My Note JR尼崎線事故
2005.5.16

107人が亡くなったこの悲惨な事故は、「安全軽視・利益優先」という、非常にわかりやすく、また非常に白黒のはっきりした原因が炙り出されてきた。
関西電力美浜発電所蒸気噴出事故や三菱自動車問題などもそうだが、不況で収益状況が厳しいこと、アメリカナイズの中で会社と労働者の関係がドライになり雇用側も厳しく締め上げるようになったことなど、背景的要因はいくつかあるだろう。

総合技術監理部門における経済性管理は、コスト・納期・品質のトレードオフをいかに解消していくかの管理技術であるといってもいいかもしれないが、その根底に流れるのは「経営」である。つまり、会社がちゃんと利益を生み出し、従業員の生活を支えること、これが目的である。コスト節減は無論だし、納期厳守や品質確保も受注を取る・製品を売るために社会的約束を守らねばならないからこそである。
何を言いたいかというと、「利益追求」は責められるべきものでは全くないということである。責められるべきは、安全や高品質、社会貢献、環境配慮などなど、社会的約束事(信用)・社会的要求への対応がおろそかであったことであろう。
要は、コスト・納期・品質・安全等のバランスが悪かったということだと思う。

では、どうすればバランスがよくなるかということに関しては、経営工学その他の様々な技術がある。それらを総合的に使いこなす分野として総監があるのだが、まあ様々な技術がある。
そしてもう一つ大切なのは「誠意」だと思う。
快速電車をぶっ飛ばすことは客への誠意だっただろうか。確かにお客の多くは尼崎駅に送れて到着すると怒っただろうが・・・・
ぶっ飛ばさざるを得ないダイヤを組むことは誠意だっただろうか。確かにギリギリで組んだダイヤのもたらす短時間通勤は魅力だっただろうが・・・・
何が誠意かということも本当に難しいのだが、少なくとも「何が誠意か」をいうことを常に考えていただろうか。
顧客のことを真剣に考えることが誠意だと思うのだが、多様な価値観を持った多様な顧客の多数ニーズにあわせた結果が過密ダイヤと事故であるとすればそれはあまりに悲しい問題だと思うのである。
それは、経営者や技術者、政治家、市民団体などが、それぞれ個別に考えてもどうなるものでもない問題のように思う。
総監がそれを解決するわけでは無論ないが、「広い総合的な視野でマネジメントする能力」はこれから強く求められてくると思う。  

2005.5.16 ブログに掲載