道路と建設部門道路を同時に受験)
「併願」のチェックボックスにチェックします。無論、他の技術部門のほうの願書も作成します。願書は2部になります。
(C)重願:総監と別部門の総監以外部門を受験(例:総監-農業・農業土木と建設部門道路を同時に受験)
総監の願書と他の技術部門の願書を独立して作成し、出願します。
既に総監選択科目に該当する部門の二次試験に合格している場合の選択科目免除の記入は(A)と同じです。
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2.経歴票
ここでは上部の経歴票の部分のみについて解説します。 申込み案内を技術士会HPよりダウンロードして熟読の上で作成してください。
業務経歴票は受験資格を得るとともに、技術者としての評価材料ともなります(口頭試験では、業務経歴票は質問材料となります)から、合格のための戦略をたてて構成しましょう。
- 大学院における研究経歴
業務経験年数に大学院における経験年数(最大2年)を加えた人は必ず記入します。
経験年数に大学院を加えていなくても最終学歴を大学院とした場合は記入しておいたほうがいいでしょう。やはり大学院で何かを研究していたということは、勉強量や考え方、論理構成力などにおいて大きなポテンシャルがあると期待されますから、それに応じた研究履歴を書いておいたほうがいいと思います。
研究内容欄には、修士論文あるいは博士論文のテーマを書いておけばいいかと思いますが、論文タイトルそのままでなくてもかまいません。 - 業務経歴
経歴票は5行あります。この5行の期間を合計して必要経験年数をクリアしていないといけないことは無論ですが、技術者としての成長足跡や専門性、あるいは幅の広さなど、技術者としての資質もアピールできればさらにいいでしょう。
そのためにどのようなことが求められるのか、以下にまとめます。- 補助的あるいは単純労務業務ではないこと
記入要領には、「科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務(単純な技能的な業務、研究・設計等に付随する庶務的な業務を除く)」とあります。
「単純な技能的な業務」、「付随する庶務的な業務」とは、たとえばCAD製図、数量計算等単純計算、土質岩石試験、ボーリング調査、測量作業などの「高度な専門的応用力を持った技術者」でなくともできる比較的単純な労務です。ただし、試験手法の開発改良など、創意工夫が必要な業務は別です。また、入社して間もない頃の補助的業務は、その立場なりに与えられた仕事の範囲で創意工夫するこれができるものであればOKです。
経歴の中にこういったものがあると、口頭試験で「これは経歴から差し引く」と言われたなどという例もあります。
また、できるかぎり自分が主体的に業務を行ったという形にします。実際には管理技術者などがいて、その補助であったとしても、自分の担当分は自分で考え判断して遂行したことが大切です。 - 部門・選択科目に該当する経歴がそこそこにあること
必要経歴は「科学技術に関する・・・・」とあるので、たとえば環境の仕事ばかりしてきた人が電気の技術士に挑戦してもかまいません。
しかしその場合には筆記試験の記述内容の大半が、「経験の伴わない知識」としてとらえられます。制度上はそれでも構わないのですが、口頭試験で「専門分野に関する経験が不足している」と指摘され、おそらくその方面に徹底して突っ込まれます。
すなわち、必要な経験の内容・年数は以下のように考えられます。専門分野の経験が4年あるいは7年いるわけではないのです。専門分野の経験は、年数よりも内容です。
逆に、経験豊富に見せようとして経歴を捏造すると、最悪の場合、受験資格やこれまでの取得資格の剥奪にもつながりません。専門分野の経験だけで所定年数を確保する必要はないので、経歴捏造は絶対避けるべきです。 - できれば経歴全体をカバーした経歴であること
5行しかないからといって、直近の経歴に限定したり、飛び飛びで経歴をピックアップしたりせず、技術者になってから(たいていの人は就職してから)現在(前年度3月末。平成26年度受験なら平成26年3月)に至るまでの期間を包含していることが望ましいと思います。
なぜなら、技術者としての成長過程がアピールできるからです。大学を出たばかりで基礎学力しかなかった自分が、その後の経歴の中で知識と経験、さらには視野の広さを身につけてきて、それらがいま技術士にふさわしいレベルにまでなったということをアピールしようと思うと、伸び盛りの時期を除外していたり飛び飛びだったりするのはうまくありません。
それに口頭試験で経歴説明の機会を与えられた場合、「私は○年に△大学を卒業し…」から説明を始めるのに試験官の手元の経歴票には経歴初期のころの記載がないと、説明しにくくなります。 - 受験科目以外の経歴もカットする必要はない
受験科目以外の経歴についても、それが科学技術に関するものである限り掲載したほうがいいと思います。特に周辺技術(たとえば道路で受験する人にとっての都市計画の経験など)は「技術者としての幅」のアピールにもつながるので、できるだけ掲載したほうがいいでしょう。 - 経歴が長い人は要約してもいい
上記のようにして経歴全体をカバーして受験科目以外の経歴も盛り込んだ場合、経歴が長い人は5行に収まりきらず、1行の経歴の中で勤務先や地位・職名等が複数になってしまったりすることもあるでしょう。
その場合は「○事務所・△事務所」のようにして列挙したり、あるいは代表的な勤務先等を書いて「等」「他」などの言葉で包含してしまってもいいと思います。1行に書ける勤務先や役職が1つだけということはないのです。 - 経歴全体をカバーできないときは
もし従事期間を代表的業務の期間に限定するのであれば、途中に空白期間を入れた歯抜けの経歴にするのではなく、最近数年間(受験資格を満たす期間)にして、最初のころの経歴をざくっとカットしたほうがいいでしょう。口頭試験で説明する機会があった場合は、「経歴票では省略していますが」と断ればいいでしょう。 - 各行ごとに代表的業務を準備しておく
経歴票のどれかの経歴について(それか1行を指定したり、「詳細例(小論文)以外で」と指定されることもある)、業務体験の内容、印象に残った業務などを聞かれる可能性があります。
したがって、経歴票記入にあたっては、各行(各経歴)ごとに、業務体験例のテーマと骨子(概要、問題点、解決策)が決まっていることが望ましいといえます。そしてできればその中から小論文を選ぶといいでしょう。なお、これらの代表的業務は、専門分野との合致性、技術レベルなどをそこそこに満たしているほうがいいと思われます。 - 勤務先~地位・職名の注意点
勤務先は、「部課名まで」とありますから、部や課がある組織の方は必ず記入します。また現場工事や出向等で会社本体とは異なる勤務地で働いていたという人は、そちらを記載するようにしましょう。出向の場合は末尾に「(出向)」と書いておけばいいでしょう。
所在地は、上記勤務先の所在地です。「市区町村まで」とありますから、郡などで終わらないようにします。政令指定都市は区まで書くのが丁寧でしょう。
地位・職名は、組織内の役職名(係長や課長など)を書くようにします。無役(ヒラ社員)のときは「係員」などですと事務職なども含まれますから、「技術員」「技師」などと書いておくといいでしょう。
なお、技術士補4年の経験でで受験する人は、勤務先は指導技術士の勤務先を、地位・職名は「技術士補」と記入します。自分の勤務先ではないので注意してください。 - 業務内容では自分の立場を明らかにするとよい
業務内容において、「○○の設計」とか「○○の設計および指導」などと表現することにより、自分の立場を明らかにできます。
ただし、注意すべき文言もあります。
【試験】【測定】など…ただの技官、つまり規格通りに何も考えず黙々と単純作業を行うだけという解釈をされると、経歴として認められない可能性があります。過去の口頭試験で実例があります。
【補助】など…業務上の上役からの指令に従って何の工夫もなく言われるままに動いただけではないかと疑われる可能性があります。受験資格が得られなかったりはしませんが、口頭試験で問われる場合があります。そこで、たとえ補助でもそれなりに創意工夫や問題解決があったことを説明できれば問題ありませんが、創意工夫や問題解決が出てこないとよくありません。経歴から外すといわれた実例もあります。
なお、技術士補4年の経験でで受験する人は、指導技術士を補佐した内容を書くこととされています。ということは、小論文も業務内容の詳細ですから指導技術士を補佐した内容を書かざるを得なくなります。
ということで、技術士補4年の経験での受験はいいことがひとつもないので避けましょう。
- 補助的あるいは単純労務業務ではないこと
- 絶対に出願書類のファイルを残しておくこと
経歴書に記載した内容は、口頭試験で確認されることがあります。多くの場合は、「経歴を述べてください」と言われます。このときの回答内容が経歴書と異なっていると大変です。PDF出力したファイルは必ず保存しておきましょう。 - 証明を受ける人を間違えないこと
受験資格 | 各書類ごとの証明を受ける人 | ||
経歴票 | 監督者要件証明書 | 監督内容証明書 | |
一次合格+監督者の下で4年 | 監督者 | 社長(監督者勤務先の 証明権限者) | 監督者 |
士補登録+指導技術士の下で4年 | 指導技術士 | –書類自体が不要– | –書類自体が不要– |
一次合格+経験7年 | 社長(受験者勤務先の証明権限者) | –書類自体が不要– | –書類自体が不要– |
なお、経歴年数は合算できます。たとえば、一次試験合格後、監督員の下で2年間経験を積み、その後技術士補登録して指導技術士の下で2年間経験を積んだ場合、2+2+=4年とできます。ただし、この場合は監督員と指導技術士から証明をもらわねばなりません。
監督者要件証明書は受験者ではなく監督者の勤務先証明権限者にもらわねばならないので、別の会社の人に監督者になってもらう場合には注意してください。
- 経歴証明が不要の場合もある
経歴票には証明欄の記入・証明印が必要ですが、過去の二次試験受験票(コピー不可)があれば、これを省略できます。他部門の受験票でもかまいません。
また、過去に二次試験に合格している場合、合格証のコピーや技術士登録証のコピーなどを添付すれば省略できます。
受験部門が総監の場合は、これらの書類が総監に関するもののみが有効です(総監以外部門の受験票や合格証・登録証コピーは不可)
なお、不要の経歴証明をとったからといって不利にはなることはありません。
また、経歴の証明が省略えきるのであって、経歴票の記入そのものが省略できるわけではないのでご注意ください。
- 途中で転職していても、今の会社で一括証明できる
受験案内には、「転職等で勤務先が変わった場合等においては、現在勤務する勤務先の証明権限を有する役職者から転職前の勤務先の業務経歴も含めて証明を受けて下さい」とあります。要は、今の会社の社長さんに、前の会社での経験もまとめて証明してもらえるということです。なお、これは一次合格+経験7年で受験する場合のみです。他の場合は、監督員や指導技術士の証明になるので、転職は関係なくなります。でも、転職してから前の会社の指導技術士や監督員に証明をお願いするのは言いにくいですよね。指導技術士や監督員は途中で変わってもいかまいません。最終的な(願書提出時点での)指導技術士・監督員にのみ証明してもらえばOKです(指導を引き継いだという形になります)。 - 個人経営の場合、公印を使って自分で証明できる
個人経営の場合、自分自身が代表者であれば、自分自身の経歴を証明できます。
これについては様々なケースがあると思いますので、迷ったら技術士会に聞くのが一番です。
3.小論文
2013(平成25)年度から始まったもので、従来の技術的体験論文の代替として、口頭試験において「経歴及び応用能力」に関する試問の資料となります。口頭試験で合否を分ける最重要資料となりますので、従来の技術的体験論文と同程度の重要度を持つと思っておくといいでしょう。
- 小論文の概要
・5行の経歴票のうち1行を選んで、小論文を記述します。
・図表の使用は不可です。
・文字数は720文字以内です。半角文字も1文字としてカウントします。(そもそも720文字以上は入力できません)
・日付を入れる場合は必ず西暦で入れます。 - コンピテンシーへの対応
2019年度から、試験で確認する資質(コンピテンシー)が整理されましたが、口頭試験では経歴・小論文に関して、専門技術力に関する資質確認項目がなく、コミュニケーション・リーダーシップ・評価・マネジメントの4つの能力(業務をスムーズに遂行する、業務遂行能力)に関する資質確認だけになりました。
これは、だいたい以下のような内容です。
- コミュニケーション:確実な意思疎通
- たとえば技術的妥当性をクライアント等ステークホルダーにきちんと説明できる能力
- リーダーシップ:関係調整によるプロジェクト主導
- 相反する利害関係要求を両立するような技術的提案をする(利害関係者みんなが納得できるような技術的中庸案を提案する)ことでプロジェクトを前進させる能力(その提案内容を説明して理解してもらう部分がコミュニケーションと思えばよい)
- 評価:仮定や結果の現時点評価と改善
- たとえば業務を振り返って業務改善ができたり、他のことに応用できたりする能力
- マネジメント:リソースの最適配分
- たとえば人・モノ・カネや情報が限られている中で、重要なところに集中配分するなどできる能力
しかしステークホルダーに対する中庸案提案(リーダーシップ)を支える技術的妥当性(最適性)の根拠がしっかりしているか、人・モノ・カネや工期・情報等の制限や利害関係がある中での最適解を提案しているか(マネジメント)といった視点での質問にうまく答えられないと不合格になっている人もみられます。
このことから、 小論文は、技術的に最適なだけでなく、リソースや工期・情報・ステークホルダー等の制約の中で最適な提案をしたという事例・内容がよいと思われます。
つまり、ステークホルダーとのやりとりがあまりないような研究や開発提案などよりも、現場でさまざまなステークホルダーと調整しながら泥臭く業務をこなしたという事例のほうが好ましいといえます。
逆に関係調整ばかりで技術的問題解決がまったくないと、事務屋さんの折衝みたいな内容になってしまいますから、それはさすがに技術士にふさわしい事例とはいえません。
そして、小論文の技術的内容については口頭試験ではぼ聞かれない(よほど疑問があると聞かれるようです)こと、逆にコミュニケーション・リーダーシップ・評価・マネジメントの4つのコンピテンシーについては必ず質問されます。
以上を踏まえると、コンピテンシーへの対応は以下のようにするといいと思います。
- 小論文は、従来通り専門技術的問題解決について書く。
- ただし、ステークホルダーに対する説明・理解や関係調整、リソースや工期・情報・ステークホルダー等の制約があるような現場密着型の事例を選ぶ。高度な専門技術的工夫に偏らないようにする。「技術士にふさわしい工夫は何か」という質問はほぼ来ない。
- 口頭試験での質問がなく、説明もない可能性が高いので、読んだだけで理解し納得できる内容にする→あまり特異・複雑な、斜め読みしただけでは理解しにくいような事例は選ばないほうがいい。
- 反面、コンピテンシーについては小論文の中に書く必要はない。どうせ必ず質問されるのでそれに答えられるようにしておけばよい。
- お勧めする小論文の内容
私がお勧めする小論文の内容について以下に記します。あくまで『私がお勧めする』ものであり、こう書かないといけないということではありません。
- 自分自身の業績について書く
業務を複数の技術者が共同して実施した場合(公共事業における発注者側技術者と受注者側技術者などという場合もこれにあたります)、その中で自分が主体的に技術的判断を下して課題を解決した部分だけを抜き出して書きましょう。 - 問題解決プロセスをしっかり書く
問題及び解決策(問題→問題分析→課題(問題解決のためになすべきこと)→課題遂行のハードルとなる制限事項や留意点→それを踏まえた具体策)の構成にします。 - 問題をあげるだけでなく、問題分析を行い、解決策を必然性をもって導く
問題はプロジェクト実施上の困った現状等ですが、これをあげるだけでなく、問題発生原因・機構等を掘り下げる問題分析を行います。そうすることで、「それが原因であれば、こうすべきだ」という解決策(解決の方向性)が必然的に導かれます。 - 解決策の実行にあたって、実現上のハードルとなる制限事項や留意点をあげる
解決の方向性が見えてきたらその実行に移るわけですが、そこで実現を阻むような何らかのハードルや留意すべき事項がある場合は、それをあげます。専門技術的なことよりも、人・モノ・カネ等の制約や利害関係者調整といったことのほうがいいです。つまり口頭試験で確認するマネジメントやリーダーシップといったコンピテンシーですね。こちらのほうが専門技術的障壁よりもいいと思われます。 - 問題解決の内容は、一工夫あるものがよい
「技術士にふさわしい工夫」というほどではなくてもいいので、「何も考えずマニュアル通りやりました」ではなく、ちょっとした工夫があるといいですね。
・自分ならではの知識・経験を活かした
・現場特性最適化:現場を丁寧にみて、その現場特性に応じた提案をした
・短所の解消・最小化:長所ではなくむしろ短所に着目して、それを解消・最小化することで実現性を増した
・仮説検証:仮説を立てることで最短距離で最適解に到達した
そして、2019年度口頭試験の場では小論文の説明を指示された受験生は3割程度でした。つまり、「小論文を読んでわからなければ口頭試験の場で説明しよう」と思っていてはいけないということです。ではアウトラインだけ書いて詳細はプレゼンで補足するという手は使えないかもしれないと思っておきましょう。なお、専門技術的な質疑応答は2019年度はほとんどありませんでしたが、2020年度はそこそこにありました。つまり、専門技術的に妥当・最適であることが、コンピテンシー評価の前提条件になっているといえます。
ですから斜め読みしただけで理解できて技術的妥当性について納得できる内容にしておくことを目標にしましょう。そのためには、高度な技術レベルをアピールしようとせず、わかりやすい事例を選ぶことが大事です。
以上をふまえ、小論文は以下の手順で作成することをお勧めします。
- 骨子法で問題解決過程(問題、問題分析、解決の方向性、制限上の制限、具体策)を整理する。
- 問題は、実際には数多くあるはずの問題の中で、最大の問題(あるべき姿とのギャップが大きい、解決が難しいなど)を抽出していることが必要ですが、その過程まで文字数の限られた小論文の中に記述する必要はありません。
- いわゆる「工夫点」は、問題分析によって必然的に解決の方向性を導く過程と、その解決策の実現にあたり制限となるボトルネックを抽出し、それを踏まえた実現性の高い具体策を提案する過程の2つがあります。前者を専門技術的アプローチ(といっても高度な専門技術的アプローチではなく、業務特性を丁寧に見るなどの現場密着型のアプローチのほうがいい)、後者をマネジメントやリーダーシップすなわちリソース最適配分や利害関係調整の面からのアプローチと考えるといいでしょう。
- 問題解決過程の前に業務概要及び立場・役割を、後に成果を付け足して小論文を構成する。
- 業務の概要は、「こういう業務でした」という簡単なアウトラインです。そもそも何の業務だったのかわからないと問題解決も何もあったものではありません。
- 立場・役割は、自分がどのような立場でどんな役割を担当したかを端的に述べます。立場は業務上の役職がいいでしょう。役割は、自分が主体的に判断することができた部分です。この立場・役割は、後段の解決の方向性や実現策を自分自身が考えたということと矛盾してはいけません。
- その後、上記骨子の5段階のストーリーについて書きます。
- 最後に成果を簡単に書きます。提案の結果、問題がうまく解決できたということを書きましょう。
- 文章を練り上げて720文字以内に収める。
つまり、①業務概要、立場・役割、②問題解決過程(骨子法を使ってまとめる)、③成果の4章構成になります。あるいは②を問題及び問題分析と提案内容の2章に細分して4章構成にしてもいいでしょう。
骨子法の活用
小論文作成にも筆記試験の問題Ⅰ・問題Ⅲ対策にも使える「骨子法」を紹介します。これは、
問題→(これは)問題分析→(そこで)解決の方向性→実現上の制限を踏まえた具体策
という構成で課題解決プロセスを表現するときに有効なロジック整理ツールです。
具体的には、下のような表を作って、メモや箇条書きで書くべき内容を記入していって論文や答案の論理骨子を作り、これを文章化して論文・答案を作るというものです。
書き手(受験生)にとっては、簡単にすっきり明確な論理構成が組み立てられますし、書き手自身も頭の中がすっきり整理できます。また読み手(試験官)にとっても読みやすくロジックを理解しやすい論文・答案となって、納得してもらいやすく(すなわち高い評価をもらいやすく)なります。
問題 | 問題分析 | 解決の方向性 | 実現上の制限 | 具体策 |
困ったこと重大性・困難性等について 読み手が納得できるものがよい年 | 問題の発生原因・発生機構など、 問題発生の元凶 | 問題分析結果から必然的に求められる 解決の方向性・なすべきこと | 課題を遂行しようとしたときに制限となるもの | 制限事項も踏まえた実現策 実際に提案したこと |
- 問題抽出
プロジェクトにおける問題を抽出する - 問題分析
その問題について分析し、原因や機構などを把握する - 解決の方向性提案
その結果から、「なすべきこと」(解決の方向性)を導く - 実現上の制限抽出
その解決策の実現にあたり、制限となる事項を抽出する。リソース配分や利害関係調整上の制限がよい - 具体策提案
実現上の制限を踏まえ、実現策・具体策を提案する
例をあげてみましょう。建設部門で橋梁点検・補修設計をした仮想例です。
問題 | 問題分析 | 解決の方向性 | 実現上の制限 | 具体策 |
橋梁点検で異常劣化(年数の割に劣化が顕著、構造性クラック)が問題であった | 様々な資料で調べたところ、設計時点の想定荷重を超過した超過荷重状態であることが原因と判明した | そこで単なる補修ではなく構造的補強耐荷重アップが必要と判断した | 補強工事となるため工期が長くなり、道路交通に与える影響が大きくなる | 迂回路を近隣に確保できたため、全面通行止として集中的に工事をする計画を提案 |
- こうやってチェックしよう
口頭試験で苦労しなくて済む小論文、読んだ段階で評価してもらえる小論文が書けたかどうか、以下のようにしてチェックされるといいと思います。
- 業務概要は、試験官がこれを読んで業務のイメージを正しく持ってもらえるだろうか。
業務イメージが食い違うと話がかみ合いません。短くなった口頭試験の時間が無駄に浪費されてしまいます。 - 立場・役割は、立場からみて不自然な役割になっていないだろうか、また提案内容からみて不自然になっていないだろうか。
たとえば公共事業の発注者の立場なのに工法の具体的内容まで担当して決めたというようなことになっていると、「あなたの立場でそんなこと普通しないだろう。コンサルの業績をパクったんじゃないか」と思われたりします。 - 問題分析結果と解決策が整合しているだろうか。
問題の原因・機構を掘り下げることで、「じゃあこうすればいい」と必然性をもって解決の方向性が導かれるので、問題分析結果と解決の方向性は表裏の関係にあるはずです。 - 具体策は、ちゃんと根拠が書いてあるだろうか。「私はこう考えてこれを提案した」ではなく「私はこれを提案した」だけになってしまっていないだろうか。
根拠なく、いきなり提案内容の説明のみになっている人が多くいます。具体的な提案内容を列挙しただけでは、業務としては評価されても、技術士にふさわしい能力があるとは評価されません。これは試験であり、事例発表会ではありませんから、業務ではなく自分の能力を評価してもらわねばなりません。ところが具体策だけなら、思い付きででも、試行錯誤の結果としてでも、あるいは誰かの成果をパクってでも書けますから、技術士にふさわしい能力があることの証明にはなりません。そこのところをしっかりご理解いただき、解決の方向性をしっかり書いてください。「こんなことをした」ではだめです。「こう考えてこうした」です。 - 技術的高度さばかりアピールしていないだろうか。ステークホルダーはいるだろうか。
昔の発想のままで、「高いレベルの技術的工夫をアピールしよう。当たり前ではない技術レベルをアピールしよう」とばかり考えていてはいけません。すでにそこは口頭試験での評価ポイントではなくなっているのです。様々なステークホルダーがいる実際の仕事現場での泥臭い利害関係調整がないような業務は口頭試験で苦労します。実際には「詳細例に限定せず、経歴全部の中から答えればいいですよ」と言ってもらえるようですが、でも、専門技術的工夫点も聞かれず、コンピテンシーについても何もそこから答えられなければ、何のために小論文を書いたのかわからなくなってしまいます。