3.解答に必要な知識・見識
(1) 3義務2責務
3義務は次のとおりです。
- 信用失墜行為の禁止
技術士法第44条
技術士または技術士補は、技術士もしくは技術士補の信用を傷つけ、または技術士および技術士補全体の不名誉となるような行為をしてはならない。 |
技術士・技術士補の社会的信用を失墜させるような行為をしてはなりません。
具体的には、捏造・公私混同などの不正行為はもとより、公の場での品格を疑われるような行動や、名義貸しなどの行為もこれに該当するでしょう。
なお、文科大臣は規定違反と思料されるときは職権をもって調査することができます(法第37条)。その上で違反が明確になれば、登録の取り消しまたは2年以内の名称使用停止を命ずることができます(法第36条)。
- 守秘義務
技術士法第45条
技術士または技術士補は、正当の理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らし、または盗用してはならない。技術士または技術士補でなくなった後に置いても、同様とする。 |
業務上知り得た秘密を漏らしてはなりません。
信用失墜行為と同様、文科大臣の調査権限と登録取り消し・名称使用禁止規定があるとともに、この規定に違反して告訴された場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金という罰則もあります。3義務2責務で唯一の罰則規定です。
後述する公益確保とのトレードオフ(二律相反)でどちらをとるか、という問題が必ず出題されています。
(例)業務の中で明らかな欠陥(あるいは不正)を発見したが、クライアント・雇用者はそれを握りつぶそうとした。さあ、どうする?
・・・・適切な対処(情報公開含む)をするよう最大限の努力で説得するが、どうしてもだめなら公益を優先して関係当局に通報・告発するのが正しい行動です。
ここで大切なのは、まず説得の努力をすること、告発するのは関係当局であって、マスコミや一般大衆ではないことです。短期は損気、物事には順番、社会ルールを守るということです。告発は一見正義のヒーローですが、独善的になってはいけません。不用意な公表は、不要な混乱も招きかねません。そうなれば公益を損ねます。
また、公共の安全に関わり、緊急性を要する場合は「緊急避難」という考えも適用されます。緊急避難とはたとえば高速道路でラッシュに巻き込まれ、身動きがとれなくなった状態で、どうしても我慢できない子供のオシッコを道路脇でさせるようなものです。この場合、軽犯罪法も道路交通法も適用されません。事例としては、欠陥があって設計荷重が確保できていない構造物に人が集まって崩壊の危険性があると認識したとき、「欠陥がある」と公表して避難させるような場合です。しかし、これも下手なやり方をするとパニックを引き起こし、不要な被害を生じさせるもとになります。軽率な行動は禁物です。
- 名称表示の場合の義務
技術士法第46条
技術士は、その業務に関して技術士の名称を表示するときは、その登録を受けた技術部門を明示してするものとし、登録を受けていない技術部門を表示してはならない。 |
要は、何部門の技術士であるのか、部門を明確に表示せよ、ということです。なお、選択科目の表示については自由です。
ですから、名刺の資格表示の適否は次のようになります。
表示例 |
適否 |
理由 |
技術士 |
× |
部門の表示がない |
技術士(建設部門) |
○ |
部門が明確に表示されている |
技術士(建設部門:土質及び基礎) |
○ |
同上(選択科目は自由) |
技術士(建設環境) |
× |
部門の表示がない(選択科目だけでは不足) |
技術士補については、技術士の業務を補助するにあたって、技術士補の名称表示に関して同様の規定が準用されます。したがって、名刺に「技術士補」と書くときにも上表と同様に部門を明示しなくてはなりません(法47条2項)。
他の2義務と同様、文科大臣の調査権限と登録取り消し・名称使用禁止規定があります。
なお、技術士・技術士補でない者、あるいは技術士・技術士補の名称使用を停止されている者が技術士・技術士補あるいはそれに似た名称を名乗ることは、法第57条で禁止されており、これに違反した場合は30万円以下の罰金に処せられます(法第62条)。
また、2責務は次のとおりです。
- 公益確保の責務
技術士法第45条の2
技術士または技術士補は、その業務を行うに当たっては、公共の安全、環境の保全その他の公益を害することのないよう努めなければならない。 |
「公益」とは何か、という言葉の定義が難しい責務です。
基本的には、会社やクライアントの利益よりも、公共の利益を優先しなさいということで、この公共の利益」には、安全や環境保全なども含みます。
しかしこれは非常にデリケートな問題になります。というのは、実際の世の中はさまざまな利益がぶつかり合うトレードオフ(あちらたてればこちらたたず)の場面がしばしばあり、どちらが公益なのか判断がつきかねる場合もあるからです。
守秘義務のところで前述したようなトレードオフでの「究極の選択」問題が出ています。
公益は守秘義務よりも優先ということは原則です。(公衆優先原則といいます)
この責務も文科大臣の調査権限と登録取り消し・名称使用禁止規定の対象になっています。しかし、何を持って公益確保をしなかったかというのは非常に難しい判断になるので、よほど極端な例(非常に重大な欠陥を知りながら社益優先で黙殺し、結果として重大な災害等を引き起こした場合など。しかしこの場合は刑事責任を問われる可能性も大)でなければ、この責務不履行を理由に技術士資格剥奪ということはないでしょう。
- 資質向上の責務
技術士法第47条の2
技術士は、常に、その業務に関して有する知識および技能の水準を向上させ、その他その資質の向上を図るよう努めなければならない。 |
常に勉強しなさいということで、CPDとセットになった改定条項です。
この責務も文科大臣の調査権限と登録取り消し・名称使用禁止規定の対象になっています。しかし、これも何をもって資質向上を怠ったかというのは難しい判断です。勤務を一切伴わない名義貸しをして自分はスナック経営をしているとか、極端な事例の告発があればわかりませんが、それとて申し開きはできそうです。
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(2) 倫理規定・倫理綱領等
企業・団体等で倫理に関して規定等が定められている場合、その理念を正しく理解し、具体的な行動に正しく反映できる必要がありますが、そのためには、利益や社内規定等の他のルールとの優先順位を明確に理解しておくことが重要です。そうでないと、個人レベルでは判断できないトレードオフに陥ってしまいます。
したがって、倫理規定・綱領等に関する問題では、この優先順位(何を一番大切に考えているかという理念)を正確に読み取る必要があります。
また、倫理規定等の中での技術士の責務に言及しているものもあります。その場合、「自分の役割・権限」をただしく理解しているかというのも重要になります。
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(3) 技術者倫理に関する知識
その用語等を知っていないと、一般的な常識感覚だけでは解答しにくいと思われる事項について解説します。「覚えておいたほうがいい用語」は多くはありません。
なお、以下の記載事項は、技術者倫理という体系的知識の解説であり、「私はこう思う」ということを言っているのではありません。また人として、人生としての「正解」でもありません。知識としての技術者倫理です。
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(4) 仮想事例
基本的には以下の3ケースに代表されるように、異なる利益が対立関係になる利益の相反(トレードオフ)の問題が主です。
ただし、この手の問題は少なくなってきています。仮想事例は、技術者倫理に関する知識の応用問題といえるものですが、適性科目が「技術者倫理の基礎知識」を確認する試験になってきているため、仮想事例が少なくなっているのかもしれません。もちろん「出題されない」という保証はどこにもないので、特に記憶しなければならない用語等もありませんからひとおおりポイントだけおさえておくことをお勧めします。
- 公私混同
肉親・友人などが利害に絡む場合の判断を問います。公共の利益と個人の利益が相反します。
便宜供与などわかりやすいものもありますが、一番困るのが、「黙っていた」という例です。
●肉親のメーカーの製品が実際に優れていたので採用した。
肉親が経営しているということは選定基準とは無関係なので黙っていた。
といった事例です。「製品の採用」を人事に置き換えても同じです。このような時の態度としては、黙っているのは×です。基本的に利益の相反を生じた時には情報開示をすることがポイントです。李下に冠を正さず。肉親だからと便宜供与はしないのは当然ですが、客観的判断をしたのなら、無用な誤解を招かぬよう正々堂々と情報開示すべきです。
- 雇用者・クライアントへの従属・便宜
社長やクライアントが、データの改ざん・捏造や登録部門外の技術士のようなふりをしてくれというルール破りを頼んできた、というケースです。公共の利益と会社の利益(あるいは社員としての自分の利益)が相反します。
無論、断らなくてはなりません。雇用関係や発注受注関係の維持より公益を優先させる姿勢を問われます。
- 守秘義務と公益確保の相反・内部告発
欠陥や不正行為を改めるよう雇用者・クライアントに勧めたが聞き入れられず、とうとう告発した(あるいは黙認した)という行為に関して是非を問う問題です。これは守秘義務と公益確保という技術士としての義務・責務間の相反です。
必ずといっていいほど出題されていますし、二次口頭試験でもよく聞かれます。微妙なケースでは意見が分かれることも少なくありません。
(1)あくまで公益優先、(2)できる限り説得する、(3)告発は担当当局に、というのが正解原則です。(1)は当然として、(2)を怠って短絡的に行動してはいけません。(3)は直ちにマスコミに公表することが公益を損なう場合もあること、そういう不正を担当する当局が存在しているのだから、そこへまず報告する社会ルールであることによります。
また、「正義のヒーロー」を気取って独善的になってはいけません。
さらに、欠陥や不正が明らかでない(確証がもてない)場合は、それを確認するための調査を行う努力が必要です。
なぜ技術士が技術者倫理をうるさく言われるのかということも理解しておく必要があるでしょう。技術士は技術業務のリーダーとなるため、影響力があります(あくまで業務を通してですが)。よって、その人が見識・倫理観に欠けた人物であった場合、その悪影響が無視できない危険性があるためです。このことは、マッドサイエンティストのようなもの、あるいは原爆製造の歴史などを考えれば理解できるでしょう。科学と同様、技術も倫理観を伴わねば人類に災厄をもたらすことになります。乱暴な言い方をすれば、下っ端技術者は言われたとおりに働いていれば何を考えていてもいいが、技術士はそうはいかないので、高い倫理観が必要ということです。
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(5) 実際事例
技術者倫理は「事例に学ぶ学問」ともいえ、事例を特に大切にします。人の生命財産にかかわる事故や反社会的行動があった時に、日本人はその原因を責任者である個人や企業の資質に全て押し込んで、これを吊るし上げて糾弾し溜飲を下げ、後は忘れてしまいますが、それでは社会は改善しません。喉もと過ぎればなんとやらで、しばらくすると同様の事故や反社会的行動が再びおきます。そうではなくて、その原因の中に何らかの普遍性、つまり人なら誰でも持っている弱点や誤解、あるいは社会構造など、この問題を事例として、よりよい規範が作れないかと考えるべきです。
たとえば小学校でいじめがあり、いじめられた子といじめた子が特定されたとします。いじめた子を吊るし上げてその子の資質に全ての原因を求め、その子を反省させてすべておしまいにするでしょうか。それではただの「懲罰」ですね。
そうではなく、その原因を探るでしょう。ちょっとした言葉のすれ違いかもしれません。それなら他人を気遣う言葉使いについて子どもたちに教え考えさせるでしょう。何かの誤解があったのかもしれません。それなら誤解が起こらないような工夫とか、とにかく何でも話せる雰囲気作りなどについて話し合ったりできるでしょう。こうしてはじめて「教育」になります。
一次試験は技術者高等教育を履修したJABEE認定プログラム修了者と同等の学力があるか、つまり「教育」の成果である学力を確認する試験ですから、事例は「こんなけしからんヤツがいたんだ」ではなく、「これこれこのような行動が、こんな結果を生んでしまった。だからこうすべきだ」という捉え方をしなければなりません。
このようなこともあって、事例はいつもトピック的なものばかりとは限りません。たとえば技術者倫理に関する事例の代表例であるスペースシャトルチャレンジャー号の爆発事故(こちら)は何度も出題されています。フォード・ピント事件(こちら)もそうです。国内事例でも、JCO臨界事故はスタンダード事例になりつつあります。カネミ油症事件やソリブジン事件などもそうです。
そういった事例は、ぜひ目を通して、どのような倫理的問題があったのかを整理しておくことをお勧めします。決して「誰が悪者か」というマスコミ的視点はなく、「何に問題があったのか」という視点を持ちながら読んでください。できれば技術者倫理に関わるいろんな知識を持ってから読まれるとなおいいでしょう。
技術士たるものは、マスコミと一緒になって騒ぎ立てていてはいけません。社会悪に対しては一市民として毅然たる態度をとらねばなりませんが、高度な技術者ならではの冷静な分析と判断が必要です。それは、技術士は一つ間違えると事例のような大きな社会問題・災厄を引き起こしてしまうかもしれない影響力を持っており、それゆえに社会的責任が大きいからです。
前述のスタンダード的事例以外に事例として取り上げられるとすれば、次のようなものが考えられます。
- JCO臨界事故
- JR尼崎脱線事故
- 六本木ヒルズ回転ドア事故
- 美浜原発死傷事故
- 構造計算偽造問題
- 三菱リコール隠し
- シンドラーエレベータ
- 松下ヒーター・パロマ湯沸かし器事故
- 福島第一原発事故
- 神奈川マンションデータ偽装
- 新幹線のぞみ重大インシデント
- 不正研究(内容偽装)
なお、事例はその内容自体を覚えておく必要はありません。問題に取り上げられる場合は、必ずその事例の内容について説明した後で問題が出されています。
また、「この事件ならこれ」みたいに当該事例が示唆する倫理事項を決め付けておくと失敗します。1つの事例には複数の教訓が含まれていますから、何を問うためにこの事例を持ち出したのかをしっかり見極める必要があります。
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(6) 裁判事例
実際の判決文が引用されます。判決文は、企業や技術者・役人(公人)に社会が求めていること、やってはいけないこと、やってしまった場合の影響に関する社会判断を述べています。よって、それらを正しく認識しているかどうかを確認する問題になります。
企業・個人は、自らの社会的責任を認識し、それを裏切らないように自制すること、さらには具体的な是非判断と影響予測ができることが求められています。
一個人としての責任・責務と、社会人(公人)としての責任・責務は次元が違うことを認識していれば、何ら迷うことなく解けると思われます。
なお、判決文は文章としても洗練され正確を期していますから、穴埋め問題では、文法が正しいか・違和感がないかで正解を絞り込めます。そういう意味では文章力も問われているといえます。
ただ、裁判事例は近年出題されなくなっています。
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(7) 環境倫理
環境は技術者倫理の重要な一分野ですが、最近は出題がなくなってきています。
一般に環境問題は、次のような特徴があります。
●予測が簡単ではない
大気・水質拡散予測など高い技術力や、生態系の正確な把握が必要だったりします。
●長期的な予測になる
近視眼的でなく、先を見通した予測になり、一般人には理解しにくくなります。
●価値観・判断基準に個人差がある
生態系などの自然環境保全については、ぶれのない基準というものがありません。
すなわち、環境の価値に関する個人差が大きいといえます。
こういう中で、環境に影響を与える開発サイドの人間の中でも影響力の大きい立場である技術士(専門職技術者)として、環境保全に関する倫理観は重要であるという基本認識の上にたった出題がなされます。
基本的には、環境保全と開発のトレードオフ関係の判断が問われます。単純・短絡的に「環境優先」とか「開発優先」というのではなく、環境要素をよく調べ、何が(どこが)どの程度大切なのかを把握したうえで、開発との共存を図るという姿勢が大切です。
このような考え方をまとめたのが、かつてのアジェンダ21、現在のSDGsの「持続可能な開発」(あるいは「持続可能な発展」)という言葉です。幸福な生活のために進歩・発展しなければならないが、環境に配慮しなかったら結局それは続かない(破綻する)という基本認識です。
以上のような基本認識を理解していれば、あまり迷うことなく解答できると思います。
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(8) その他
- 産官学連携
産官学連携のように組織横断的な動きの中では、組織のルールが及ばなくなることもあるので、個人の倫理観に負うところが大きくなります。
倫理観といっても特別なものではなく、公私の区別、公益確保など他の場合と同じ内容です。
- 市民参加
今後注目されるのはNPOなどの市民参加の動きです。現在は、NPOなどのムーブメントは行政サイドとしてもニーズが大きいので、基金・補助金における監査体制が甘い傾向があります。不正に補助金を受給していた団体もありましたが、今後はNPO・NGOにも高い倫理観が求められるようになるでしょう。
現在は、メンバー間の意見対立など内部事情で崩れるNPOが多いようですが、今後は社会の要請に応えられるかどうかでNPO・NGOの淘汰が始まると予想されます。そしてその社会的要請には、公共性(独善的にならない、社会との連携を大切にし身勝手なことをしないなど)も含まれます。
- 男女共同参画
男女共同参画社会への動きが活発化していますが、ジェンダー(性差)の問題はデリケートであり、セクハラは「逆差別」的現象も一部で生んでいます。
基本認識は、以下のとおりです。
●ジェンダーを理由に差別してはいけない
「女性は腕力がないからこの仕事はできない」ではなく、「この人は腕力がないからこの仕事は無理」というように、性でひとくくりにするのではなく、個別に判断します。
●社会参加も同等に
「女性だから」差別してはいけませんが、同様に「女性だから地区の役員とかPTA役員などは勘弁してもらう」というのも通りません。
●女性の社会参加を促進する土壌作り
家事分担、出産育児へのケアや男性参加といったことはもちろん、たとえばPTA役員になって夜の集会で家を空けるなどへの理解、性差にかかわらず能力を認め尊重しあう雰囲気・価値観の醸成が求められます。
そういった土壌なしには、女性の社会参加・精神的自立は促進されませんし、ひいては性差別もなくなりません。
そしてそのような土壌作りには、老若男女がそれぞれ自分の立場でできることを考え、実行する必要があります。すなわち、公共心・倫理観が求められます。
またこのことは、少子高齢化問題にも関わります。厚労相「女性は産む機械」発言のように、単純に女性ががんばって産めばいいという問題ではなく、結婚・出産を敬遠する社会構造になっているという問題に目を向ける必要があるでしょう。
- 技術者の信頼性の確保
継続教育や査読など、技術者のレベル維持(資質の維持向上)に関する狙いや態度についての設問が増えつつあります。
継続教育はなぜ必要なのか、わからないという人はいないでしょう(登録維持のためのルーチンワークに形骸化していると非難する人はいるでしょうが、実施上の問題点を理由にそれが本質的に誤った手法・理念であるという主張は誤りであることは明らかです)。
技術者は継続教育その他により、自身の有能性を保たねばなりません。そして、自身が有能でない仕事をすべきではありません(有能性原則)。H15問題に、長期療養の間に最新技術に取り残された技術者が、その最新技術を必要とする業務を請け負うべきかという仮想事例問題がありましたが、これはまさに有能性原則のことを問う問題です。
そして「継続教育や有能性原則を問う問題は、今後も出題される可能性は高いと思われます」と言っていた矢先のH18には、JABEEの内容に関する知識問題が出題されました。文科省にとってみれば、この問題に対する答えがJABEE、IPD、CPDですから、それを知っているかどうか問うのは当然といえば当然といえます。現時点ではIPDは体系的な教育システムとして機能していませんから出題の可能性は高くないと思いますが、CPDは出題の可能性が十分あります。
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