最終更新:2024.06.04

選択科目の問題Ⅱ対策について、建設部門を中心に記しています。
出題内容の予想もしていますが、これは「絶対こうなる」というものではなく、あくまで私の予想です。ただ、技術士会から公表された資料を素直に読むとこういうことだよね、という、それなりに根拠のあるものではあります。
なお、受験対策は人それぞれです。それぞれの立場で、ポイントは変わってきます。また、若年層・熟年層でも変わってきます。 うのみにするのではなく、参考にできるところは参考にするというスタンスでお読みください。

答案用紙 フォーム

答案用紙はA4サイズ・600字詰めです。
模擬練習用答案用紙を用意しましたので、お使いください。なお、この答案用紙はすごろくさんよりご提供いただいたものです。



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(問題構成と配点)
 専門問題は、選択科目に関する専門知識と応用能力を問います。答案は記述式で、600字詰め答案用紙3枚以内です。問題Ⅱ-1とⅡ-2に分かれており、その内訳は下記のとおりです。

  • 主に専門知識に関する問題(問題Ⅱ-1) 1枚×1問=1枚 4問中1問選択解答 配点10点
    (2018年度までは4問中2問選択解答)
  • 主に応用能力に関する問題(問題Ⅱ-2) 2枚×1問=2枚 2問中1問選択解答 配点20点

 なお、Ⅱ-1:Ⅱ-2の答案枚数が1枚:2枚になったため、配点も1:2になりました。つまりⅡ-2のウェイトはⅡ-1の倍です。したがって、Ⅱ-2の点数が振るわないのをⅡ-1でカバーするのは困難です。問題Ⅱ-2をしっかり得点しないと問題ⅡでA評価は取れないと念ってください。

 この問題で確認される資質は「専門知識」と「応用能力」であり、その概念と内容は、技術士会から公表されている下表の内容のとおりです。

問題Ⅱの内容

解く順番とタイムマネジメントをしっかりと!)
 問題Ⅱは、Ⅱ-2→Ⅱ-1の順で解くことをお勧めします。理由は、①問題Ⅱ-2のほうが2倍の配点ウェイトだからということと、②問題Ⅱ-1は知識問題ですから知っていることを整理して書くだけですが、問題Ⅱ-2は応用問題ですから、付与条件整理、手順組み立てなど、考える時間がかかるため、後回しにして時間がなくなってくると焦ってしまい、うまく考えられなくなる恐れがあるからです。
また、問題Ⅲも加えた、問題Ⅱ-1・Ⅱ-2・Ⅲの3問の答案にあらかじめ時間を割り当て、バランス良く得点てきるように配慮するといいでしょう。

~お勧めの時間割り当て~

問題Ⅱ-1:30分、問題Ⅱ-2:60分、問題Ⅲ:90分(つまり答案用紙1枚あたり30分)

1.出題形式

1.問題Ⅱ-1について

2018年度までは4問中2問解答だったのですが、この4問は分野ごとに割り振られていることが多くあります。たとえば建設部門道路科目は道路計画・道路設計・舗装・土工に、また河川砂防科目は、河川・ダム・砂防・海岸に割り振られています。このため、ここから2問選ぶとなると、専門外の問題を1問選ばざるを得ないという人も多かったようです。
これが1問選べばよくなったため、自分の最も得意な分野に絞ることができるようになりましたし、あるいはもっと柔軟に「最も自信を持って答えられる問題を選ぶ」こともできるようになりました。このため、問題Ⅱの得点は全体に押し上げられたように思われます。なお、「専門とする事項」とズレた分野を選ぶことには不安があるかもしれませんが、問題Ⅱは口頭試験の諮問材料には選ばないルールになっているので、その点は気にしなくていいと思います。
また、科目によっては出題分野構成が若干変化したものもありますが、以下のような傾向は変化ありませんでした。

  • 「1つを選べ」「3つ書け」といった、数を指定しての問題が多い
  • 小設問があったりして、比較的型に制限されない自由な問題文構成で出題される

2.問題Ⅱ-2について

確認資質は専門知識と応用能力で、2019年度から問題文が部門・科目をまたいでほとんど同じ内容になりました。こういったところからも、試験のマニュアル化が進んでいることがうかがえます。

問題文(建設部門-河川砂防) 

 調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。

 業務を進める手順について,留意すべき点,工夫を要する点を含めて述べよ。

 業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

問題文(建設部門-道路) 

 調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。

 業務を進める手順について,留意すべき点,工夫を要する点を含めて述べよ。

 業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

問題文(上下水道下水道) 

前文

 地方の中核都市A市では,これまで汚水処理と雨水排除の整備区域を概ね同ーとして,計画降雨50mm/h(5年確率降雨)を計画区域全域における一律の整備目標とする下水道施設の整備を進めてきたが,雨水の未整備地区も多く残っており,従来の全体計画を見直す必要も生じている。計画的かつ効率的な浸水対策の施設整備を進めるため,雨水管理総合計画を策定することになった。あなたが,この雨水管理総合計画策定業務の担当責任者に選ばれた場合,下記の内容について記述せよ。

 調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。

 業務を進める手順について,留意すべき点,工夫を要する点を含めて述べよ。

 業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

2.評価内容(コンピテンシー)の内容

1.基本知識理解および理解レベル(専門的学識)~問題Ⅱ-2の設問1

問題Ⅱ-1は教科書的な知識(断片的知識でなく体系的知識)をアピールする。
問題Ⅱ-2は調査検討事項をあげる。問題文をよく読んで出題テーマを読み取り、漏れなく項目をあげることがポイント。

コンピテンシー「専門的学識」の定義は以下のとおりです。

専門的学識

  • 技術士が専門とする技術分野(技術部門)の業務に必要な,技術部門全般にわたる専門知識及び選択科目に関する専門知識を理解し応用すること。
  • 技術士の業務に必要な,我が国固有の法令等の制度及び社会・自然条件等に関する専門知識を理解し応用すること。

また問題Ⅱ-2における問題文は以下のようなものです。

問題Ⅱ

設問1:調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ

「基本知識理解」のほうは答案全体からの知識の読み取りになりますが、問題は「理解レベル」で、これが設問1に割り振られており、問題Ⅱ-1では「基本」、問題Ⅱ-2では「業務」に関する理解レベルの確認になります。すなわち、問題Ⅱ-1では教科書的な知識であり、問題Ⅱ-2では実務的な知識であるといえます。
問題Ⅱ-1については、以下の3つのポイントを意識してください。
・単純に知識を確認されているのだから、意見ではなく知識を書くこと、「どう思うか」ではなく、「どのように定義づけられているか」「どのように言われているか」を書くようにする。
・「3つ挙げよ」「定義と算定法」など問題文の指示内容をしっかり守る。
・体系的知識をアピールすること。個別の手法・工法・製品などをただ羅列するのではなく、考え方ごとに整理して、その中に個別工法などを位置づけて記載する。
問題Ⅱ-2については、出題内容(仮想事例であることが多い)について、「調査、検討すべき事項を書け」という設問文での出題が予想されます。応用能力の「与えられた条件に合わせて」という出題内容も踏まえれば、以下のような点がポイントになると思います。
・教科書的答えを基本とするが、問題文によって与えられた条件に合わせて、過不足のない調査検討項目をあげる。
たとえば建設部門道路科目の2019年度問題Ⅱ-2-1を例にとってみましょう。

問題Ⅱ-2-1

ある市街地の生活道路(地区に住む人が地区内の移動あるいは地区から幹線街路に出るまでに利用する道路)において地区に関係のない自動車の走行やスピードの出し過ぎなどの問題が発生しており,交通安全対策(ゾーン対策)が検討されている。この対策の担当責任者として,下記の内容について記述せよ。

(1) 調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2) 業務を進める手順について,留意すべき点工夫を要する点を含めて述べよ。
(3) 業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。

通過交通やスピードの出し過ぎが問題になっているのですから、速度や通過交通の台数や速度といった情報が必要ですし、交通安全の問題なのですから事故履歴も調べないといけませんよね。そして生活道路が対象ですから、自動車だけでなく自転車・歩行者の交通量や通勤通学等の状況も調べておかねばならないでしょう。
また検討項目として、通過交通が流入する原因や速度超過になる原因を調べ、それに対応した検討(たとえば線形や横断構成、制限速度、ハンプ等)が必要になってくるでしょう。
このように、付与条件にマッチした調査検討項目をあげる必要があります。

2.業務遂行手順(マネジメント)~問題Ⅱ-2の設問2

与えられたテーマについて、問題をあげて分析し、問題解決のためになすべきこと(課題)を抽出する

コンピテンシー「マネジメント」の定義は以下のとおりです。

マネジメント

  • 業務の計画・実行・検証・是正(変更)等の過程において,品質,コスト,納期及び生産性とリスク対応に関する要求事項,又は成果物(製品,システム,施設,プロジェクト,サービス等)に係る要求事項の特性(必要性,機能性,技術的実現性,安全性,経済性等)を満たすことを目的として,人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること。

また問題Ⅱ-2においける問題文は以下のようなものです。

問題Ⅱ

設問2:業務を進める手順について,留意すべき点工夫を要する点を含めて述べよ

出題された業務等における業務手順説明や留意点・工夫点記述にあたり、与えられた条件を踏まえて、品質・コスト・納期のバランスのとれた(つまり、「こんな内容で業務品質は大丈夫か?」とか、「こんなことしたらコストがかかりすぎるんじゃないか」、「これでは納期が守れないのではないか」といった懸念を抱かせずに)、顧客要求・社会的要求を満たすような成果を出せるだろうなと思うような内容、そういうことが可能と思えるようなリソース配分になっているということが求められるわけですね。
まあつまり、地に足のついた、現実的な提案ができることが大事で、技術的に高度であっても実現性のないような提案ではいけないということです。
問題文の付与条件に即した、技術的成果としての要求を満たしつつ、実現性の高い答案を書く。
前述の道路科目2019年度問題Ⅱ-2-1では、以下のようなA評価答案例があります。

2.業務を進める手順

(1)整備形態の検討
  ①1(1)で調査した事項を鑑み、必要となる車道・歩道幅員等の検討を行う。検討に当たっては以下の整備形態を参考とする。
   ・ハンプ、狭あい箇所の設置
   ・歩道拡幅、カラー舗装、スムース歩道
   ・ライジングボラード、エリア30
   なお、ビックデータの活用により危険箇所を可視化する工夫で、より効果的な整備区間を選定する。
  ②自転車との分離の検討
   自転車の交通量が多い場合は、歩行者との接触事故が想定されるため、自転車と歩行者の通行空間の分離を検討する。
   自転車走行空間を設置する場合は、分離構造を連続化することと、走行ルールを明示するに留意する必要がある。
 (2)整備手法
  道路空間の再配分によって検討した道路形態は実現できるのか、用地買収(局所買収を含む)が必要となるのか、検討を行う。
 (3)関係機関等との協議
  ①交通管理者や隣接する道路管理者等との協議を事前に行う。
  ②地元への事業説明

3.的確表現(コミュニケーション)

日本語としての正しさ、読みやすさが大事だが、ロジックはあまり考えなくてもいいし、文章を長々と書かなくてもいい。箇条書きやフローなどを使ってもいい

コンピテンシー「コミュニケーション」の定義は以下のとおりです。

コミュニケーション

  • 業務履行上,口頭や文書等の方法を通じて,雇用者,上司や同僚,クライアントやユーザー等多様な関係者との間で,明確かつ効果的な意思疎通を行うこと。
  • 海外における業務に携わる際は,一定の語学力による業務上必要な意思疎通に加え,現地の社会的文化的多様性を理解し関係者との間で可能な限り協調すること。

問題Ⅱの場合、採点者はキーワードを探して採点していることが想定されます。したがって、問題Ⅱ-1・Ⅱ-2とも章立てして入れ子構造の(大見出し・中見出し・小見出しがある)答案にして、読みやすい答案、キーワードがぱっと探せる答案を作りましょう。文章を頭から読んでいかないとキーワードが見つけられないような答案は避けましょう。

4.関係者調整(リーダーシップ)~問題Ⅱ-2の設問3

ステークホルダーとの利害関係調整を書く

コンピテンシー「リーダーシップ」の定義は以下のとおりです。

リーダーシップ

  • 業務遂行にあたり,明確なデザインと現場感覚を持ち,多様な関係者の利害等を調整し取りまとめることに努めること。
  • 海外における業務に携わる際は,多様な価値観や能力を有する現地関係者とともに,プロジェクト等の事業や業務の遂行に努めること。

また問題文は以下のようなものです。

問題Ⅱ

設問3:業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ

ここで重要なのは、該当するコンピテンシーがコミュニケーションではなくリーダーシップであるということです。「ステークホルダーにわかりやすく説明する」などはコミュニケーションですから不適切です。様々な利害要求を持っているステークホルダーに対して、それぞれが納得同意できるような技術的提案(技術的中庸案)を示すことがリーダーシップです。つまり中庸案の提案部分を書くべきで、その説明部分ではないということです。

多様なステークホルダーが納得できるような技術的中庸案を提案するといったことを書く。

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2.問題Ⅱ-1対策

以下、A評価答案事例をあげて解説していきます。

問題Ⅱ-1-3(2017(平成29)年度建設部門土質及び基礎科目)のA評価答案例(提供:てってぃさん)

  • (問題文)土留め(山留め)掘削における盤ぶくれ発生メカニズムについて説明せよ。また、盤ぶくれ防止策を3つ挙げ、それぞれの概要と適用における留意点を説明せよ。

  1. 土留め掘削における盤ぶくれ発生メカニズム

    盤ぶくれとは、掘削底面に難透水層が存在し、その下に被圧帯水層が存在する場合、被圧水による上向きの揚圧力が発生し、掘削底面が持ち上げられる現象である。
    揚圧力が土被り圧を上回った場合に盤ぶくれが発生する。
  2. 盤ぶくれ防止対策の概要および適用の留意点
    1. 地下水の低下
      ディープウェル工法により、地下水を低下させ、難透水に作用する揚圧力を低減させる。
      適用にあたっては、周辺井戸に渇水・水位低下等の影響がないか留意する。
    2. 土留め壁の根入れを長くする
      被圧帯水層の揚圧力を低減させるため、その下の難透水層まで根入を長くし、地下水の供給を止める。
      適用にあたっては、下部難透水層の深度を把握し、根入れ不足が生じないように留意する。
    3. 地盤の剛性を上げる
      掘削底面以深を地盤改良することにより、地盤の剛性を高め、盤ぶくれを防止する。
      適用にあたっては、掘削底面以深の地盤を把握し、改良深度を検討する必要がある。

「土留め(山留め)掘削における盤ぶくれ発生メカニズムについて説明せよ」「盤ぶくれ防止策を3つ挙げ、それぞれの概要と適用における留意点を説明せよ」という大きく2つの指示があり、さらに盤ぶくれ防止策には「3つ挙げ」という数の指定があるわけですから、これから必然的に答案の構成が決まってきます。すなわち、
 (1) 土留め掘削における盤ぶくれ発生メカニズム
 (2) 盤ぶくれ防止策の概要と適用における留意点
  ①1つ目の防止策
   ・概要
   ・適用における留意点
  ②2つ目の防止策
   ・概要
   ・適用における留意点
  ③3つ目の防止策
   ・概要
   ・適用における留意点
という構成ですね。このように問題文に従って答案を構成し、なおかつ答案用紙の中で偏りなくボリューム配分がなされています。特に(2) 防止策の概要と留意点は、実際の答案用紙では概要に2行、留意点に2行を均等に割り当てて、「こんなことをする。適用にあたってはこういうことに留意する」といった内容を関係明瞭に記しています。

次に、図表を活用した事例です。

問題Ⅱ-1-4(2017(平成29)年度建設部門土質及び基礎科目)のA評価答案例(提供:mamaさん)

(問題文)
構造物の側面に作用する静止土庄,主働土庄,受働土圧について説明せよ。解答に当たっては、想定される構造物やその屑辺地盤の動きを踏まえつつ、その土圧がどのような構造物の設計において用いられるかについても説明すること。


土圧は擁壁等の抗土圧構造物の設計に用いられる。

3つの土圧について、図1の擁壁の変位と土圧の関係、および擁壁の移動のイメージ図を示す。
・主働土圧は、擁壁が土に押される(土は擁壁を押す)方向に移動したときに発生する土圧である。
・受動土圧は、土が擁壁に押される方向に変位したときに発生する土圧である。
・静止土圧は、構造物の水平変位が生じないときの土圧である。
土圧の算定方法には、ランキンの土圧論、クーロンの土圧論があり、ランキンの土圧論は、構造物の背後地盤全体が破壊に達した状態を仮定して土圧を導き出す。これに対し、クーロンの土圧論は、壁の背後地盤がくさび上にすべり状態を仮定して力のつり合い状態から土圧を導き出すものである。
クーロンの土圧論は、ランキンの土圧論に比べ式が複雑であるが、構造物背面が傾斜している場合や背後地盤が傾斜している場合でも算定出来るので適用性が広い。

図で解説することで、静止・主働・受働の3つの土圧について正しく理解していることが端的に伝わります。もちろんこういった図はその場で考えて描けるものではありません。テキスト類の解説図を、その内容までしっかり理解しながら読んで勉強したからこそ、空で描けるようになっているのです。そしてそういった勉強の蓄積が、試験の場でこういった図をさっと書けることにつながっているのだと思います。

ただし、無理に図や表を書く必要はありません。そのために時間がかかってしまっては逆効果です。日頃の勉強や業務の中で使い慣れたものがあったら書くとよいということです。
なお、2023年度から図や表を書く場合も文字は1マス1文字に書く必要があります。

以上のように、問題Ⅱ-1の問題作成方法は、以下の手順になります。

問題Ⅱ-1の問題作成方法

  1. 問題文に合わせて章構成を決めます。
  2. 構成が決まったら一枚だけしかない答案の上でレイアウトを決めます。それぞれの行割り振りは、大体この程度書くかなという程度でざっくりと決めます。
    なお、この時にタイトルを薄く書いてしまってもいいでしょう。
    レイアウトが決まると「この程度の枠内で書くんだな」というイメージができます。
  3. 次に書く内容を決めていきます。文章を考えるのではなく、キーワードとして何を書けばいいかをまず考えます。キーワードは問題用紙の余白などに書いておけばいいでしょう
  4. キーワードが決まったら、答案用紙にできるだけ短い文章で登坂を書いていきます。短い文章で簡潔明瞭に書くのがいいですが、箇条書きで簡単に書いてもかまいません。逆に何行にもまたがるだらだらとした長文は書かないようにします。

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3.問題Ⅱ-2対策

問題Ⅱ-2の例をあげてみましょう。

問題Ⅱ-2-1(2019(令和元)年度建設部門道路科目)のA評価答案例(提供:N,S,さん)

(問題文)
ある市街地の生活道路(地区に住む人が地区内の移動あるいは地区から幹線街路に出るまでに利用する道路)において地区に関係のない自動車の走行やスピードの出し過ぎなどの問題が発生しており,交通安全対策(ゾーン対策)が検討されている。この対策の担当責任者として,下記の内容について記述せよ。
(1) 調査,検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2) 業務を進める手順について,留意すべき点工夫を要する点を含めて述べよ。
(3) 業務を効率的・効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。


1.調査・検討すべき事項
①生活道路のネットワーク状況や構造
 地区に関係のない自動車の走行ルートや交通安全対策を立案するために、生活道路のネットワーク状況や道路構造(幅員、線形、縦断勾配、横断勾配など)を調査する。
②生活道路の交通特性
 生活道路の時間別、平日休日別の自動車交通量、自転車交通量、歩行者交通量や自動車の実勢速度、事故発生箇所や事故の状況についても調査し、生活道路の交通特性を把握する。
③生活道路の交通規制状況
 生活道路における速度規制の状況やスクールゾーンの指定、一方通行指定などを調査し、交通安全対策立案の際に考慮する。
2.業務を進める手順
①事前調査
 生活道路のネットワーク状況や構造、交通特性、交通規制状況等を現地調査または資料調査により事前に把握する。
 ETC2.0プローブデータが利用できる場合は、走行挙動履歴からヒヤリハット箇所を分析し、交通安全対策について検討する。
②交通安全対策の立案
 事前調査結果に基づき、最も効果的な交通安全対策を立案する。対策例としてはハンプ、シケイン、ライジングボラードなどが挙げられる。
 生活道路の利用者の状況やバリアフリー推進計画等を考慮し、横断舗装にハンプを設置する場合は歩道に段差のないスムース歩道の採用についても検討する。
 また、対策効果を事前に把握する必要がある場合は社会実験の実施についても検討する。例えばハンプであれば可搬式ハンプの設置やシケインであればラバポールの設置などが挙げられる。
③交通安全対策の効果の確認
 交通安全対策の効果を確認するため、対策実施後の交通状況を調査し、事前調査の結果と比較分析する。期待した効果が得られなかった場合は追加の安全対策について検討する。
3.関係者との調整方策
 業務を効率的・効果的に進めるためには、計画段階から道路管理者、交通管理者、地元住民で構成される協議会を立ち上げることが有効である。
 なぜなら、協議会を通じて地元住民にアンケート調査を依頼したり、交通管理者に事故調書の提供などを依頼できる。また立案した安全対策について検討段階から協議会で議論することにより、速やかな合意形成を図ることができると考えられるからである。

問題文が3設問構成なので、答案も3章構成にするとともに、それぞれのタイトルは問題文の文言を流用し、読み手(採点者)が迷わないようにしてあります。

設問1の調査・検討すべき事項については、3つに分類整理するとともに、それぞれの分量も同程度にしてあるので、体系的に整理された印象を受けるとともに、読みやすくなっています。問題文には「事項とその内容」とあるのですが、各項目のタイトルが「事項」、文章が「内容」にあたります。もちろん押さえるべき項目は押さえられています。
 設問2の業務を進める手順については、事前調査→対策立案→効果確認とステップごとに項目を割り当てて書いてあります。また「こういう場合はこうする」という形で留意点・工夫点にも触れています(ここはもっと明確にしたほうがいいと思いますが)。そしてこの記述内容からしっかりした専門技術力があることが読み取れます。おそらく採点に当たって参照しているキーワードがかなり拾えているものと思われます。
 設問3の関係者との調整方策では、「道路管理者、交通管理者、地元住民」というようにステークホルダーを具体的に記しているとともに、協議会の設立根拠もリアリティをもって(おそらく実務の中で会得したのであろうと思えるような内容で)書けています。
 そして答案の構成は、

  • 問題文の設問構成にしたがって章構成をたて、その中に小項目をたてるという入れ子構造にして読みやすい構成にしている
  • 各項目の文章量があまり偏っていない(答案用紙に書く前に答案内容をおおむね決めてから書かないと、なかなかこうはならない)
  • 答案文章は長々と書かず、実際の答案でも1文あたり5行以内に収めている。

といううようにして、バランスの良い、読みやすい構成になっています。
 このようにして、妥当な内容で読みやすい入れ子構造&短い文章の答案を作ればA評価は取れます。ここでは「妥当」という表現を使いましたが、傑出した能力、非常に難度の高い課題を解決する能力などを示す必要はなく、順当に落ち度なく業務をこなせることが読み取れればOKだということです。さらにマニュアル化が進んだ採点では、出題者から示されたキーワードがあると思われますが、これはスタンダードな内容であるほど数多く含めることができ、逆に特殊なことばかり書いているとキーワードが含まれなくなってくると思われます。
 つまり、以下のようなことが高得点のポイントであるといえます。

高得点のポイント

  • 答案内容が妥当なものである(マニュアル類や施策などを踏まえた妥当なものである)
  • 問題文の指示に従っている(題意に沿っている)
  • 読みやすい答案になっている(章構成を入れ子構造にして全体構成がわかりやすくしてあり、答案本文は長文を避けた簡潔明瞭なものである)

①はもちろん大事ですが、②や③も同じくらい重要です。①に少々間違いや不足があっても、②や③がよくできている(特に③がよくできていて読みやすい)と、評価はけっこう高くなり、①はしっかりしているけれど題意に沿っていなかったり③が読みにくかったりして読みにくい答案より高く評価されることもよくあります。

つまり、技術的内容は着実なそこそこなものでいいから、問題文指示(題意)にしっかり沿って、読みやすい答案を書くことがポイントです。(これは技術士試験に限らず、記述式問題であれば共通のことです)
しかしこのことを十分理解していない人が多く、逆に「技術士試験なんだからとびっきり高度なことを書かなきゃいけない」などと思ってしまって、かえって着実な核心的事項を書かずに付帯的事項ばかり書いてしまい、さらに題意から外れたり読みにくい答案になってしまったりして、せっかく実力があるのに損をしてしまっています。

問題Ⅱは、2018年度までのものと根本的には変わっていませんから、これまでの出題傾向をある程度引きずってくる可能性が高いと思われます。まあつまり作問委員は、昨年度までの出題内容を少なからず参照して、カブらないようにするだろうということですね。
そこで以下、建設部門について選択科目ごとにこれまでの出題傾向と重点的に対策しておくべきテーマをまとめます。なお、過去の試験問題は日本技術士会HPで公開されています。

1.建設部門

1.土質及び基礎

問題Ⅱ-1
  • 調査試験方法(特にサウンディング関係、力学試験が要注意)、せん断・沈下・支持力等(せん断に注意)、山留めといったジャンルのキーワード・技術の知識を整理するとよい。
問題Ⅱ-2
  • 盛土(軟弱地盤が多い)と構造物基礎・山留め掘削について、変状原因機構・調査試験方法・対策および留意点を問う問題が続いている(2022年度のみ久々に切土法面崩壊が出題)。
  • Ⅱ-2-1は盛土に伴う変状問題が予想される。特に軟弱地盤上の盛土挙動に注意。
  • Ⅱ-2-2は山留め掘削、構造物基礎、切土の優先順で準備をしておくとよいと思われる。

2.鋼構造コンクリート土質及び基礎

鋼構造コンクリートは、2019年度までは鋼構造とコンクリートに分かれて出題されてきましたが、2020年度に統合されました。問題Ⅱ-1は4問中2問ずつが鋼構造とコンクリートに割り振られていますが、どちらを選ぶこともできます。

問題Ⅱ-1(鋼構造)
  • 鋼材、設計、製作(継手・施工架設等含む)、維持管理(疲労・損傷・腐食・点検等)の4分野から出題。2020年度から統合により2問となり、各分野をバランス良く割り振っている印象。
  • 分野的に偏らないように出題するという本来の趣旨から考えれば、設計と継手・施工・工場製作(特に継手と架設)に重点を置き、さらに鋼材や維持管理についても準備するのがよいと思われる。
問題Ⅱ-1(コンクリート)
  • 材料、設計手法、施工時品質、初期欠陥、劣化補修点検から出題されてきたが、2020年度は材料・構造と施工を1問に組みこむ選択式実施2問と劣化から出題。2021年度は材料と維持管理における非破壊検査、2022年度は材料と初期欠陥、2023年度は設計と施工から出題。
  • 分野間バランスからいえば、材料、初期欠陥、劣化補修点検を中心に知識整理をすればいいのではないかと思われる。
問題Ⅱ-2
  • 鋼構造は設計・施工・維持管理というステージごとの出題(2019年度はステージにまたがりテーマが特定された出題に大幅に変化)、コンクリートは・初期欠陥防止・対策と維持管理(特に劣化対策)を中心に出題されてきたが、2020年度で統合され、設計施工と維持管理(改築増築含む)に関して受験生がディテールを設定して答える問題に大きく変化。
  • Ⅱ-2-1が設計施工、Ⅱ-2-2が維持管理について、ディテールを受験生が決める形式の出題が続くと予想される。
  • Ⅱ-2-1は制約条件下設計施工と施工中不具合、工期短縮、災害対策が出題されたので、2023年度は長寿命メンテフリーや特殊材料、既存構造物干渉などの条件を付しての設計施工などが考えられる。
  • Ⅱ-2-2は既設構造物供用維持補修等、耐震補強、突発的作用、狭隘部点検が出題されたので、ICT/IoT活用点検効率化や近接施工等の制約条件下での補強補修などが考えられる。

3.都市計画及び地方計画

問題Ⅱ-1
  • 都市計画(市街地再開発等)、都市交通、景観・まちづくり(景観計画・エリアマネジメント)、公園緑地の4分野から1問ずつ出題されてきた。2022年度からは2年連続で都市計画2問・都市交通・公園緑地から出題。
  • したがって、都市計画・都市交通・公園緑地を中心に、景観・まちづくりにも十分注意して準備するとよい。
  • 施策制度の知識を確認する問題が多いので、最近の施策制度を中心に勉強しておくことが望ましい。
問題Ⅱ-2
  • 都市再生と地方都市活性化を主に、防災やまちづくり、公園緑地などからも幅広く出題されてきた。全体としてはバランス良く出題されている。2023年度は複数分野にまたがる出題になった。
  • これまでの出題内容からみると、都市再生関係とまちづくり(特に人口減少している地方都市)について準備しておくとよいと思われる。

4.河川砂防及び海岸海洋

問題Ⅱ-1
  • 河川・ダム・砂防・海岸から1題ずつ出題
  • 河川は河川堤防耐震化や河川環境整備など、ダムは環境配慮や土砂管理、砂防は地すべり斜面崩壊、海岸は高潮等に特に注意。
問題Ⅱ-2
  • 防災減災・維持管理・環境配慮の3分野を中心に、稀に土砂管理等からも出題。2023年度は防災減災1問と5年ぶりに総合土砂管理が出題。
  • 防災減災は出題が続くことが考えられる。都市型水害対策や堤防ダム緊急放流、流域治水に注意。これだけで2問出題の可能性もあり。
  • 続いて環境について出題の可能性あり。生態系との共存(たとえば魚道、土砂供給、河畔林など)に注目。
  • 維持管理は2021年度に久々の出題があったが、余裕があったら準備。

5.港湾及び空港

問題Ⅱ-1
  • 計画・設計・施工を中心に、環境・維持管理からも出題。2023年度は計画・設計だけで3問出題され、うち1問は空港限定の珍しい出題。
  • 計画は設計条件や用地計画等に関する専門技術的出題もあるが、経済的視点からの出題も多い。
  • 設計は構造等に関するものと設計手法に関する出題。どちらからの出題にも備えておくべき。
  • 施工は手順、地盤対策、施工管理・施工方法等から出題されることが多い。
問題Ⅱ-2
  • グローバル化対と災害対応がほぼ毎年出題されてきたが、2022年度以降はグローバル化と維持管理の組み合わせになった。
  • グローバル化は物流・人流の両方がある。地方拠点港湾へのクルーズ船等、地方へのインバウンド渡航の利便性や、物流のフィーダー等、中核港湾空港から地方へのシフトを意識した施策の整理を。
  • 災害対応は2022・2023年度に出題がなかったが注意が必要。耐震と高潮波浪、特に耐震に注意。
  • 維持管理は施設を供用しながらの補修更新など港湾空港ならではの老朽化対策に注意。

6.電力土木

問題Ⅱ-1
  • 調査計画設計分野は様々な問題が出ているが、比較的多いのが構造物・耐災害外力に関する問題で基本的には火力・水力が中心。今後も同様に注意すべきだが、2023年度は原子炉等規制法の新基準について出題され、出題範囲拡大の兆候もある。
  • 保守点検は断続的に出題、エネルギーも再エネ中心に3年度連続出題。再エネも火力のゼロエミが出題されるなど、既往化石燃料発電vs再エネというような単純な図式ではない。
  • 調査計画設計分野を火力・水力中心に、維持管理や再エネ(太陽電池発電所がアセス対象になった)なども準備するといい。原子力も積極的に使ってとにかくカーボンニュートラルを目指すという国の方針の影響が大きくなると思われる。
問題Ⅱ-2
  • 発電所・変電所等の施設に関して、計画に関する問題と施設安全確保に関する問題の2問構成。
  • 施設や状況など自分で設定して答える問題なので、自分に有利になるよう施設特性を熟知しているものに設定して答えるとよいが、設問2・3の内容を考察しながら、設問1の設定条件を答えやすいように柔軟に変更して内容を練り上げるとよい。

7.道路

問題Ⅱ-1
  • 計画・設計・管理、舗装、変状対策について出題される傾向は一定。
  • 計画・設計・管理は、道路の基礎的事項と旬の話題から出題される傾向あり。無電柱化関係など注意すべきテーマについて調べておくとよい。
  • 舗装は舗装形式や工法などに注意。
  • 変状対策は特に切土法面の維持管理関連(法面崩壊やモルタル劣化等)に注意。
問題Ⅱ-2
  • 計画設計仮想事例は毎年1~2問出題。維持管理や施工管理も毎年ではないか出題される。従って、計画設計を中心に準備するとよい。
  • 設計や施工、さらにはプロジェクト全体の推進責任者という立場での仮想事例出題。現状の(あるいは予想される)課題を調査把握して対策を検討して実施するというステップで、調査検討事項と実施手順を整理するトレーニングを積んでおくとよい。

8.鉄道

問題Ⅱ-1
  • 計画・設計施工に関する問題は毎年1~2問出題。設計手法や基準に関する問題も多いので、体系的知識を蓄える必要あり。
  • 事故防止・バリアフリーは踏切事故注意。
  • 軌道に関する出題は毎年出題。脱線につながるレール関連知識を整理。
  • 維持管理に関する出題が1年途切れたので要注意。調査点検評価や補修補強について体系的に整理。
問題Ⅱ-2
  • 近年は困難性のある仮想事例のみ2問の年と、仮想事例と維持管理の改良・改善の組合せになる年が隔年で出題。
  • そのように考えると、困難性のある仮想事例と維持管理仮想事例をそれぞれ用意しておくべき。困難性事例は近接施工や小土被り等の制限事項の中で、軌道や近接家屋等に対する影響を避けつつ施工するための検討内容・対策立案等を行わせる問題。設問構成は似ているので、過去問題を様々な制限条件に置き換えて解いてみるとよい。
  • 維持管理事例はICT活用省人化を中心に用意。ヘルスモニタリングなどにも注意

9.トンネル

問題Ⅱ-1

  • 山岳2問、開削とシールド各1問。2018年度のみ開削・シールドに特化せず都市トンネルとして包括されたが、2019年度以降は元に戻った
  • 山岳2問、開削とシールド各1問を前提に、過去問題から予測して準備するとよい。
問題Ⅱ-2

  • 山岳は地下水・破砕帯等劣悪部・低土被り等悪条件といったものを設定しての問題点・調査項目・対応策等を書かせる問題が続くと思われるので、過去問題を使ってトレーニングするとよい。
  • 開削&シールドは近接施工や軟弱地盤、大深度等の悪条件を設定して対応を求める問題が主なので、過去問題を使ったトレーニングを。
  • いずれにせよ、付与条件をいかにしっかり反映させるかで差がつくと思われるので、問題文や添付図表類からしっかり条件を読み取るトレーニングを。

10.施工計画

問題Ⅱ-1
  • コンクリート(暑中・寒中等)、土工、入札契約・法律、施工管理(災害防止等)から出題されてきた。この点は2019年度以降も変化なし
  • 方式・工法等について、基本的事項(原理や概要等)と実施上の留意点等を書かせる出題が目立つ
問題Ⅱ-2
  • コンクリート、基礎工開削、土工ともに既存構造物や近接施工などの制約の中での施工計画が出題。
  • 2022年度以降は、施工前あるいは施工中に変状が発生したという条件が付され、さらに設問2でマネジメント(2022年度のみ)、設問3でリーダーシップという、コンピテンシー理解度を確認していると思われる言葉を出して質問。
  • コンクリートは、運搬打設と初期欠陥対応(暑中・寒中等もあり得る)、近接施工や環境配慮、資機材搬入出の制約といった条件が付く可能性が高いので、制約条件を含む付与条件がいかに反映できているか(おそらくそれらが採点時キーワード)の勝負になると思われる。
  • 基礎工・開削は軟弱地盤対策が要注意。関係者調整設問が入るので近接施工条件が付くと思われるし、動態観測や説明協議も必要になってくると予想される。また第三者災害防止も含める必要があるかもしれない。
  • 斜面・切土・盛土は2022年度に数年ぶりの出題で、この場合はコンクリート問題がなくなる傾向があるので、1年おいての出題の可能性は高くなく、あったとしても切土の出題と予想される。
  • 2022・2023年度のようなマネジメント・リーダーシップといったコンピテンシーを前面に出した設問が続く可能性が高いと思って準備をしておくべき。

11.建設環境

問題Ⅱ-1

  • 生態系は出題の可能性大。エコロジーネットワーク、危険外来種、市民参加の取組などに注目。
  • 環境保全は2023年度に集中的に出題。2024年度は1~2問か。水質と騒音から主に出題されているのでこれを重点的に。
  • アセスと地球環境は出題の可能性大。アセスは太陽光・風力など再エネ絡みの出題が考えられる。
  • 地球環境は低炭素化を中心に再生可能エネ・省エネ等幅広く勉強するとよい。カーボンニュートラル関係に注意。
  • 廃棄物等は循環型社会関連を中心に、再生利用などもチェック。
問題Ⅱ-2
  • なんといってもアセスが主体。事業や環境要素・影響要因等を指定しての出題が多くなっているが、アセスのマトリクス図で調査予測評価対象要因を絞り込むことにも慣れておくとよい。
  • その他は単発出題ばかりなので予測困難だが、土壌汚染と景観・カーボンニュートラル系(再生可能エネルギー含む)等、余裕があれば準備しておく程度で、本番で得意分野が出たら選ぶくらいのつもりで。6年以上出題はないが、歴史風致の可能性もなくはない。

12.上下水道部門・上水道工業用水道

問題Ⅱ-1
  • 2問が水処理、2問が施設に関する技術問題
  • 水処理問題は処理方式・処理剤関係が目立つが2023年度はスマート水道メーター出題。幅広くなってきている兆候か。
  • 施設問題は管路に関する問題が大部分だが2023年度はろ過池洗浄や配水池清掃など洗浄関連問題で、こちらも出題範囲が広くなってきている兆候がある。
問題Ⅱ-2
  • 水処理(安全でおいしい水の確保)1問、施策1問という組み合わせの仮想事例。
  • 2020年度以降、災害や老朽化等の水質リスクあるいは施設維持リスクへの対応問題が続いているので、水質事故や老朽化を含め、様々な水質リスク・施設維持リスクを想定してトレーニングを。特に能登半島地震を踏まえると、地震対策(冗長化・複線化を含む)に注意。

13.上下水道部門・下水道

問題Ⅱ-1
  • Aグループ(施設設計施工に関する技術問題)とBグループ(処理方式に関する技術問題)に別れて2問ずつ出題。2019年度以降はグループ分けはなくなったが内容は同じ。
  • 施設設計問題は、維持管理・防災減災の視点の問題と計画・設計・施工計画に関する問題の組合せが多い。
  • 処理方式は汚泥が1問は出ているので過去問題を参考に準備しておくとよい。
問題Ⅱ-2
  • 防災減災、維持管理、下水処理、計画等について出題。2019年度以降は防災減災と下水処理のみから出題されていたが、2023年度は維持管理が出題。下水処理は維持管理の一環としての出題が多いので同一分やともいえる。
  • 防災減災は地震が2年続けて出題された後水害が出題。2023年度は水害と地震の両方を含んで出題。能登半島地震を踏まえると地震に関する出題に特に注意。
  • 基本的に仮想事例なので設定条件に適合した答案を作成するよう注意が必要。
  • 下水処理は維持管理とセットで広域連携やPFIなどと絡めた施設更新・処理方式見直しなどが出題される可能性あり。汚泥処理にも注意。

14.農業部門・農業農村工学(2018年度以前は農業土木)

問題Ⅱ-1
  • 水利は毎年複数問題出題されているので、過去問題から出題予想をたてて準備。頭首工注意。
  • 2022・2023年度はほ場整備・災害対策とも出題がなかったので2024年度は逆に注意。ほ場整備は水田汎用化・大区画化、災害は能登半島地震を踏まえて耐震性を中心に水害についても過去問題を参考に知識を整理。
  • 自然環境は生態系保全・農村景観を中心に準備しておくとよい。特に農業土木インフラ整備・改修等に伴う環境影響の視点で。
問題Ⅱ-2
  • かんがい等は毎年出題。施設等の維持管理や水田汎用化等生産基盤強化に寄与するという視点での出題が多いので、計画策定にあたっての視点を正しく読み取って題意に沿った答案を書くこと。
  • ほ場整備はスタンダードに水田汎用化・大区画化を中心に過去問題を参考に知識を整理。
  • ため池は災害と老朽化の視点。能登半島地震も踏まえて災害に注意。

15.応用理学部門・地質

問題Ⅱ-1
  • 各種調査試験と水理地質関係を中心に、地すべりについても近年は重点的に出題されているので、こういった分野を中心に、物理探査なども押さえておきたい。
  • 能登半島地震を踏まえ斜面崩壊や液状化などの出題も考えられる。
問題Ⅱ-2
  • 地質調査と環境等について幅広い範囲から、劣悪部を中心にかなり絞り込んだテーマで出題されてきたが、2019年度からは関係者調整が必要になるような地質調査の担当者としての仮想事例になった。
  • 地質調査について崩壊変状リスクの高い現場での調査計画を中心に、また地下水・水文調査についても地下水汚染なども含めて、過去問題を参考になどで準備しておくといいと思われるが、出題予想は困難なので、地質調査の手順や手法などを体系的に整理して、与えられたテーマに柔軟に対応していくしかないと思われる。
  • 関係者調整で差が付く可能性があるので、設問3を軽く見ないように注意。

16.環境部門・環境保全計画

問題Ⅱ-1
  • 地球温暖化等地球環境問題、環境政策、循環型社会を中心に出題されてきたが、近年は生態系など従来は環境保全計画科目では範疇外だった分野にまで幅が広がり、さらにピンポイント的な出題、政策・施策に関する問題が増えた。また2023年度は出題ジャンルの偏りが強くなった印象。
  • 環境省HPで政策等について幅広く抑えておくとともに、環境白書等で様々な話題について押さえておく必要あり。
問題Ⅱ-2
  • 基本的には環境保全・循環型社会形成に関する計画策定や問題となっている事象についての改善策提案が主だが、自然環境保全科目のような問題も出題されることがある。
  • 自治体等レベルでの環境保全計画策定・循環型社会形成における問題となっている事象を中心に、特に計画策定になれておく必要あり。
  • 関係者調整設問導入のためか、直接的なステークホルダーとの利害関係調整が多そうな・難しそうな事例の計画策定がテーマになりつつある。実際に係わったことがない対象物・分野だと手が出ない懸念があるので、話題になっているテーマを中心に知識を増やしておく必要あり。
  • 2024年度は特に循環型社会に注意

17.環境部門・自然環境保全

問題Ⅱ-1
  • 自然環境保全・自然公園と生態系の二大分野を中心に幅広く出題
  • 幅広い範囲から限定的テーマで出題されており、特段の傾向なし
  • 環境省HPなどを参考に幅広く知識体系を充実させていくしかないか
問題Ⅱ-2
  • 2016年度までは、自然環境保全・育成計画と自然とのふれあい・自然公園運営等計画の2問だったが、2017年度から1問が生物多様性(生物多様性地域戦略等)も出題されるようになり、さらに・自然公園の運営、さらに進んで地域振興や有害獣対策まで、自然環境に関する広い範囲に係わる計画策定の問題が頻出されるようになるなど、経営視点を含めた総合的視点が求められる傾向にある。
  • 自然環境保全育成計画、自然公園運営、自然とのふれあい、生物多様性地域戦略、シカや外来種等への対策といったジャンルからの仮想事例的問題を想定しての準備がお勧め。

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